FGOで世界最強   作:紫道麻璃也

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異なる世界 トータス

 事前に少し眠っていたため、四時間目までの授業を終えることができなんとなしに教室を見渡すと、購買を主戦場としている生徒は既に飛び出していったのか人数が減っている。それでもハジメが所属するクラスは、家で作ってきた・作ってもらった弁当組が多く三分のニくらいの生徒と四時間の社会科教師である愛子先生(二十五歳)が教壇で生徒の質問に答えていた。

 

「ハジメくんお昼ご飯食べようよ!はい、どうぞ‼︎」

「ありがとう、今日も美味しそうだね」

「えへへ〜///」

 

 昼食のお誘いを香織から受けたハジメは、受け取った弁当の包みを解いて一緒に食べようとした。

「香織、こっちで一緒に食べよう。いつも迷惑をかけている南雲が香織と食べるなんて俺が許さないよ?」

「?誰と食べるかは私が決めていいことだと思うし、そもそも許可を得る必要があるの?」

 

 爽やかに笑いながらキザなセリフを吐く天之河にキョトンとする香織。普通の少女ならその甘いセリフに酔いしれ首を縦に振るのだが、香織にはそういうのは一切効かない。

 このやりとりは学校の昼食がある日毎日行われていることで、クラスの日常の一コマ化しているのだが、聴き耳をしていた何名かが『ブフッ‼︎』と吹き出していたりしていた。ハジメもその一人である。

 そんなハジメの姿を見た天之河は文句を言うため足を伸ばしたその時、天之河の足下の床から突如幾何学的な紋様が現れた。

 

「えっ?」

 

 突如のことに呆けてしまっている天之河の意思に関係なく、魔法陣は徐々に輝きを増し一気に教室を満たすほどの大きさに拡大した。紋様や輝きに惹かれ、自分たちの足下で異常事態が起きていることに漸く硬直が解けて悲鳴を上げる生徒たち。そんな悲鳴を上げている生徒たちを落ち着かせ避難させようとする愛子が、指示を出そうと口を開くのと同時に魔法陣は輝きを増し爆発するかのように光った──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 光が収まりハジメが目を開け見た先は巨大な壁画とあちこちに蹲っているクラスメイトだった。縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背にして長い金髪を靡かせ薄らと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれていた。背景には自然界が描かれそれらを包み込むかのように、その人物は両手を広げているという一見すればとても良い壁画なのだが、

 

「………薄気味悪い」

 

 ハジメがいるのは巨大な居間で、部屋の素材は大理石で造られていると思われる。美しい光沢を放つ滑らかな白い石造りの建築物でドーム状の天井を支えているそれぞれの柱には美しい彫刻か彫られており、教会と言われても信じるほどの荘厳な雰囲気が満ちている。

 ハジメ達はその最奥にある台座のような場所の上にいて、周囲より位置が高い。周りにはハジメと同じように呆然と周囲を見渡すクラスメイト達がいる。あの時、教室にいた生徒は全員この状況に巻き込まれてしまったようだ。更にハジメ達がいる場所は周りより高い位置にある。そして最も気になるのが少なくとも三十人近い人達が、ハジメ達の乗っている台座の前にいてまるで祈りを捧げるように跪き、両手を胸の前で組んだ格好でいる事だ。彼等は一様に白地に金の刺繍がなされた法衣のようなものを纏い、傍らに錫杖のような物を置いている。その錫杖は先端が扇状に広がっており、円環の代わりに円盤が数枚吊り下げられていた。

 その内の一人、法衣集団の中でも特に豪奢で煌びやかな衣装の七十代くらいの老人が進み出てきた。

 その老人は手に持った錫杖をシャラシャラと鳴らしながら、外見によく合う深みのある落ち着いた声音でハジメ達に話しかけた。

 

「ようこそ、勇者様、ご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした微笑を見せた。

 

 

 

 

 

 

 あの後、イシュタルの案内により場所を移し、十メートルはありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に通された。この部屋も先程の居間のように煌びやかな作りだ。おそらくこの建築物の部屋などは全てこのような感じなのだと思われる。素人でも部屋に飾られた絵画などが職人レベルのものを集めた事が分かる。おそらくここは晩餐会などを行う場なのだろう。

 上座に近い方に愛子先生と天之河が座り、後はその取り巻き順に適当に座っている。ハジメは下座の方で座っており、周囲は香織や雫、龍太郎がいた。ここに案内されるまで、誰もそんなに騒がなかった。意識が追いついていなかったり、異世界に興奮しているのだろう。

 全員が着席すると、絶妙なタイミングでカートを押しながらメイド達が入ってきた。正真正銘の夢見たような美女・美少女メイドだ。こんな状況でも思春期の男は男で大半の男子がメイドさん達を凝視している。その様子を見ている女子達の目は凍てつかせる程の冷たい目をしていた。

 だがハジメは傍に来て飲み物を給仕してくれたメイドさんを凝視することはなかった。父の取引先のゲーム会社で一番人気な作品でメイド姿のキャラが出てくるので慣れているという事と、母の資料としてメイド服そのものがあり、それを偶然見つけた香織がよく着ていたためである。

 そして全員に飲み物が行き渡るのを確認しイシュタルが話を始める。

 

「さて、皆様方はさぞ混乱しているでしょう。全て話しますので最後までお聞きくだされ」

 

 そうして始まったイシュタルの話は実にテンプレだった。要約をすれば────

・この世界は〈トータス〉と呼ばれている

・この世界には全部で〈人間族〉〈魔人族〉〈亜人族〉の三種類の人類が存在し、人間族と魔人族は絶賛戦争中

・魔人族が〈魔物〉という動物が魔力を浴びて変質してしまった生き物を使役できる様になってしまい、人間族は滅びの危機

 

「あなた方を召喚したのは“エヒト様”です。我ら人間族が崇める守護神にして、この世界を創造した神、そして我々聖教教会の唯一神です。おそらくエヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅びると。それを回避するためにあなた方を召喚した。あなた方の世界は上位に位置するため、例外なく強力な力を持っています。召喚が行われる前に、エヒト様が神託がありました。あなた方という“救済”を送ると。是非あなた方の力で〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族から人間族を救って頂きたい」

 

 イシュタルは恍惚とした表情を浮かべている。神託を聞いた時の事を思い出しているのだろう。イシュタルによれば、人間族の九割以上が聖教教会の信徒らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくのだとか。

 

(それはちょっとどうなんだ?)

 

 そんな事をハジメが思っていると、突然立ち上がり猛然と抗議する人が現れた。愛子先生だ。

 

「ふざけないでください!結局は、この子たちに戦争をさせるということですよね!そんな事は許しません!私は絶っっっ対に許しませんよ!私達を早く帰して下さい!きっと、この子たちの親御さんたちも心配しています!あなたたちのこれは誘拐ですよ!」

 

 愛子先生は必死になって帰らせようとしている。しかし悲しいかな。百五十センチ程の低身長に童顔、ボブカットの髪という容姿のせいで威圧にもならない。それどころか、事情を知らない人からしたら子どもがスーツ着てぷりぷり怒っている様にしか見えない。その先生を見て生徒も「愛ちゃん先生、頑張ってるなあ」とほんわかした気持ちになっている。

 だが、そこにイシュタルがほんわかしてる生徒に爆弾を落とした衝撃発言を言った。

 

「お気持ちはお察ししますが、現状ではあなた方の帰還は不可能です」

 

 場に静寂が満ちる。誰もが今の言葉を理解し切れておらず、皆がイシュタルを見やる。

 

「ふ、不可能って…喚べるのなら帰らせる事もできるんじゃないんですか⁉︎」

「あなた方を召喚したのはエヒト様です。私たち人間に異世界に干渉する魔法は使えませんので、あなた方が帰還できるかはエヒト様の御意思次第ということになります」

 

 愛子先生は脱力しストンと椅子に腰を落とす。周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた。

 

「うそだろ?帰れないってなんだよ!」

「いやよ!なんでもいいから帰してよ⁉︎」

「戦争なんて冗談じゃねぇ!ふざけんなよ⁉︎」

「なんで、なんで、なんで……」

 

 その様子をイシュタルは侮蔑が込められた目で眺めていた。まるで「エヒト様に選ばれてなぜ喜べないのか」とでも言いたそうな目だ。

 

 そんな中1人の男が立ち上がる。天之河光輝だ。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもできないんだ。……俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのを知って、放っておく事は俺にはできない。それに、人間を救うために召喚したなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

「ええ、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいかと」

「うん、俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる‼︎」

 

 こんなキザなセリフ言えるのは天之河ぐらいだろう。大半が今の演説に賛同しようとしている。愛子先生が「ダメですよ〜!」と涙目ながらに止めても聞く耳を持たない。

 

「みんな!俺は絶対に死なない!みんなも俺が死なせない!だから大丈夫だ!俺達ならやり遂げられる‼︎」

 

 その後、天之河による長い演説に大半の生徒が賛同してしまい、結果的にハジメ達はこの戦争に参加することとなってしまった。

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