なんやかんやあってハジメ達一行は深い霧の中、大樹に向かって歩みを進めていた。先頭をカムに任せ、護衛にとハウリア達は周囲に散らばって索敵をしている
「流石は亜人族、こんなに霧が深くても位置がわかるんだな」
「いえ、ボスの訓練もあって更に能力が上がりましたよ」
「そうですか……」
そんな話をしてるとシアが恨みがましい視線を俺に向けている。
「そんな目で見ないでくださいよ………」
「ほんとに何があったか後で聞かせて貰いますよ」
「………はい」
和気あいあいと雑談しながら進むこと十五分。一行は遂に大樹の下へたどり着いた。
だが大樹を見たハジメは思わず声が出てしまった。
「……なんだこりゃ」
という驚き半分、疑問半分といった感じのものだった。ユエも、予想が外れたのか微妙な表情だ。二人は、大樹についてフェアベルゲンで見た木々のスケールが大きいバージョンを想像していたのである。
「……枯れている………だと?」
大きさに関しては想像通り途轍もない……明らかに周囲の木々とは異なる異様だ。だが、周りの木々が青々とした葉を盛大に広げているのにもかかわらず、大樹だけが枯れ木になっている。
ハジメは腕を組んで、この大樹の有様を考察していくが、分からず疑問顔になる。隣にいるユエも同様だった。
「大樹は、フェアベルゲン建国前から枯れているそうです。しかし、朽ちることはない。枯れたまま変化なく、ずっとあるそうです。周囲の霧の性質と大樹の枯れながらも朽ちないという点からいつしか神聖視されるようになりました。まぁ、それだけなので、言ってみれば観光名所みたいなものですが……」
ハジメとユエの疑問顔にカムが解説を入れる。
「へぇ………」
それを聞きながら俺は大樹の根元まで歩み寄っていく。
「ん?……これは……」
そこには、アルフレリックが言っていた通り石板が建てられていた。
「……っ、これは……オルクスの扉の……」
「……ん、同じ文様」
石版には七角形とその頂点の位置に七つの文様が刻まれていた。オスカー・オルクスの部屋の扉に刻まれていたものと全く同じものだ。ハジメは確認のため、オスカー・オルクスの指輪を取り出す。指輪の文様と石版に刻まれた文様の一つはやはり同じものだった。
「ビンゴ、ここが大迷宮の入口みたいだな……だけど……ここからどうすればいいんだ?」
ハジメは石板を隅々調べていると裏側に表の七つの文様に対応する様に小さな窪みが開いていた。
「ユエ、あったよ」
「……んっ」
「これは……」
ハジメが、手に持っているオルクスの指輪を表のオルクスの文様に対応している窪みに嵌めてみる。
すると……石板が淡く輝きだした。
何事かと、周囲を見張っていたハウリア族も集まってきた。しばらく、輝く石板を見ていると、次第に光が収まり、代わりに何やら文字が浮き出始める。そこにはこう書かれていた。
〝四つの証〟
〝再生の力〟
〝紡がれた絆の道標〟
〝全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう〟
「……んっ、どういう意味?」
「四つの証はたぶん、他の迷宮の証の可能性が高いな」
「……再生の力と紡がれた絆の道標は?」
ユエの言葉に頭を捻るハジメにシアが答える。
「う~ん、紡がれた絆の道標は、あれじゃないですか?亜人の案内人を得られるかどうか。亜人は基本的に樹海から出ませんし、ハジメさん達みたいに、亜人に樹海を案内して貰える事なんて例外中の例外ですし」
「……なるほど。それっぽいな」
「……あとは再生……私?」
「いや…それは違うと思う」
「……んっ?何で?」
疑問顔のユエにハジメは説明していく。
「それだとここの迷宮に入るにはユエみたいな人がいないとここは攻略出来ない事になる」
「………そっか」
「僕の考えだと神代魔法には〝再生〟に関する魔法があるはずだから、これは…今すぐ攻略は無理ってことか…仕方ないけど他の迷宮から当たるしかないな……」
「……ん」
ここまで来て後回しにしなければならないことに歯噛みする。ユエも残念そうだ。しかし、大迷宮への入り方が見当もつかない以上、ぐだぐだと悩んでいても仕方ない。気持ちを切り替えて先に三つの証を手に入れることにする。
ハジメはハウリア族に集合をかけた。
「いま聞いた通り、僕達は、先に他の大迷宮の攻略を目指すことにする。今の君達なら、もうフェアベルゲンの庇護がなくても、この樹海で十分に生きていけるだろう。そういうわけで、ここでお別れだ」
ハジメの言葉を聞いていたカムが代表でコチラに歩み寄る。
「はっ畏まりました。後、ボス」
「何ですか?」
カムはハジメの前に声を高らかに宣言する。
「我等はボスがお戻りになるまで樹海の守備を行っていこうと思います」
「そうか………頼んだ」
「はっお任せを!」
「それと離れる前にもう一度稽古をつけようと思う………ハウリア族にとって適性が高い戦い方でもあるから受けていた方がいいが………どうします?」
「「「「「「「「よろしくお願いします‼︎」」」」」」」」
そんな提案をしてカムが片膝を突いて跪く。すると、ユエの隣にいたシアはもう堪忍袋の尾が切れたか怒ったように表情を変える。
「もうっ!ホントッ、この十日間の間に何があったんですかっ?!」
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──時は少し遡り──
ハジメはハウリア全員を性根を一から叩き直す為、レオニダス一世を憑依させ、錬成で作りあげたダンベルなどの筋トレ器具でハウリア達を鍛え始めた。
「てめぇ等の覚悟はそんなもんかぁ?!」
ハジメは追撃と言った感じで倒れ伏すハウリア達に怒号を放った。
「「「「「「ッ!…違います‼︎」」」」」」
「だったら次は『ヒップレイズ』『サイドベント』『ダンベルカール』『ハンマーカール』『プッシュアップ』『ベンチプレス』を順に行っていく!そして少しの小休止の後『レッグカール』『ハックリフト』『バックプレス』『サイドレイズ』『ベントオーバー』『ラットプルダウン』だ‼︎」
そんな事を僕達は約五日間続けた。
すると、ボロボロながら、棒があって、やっと立ってられるくらいのカムが話しかけた。
「………ハジメ殿………我々は強くなれているでしょうか?」
「あぁ、確実に強くなれている………だがまだだ………まだシアを守るには足りない」
「………………俺達は家族でシアを守るんだ!」
ハジメの言葉にハウリア達は立ち上がりカムが代表で宣言する。
「ハジメ殿……いやボス!私達を強くしてください!」
「「「「「「「お願いしますボス!」」」」」」」
ハジメは少しカム達の勢いに息を呑んだが、すぐに笑みが零れてしまった。
そして、ハウリア達はトレーニングを続け、その中何度も倒れて、戦闘技術を身につけるためハジメに立ち向かい一人、一人、返り討ちにしていくのを約五日間続けていった。
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「………という訳だ」
ハジメが苦笑いをしながら話し終えるとシアはウサ耳を垂れたまま、無言だった。
「……」
「いや〜恥ずかしいですなぁ。今思い出すと……」
カムは何故か恥ずかしながら頭をかいてるとシアがカムに歩み寄る。
「父様……」
「ん、どうしたんだシア?」
「馬鹿ァッ!」
「ぐほぉぉっ?!」
シアは唐突にカムを流石に〝身体強化〟を使ってはないが頬を全力で殴った。
「父様も皆も私なんかの為に、ぐすっ…無茶して…フェグ」
「シア…」
殴られたカムは自分達を心配し泣き始めるシアを抱き締めて伝える。
「安心してくれシア。私達は辛くは無いし寧ろ家族を、お前を守れる強さを手に入れた」
「父様……」
「だから、安心してお前もボスと共に行ってこい」
「っ…はっはい!」
ハジメはそんな二人の様子を見ていて頬が緩み微笑んでいた。
樹海の境界でカム達の見送りを受けたハジメ、ユエ、シアは再び魔力駆動二輪に乗り込んで平原を疾走していた。
すると、肩越しにシアが質問する。
「ハジメさん。そう言えば目的地はライセン大峡谷でしたっけ?」
「そうだよ」
「でも…ライセン大峡谷に迷宮ってありましたっけ?」
ハジメの告げた目的地に疑問の表情を浮かべるシア。
そしてシアの疑問に察したハジメは意図を話した。
「一応、ライセンも七大迷宮があると言われているからね。シュネー雪原は魔人国の領土だから面倒な事になりそうだし、取り敢えず大火山を目指すのがベターなんだけど、どうせ西大陸に行くなら東西に伸びるライセンを通りながら行けば、途中で迷宮が見つかるかもしれない………だろ?」
「つ、ついででライセン大峡谷を渡るのですか……」
思わず、頬が引き攣るシアにハジメは苦笑いする。
「まぁ、ライセン大峡谷は地獄にして処刑場というのが一般的な認識だし、その反応は理解は出来る」
「で、では、ライセン大峡谷に行くとして、今日は野営ですか?それともこのまま、近場の村か町に行きますか?」
「……んっどうするハジメ?」
「できれば食料とか調味料関係を揃えたいし、今後のためにも素材を換金しておきたいから町がいいな。前に見た地図通りなら、この方角に町があったと思うんだよ」
「そうですか〜」
「……ん、わかった」
ハジメはシア達に町に行くと告げた後、ハッとあることを思い出した。
「シア」
「はい?どうしたんですかハジメさん?」
「………町に着く前に渡したいものがあるから近くまで着いたら渡す」
「分かりましたですぅ〜」
そして、ハジメ達は近くの町に向かって魔力駆動二輪を走らせていった……。