FGOで世界最強   作:紫道麻璃也

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ミレディ・ライセン

 とある部屋の中、壁から放たれる青白い仄かな光が、壁にもたれ掛かりながら寄り添う三人の人影を映す。ハジメ、ユエ、シアの三人だ。

 ハジメを中心に右側にユエ、左側にシアが座り込んで肩にもたれ掛かっている。部屋には静寂が満ちているが、耳を澄ませばほんの僅かにスゥースゥーと呼吸音が聞こえる。ユエとシアの寝息だ。二人は、ハジメの両腕を抱いたまま、その肩を枕替わりに睡眠をとっているのだった。

 もうそろそろ進展があるかもしれない。そんなことを思いながら、ハジメは両隣で眠る少女達に視線を向けた。

 

「…………気持ちよさそうに寝てる……ここは大迷宮なんだけど?」

 

 ハジメの苦笑い混じりの囁きが響く。見張り役なのでずっと起きていたのだ。ハジメは、何となしに抱きしめられている腕をそっと解いて、二人の髪を撫でる。僅かに頬が綻んだように見えた。ハジメの目元も僅かに緩んだ。

 すると、シアがムニャムニャと寝言を言い始めた。

 

「むにゃ……あぅ……ハジメしゃん、大胆ですぅ~、お外でなんてぇ~、……皆見てますよぉ~」

 

「……」

 

 ハジメは優しい手付きのまま、そっと移動させた手で、シアの鼻を摘み口を塞いだ。すると、穏やかだったシアの表情が徐々に苦しげなものに変わっていくが気にせずに塞ぎ続けていると……

 

「ん~、ん?んぅ~⁉︎んんーー‼︎んーー‼︎ぷはっ!はぁ、はぁ、な、何するんですか!寝込みを襲うにしても意味が違いますでしょう⁉︎」

 

 ぜはぜはと荒い呼吸をしながら目を覚まし猛然と抗議するシアに、ハジメは笑顔を向ける。

 

「………どんな夢を見てたの?」

「うっ…すみませんですぅ…」

「わかったなら良い」

「はいですぅ〜」

 

 シアも起きた(強制的に)ので、ハジメはユエを優しく揺さぶり起こす。ユエは「……んぅ……あぅ?」と可愛らしい声を出しながらゆっくりと目を開いた。そして、ボーとした瞳で上目遣いにハジメを確認すると目元をほころばせ、一度ハジメの肩口にすりすりすると、そっと離れて身だしなみを整え始めた。

 

「うぅ、ユエさんが可愛い……これぞ女の子の寝起きですぅ~、それに比べて私は……」

 

 今度は落ち込み始めたシアに、ユエは不思議そうな目を向けるが、〝シアだから〟という理由で放置し、ハジメは二人の頭を撫でてから声をかけた。

 

「ほら、シアも落ち込んでないで探索開始だ」

「……うぅ、はいですぅ」

 

 今度は、スタート地点に戻されないことを祈って、ハジメ達三人は迷宮攻略を再開した。

 

 

 

 

 

 再び嫌らしい数々のトラップとウザイ挑発文を菩薩の心境でクリアしていくのだが──

 

「このゴーレム、重力操作かなんか知らないけど動きがどんどん巧みになってきてる⁉︎」

「……たぶん、原因はここ?」

「あはは、常識って何でしょうね。全部浮いてますよ?」

 

 シアの言う通り、ハジメ達の周囲の全ては浮遊していた。

 入ったこの場所は超巨大な球状の空間だった。直径二キロメートル以上ありそうである。そんな空間には、様々な形、大きさの鉱石で出来たブロックが浮遊してスィーと不規則に移動をしているのだ。完全に重力を無視した空間である。だが、不思議なことにハジメ達はしっかりと重力を感じている。おそらく、この部屋の特定の物質だけが重力制限を受けないのだろう。

 この空間をゴーレム騎士達が縦横無尽に飛び回ったり、やはり落下方向を調節しているのか、方向転換が急激…この空間に近づくにつれて細やかな動きが可能になっていった事を考えると──

 

「ここに、ゴーレムを操っているヤツがいる…?」

 

 ハジメの推測にユエとシアも賛同するように表情を引き締めた。ゴーレム騎士達は何故か、周囲を旋回するだけで襲っては来ない。取り敢えず、何処かに横道でもないかと周囲を見渡す。ここが終着点なのか、まだ続きがあるのか分からない。だが、間違いなく深奥に近い場所ではあるはずだ。ゴーレム騎士達の能力上昇と、この特異な空間がその推測に説得力を持たせる。

 ハジメは〝遠見〟で、この巨大な球状空間を調べようと目を凝らした──次の瞬間、シアの焦燥に満ちた声が響く。

 

「逃げてぇ!」

「「⁉︎」」

 

 シアの警告に瞬時に反応し弾かれた様にハジメ達はその場を飛び退いた。運良く、ちょうど数メートル先に他のブロックが通りかかったので、それを目指して現在立っているブロックを離脱する直後、隕石が落下してきたのかと錯覚するような衝撃が今の今までハジメ達がいたブロックを直撃し木っ端微塵に爆砕した。隕石というのはあながち間違った表現ではないだろう。赤熱化する巨大な何かが落下してきて、ブロックを破壊すると勢いそのままに通り過ぎていったのだ。

 

「助かったよシア、ありがとう」

「……ん、お手柄」

「えへへ、〝未来視〟が発動して良かったです。………代わりに魔力をごっそり持って行かれましたけど……」

 

 ハジメは〝未来視〟の凄さを実感しながら、通過していった隕石モドキの方を見やった。ブロックの淵から下を覗くと気になる物が目に入った。

 下の方を見ると何かが動いたかと思うと猛烈な勢いで上昇してきた。それは瞬く間にハジメ達の頭上に出ると、その場に留まりギンッと光る眼光をもってハジメ達を睥睨していた。

 

「おいおい、マジ?」

「……すごく……大きい」

「お、親玉って感じですね」

 

 ハジメ達の目の前に現れたのは、宙に浮く超巨大なゴーレム騎士だった。全身甲冑はそのままだが、全長が二十メートル弱はある。右手はヒートナックルとでも言うのか赤熱化しており、先ほどブロックを爆砕したのはこれが原因かもしれない。左手には鎖がジャラジャラと巻きついていて、フレイル型のモーニングスターを装備している。

 ハジメ達が、巨体ゴーレムに身構えていると、周囲のゴーレム騎士達がヒュンヒュンと音を立てながら飛来し、周囲を囲むように並びだした。整列したゴーレム騎士達は胸の前で大剣を立てて構える。まるで王を前にして敬礼しているようだ。

  すっかり包囲され緊張感が高まる。辺りに静寂が満ち、まさに一触即発の状況。動いた瞬間、張り詰めた空気を破ったのは──

 

「やほ~、はじめまして~、みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ~」

「「「……は?」」」

 

──巨体ゴーレムのふざけた挨拶だった。

 硬直する三人に、巨体ゴーレムは不機嫌そうな声を出した。声質は女性のものだ。

 

「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ?全く、これだから最近の若者は……もっと常識的になりたまえよ」

 

 ハジメは取り敢えず、その辺りのことを探ってみる事にした。

 

「それは、申し訳ない。だが、ミレディ・ライセンは人間で故人のはず…まして、自我を持つゴーレム何て聞いたことなくて……失礼だがアナタが何者か説明が欲しい」

「うん〜良いよ〜」

 

 そしてゴーレムは話し出した。

 

「そもそもミレディさんは初めからゴーレムさんですよぉ~?何を持って人間だなんて……」

「オスカー・オルクスの手記にミレディ・ライセンのことも少し書いてありました………きちんと人間の女として出てきてましたよ?」

「ほう…今さっきオスカー・オルクスって言った?もしかして、オーちゃんの迷宮の攻略者?」

「はい、オスカー・オルクスの迷宮なら攻略しました………そして僕達の目的は神代魔法です」

「……神代魔法ねぇ、それってやっぱり、神殺しのためかな?かな?あのクソ野郎を滅殺してくれるのかな?かな?オーちゃんの迷宮攻略者なら事情は理解してるよね?」

「えぇ、僕達は神殺しと帰還を目的としています」

「……」

 

 ハジメの回答でミレディは黙ったままハジメ達を見て、そして、今さっきとは違う口調で質問してきた。

 

「一つ良いかな?」

「何ですか?」

「君達は神殺しの為に何を望む?」

「……第一は故郷への帰還だけど、貴方達、“解放者”が掲げていた人間、亜人、魔人が自由の意思で生きれるような世界にしたいと思っている」

「………ふふ」

 

 ハジメが回答した後、ミレディは少し沈黙し、笑みを零してるのかは分からないが嬉しそうなのが感じ取れた。

 

「そっか〜、それは嬉しいな〜。………………じゃあ、確かめさせて君達がそれぐらいの価値があるのかミレディさんに証明させてみて?」

 

 ミレディの発言で、ハジメは笑みを浮かべながらミレディに告げた。

 

「良いよミレディ・ライセン………僕達の力を証明してやるよっ!」

 

 そして、ハジメ達と解放者ミレディ・ライセンの戦いが幕を上げたのだった……

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