FGOで世界最強   作:紫道麻璃也

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商隊の護衛

 ライセンの大迷宮を攻略したハジメ達はブルックの町に戻り、“マサカの宿”で体を休ませていた。

 この間にある娘が覗きを敢行したが不発に終わった。

 そんな事があった翌日、ハジメ達は冒険者ギルドに向かっていた。

 『カランカラン』とそんな音を立てて冒険者ギルド:ブルック支部の扉が開いた。入ってきたのは三人の人影、ここ数日ですっかり有名人となったハジメ、ユエ、シアである。ギルド内のカフェには、何時もの如く何組かの冒険者達が思い思いの時を過ごしており、ハジメ達の姿に気がつくと片手を上げて挨拶してくる者もいる。

 その中の一部の男性陣は相変わらずユエとシアに見蕩れ、ついでハジメに羨望と嫉妬の視線を向けるが、ハジメの人当たりの良さも相まってそこまで陰湿なものはない。

 後、何故か女性陣がハジメにユエ達と同じような視線を向けており、そのせいで二人にジト目で見られやすくなっていた。

 

「僕………何かしたっけ?」

 

 そんなわけで、この町では、〝美しい金髪のビスクドール〟たるユエと、そんな彼女が心底惚れており、決闘が始まる前に相手が『勝てない』と理解し逃げ帰ってしまう〝触れてはならない者〟たるハジメのコンビは有名であり一目置かれる存在なのである。ギルドでパーティー名の申請等していないのに〝アンタッチャブル・ビスクドール〟というパーティー名が浸透しており、自分の二つ名と共にそれを知ったハジメがしばらく遠い目をしていたのは記憶に新しくユエとシアが励ましていた。

 ちなみに、自分の存在感が薄いとシアが涙したのは余談である。

 ハジメはそんなことを思いながらギルドのカウンターにいるキャサリンの下へ向かった。

 

「おや、今日は三人一緒かい?」

 

 

 ハジメ達がカウンターに近づくと、いつも通り、キャサリンがおり、先に声をかけた。キャサリンの声音に意外さが含まれているのは、この一週間でギルドにやって来たのは大抵、ハジメ一人かシアとユエの二人組だからだ。

 

「はい明日にでも町を出ますので、貴女には色々お世話になったので挨拶をと。ついでに、目的地関連で依頼があれば受けておこうと思って」

 

 世話になったというのは、ハジメがギルドの一室を無償で借りていたことだ。せっかくの重力魔法なので生成魔法と組み合わせを試行錯誤するのに、それなりに広い部屋が欲しかったのである。キャサリンに心当たりを聞いたところ、それならギルドの部屋を使っていいと無償で提供してくれたのだ。

 なお、ユエとシアは郊外で重力魔法の鍛錬である。

 

「そうかい。行っちまうのかい。そりゃあ、寂しくなるねぇ。あんた達が戻ってから賑やかで良かったんだけどねぇ~」

「………勘弁してください、僕も賑やかなのは良いですけどアレは度が過ぎていますよ」

 

 苦々しい表情のハジメが愚痴をこぼすように語った内容は全て事実だ。宿娘のソーナは言わずもがな、ユエとシアが訪れた服飾店の店主クリスタベルは良い人だが会う度にハジメに肉食獣の如き視線を向け舌なめずりをしてくるので、何度寒気を感じたかわからない。

 また、ブルックの町には三大派閥が出来ており、日々しのぎを削っている。一つは『ユエちゃんに踏まれ隊』、もう一つは『シアちゃんの奴隷になり隊』、最後が『お兄様の傍にい隊』と『お兄様を見守り隊』の合同部隊である。それぞれ、文字通りの願望を抱え、実現を果たした隊員数で優劣を競っているらしい。

 なお、この競い合いは今の所『お兄様を見守り隊』が一歩リードしている様だ。

 あまりにぶっ飛んだネーミングと思考の集団にドン引きのハジメ達。町中でいきなり土下座するとユエに向かって「踏んで下さい!女王様‼︎」とか絶叫するのだ。もはや恐怖である。

 シアに至ってはどういう思考過程を経てそんな結論に至ったのか理解不能だ。亜人族は被差別種族じゃなかったのかとか、奴隷になってどうするとかツッコミどころは満載だが、深く考えるのが嫌だったので出会えば即刻排除している。

 最後は女性のみで結成された集団で、『お兄様の傍にい隊』はハジメに付き纏うか、ユエとシアの排除行動が主だ。一度は、「お兄様ぁーーー!何処までも付いて行きますーー‼︎」とか叫びながらハジメに突っ込んで来た少女もいる。

 流石に町中で少女をケガをさせたくなかったのでハジメは少女が抱きつく寸前に両肩を掴み突撃を止め、頭を撫でながら「僕なんかよりも良い人がきっと見つかるから頑張って」と言ったら、少女は何故か鼻血を吹き出してぶっ倒れてしまった。

 その後、ハジメは急いで少女を治療院に運び事は済んだが、何故か突撃してくる少女の数が増えていくのを尻目に空を仰ぎ見て『………何故?』と呟いた事もあった。

 そして『お兄様を見守り隊』は一番まともで、ハジメ達のこれからの行く末を見守るという行動が主である。

 ちなみにこの『見守り隊』のリーダーはとある宿娘だという話しらしい。

 そんな出来事を思い出し溜息を吐くハジメに、キャサリンは苦笑いだ。

 

「まぁまぁ、何だかんで活気があったのは事実さね」

「ちょっと嫌な活気だったけどね」

「で、何処に行くんだい?」

「次はフューレンにでも行こうかと」

 

 そんな風に雑談しながらも、仕事はきっちりこなすキャサリン。早速、フューレン関連の依頼がないかを探し始める。

 フューレンとは、中立商業都市のことだ。ハジメ達の次の目的地は【グリューエン大砂漠】にある七大迷宮の一つ【グリューエン大火山】である。その為、大陸の西に向かわなければならないのだが、その途中に【中立商業都市フューレン】があるので、大陸一の商業都市に一度は寄ってみようという話になったのである。なお、【グリューエン大火山】の次は、大砂漠を超えた更に西にある海底に沈む大迷宮【メルジーネ海底遺跡】が目的地だ。

 

「キャサリンさん、フューレンに行く途中で出来そうな依頼とかありますか?」

「う~ん、おや。ちょうどいいのがあるよ。商隊の護衛依頼だね。ちょうど空きが後一人分あるよ……どうだい?受けるかい?」

「見ても?」

「はいよ」

 

 ハジメはキャサリンにより差し出された依頼書を受け取り内容を確認する。

「………連れを同伴するのはOKですか?」

「ああ、問題ないよ。あんまり大人数だと苦情も出るだろうけど、荷物持ちを個人で雇ったり、奴隷を連れている冒険者もいるからね。まして、ユエちゃん、シアちゃんも結構な実力者だ。一人分の料金でもう二人優秀な冒険者を雇えるようなもんだ。断る理由もないさね」

 

「………二人はどうする?」

 

 ハジメは二人に意見を聞いてみることにした。

 

「……急ぐ旅じゃない」

「そうですねぇ~、たまには他の冒険者方と一緒というのもいいかもしれません。ベテラン冒険者のノウハウというのもあるかもしれませんよ?」

「……そうだな、急いても仕方ないし、たまにはそういう事も良いか…」

 

 ハジメは二人の意見に「ふむ」と頷くとキャサリンに依頼を受けることを伝える。

 

「あいよ。先方には伝えとくから、明日の朝一で正面門に行っとくれ」

「わかった」

 

 ハジメが依頼書を受け取るのを確認すると、キャサリンがハジメの後ろのユエとシアに目を向けた。

 

「あんた達も体に気をつけて元気でおやりよ?この子に逃げられないように頑張ってね」

「……ん、お世話になった。ありがとう」

「はい、キャサリンさん。良くしてくれてありがとうございました!」

 

 キャサリンの人情味あふれる言葉にユエとシアの頬も緩む。特にシアは嬉しそうだ。

 

「あんたも、こんないい子達泣かせんじゃないよ?精一杯大事にしないと罰が当たるからね?」

 

「……言われなくても承知してるよ」

 

 キャサリンの言葉に苦笑いで返すハジメに、キャサリンが一通の手紙を差し出す。

 

「これは?」

「あんた達、色々厄介なもの抱えてそうだからね。町の連中が迷惑かけた詫びのようなものだよ。他の町でギルドと揉めた時は、その手紙をお偉いさんに見せな。少しは役に立つかもしれないからね」

「そんな手紙を書けるなんて、キャサリンさん…貴女はいったい………」

「おや、詮索はなしだよ?いい女に秘密はつきものさね」

 

 謎多き、片田舎の町のギルド職員キャサリン。俺達は、そんな彼女の愛嬌のある魅力的な笑みと共に送り出された。

 その後、ハジメ達はクリスタベルの服飾店にも訪れた。町を出ると聞いた瞬間、クリスタベルは最後のチャンスとばかりにハジメに襲いかかる巨漢の化物と化したがハジメは「また来る」と言い、握手をしてクリスタベルと別れた。

 最後の晩と聞き、遂には堂々と風呂場に乱入、そして部屋に突撃を敢行したソーナちゃんが、ブチギレた母親に本物の亀甲縛りをされて一晩中、宿の正面に吊るされるという事件の話も割愛だ。なぜ、母親が亀甲縛りを知っていたのかという話も割愛である。

 そして翌日早朝、そんな愉快なブルックの町民達を思い出にしながら、正面門にやって来たハジメ達を迎えたのは商隊のまとめ役と他の護衛依頼を受けた冒険者達だった。どうやらハジメ達が最後のようで、まとめ役らしき人物と十四人の冒険者が、やって来たハジメ達を見て一斉にざわついた。

 

「お、おい、まさか残りの三人って〝アンタッチャブル・ビスクドール〟なのか⁉︎」

「マジかよ!嬉しさと恐怖が一緒くたに襲ってくるんですけど⁉︎」

「見ろよ、俺の手。さっきから震えが止まらないんだぜ?」

「………いや、それはお前がアル中だからだろ?」

 

 そこにはユエとシアの登場に喜びを顕にする者、手の震えをハジメ達のせいにして仲間にツッコミを入れられる者、ハジメを見て顔を赤くする女冒険者など様々な反応だ。

 ハジメが苦笑いを浮かべながら近寄ると、商隊のまとめ役らしき人物が声をかけた。

 

「君達が最後の護衛かね?」

「はい、これが依頼書です」

 

 ハジメは、懐から取り出した依頼書を見せる。それを確認して、まとめ役の男は納得したように頷き、自己紹介を始めた。

 

「私の名はモットー・ユンケル。この商隊のリーダーをしている。君達のランクは未だ青だそうだが、キャサリンさんからは大変優秀な冒険者と聞いている。道中の護衛は期待させてもらうよ」

「そうか、こちらも任務はちゃんとするつもりだから宜しく頼む、後こっちは仲間のユエとシアだ」

「それは頼もしいな……ところで、この兎人族……売るつもりはないかね?それなりの値段を付けさせてもらうが」

 

 モットーの視線が値踏みするようにシアを見た。兎人族で 青みがかった白髪の超がつく美少女だ。商人の性として、珍しい商品に口を出さずにはいられないということか。首輪から奴隷と判断し、即行で所有者たるハジメに売買交渉を持ちかけるあたり、きっと優秀な商人なのだろう。

 その視線を受けて、シアが「うっ」と嫌そうに唸りハジメの背後にそそっと隠れる。ユエのモットーを見る視線が厳しい。

 

「その目をやめてくれませんか?シアが嫌がる」

「ほぉ、随分と懐かれていますな……中々、大事にされているようだ。ならば、私の方もそれなりに勉強させてもらいますが、いかがです?」

「ま、貴方はそこそこ優秀な商人のようだし………答えは言わずともわかるだろ?」

 

 シアの様子を興味深そうに見ていたモットーが更にハジメに交渉を持ちかけるが、ハジメの対応はあっさりしたものである。モットーも、実はハジメが手放さないだろうとは感じていたが、それでもシアが生み出すであろう利益は魅力的だったので、何か交渉材料はないかと会話を引き伸ばそうとする。

 そんな意図もハジメは読んでいたので、あっさりしているが、揺るぎない意志を込めた言葉をモットーに告げる。

 

「例え、どこぞの神がシアを欲しても手放す気はないし、力ずくで奪うんなら殺してでも奪い返すよ……理解してもらえたか?」

「…………えぇ、それはもう。仕方ありませんな。ここは引き下がりましょう。ですが、その気になったときは是非、我がユンケル商会をご贔屓に願いますよ。それと、もう間も無く出発です。護衛の詳細は、そちらのリーダーとお願いします」

「こちらも脅し紛いのことを言ってすみませんでした。改めてよろしく頼むよ」

 

 自分でも理解できるくらい、ハジメの今さっきの発言は相当危険なものだった。下手をすれば聖教教会から異端の烙印を押されかねない発言だ。一応、魔人族は違う神を信仰しているし、歴史的に最高神たる〝エヒト〟以外にも崇められた神は存在するので、直接、聖教教会にケンカを売る言葉ではない。だが、それでもギリギリの発言であることに変わりはなく、それ故に、モットーはハジメがシアを手放すことはないと心底理解させられた。

 

「すげぇ……女一人のために、あそこまで言うか……痺れるぜ!!」

「流石、〝触れてはならない者〟と言ったところか。自分の女に手を出すやつには容赦しない……ふっ、漢だぜ」

「いいわねぇ~、私も一度くらい言われてみたいわ」

「いやお前、男だろ?誰が、そんなことッあ、すまん、謝るからっやめっアッーー‼︎」

 

 ハジメは、愉快な護衛仲間の愉快な発言に頭痛を感じたように手で頭を抑えた。やっぱりブルックの町の奴らは阿呆ばっかりだと。そんな事を思っていると、背中に何やら〝むにゅう〟と柔らかい感触を感じ、更に腕が背後から回されハジメを抱きしめてくる。

 ハジメが肩越しに振り返ると、肩に顎を乗せたシアの顔が至近距離に見えた。その顔は真っ赤に染まっており、実に嬉しそうに緩んでいる。ハジメもシアを安心させる為に彼女の頭を撫でながら優しく声をかけた。

 

「シア、落ち着くまで良いぞ」

「ありがとうございますぅ…ハジメさん//」

 

 ユエは、トコトコと傍に寄って行くと、そんなハジメの袖をクイクイと引っぱった。

 

「?どうしたのユエ?」

「ん……カッコよかった。後、私にも撫でて」

「ったく……わかったよ」

 

 そして、ハジメはもう片方の手でユエの頭を撫でた。

 

「…ん//」

 

 早朝の正門前、多数の人間がいる中で、背中に幸せそうなウサミミ美少女をはりつけ、右手には金髪紅眼のこれまた美少女を纏わりつかせる男、南雲ハジメ。

 商隊の女性陣は生暖かい眼差しで、男性陣は死んだ魚のような眼差しでその光景を見つめる。ハジメに突き刺さる煩わしい視線や言葉は、きっと自業自得である…

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