FGOで世界最強   作:紫道麻璃也

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〜お知らせ〜

『ハーレム追加』→『ハーレム増加・変更』に変更しました


湖畔の町 ウル

 広大な平原のど真ん中に、北へ向けて真っ直ぐに伸びる街道がある。街道と言っても、何度も踏みしめられることで自然と雑草が禿げて道となっただけのものだ。この世界の馬車にはサスペンションなどというものはないので、きっとこの道を通る馬車の乗員は、目的地に着いた途端、自らの臀部を慰めることになるのだろう。

 そんな、整備されていない道を有り得ない速度で爆走する影がある。黒塗りの車体に二つの車輪だけで凸凹の道を苦もせず突き進むそれの上には、三人の人影があった。

 ハジメ一行だ。かつてライセン大峡谷の谷底で走らせた時とは比べものにならないほどの速度で街道を疾走している。時速八十キロは出ているだろう。魔力を阻害するものがないので、魔力駆動二輪も本来のスペックを十全に発揮している。座席順は、いつもの通り、ハジメの腕の中にユエ、背中にシアという形だ。風にさらわれてシアのウサミミがパタパタとなびいていた。

 

 

「今日は快晴だな…」

 

 天気は快晴で暖かな日差しが降り注ぎ、ユエの魔法で風圧も調整されているので絶好のツーリング日和と言える。実際、ユエもシアも、ポカポカの日差しと心地よい風を全身に感じて、実に気持ちよさそうに目を細めていた。

 

「はぅ~、気持ちいいですぅ~、ユエさぁ~ん。帰りは場所交換しませんかぁ~」

「……ダメ。ここは私の場所」

「え~、そんなこと言わずに交換しましょうよ~、後ろも気持ちいいですよ?」

「……シアの身長的に前は無理」

「うっ…それを言われると、ハジメさん〜」

「ごめんね、シア」

「うぅ〜」

 

 そのままシアはハジメの肩に頭を乗せ全体重を掛けてもたれうずくまった。

 

「まぁ、このペースなら後一日ってところかな。ノンストップで行くし、休める内に休ませておこう」

 

 ハジメの言葉通り、俺達は、ウィル一行が引き受けた調査依頼の範囲である北の山脈地帯に一番近い町まで後一日ほどの場所まで来ていた。このまま休憩を挟まず一気に進み、おそらく日が沈む頃に到着するだろうから、町で一泊して明朝から捜索を始めるつもりだ。急ぐ理由はもちろん、時間が経てば経つほど、ウィル一行の生存率が下がっていくからだ。

 

「……積極的?」

 

 ハジメは、腕の中から可愛らしく首を傾げて自分を見上げるユエに苦笑いをして返す。

 

「生きてる方が感じる恩が大きいだろうし……僕的にも生きて帰してやりたいんだ」

「……ん、なるほど」

「それに聞いたところなんだけど、これから行く町は湖畔の町で水源が豊かなんだって。そのせいで町の近郊は大陸一の稲作地帯なんだそうなんだよ」

「……稲作?」

「稲作で作られるのは『米』。僕の故郷、日本という国の主食だ。こっちに来てから一度も食べてないからな。同じものかどうかは分からないが、早く行って食べてみたい」

「……ん、私も食べたい……町の名前は?」

 

 遠い目をして米料理に思いを馳せるハジメに、微笑ましそうな眼差しを向けていたユエは、そう言えば町の名前を聞いてなかったとハジメに尋ねる。

 

「………」

「……ハジメ?」

「あっ、ごめんその町の名前だよね?………確か──」

 

~〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 湖畔の町ウル。ウルディア湖と呼ばれる湖の影響で湿地となっており、異世界では珍しい稲作が行われている町である。さらに山脈地帯からは自然の恵みが採れ、湖からは魚が獲れる。まさに食の恵みを受けている町とも言えるだろう。

 

「はぁ、今日も手掛かりはなしですか……清水君、一体どこに行ってしまったんですか……」

 

 悄然と肩を落とし、そんなウルの町の表通りをトボトボと歩くのは召喚組の一人にして教師、畑山愛子だ。普段の快活な様子がなりを潜め、今は、不安と心配に苛まれて陰鬱な雰囲気を漂わせている。心なしか、表通りを彩る街灯の灯りすら、いつもより薄暗い気がする。

 

「愛子、あまり気を落とすな。まだ、何も分かっていないんだ。無事という可能性は十分にある。お前が信じなくてどうするんだ」

「そうですよ、愛ちゃん先生。清水の部屋だって荒らされた様子はなかったんです。自分で何処かに行った可能性だって高いんですよ?悪い方にばかり考えないでください」

 

 元気のない愛子に、そう声をかけたのは愛子専属護衛隊隊長のデビッドと生徒の園部優花だ。周りには他にも、毎度お馴染みに騎士達と生徒達がいる。彼等も口々に愛子を気遣うような言葉をかけた。

 クラスメイトの一人、清水幸利が失踪してから既に二週間と少し。愛子達は、八方手を尽くして清水を探したが、その行方はようとして知れなかった。町中に目撃情報はなく、近隣の町や村にも使いを出して目撃情報を求めたが、全て空振りだった。

 当初は事件に巻き込まれたのではと騒然となったのだが、清水の部屋が荒らされていなかったこと、清水自身が〝闇術師〟という闇系魔法に特別才能を持つ天職を所持しており、他の系統魔法についても高い適性を持っていたことから、そうそう、その辺のゴロツキにやられるとは思えず、今では自発的な失踪と考える者が多かった。

 元々、清水は、大人しいインドアタイプの人間で社交性もあまり高くなかった。クラスメイトとも、特別親しい友人はいなかったが、大迷宮で死んでしまったハジメには心を開いていたらしい、愛ちゃん護衛隊に参加も自分から参加の意思表示を驚かれ、生徒達も清水の事を心配していたが護衛隊の騎士達に至っては言わずもがな日に日に元気が無くなってる愛子の心配だけをしていた。

 ちなみに、王国と教会には報告済みであり、捜索隊を編成して応援に来るようだ。清水は、魔法の才能に関しては召喚された者らしく極めて優秀なので、ハジメの時のような失敗をさせない為、上層部は楽観視していない。捜索隊が到着するまで、あと二、三日といったところだ。

 次々とかけられる気遣いの言葉に、愛子は内心で自分を殴りつけた。事件に巻き込まれようが、自発的な失踪であろうが心配であることに変わりはない。しかし、それを表に出して、今、傍にいる生徒達を不安にさせるどころか、気遣わせてどうするのだと。それでも、『自分はこの子達の教師なのか!』と。愛子は、一度深呼吸するとペシッと両手で頬を叩き気持ちを立て直した。

 

「皆さん、心配かけてごめんなさい。そうですよね。悩んでばかりいても解決しません。清水君は優秀な魔法使いです。きっと大丈夫。今は、無事を信じて出来ることをしましょう。取り敢えずは、本日の晩御飯です!お腹いっぱい食べて、明日に備えましょう‼︎」

 

 無理しているのは丸分かりだが、気合の入った掛け声に生徒達も「は~い」と素直に返事をする。騎士達は、その様子を微笑ましげに眺めた。

 そして愛子達は、自分達が宿泊している宿の扉を開いた。一階部分がレストランになっており、ウルの町の名物である米料理が数多く揃えられているウルの町で一番の高級宿だ。内装は、落ち着きがあって、目立ちはしないが細部までこだわりが見て取れる装飾の施された重厚なテーブルやバーカウンターがある。また、天井には派手すぎないシャンデリアがあり、落ち着いた空気に花を添えていた。〝老舗〟そんな言葉が自然と湧き上がる、歴史を感じさせる宿だった。名を〝水妖精の宿〟という。昔、ウルディア湖から現れた妖精を一組の夫婦が泊めたことが由来だそうだ。

 ちなみにウルディア湖は、ウルの町の近郊にある大陸一の大きさを誇る湖だ。

 当初、愛子達は、高級すぎては落ち着かないと他の宿を希望したのだが、〝神の使徒〟あるいは〝豊穣の女神〟とまで呼ばれ始めている愛子や生徒達を普通の宿に泊めるのは外聞的に有り得ないので、騎士達の説得の末、ウルの町における滞在場所として目出度く確定した。

 元々、王宮の一室で過ごしていたこともあり、愛子も生徒達も次第に慣れ、今では、すっかりリラックス出来る場所になっていた。農地改善や清水の捜索に東奔西走し疲れた体で帰って来る愛子達にとって、この宿でとる米料理は毎日の楽しみになっていた。

 全員が一番奥の専用となりつつあるVIP席に座り、その日の夕食に舌鼓を打つ。

 

「ああ、相変わらず美味しいぃ~異世界に来てカレーが食べれるとは思わなかったよ」

「まぁ、見た目はシチューなんだけどな……いや、ホワイトカレーってあったけ?」

「いや、それよりも天丼だろ?このタレとか絶品だぞ?日本負けてんじゃない?」 

「それは、玉井君がちゃんとした天丼食べたことないからでしょ?ホカ弁の天丼と比べちゃだめだよ」

「いや、チャーハンモドキ一択で。これやめられないよ」

「餃子っぽいのとセットメニューってのが何とも憎いよね。………このお店開いた人、絶対日本人でしょ?」

 

 極めて地球の料理に近い米料理に毎晩生徒達のテンションは上がりっぱなしだ。見た目や微妙な味の違いはあるのだが、料理の発想自体はとても似通っている。素材が豊富というのも、ウルの町の料理の質を押し上げている理由の一つだろう。米は言うに及ばず、ウルディア湖で取れる魚、山脈地帯の山菜や香辛料などもある。

 美味しい料理で一時の幸せを噛み締めている愛子達のもとへ、六十代くらいの口ひげが見事な男性がにこやかに近寄ってきた。

 

「皆様、本日のお食事はいかがですか?何かございましたら、どうぞ、遠慮なくお申し付けください」

「あ、オーナーさん」

 

 愛子達に話しかけたのは、この〝水妖精の宿〟のオーナーであるフォス・セルオである。スっと伸びた背筋に、穏やかに細められた瞳、白髪交じりの髪をオールバックにしている。宿の落ち着いた雰囲気がよく似合う男性だ。

 

「いえ、今日もとてもおいしいですよ。毎日、癒されてます」

 

 愛子が代表してニッコリ笑いながら答えると、フォスも嬉しそうに「それはようございました」と微笑んだ。しかし、次の瞬間には、その表情を申し訳なさそうに曇らせた。何時も穏やかに微笑んでいるフォスには似つかわしくない表情だ。何事かと、食事の手を止めて皆がフォスに注目した。

 

「実は、大変申し訳ないのですが……香辛料を使った料理は今日限りとなります」

「えっ⁉︎それって、もうこのニルシッシル食べれないって事ですか?」

 

 カレーが好きな園部優花がショックを受けた様に問い返した。

 

「はい、申し訳ございません。何分、材料が切れまして……いつもならこのような事がないように在庫を確保しているのですが……ここ一ヶ月ほど北山脈が不穏ということで採取に行くものが激減しております。つい先日も、調査に来た高ランク冒険者の一行が行方不明となりまして、ますます採取に行く者がいなくなりました。当店にも次にいつ入荷するかわかりかねる状況なのです」

「あの……不穏っていうのは具体的には?」

「何でも魔物の群れを見たとか……北山脈は山を越えなければ比較的安全な場所です。山を一つ越えるごとに強力な魔物がいるようですが、わざわざ山を越えてまでこちらには来ません。ですが、何人かの者がいるはずのない山向こうの魔物の群れを見たのだとか」

「それは、心配ですね……」

 

 愛子が眉をしかめる。他の皆も若干沈んだ様子で互いに顔を見合わせた。フォスは、「食事中にする話ではありませんでしたね」と申し訳なさそうな表情をすると、場の雰囲気を盛り返すように明るい口調で話を続けた。

 

「しかし、その異変ももしかするともう直ぐ収まるかもしれませんよ」

「どういうことですか?」

「実は、今日のちょうど日の入り位に新規のお客様が宿泊にいらしたのですが、何でも先の冒険者方の捜索のため北山脈へ行かれるらしいのです。フューレンのギルド支部長様の指名依頼らしく、相当な実力者のようですね。もしかしたら、異変の原因も突き止めてくれるやもしれません」

 

 愛子達はピンと来ないようだが、食事を共にしていたデビッド達護衛の騎士は一様に「ほぅ」と感心半分興味半分の声を上げた。フューレンの支部長と言えばギルド全体でも最上級クラスの幹部職員である。その支部長に指名依頼されるというのは、相当どころではない実力者のはずだ。同じ戦闘に通じる者としては好奇心をそそられるのである。騎士達の頭には、有名な〝金〟クラスの冒険者がリストアップされていた。

 愛子達が、デビッド達騎士のざわめきに不思議そうな顔をしていると、二階へ通じる階段の方から声が聞こえ始めた。男の声と少女二人の声だ。何やら少女の一人が男に文句を言っているらしい。それに反応したのはフォスだ。

 

「おや、噂をすれば。彼等ですよ。騎士様、彼等は明朝にはここを出るそうなので、もしお話になるのでしたら、今のうちがよろしいかと」

「そうか、わかった。………しかし、随分と若い声だ。〝金〟に、こんな若い者がいたか?」

 

 デビッド達騎士は、脳内でリストアップした有名な〝金〟クラスに、今聞こえているような若い声の持ち主がいないので、若干、困惑したように顔を見合わせた。

 そうこうしている内に、三人の男女は話ながら近づいてくる。

 愛子達のいる席は、三方を壁に囲まれた一番奥の席であり、店全体を見渡せる場所でもある。一応、カーテンを引くことで個室にすることもできる席だ。唯でさえ目立つ愛子達一行は、愛子が〝豊穣の女神〟と呼ばれるようになって更に目立つようになったため、食事の時はカーテンを閉めることが多い。今日も、例に漏れずカーテンは閉めてある。 

 そのカーテン越しに若い男女の騒がしめの会話の内容が聞こえてきた。

 

「楽しみですね〜。〝ハジメさん〟の故郷の料理」

「シア、故郷の料理じゃないかもしれないんだよ。米を使ってても」

「へぇ〜。でも確か〝ハジメさん〟の恋人の香織さんは料理上手でしたっけ?ねぇユエさん」

「……ん、そう聞いた、そうでしょ〝ハジメ〟?」

「………黙秘権」

 

 その会話の内容に、そして少女達の声が呼ぶ名前に愛子の、そして優花達の心臓が一瞬にして飛び跳ねる。

 

 『彼女達は今何といった?』

 

 『少年を何と呼んだ?』

 

 『少年の声は、"彼"の声に似てはいないか?』

 

 愛子の脳内を一瞬で疑問が埋め尽くし、金縛りにあった様に硬直しながら、カーテンを視線だけで貫こうとでも言う様に凝視する。

 特に直接命を救われ、あの出来事に最も深く心を折られた優花の受けた衝撃は尋常ではなかった。

 カランッとスプーンを落とした音にも気付かない様子で、唯々呆然としている。

 優花を含め淳史達生徒の脳裏には、およそ四ヶ月前に奈落の底へと消えていった"彼"の姿が浮かび上がっていた。

 クラスメイト達を化け物から守り、〝異世界での死〟というものを強く認識させた少年を。

 尋常でない様子の愛子と生徒達に、フォスや騎士達が訝しげな視線と共に声をかけるが、誰一人として反応しない。騎士達が、一体何事だと顔を見合わせていると、愛子がポツリとその名を零した。

 

「……南雲君?」

 

 無意識に出した自分の声で、有り得ない事態に硬直していた体が自由を取り戻す。愛子は、椅子を蹴倒しながら立ち上がり、転びそうになりながらカーテンを引きちぎる勢いで開け放った。

 愛子に続いて優花も椅子を蹴倒して続いた。

 存外に大きく響いたカーテンの引かれる音に、ギョッとして思わず立ち止まる三人の少年少女。

 愛子は、相手を確認する余裕も無く叫んだ。大切な教え子の名前を。

 優花も、相手を確認する余裕も無く叫んだ。命の恩人の名前を。

「南雲君!」

「南雲‼︎」

「………愛ちゃん先生?それにみんなまで……どうしてここに?」

 

 愛子の目の前にいたのは、意外そうな顔をしている、記憶と寸分違わぬ白髪の少年だった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「南雲君ですよね?」

「はい。お久しぶりですね、先生」

「やっぱり、やっぱり南雲君なんですね……生きていたんですね……」

 

 再び涙目になる愛子に、ハジメは特に感慨を抱いた様子もなく肩を竦めた。

 

「まぁ色々あったけど、何とか生き残ってますよ。僕としても先生達が無事で良かったよ」

「よかった。本当によかったです…あっそうだ話が聞きたいですし一緒にご飯はどうですか?」

「いいですよ、ユエとシアも良い?」

「……ん」

「良いですよぉ〜」

 

 二人の返事を聞き、先生達の席に向かおうとしたが愛子の隣にいた優花がハジメの歩みを止めた。

 

「………南雲、少しいい?」

「何?」

「そこの可愛い二人は何なの?」

「………えっと」

 

 ハジメが視線をユエとシアに向けると、二人は、ハジメが説明する前に、愛子達にとって衝撃的な自己紹介しだした。

 

「……ユエ」

「シアです」

「「ハジメ(さん)に惚れた女(ですぅ)」」

「「「…………」」」

 

 ハジメはそそくさ席に行こうとすると両肩をガッと掴まれた。

 後ろを向くと──

 

「「……南雲(君)、少しお話をしない(ませんか)?」」

 

 それは笑ってそうで笑ってない優花と愛子だった。

 

「ふ、二人とも落ち着いて! 少し僕の話を聞っ…」

「「問答無用」」

「ですよねー……あはは」

 

 そしてハジメは先生達と席を共にする前に事情の説明とお説教を一時間近く喰らった。

 その後、ユエとシアからの擁護もあって二人に納得して貰いハジメは解放されたのであった……

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