Caster
DANGER
ミレディ・ゴーレムは左腕のフレイル型モーニングスターをハジメ達に向かって射出した。投げつけたのではない。予備動作なくいきなりモーニングスターが猛烈な勢いで飛び出したのだ。
ハジメ達は、近くの浮遊ブロックに跳躍してモーニングスターを躱す。モーニングスターは、ハジメ達がいたブロックを木っ端微塵に破壊しそのまま宙を泳ぐように旋回しつつ、ミレディ・ゴーレムの手元に戻っていく。
「やるぞ!ユエ、シア。………ミレディを破壊する!」
「んっ!」
「了解ですぅ!」
ハジメの掛け声と共に七大迷宮が一つ、ライセン大迷宮最後の戦いが始った。
大剣を掲げたまま待機状態だったゴーレム騎士達が、ハジメの掛け声を合図にしたかのように一斉に動き出した。通路でそうしたのと同じように、頭をハジメ達に向けて一気に突っ込んでくる。
ユエが、くるりと身を翻しながらぶら下げた水筒の一つを前に突き出し横薙ぎにする。極限まで圧縮された水がウォーターカッターとなってレーザーの如く飛び出しゴーレム騎士達を横断していく。
「あはは、やるねぇ~、でも総数五十体の無限に再生する騎士達と私、果たして同時に捌けるかなぁ~」
嫌味ったらしい口調で、ミレディ・ゴーレムが再度モーニングスターを射出した。シアが大きく跳躍し、上方を移動していた三角錐のブロックに飛び乗る。ハジメは、その場を動かずにドンナーをモーニングスターに向けて連射した。
銃声は一発。されど放たれた弾丸は六発。早打ちにより解き放たれた閃光は狙い違わず豪速で迫るモーニングスターに直撃する。
それと同時に、上方のブロックに跳躍していたシアがミレディの頭上を取り、飛び降りながらドリュッケンを打ち下ろした。
「見え透いてるよぉ~」
そんな言葉と共に、ミレディ・ゴーレムは急激な勢いで横へ移動する………いや、横へ〝落ちた〟のだろう。
「くぅ⁉︎このっ!」
目測を狂わされたシアは、歯噛みしながら手元の引き金を引きドリュッケンの打撃面を爆発させる。薬莢が排出されるのを横目に、その反動で軌道を修正。三回転しながら、遠心力もたっぷり乗せた一撃をミレディ・ゴーレムに叩き込んだ。
咄嗟に左腕でガードするミレディ・ゴーレム。凄まじい衝突音と共に左腕が大きくひしゃげる。しかし、ミレディ・ゴーレムはそれがどうしたと言わんばかりに、そのまま左腕を横薙ぎにした。
「きゃぁああ‼︎」
「シア!」
悲鳴を上げながらぶっ飛ぶシア。何とか空中でドリュッケンの引き金を引き爆発力で体勢を整えると、更に反動を利用して近くのブロックに不時着する。
「ねぇユエ、シアに樹海で一体どんな特訓したの?」
「……ひたすら追い込んだだけ」
「……なるほど、しぶとく生き残る術が一番磨いた………って感じか」
遠目にシアがピョンピョンと浮遊ブロックを飛び移りながら戻ってくるのを確認しつつ内心シアの成長に感心する。そんな、ハジメとユエのブロックに、遂にユエ一人では捌ききれない程のゴーレム騎士達が殺到する。
だがハジメは冷静に〝宝物庫〟から巨大な石の剣を取り出し、一閃で瞬く間に四十体以上のゴーレム騎士達が無残な姿を晒しながら空間の底面へと墜落した。時間が経てば、また再構築を終えて戦線に復帰するだろうが、しばらく邪魔が入らなければそれでいい。そう、親玉であるミレディ・ゴーレムを破壊するまで。
「ちょっ、なにそれぇ⁉︎そんなの見たことも聞いたこともないんですけどぉ⁉︎」
ミレディ・ゴーレムの驚愕の叫びを聞き流し、ハジメは、石の剣を〝宝物庫〟にしまうと、再びドンナーを抜きながら、少し離れたところにいるシアにも聞こえるように声を張り上げた。
「ミレディの核は、心臓と同じ位置だ!あれを破壊するぞ!」
「んなっ⁉︎何で、わかったのぉ⁉︎」
再度、驚愕の声をあげるミレディ。ゴーレムを倒すセオリーである核の位置が判明し、ユエとシアの眼光も鋭くなる。周囲を飛び交うゴーレム騎士も今は十体程度。三人で波状攻撃をかけて、ミレディの心臓に一撃を入れるのだ。ハジメが、一気に跳躍し周囲の浮遊ブロックを足場にしながらミレディ・ゴーレムに接近を試みる。
だがミレディ・ゴーレムの巨体を粉砕して核に攻撃を届かせるのは難しい。ゼロ距離射撃で装甲を破壊しつつ、手榴弾でも突っ込もうとハジメはそう考えて行動しようとしたが、そう現実は甘くはない。
ミレディ・ゴーレムの目が一瞬光ったかと思うと、彼女の頭上の浮遊ブロックが猛烈な勢いで宙を移動するハジメへと迫った。
「なっ⁉︎」
「操れるのが騎士だけとは一言も言ってないよぉ~」
「ブロックもかっ!」
ミレディのニヤつく声音を無視して、ハジメは飛来した浮遊ブロックをすんでの所で躱す。そして、何とか近くの浮遊ブロックに足を掛けた。
当然、ミレディ・ゴーレムは、ハジメの足場を〝落とそう〟とするが、いつの間にか背後から迫っていたシアが、強烈な一撃をミレディ・ゴーレムの頭部に叩き込もうと跳躍する。
ミレディ・ゴーレムは、シアの接近に気がついていたのか跳躍中のシアを狙ってゴーレム騎士達を突撃させた。宙にあって無防備なシア。あわや大剣に両断されるかと思われた瞬間……
「……させない」
これまたいつの間にか移動していたユエが、〝破断〟によりシアを襲おうとしているゴーレム騎士達を細切れにしていく。
「流石、ユエさんです!」
そんなことを叫びながら、障害がいなくなった宙を進み、シアは極限まで強化した身体能力を以て大上段の一撃を繰り出した。
「パワーでゴーレムが負けるわけないよぉ~」
ミレディ・ゴーレムは自身の言葉を証明してやるとでも言う様に、振り返りながら燃え盛る右手をシアに目掛けて真っ直ぐに振るった。
シアのドリュッケンとミレディ・ゴーレムのヒートナックルが凄まじい轟音を響かせながら衝突する。発生した衝撃波が周囲を浮遊していたブロックのいくつかを放射状に吹き飛ばした。
「こぉののの!」
突破できないミレディ・ゴーレムの拳に、シアは雄叫びを上げて力を込める。しかし、ゴーレムの膂力にはやはり敵わず、振り切られた拳に吹き飛ばされた。
「きゃああ‼︎」
悲鳴を上げるシア。飛ばされた方向に浮遊ブロックはない。あわや、このまま墜落するかと思われたが、予想していたようにユエが横合いから飛び出しシアを抱きとめ、一瞬の〝来翔〟で軌道を修正しながら、眼下の浮遊ブロックに着地した。
「中々のコンビネーションだねぇ~」
「………でしょ?」
「⁉︎」
驚愕し慌てて声のした方向に視線を転じるミレディ・ゴーレム。ハジメは懐に潜り込み、甲冑の隙間に足を入れることで体を固定しながら、信管を抜いた手榴弾を心臓部に捩じ込んだ。
「い、いつの間ッ⁉︎」
手榴弾が爆発し胸部から煙を吹き上げながら弾き飛ばされるミレディ・ゴーレム。ハジメも反動で後方に飛ばされてしまうが、近くの浮遊ブロックに空中で反転して飛び乗る。そして、ミレディ・ゴーレムの様子を観察した。
ユエとシアもハジメの近くの浮遊ブロックに飛び乗ってくる。
「……いけた?」
「いや、まだだ……」
ハジメは勘であるがミレディを仕留めれた感じはなくミレディのいる方向に目を細めていると……
「いやぁ~大したもんだねぇ、ちょっとヒヤっとしたよぉ。うん、この場所に苦労して迷宮作ったミレディちゃん天才‼︎」
ハジメの勘が当たり、胸部の装甲を破壊されたままのミレディ・ゴーレムが、何事もなかったように近くの浮遊ブロックを手元に移動させながら、感心したような声音で三人に話しかけてきたのだ。
「やっぱり、アザンチウム製の装甲だな?」
「おや?知っていたんだねぇ~、ってそりゃそうか。オーくんの迷宮の攻略者だものねぇ、生成魔法の使い手が知らないわけないよねぇ~、さぁさぁ、程よく絶望したところで、第二ラウンド行ってみようかぁ‼︎」
ミレディは、砕いた浮遊ブロックから素材を奪い、表面装甲を再構成するとモーニングスターを射出しながら自らも猛然と突撃を開始した。
「ど、どうするんですか⁉︎ハジメさん!」
「大丈夫、まだ手はある。何とかして時間を稼ぐよ‼︎」
「……ん、了解」
「させないよぉ~」
ミレディ・ゴーレムの気の抜けた声と共に足場にしていた浮遊ブロックが高速で回転する。いきなり、足場を回転させられバランスを崩すハジメ達。そこへモーニングスターが絶大な威力を以て激突した。
ハジメ達は、木っ端微塵に砕かれた足場から放り出される。ハジメは、ジャラジャラと音を立てながら通り過ぎる鎖にしがみついた。ユエは砕かれた浮遊ブロックの破片を足場に〝来翔〟を使って、シアはドリュッケンの爆発の反動を利用して何とか眼下の浮遊ブロックに不時着する。
そこへ狙いすました様にミレディ・ゴーレムがフレイムナックルを突き出して突っ込んだ。
「くぅう‼︎」
「んっ‼︎」
直撃は避けたものの強烈な衝撃に、ユエとシアの口から苦悶の呻き声が漏れる。それでも、すれ違い様にユエは〝破断〟をミレディ・ゴーレムの腕を狙って発動し、シアはドリュッケンのギミックの一つである杭を打撃面から突出させて、それを鎧に突き立て取り付いた。
一方、ミレディ・ゴーレムの肩口に取り付いたシアは、そのまま左の肩から頭部目掛けてドリュッケンをフルスイングした。が、ミレディ・ゴーレムが急激に〝落ちた〟ことによりバランスを崩され宙に放り出された。
「きゃあ!」
「シアっ」
悲鳴を上げるシア。そこへ、モーニングスターの鎖にしがみついていたハジメが、振るわれる鎖の遠心力を利用してシアのもとへ飛び出し空中でキャッチする。
「ハジメさん!」
「大丈夫かっ⁉︎」
「はいっ。大丈夫ですぅ」
ミレディは迎撃で、ヒートナックルを放とうと拳をグッと後ろに引き絞る。と、その瞬間、手元に戻したモーニングスターに繋がっている鎖がいきなり大爆発を起こした。
「わわわっ、なにっ⁉︎」
「っし!かかった‼︎」
驚きの声を上げるミレディ。爆発の原因は、ハジメが鎖にしがみついている間に仕掛けた大量の手榴弾である。凄まじい爆発力により鎖が半ばから弾け飛び、巻きつけていた左腕が大きく損傷する。衝撃により、ミレディ・ゴーレムの体勢も崩れてしまう。
そこへ、ハジメを踏み台にしてミレディに急接近したドリュッケンを振りかぶったシアが到達する。
「りゃぁあああ‼︎」
気合のこもった雄叫びと共に、手元の引き金が引かれ内蔵されたショットシェルが激発する。衝撃により一気に加速したドリュッケンが空気すら叩き潰す勢いでミレディ・ゴーレムに迫った。
ミレディ・ゴーレムは反射的に損傷の激しい左腕を掲げる。直後、ドリュッケンの一撃が左腕に直撃した。ドリュッケンは、脆くなった左腕を打ち砕き肩口から先を容赦なく粉砕した。
ドリュッケンを振り切り勢いそのままに宙を泳ぐシア。ミレディ・ゴーレムは、せめて、奪われた左腕の仕返しに一撃を入れてやると、死に体のシアにヒートナックルを放とうとする。
しかし、ミレディがシアに意識を集中した瞬間、下方から水のレーザーが迸り、先ほど入れられた切れ込みに寸分違わず命中した。そして、その傷口を更に抉り切り裂いて、遂にミレディ・ゴーレムの右腕を切断した。
「……してやったり」
そう言ってほくそ笑んだのは、もちろんユエである。
「っ、このぉ!調子に乗ってぇ‼︎」
ミレディが、イラついた様子で声を張り上げた。
そして両腕を失ったミレディが何故か、周囲の浮遊ブロックを呼び寄せて両腕を再構成することもなく、天井を見つめたまま目を強く光らせていた。
「ん?……っ⁉︎」
猛烈に嫌な予感がした瞬間、それを裏付けるようにシアの表情が青ざめている。
「ハジメさん、ユエさん!避けてぇ!降ってきます‼︎」
「…っ?!そうか上かっ」
ミレディがやろうとする事を察したハジメは急いでシアを抱き寄せ移動する。
その直後、それは起こった。
空間全体が鳴動する。低い地鳴りのような音が響き、天井からパラパラと破片が落ちくる。いや、破片だけではない。天井そのものが落下しようとしているのだ。
「っ⁉︎これは!」
「ふふふ、お返しだよぉ。騎士以外は同時に複数を操作することは出来ないけど、ただ一斉に〝落とす〟だけなら数百単位でいけるからねぇ~、見事凌いで見せてねぇ~」
のんきなミレディの言葉に苛立つが、そんな事に気を取られている余裕はない。この空間の壁には幾つものブロックが敷き詰められているのだが、天井に敷き詰められた数多のブロックが全て落下しようとしているのだ。一つ一つのブロックが、軽く十トン以上ありそうな巨石である。
「……ホントになんでもアリだなっ⁉︎」
一つでも、当たったら致命傷になり兼ねない巨石が豪雨の如く降ってくるのだ。ハジメの額に冷たい汗が流れる。
「ハ、ハジメさん!」
「……… 〝目には目を〟」
「ハジメ‼︎」
「………〝歯には歯を〟」
「終わりだよ〜‼︎」
「……… 〝
その言葉を終えると同時に一つの巨石がハジメを潰した。巨石の豪雨を必死に避けながらそれを見ていたユエとシアは、喉が張り裂けそうな大きな声でハジメの名を呼んだ。
「ハジメ!ハジメ‼︎ハジメ‼︎」
「ハジメさん!ハジメさん‼︎ハジメさん‼︎」
「………呆気ない幕引きだったね………?」
絶望な表情をしているユエとシアに追い打ちの言葉を口にしたミレディだったが、何か違和感を感じた。
「………まさか⁉︎」
ミレディがハジメを潰した巨石へと目を向けると
そしてその巨石はミレディが知らない
「………なんとか間に合った」
「………ハジメ?ハジメ‼︎」
「ハジメさん‼︎」
「ど、どういうこと⁉︎」
ありえない光景に思考が追いついていないミレディをハジメは無視し、宣言した。
「ここを工房とする!」
その宣言とともに空間にある全ての巨石がハジメの元へと集まり出した。
「なっ⁉︎」
「“
“
“霊峰の如き巨躯は、巌の如く堅牢で。万民を守護し、万民を統治し、万民を支配する貌を持つ”
“汝は土塊にして土塊にあらず。汝は人間にして人間にあらず。汝は楽園に佇む者、楽園を統治する者、楽園に導く者。汝は我らが夢、我らが希望、我らが愛”
“
そして集まった巨石はハジメの詠唱で一つとなり、自然の雄大さをそのまま取り込んだ巨人の如き風貌で、その外観は表現としては美しい、神々しい巨大なゴーレムが出来上がった。
「………………すごいゴーレムだけど核が無いね?」
「………核?それは問題ない」
「?」
「
「「「⁉︎」」」
その言葉にユエやシアだけではなくミレディ・ゴーレムも言葉が出せなかった。
そしてハジメはその隙を逃さずゴーレムの体内に沈んだ。
するとゴーレムの目が強く光り、叫び声を上げミレディ・ゴーレムへと迫る。
ミレディ・ゴーレムはそれに危機感を感じたのか、両腕を再構成させハジメの操るゴーレムと拮抗させた。
ミレディ・ゴーレムはハジメのゴーレムを止めれたことに安堵感を覚えたが、それはすぐに間違いだと理解した。
「何なのこのゴーレム⁉︎
ほんの少し前まで自身より少し小さかったハジメのゴーレムが、どんどん大きくなっているのだ。
「〝破断〟!」
ミレディの焦りによる隙をを逃すはずがないユエの凛とした詠唱が響き渡り、幾筋もの水のレーザーがミレディ・ゴーレムの背後から背中や足、頭部、肩口に殺到する。着弾したウォーターカッターは各部位の表面装甲を切り裂いていく。
「こんなの何度やっても一緒だよぉ~、直しちゃうしぃ~………って、まだ大きくなるの⁉︎」
振り向きもせず余裕の雰囲気でユエの魔法を受けきったミレディ・ゴーレムだが、ハジメのゴーレムに対しての焦りはどんどん増す。そして──
「なぁっ?!」
──ミレディ・ゴーレムの両腕が破壊された。
「こ、こんなことしても結局は……」
「凍って!〝凍柩〟‼︎」
「なっ⁉︎何で上級魔法が⁉︎」
驚愕の声を上げるミレディ。ユエが上級魔法である氷系統の魔法を使えたのは単純な話だ。〝破断〟と同じく、元となる水を用意して消費魔力量を減らしただけである。あらかじめ、ミレディ・ゴーレムを叩きつけるブロックを決めておき水を撒いておく。そして、隙をついてミレディ・ゴーレム自身の背面にも水を撒いておく。最初の〝破断〟はそれが目的だった。
それでも、莫大な魔力が消費され、ユエが所持している魔晶石の全てから魔力のストックを取り出す羽目になってしまい、ユエは肩で息をしながら近場の浮遊ブロックに退避していく。
そして胸部のアザンチウム装甲は、一瞬でヒビが入り、ハジメのゴーレムは腕を杭の形に変形させその先端で穿つ。あまりの衝撃に、ミレディ・ゴーレムの巨体が浮遊ブロックを放射状にヒビ割りながら沈み込んだ。浮遊ブロック自体も一気に高度を下げる。ミレディ・ゴーレムは、高速回転による摩擦により胸部から白煙を吹き上げていた。
……しかし、ミレディ・ゴーレムの目から光は消えなかった。
「ハ、ハハ。どうやら未だ威力が足りなかったようだねぇ。だけど、まぁ大したものだよぉ?四分の三くらいは貫けたんじゃないかなぁ?」
ハジメのゴーレムの攻撃に九死に一生を得たミレディ・ゴーレムの挑発の言葉に対しての返答なのか、ハジメのゴーレムは刺さっている腕をもう片方の腕で斬り落とし、杭だけを残すとミレディ・ゴーレムの胸部から勢いよく飛び退いた。
そして代わりに現れたのは、ウサミミをなびかせ、ドリュッケンを大上段に構えたまま、遥か上空から自由落下に任せて舞い降りるシアだった。
「ッ⁉︎」
シアが何をしようとしているのか察したのだろう。今度こそ、焦ったようにその場から退避しようとするミレディ・ゴーレム。自分が固定されている浮遊ブロックを移動させようとするが猛スピードで落下してくるシアに間に合わないと悟り……諦めたように動きを止めた。
シアは、そのままショットシェルを激発させ、その衝撃も利用して渾身の一撃を杭に打ち下ろした。
「ドリャアアアですぅっ‼︎」
そして、その衝撃で遂にゴーレムの杭がアザンチウム製の絶対防御を貫き、ミレディ・ゴーレムの核に到達する。先端が僅かにめり込み、ビシッという音を響かせながら核に亀裂が入った。
地面への激突の瞬間、シアはドリュッケンを起点に倒立すると、くるりと宙返りをする。そして、身体強化の全てを脚力に注ぎ込み、遠心力をたっぷりと乗せた蹴りをダメ押しとばかりに杭に叩き込んだ。
シアの蹴りを受けて更にめり込んだ杭は、核の亀裂を押し広げ……遂に完全に粉砕した。
七大迷宮が一つ、ライセン大迷宮の最後の試練が確かに攻略された瞬間だった……。