FGOで世界最強   作:紫道麻璃也

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ハルツィナ樹海

 七大迷宮の一つにして、深部に亜人族の国フェアベルゲンを抱える【ハルツィナ樹海】を前方に見据えて、ハジメが魔力駆動二輪で牽引する大型馬車二台と数十頭の馬が、それなりに早いペースで平原を進んでいた頃、ユエがハジメに声をかけた。

 

「……ハジメ、どうして一人で戦ったの?」

「ん?」

 

 ユエが言っているのは帝国兵との戦いのことだ。あの時、魔法を使おうとしたユエを制止して、ハジメは一人で戦うことを選んだ。ユエが参加しようがすまいが結果は〝瞬殺〟以外には有り得なかっただろうが、どうも帝国兵を倒した後のハジメは物思いに耽っているような気がしたらしく、ユエとしては気になっていたらしい

 

「ん~、まぁ、ちょっと確かめたいことがあってね……」

「……確かめたいこと?」

 

 ユエが疑問顔で聞き返す。シアも肩越しに興味深そうな眼差しを向けている。

 

「ああ、それは……僕の武器はどれくらい人間に通用するかの実験と………殺しに躊躇いがあるかどうかかな」

「……どうだった?」

「結果的に人相手には魔力を使わなくても大丈夫だし、人生初の殺しもちょっとしか感じなかったね………相手もあれだったからかもしれないけど…」

「……そう……大丈夫?」

 

 ハジメがそう答えるとユエは心配そうに見つめながら話しかけるがハジメは、笑みを向けて伝える。

 

「何の問題もないよ。これが今の僕だし、これからもちゃんと大切な存在を守るには必要なことだし確認出来て良かったさ」

 

 そんなことを話してると、後ろからシアが話しかけた。

 

「あの、あの!ハジメさんとユエさんのこと、教えてくれませんか?」

「?僕達のことは話したと思うけど?」

「いえ、能力とかそいうことではなくて、なぜ、奈落?という場所にいたのかとか、旅の目的って何なのかとか、今まで何をしていたのかとか、お二人自身のことが知りたいです」

「……聞いてどうするの?」

「どうするというわけではなく、ただ知りたいだけです。……私、この体質のせいで家族には沢山迷惑をかけました。小さい時はそれがすごく嫌で……もちろん、皆はそんな事ないって言ってくれましたし、今は、自分を嫌ってはいませんが……それでも、やっぱり、この世界のはみだし者のような気がして……だから、私、嬉しかったのです。お二人に出会って、私みたいな存在は他にもいるのだと知って、一人じゃない、はみだし者なんかじゃないって思えて……勝手ながら、そ、その、な、仲間みたいに思えて……だから、その、もっとお二人のことを知りたいといいますか……何といいますか……」

 

 シアは話の途中で恥ずかしくなってきたのか、次第に小声になってハジメの背に隠れるように身を縮こまらせた。

 

「……わかった暇潰しにもなるしね」

「!ありがとうございますっ‼︎」

 

 そして、ハジメとユエはこれまでの経緯をシアに話すことにした。

 

結果……

 

「うぇ、ぐすっ……ひどい、ひどすぎまずぅ~、ハジメさんもユエさんもがわいぞうですぅ~。そ、それ比べたら、私はなんでめぐまれて……うぅ~、自分がなざけないですぅ~」

 

 号泣した。滂沱の涙を流しながら「私は、甘ちゃんですぅ」とか「もう、弱音は吐かないですぅ」や始末には「ハジメさんの恋人ってユエさんじゃないんですかっ?!」と呟いている。そして、さり気なく、ハジメのコートで顔を拭いている。どうやら、自分は大変な境遇だと思っていたら、ハジメとユエが自分以上に大変な思いをしていたことを知り、不幸顔していた自分が情けなくなったらしい。

 しばらくしてメソメソしていたシアだが、突如、決然とした表情でガバッと顔を上げると拳を握り元気よく宣言してきた。

 

「ハジメさん!ユエさん!私、決めました‼︎お二人の旅に着いていきます!これからは、このシア・ハウリアが陰に日向にお二人を助けて差し上げます‼︎遠慮なんて必要ありませんよ?私達はたった三人の仲間。共に苦難を乗り越え、望みを果たしましょう‼︎」

 

「「……」」

 

 ハジメとユエが呆れた顔をしていると、ユエが更に追撃するように、言葉をかける。

 

「……現在、守られてばっかのウサギが何を言う」

「そっそれは…」

「……」

 

 シアの発言と表情で何となく察しがついたハジメはシアの目線に合わせながら聞く。

 

「…シアさん、単純に旅の仲間が欲しいの?」

「⁉︎」

 

 ハジメの言葉に、シアの体がビクッと跳ねたので、確信がついた。

 シアの魂胆に 確信した俺は更に言葉を続けていく。

 

「一族の安全が一先ず確保できたら、シアさんは皆から離れる気なんでしょ?そこにうまい具合に〝同類〟の僕達が現れたから、これ幸いに一緒に行きたいってこと?そんな珍しい髪色の兎人族なんて、一人旅出来るとは思えないしね」

「……あの、それは、それだけでは……私は本当にお二人を……」

「別に、責めているわけじゃないよ。だけど、変な期待はしないで。僕達の目的は七大迷宮の攻略と神を殺すことなんだ。おそらく、オルクスの奈落と同じで本当の迷宮の奥は化物揃いだ。今のシアさんだと僕であっても守り切れない場合がある。だから、すまないけど同行を許すつもりはあまりない」

「……」

 

 ハジメの全く容赦ない言葉にシアはウサ耳をペタンと垂らしながら、落ち込んだように黙り込んでしまった。

 

「………」

 

 ハジメはシアに内心申し訳ないと思いながら、歩を進めていく。その後のシアは、それからの道中、大人しく二輪の座席に座りながら、何かを考え込むように難しい表情をしていた。

 それから数時間して、遂に一行は【ハルツィナ樹海】と平原の境界に到着した。

 ハジメは樹海を目で初めて見るので、期待していたがただの森にしか見えなかった。

 

「ここが、樹海か……」

 

 本にあった通り、樹海の外から見る限り、ただの鬱蒼とした森にしか見えない。一度中に入ると直ぐさま霧に覆われるらしい。

 

「それでは、ハジメ殿、ユエ殿。中に入ったら決して我らから離れないで下さい。お二人を中心にして進みますが、万一はぐれると厄介ですからな。それと、行き先は森の深部、大樹の下で宜しいのですな?」

「うん、聞いた限りそこが本当の迷宮と関係してそうだし」

 

 カムが、ハジメに対して樹海での注意と行き先の確認をする。カムが言った〝大樹〟とは、【ハルツィナ樹海】の最深部にある巨大な一本樹木で、亜人達には〝大樹ウーア・アルト〟と呼ばれており、神聖な場所として滅多に近づくものはいないらしい。峡谷脱出時にカムから聞いた話だ。

 ハジメはカムの話を聞いて、樹海に向かいながらある仮説を立てていた。

カムの話を聞く限りだと、【ハルツィナ樹海】そのものが大迷宮じゃなくその大樹が大迷宮の入口の可能性が十分に高いと思われる。

 そして、カムは、ハジメの言葉に頷くと、周囲の兎人族に合図をしてハジメ達の周りを固めていく。

 

「ハジメ殿、できる限り気配は消してもらえますかな?大樹は、神聖な場所とされておりますから、あまり近づくものはおりませんが、特別禁止されているわけでもないので、フェアベルゲンや、他の集落の者達と遭遇してしまうかもしれません。我々は、お尋ね者なので見つかると厄介です」

「ああ、わかった。僕もユエも、ある程度隠密行動はできるから大丈夫」

 

 ハジメは、そう言うと〝気配遮断〟を使う。ユエも奈落で培った方法で気配を薄くした。

 

「ッ⁉︎これは、また……ハジメ殿、できればユエ殿くらいにしてもらえますかな?」

「えっと……これくらい?」

「はい、結構です。さっきのレベルで気配を殺されては、我々でも見失いかねませんからな。いや、全く、流石ですな!」

「そういえば、兎人族は全体的にスペックが低い分、隠密行動には秀ている………だったっけ?」

 

 ハジメがそう言うと、カムは、人間族でありながら自分達の唯一の強みを凌駕され、もはや苦笑いだった。隣では、何故かユエが自慢げに胸を張っている。シアは、どこか複雑そうだった。大概、ハジメの実力を改めて示されたせいだろう。

 

「それでは、行きましょうか」

 

 カムの号令と共に準備を整えた一行は、カムとシアを先頭に樹海へと踏み込んだ。

 しばらく、道ならぬ道を突き進む。直ぐに濃い霧が発生し視界を塞いでくる。しかし、カムの足取りに迷いは全くなく、ハジメは言葉を発せずとも感心していた。

 

「……」

 

 順調に進んでいると、突然カム達が立ち止まり、周囲を警戒し始めた。

 

「……魔物か………数は三」

 

 ハジメが感知すると隣のユエも感知した。どうやら、複数匹の魔物に囲まれていることがわかった。樹海に入るに当たって、ハジメが貸し与えたナイフ類を構える兎人族達。彼等は本来なら、その優秀な隠密能力で逃走を図るのだそうだが、今回はそういうわけには行かない。皆、一様に緊張の表情を浮かべているがハジメはそんな彼等に手で待て、とサインしながら気配が強まる方へ視線を向ける。

 

「……そこ」

 

 ハジメは魔物の位置をある程度把握し、左手を素早く水平に振った。微かに、パシュという射出音が連続で響く。

 

「「「キィイイイ⁉︎」」」

 

 三つの何かが倒れる音と、悲鳴が聞こえた。そして、慌てたように霧をかき分けて、腕を四本生やした体長六十センチ程の猿が三匹踊りかかってきた。

 

「ユエ」

「……ん」

 

 ハジメが呼びかけるとユエは応じて、猿の内、一匹に向けてユエが手をかざし、一言囁くように呟く。

 

「〝風刃〟」

 

 魔法名と共に風の刃が高速で飛び出し、空中にある猿を何の抵抗も許さずに上下に分断する。その猿は悲鳴も上げられずにドシャと音を立てて地に落ちた。

 

「残りは……分かれたか」

 

 分かれた一匹は近くの子供に、もう一匹はシアに向かって鋭い爪の生えた四本の腕を振るおうとする。シアも子どもも、突然のことに思わず硬直し身動きが取れない。咄嗟に、近くの大人が庇う。

 

「大丈夫安心して」

 

 ハジメが左腕を振ると、パシュ!という音と共にシアと子どもへと迫っていた猿の頭部に十センチ程の毒針が無数に突き刺さって絶命させた。

 

「あ、ありがとうございます、ハジメさん」

「お兄ちゃん、ありがと!」

 

 ハジメが毒針の確認をしてるとシアと子どもが窮地を救われ礼を言う。

 

「…二人共ケガは無い?」

「うんっ、大丈夫だよ」

 

 子どものハジメを見る目はキラキラだ。シアは、突然の危機に硬直するしかなかった自分にガックリと肩を落とした。

 その様子に、ハジメもカムも苦笑いする。

 

「また出てこない内に移動しよう」

 

 気を取り直しハジメは促して、先導を再開していく。

 その後も、ちょくちょく魔物に襲われたが、ハジメとユエが静かに片付けていった。樹海の魔物は、一般的には相当厄介なものとして認識されているのだが、何の問題もなく終わった。

 しかし、樹海に入って数時間が過ぎた頃、今までにない無数の気配に囲まれており、ハジメは立ち止まって後ろにいるカム達の歩みを止まらせ、声をだす。

 

「……誰だ?」

 

 数も殺気も、連携の練度も、今までの魔物とは比べ物にならない。カム達は忙しなくウサミミを動かし索敵をしている。

 そして、何かを掴んだのか苦虫を噛み潰したような表情を見せた。シアに至っては、その顔を青ざめさせている。

 ハジメは検討はついていて、面倒そうにしてると、ユエも相手の正体に気がついたのか、ハジメと同じように面倒そうな表情になる。

 

 その相手の正体は……

 

「お前達……何故人間といる!種族と族名を名乗れ‼︎」

「あ、あの私達は……」

 

 カムが何とか誤魔化そうと額に冷汗を流しながら弁明を試みるが、その前に虎の亜人──虎人族の視線がシアを捉え、その眼が大きく見開かれる。

 

「白い髪の兎人族…だと?……貴様ら……報告のあったハウリア族か……亜人族の面汚し共め!長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは!反逆罪だ‼︎もはや弁明など聞く必要もない!全員この場で処刑する‼︎総員かッ⁉︎」

 

 虎の亜人が問答無用で攻撃命令を下そうとしたその瞬間、ハジメの腕が跳ね上がり、銃声と共に一条の閃光が彼の頬を掠めて背後の樹を抉り飛ばし樹海の奥へと消えていった。

 理解不能な攻撃に凍りつく虎の亜人の頬に擦過傷が出来る。もし人間のように耳が横についていれば、確実に弾け飛んでいただろう。聞いたこともない炸裂音と反応を許さない超速の攻撃に誰もが硬直している。

 そこに、ハジメは〝威圧〟を使いながら虎人族の奴等に告げる。

 

「余り手荒な真似はしたくないです……話し合えるなら話をしませんか? まぁ……しなかったら敵と判断して眠ってもらいますが」

「な、なっ……詠唱がっ……」

 

 詠唱もなく、見たこともない強烈な攻撃を連射出来る上、味方の場所も把握していると告げられ思わず吃る虎の亜人。それを証明するように、ハジメは自然な動作でシュラークを抜きピタリと、とある方向へ銃口を向けた。その先には、奇しくも虎の亜人の腹心の部下がいる場所だった。霧の向こう側で動揺している気配がする。

 

「後、そこにもいますよね?気配と殺気が駄々漏れですね。殺るというのなら容赦はしません。この人達の命は僕が保障していますから……ただの一人でも立っているなどと思わないように」

 

 あまりに濃厚なそれを真正面から叩きつけられている虎の亜人は冷や汗を大量に流しながら、ヘタをすれば恐慌に陥って意味もなく喚いてしまいそうな自分を必死に押さえ込んでいるそうに見える。

 

「……」

「話に応じてくれるなら、攻撃はしません 。選んでください、敵対するか話合うか」

 

 虎の亜人は確信した。攻撃命令を下した瞬間、先程の閃光が一瞬で自分達を蹂躙することを。その場合、万に一つも生き残れる可能性はないということを確信したのか、虎言葉亜人は俺に話しかける。

 

「貴様の要件を飲む前に、一つ聞きたい」

「何でしょう?」

 

 虎の亜人は掠れそうになる声に必死で力を込めてハジメに尋ね、ハジメはそれを了承する。

 

「……何が目的だ?」

「僕の目的は樹海の深部、大樹の下へ行きたいだけだ」

「大樹の下へ……だと?何のために?」

「そこに、本当の大迷宮への入口があるかもしれないからだ。僕達はある目的の為に七大迷宮の攻略を目指して旅をしている。ハウリアは案内のために雇ったんだ。貴方達が思うような奴隷にする為にここに来たわけじゃない」

「そうか…だが本当の迷宮?何を言っている?七大迷宮とは、この樹海そのものだ。一度踏み込んだが最後、亜人以外には決して進むことも帰る事も叶わない天然の迷宮だ」

「それはおかしい」

「なんだと?」

 

 妙に自信のあるハジメの断言に虎の亜人は訝しそうに問い返した。

 

「大迷宮というには、ここの魔物は弱すぎる」

「弱い………だと?」

「大迷宮の魔物ってのは、どいつもこいつも化物揃いで、少なくとも【オルクス大迷宮】の奈落はそうだった。それに……」

「なんだ?」

「大迷宮というのは、〝解放者〟達が残した試練なんだ。亜人族は簡単に深部へ行けるんでしょ?それじゃあ、試練になってない。だから、樹海自体が大迷宮ってのはおかしいんだよ」

「……」

 

 ハジメの話を聞き終わり、虎の亜人は困惑を隠せなかった。

 ハジメは更に言葉を続けようとした。しかし、虎の亜人は、そこまで瞬時に判断し虎の亜人はハジメに提案する。

 

「……お前が、国や同胞に危害を加えないというなら、大樹の下へ行くくらいは構わないと、俺は判断する。部下の命を無意味に散らすわけには行かないからな」

 

 その言葉に、周囲の亜人達が動揺する気配が広がった。樹海の中で、侵入して来た人間族を見逃すということが異例だからだろう。

 

「だが、一警備隊長の私ごときが独断で下していい判断ではない。本国に指示を仰ぐ。お前の話も、長老方なら知っている方もおられるかもしれない。お前に、本当に含むところがないというのなら、伝令を見逃し、私達とこの場で待機しろ」

「……そうか」

 

 ハジメは虎人族の提案に少し考えながらも素直に提案を応じることにした。

 

「……わかった。貴方の提案に応じるけどさっきの言葉、曲解せずにちゃんと伝えてくださいね?」

「無論だ。ザム!聞こえていたな!長老方に余さず伝えろ‼︎」

「了解!」

 

 虎の亜人の言葉と共に、気配が一つ遠ざかっていった。

 ハジメは、それを確認するとスっと構えていたドンナーを太もものホルスターに納めて、〝威圧〟を解いた。

 

「威圧は解いたけど貴方達が攻撃するより、僕の抜き撃ちの方が早い……試す?」

「……いや。だが、下手な動きはするなよ。我らも動かざるを得ない」

 

 

 

 数十分後ハジメ達が待ってると奥から、気配を感じハジメは声を呆れ顔をしながらも発する。

 

「来た………か……」

 

 霧の奥からは、数人の新たな亜人達が現れた。彼等の中央にいる初老の男──森人族が特に目を引く。流れる美しい金髪に深い知性を備える碧眼、その身は細く、吹けば飛んで行きそうな軽さを感じさせる。

 

「ふむ、お前さんが問題の人間族かね?名は何という?」

 

「ハジメです、南雲ハジメ。貴方は?」

 

 ハジメの名乗りに森人族の男性も名乗り返した。

 

「私は、アルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。さて、お前さんの要求は聞いているのだが……その前に聞かせてもらいたい。〝解放者〟とは何処で知った?」

「オルクス大迷宮の奈落の底、解放者の一人、オスカー・オルクスの隠れ家です」

「ふむ、奈落の底か……聞いたことがないがな……証明できるか?」

「オスカー・オルクスの遺品とその奈落の魔物の魔石なら」

 

 ハジメはアルフレリックは大迷宮をちゃんと知る者だと判断し、〝宝物庫〟から地上の魔物では有り得ないほどの質を誇る魔石をいくつか取り出し、アルフレリックに渡す。

 

「こ、これは……こんな純度の魔石、見たことがないぞ……」

 

 アルフレリックも内心驚いていてたが、隣の虎の亜人が驚愕の面持ちで思わず声を上げた。

 

「後は、これ。オスカー・オルクスが付けていた指輪です」

 

 そう言って、ハジメはオスカー・オルクスの指輪を見せた。アルフレリックは、その指輪に刻まれた紋章を見て目を見開いた。そして、気持ちを落ち付かせるようにゆっくり息を吐く。

 

「なるほど……確かに、お前さんはオスカー・オルクスの隠れ家にたどり着いたようだ。他にも色々気になるところはあるが……よかろう。取り敢えずフェアベルゲンに来るがいい。私の名で滞在を許そう。ああ、もちろんハウリアも一緒にな」

 

アルフレリックの言葉に、周囲の亜人族達だけでなく、カム達ハウリアも驚愕の表情を浮かべた。虎の亜人を筆頭に、猛烈に抗議の声があがる。それも当然だろう。かつて、フェアベルゲンに人間族が招かれたことなど無かったのだから。

 

「彼等は、客人として扱わねばならん。その資格を持っているのでな。それが、長老の座に就いた者にのみ伝えられる掟の一つなのだ」

「待ってください、僕達は大樹に用があるのであって、フェアベルゲンに用事はないのですが」

「いや、お前さん。それは無理だ」

「どうしてですか?」

 

 ハジメの疑問にむしろ、アルフレリックの方が困惑したように言葉に返した。

 

「大樹の周囲は特に霧が濃くてな、亜人族でも方角を見失う。一定周期で、霧が弱まるから、大樹の下へ行くにはその時でなければならん。次に行けるようになるのは十日後だ。……亜人族なら誰でも知っているはずだが……」

 

「えっ⁉︎」

 

 アルフレリックは、「今すぐ行ってどうする気だ?」とハジメを見たあと、案内役のカムを見るハジメも乗じながらアルフレリックと同じようにカムを見る。

 

 

「あっ」

 

 カムは、まさに、今思い出したという表情をしていた。ハジメは流石に苛立ちを感じたが、怒っても意味ないと感じ、呆れながらジト目でカムを見る。

 

「……カムさん?」

「あっ、いや、その何といいますか……ほら、色々ありましたから、つい忘れていたといいますか……私も小さい時に行ったことがあるだけで、周期のことは意識してなかったといいますか……」

 

 しどろもどろになって必死に言い訳するカムだったが、ハジメとユエのジト目に耐えられなくなったのか逆ギレしだした。

 

「ええい、シア!それにお前達も‼︎なぜ、途中で教えてくれなかったのだ⁉︎お前達も周期のことは知っているだろ⁉︎」

「なっ、父様、逆ギレですかっ⁉︎私は、父様が自信たっぷりに請け負うから、てっきりちょうど周期だったのかと思って……つまり、父様が悪いですぅ‼︎」

「そうですよ、僕たちも、『あれ?おかしいな?』とは思ったけど、族長があまりに自信たっぷりだったから、僕たちの勘違いかなって……」

「族長、何かやたら張り切ってたから……」

 

 逆ギレするカムに、シアが更に逆ギレし、他の兎人族達も目を逸らしながら、さり気なく責任を擦り付ける。

 ハジメは呆れて片手で頭に当て天を上げたがカム達はまだ言い争っている。

 

「お、お前達!それでも家族か⁉︎これは………あれだ、そう!連帯責任だ‼︎連帯責任‼︎ハジメ殿、罰するなら私だけでなく一族皆にお願いします!」

「あっ、汚い!お父様汚いですよぉ⁉︎一人でお仕置きされるのが怖いからって、道連れなんてぇ‼︎」

「族長‼︎私達まで巻き込まないで下さい⁉︎」

「バカモン!道中の、ハジメ殿の容赦のなさを見ていただろう⁉︎一人でバツを受けるなんて絶対に嫌だ‼︎」

「あんた、それでも族長ですか⁉︎」

「族長ですが何か⁉︎」

 

 亜人族の中でも情の深さは随一の種族といわれる兎人族。彼等は、ぎゃあぎゃあと騒ぎながら互いに責任を擦り付け合っていた。情の深さは何処に行ったのか……流石、シアの家族である。総じて、残念なウサギばかりだった。

 呆れ顔を浮かべたハジメは兎人族にも聞こえるように溜息を吐く。

 ハジメの溜息にユエも同意したのか続くように軽めの溜息を吐いた。二人の溜息が聞こえたのか、ハウリア達も言い争いをやめ、カムは恐る恐るハジメに質問した。

 

「ハ、ハジメ殿、お、怒ってますか?」

「大丈夫です怒ってはいません。ただ呆れていただけです」

「すっすみません」

「……それではアルフレリックさんの言う通りにこのままフェアベルゲンに向かいましょう」

「はい……」

 

 ハジメ達はそのまま、アルフレリックの案内の下、亜人族達の住処のフェアベルゲンへ向かった……。

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