FGOで世界最強   作:紫道麻璃也

32 / 58
夜の会談

 席に腰を下ろしたハジメは若干、疲れを感じながら愛子達に何処まで話そうかと考えていた。

 ハジメはそんな事を考えながらユエとシアに視線を転じたが二人はまだクラスメイトの女子──宮崎奈々と菅原妙子達と会話をしていた。

 

「……それでハジメがねっ、見捨てずに私を救ってくれたんだ」

「私もハジメさんは家族や私みたいな亜人族を差別せずに救って嬉しかったんですぅ〜」

「こんなの聞かされるとユエさん達が惚れてしまうのは分かるかもね〜。ねっ、タエ?」

「うん、まぁ分かるけど……うん、南雲なら絶対しそうだしね……」

「ねぇ、ユエさん、シアさん……二人は、白崎さん──香織と会ったらどうするの? 」

「……そこは、安心して。私は側室希望だから、認めて貰う様に頑張る」

「私もユエさんと同じです。それに、香織さんと話してみたいですし」

「うんうん。白崎さんは私達よりもハジメっちの事を知ってるし話すから凄いよぉ〜」

「……ん、楽しみにしてる」

 

 妙子の質問をユエは親指を立てながら、シアもただただ話してみたいと二人とも返し、それを見た妙子は笑みを零した。

 そんな四人のガールズトークも終わり全員が席に着いた段階でお話しという尋問をハジメは、目の前の今日限りという異世界版カレーに夢中で端折りに端折った答えをおざなりに返していく。

 

Q、橋から落ちた後、どうしたのか?

 

A、オルクスの〝奈落〟という場所に行き着いた。

 

Q、なぜ、直ぐに戻らなかったのか?

 

A、戻るよりもやるべき事を見つけた。それに王国に戻ったところで何も得れないと判断したから。

 

 そこまで聞いて愛子が、「もっと詳しく答えなさい!」と頬を膨らませて怒る。

 全く、迫力がないのが物悲しく、ハジメは特に感じることなく、カレーを食べるのを専念した。 

 その様子にキレたのは、愛子専属護衛隊隊長のデビッドだった。見た感じ、愛子に好意があるのが丸わかりだったので、愛する女性が蔑ろにされていることに耐えられなかったのだろう。拳をテーブルに叩きつけながら大声を上げた。

 

「おい、お前!愛子が質問しているのだぞ!真面目に答えろ!」

 

 ハジメは、チラリと横目でデビッドを見ると、はぁと溜息を吐いた。

 

「食事中ですよ?行儀よくしてください」

 

 全く相手にされていないことが丸分かりの物言いに元々、神殿騎士にして重要人物の護衛隊長を任されているということから自然とプライドも高くなっているデビッドは、我慢ならないと顔を真っ赤にした。そして、何を言ってものらりくらりとして明確な答えを返さないハジメから矛先を変え、その視線がシアに向く。

 

「ふん、行儀だと?その言葉、そっくりそのまま返してやる。薄汚い獣風情を人間と同じテーブルに着かせるなど、お前の方が礼儀がなってないな。せめてその醜い耳を切り落としたらどうだ?少しは人間らしくなるだろう」

 

 侮蔑をたっぷりと含んだ眼で睨まれたシアはビクッと体を震わせた。ブルックの町では、宿屋での第一印象や、キャサリンと親しくしていたこと、ハジメの存在もあって、むしろ友好的な人達が多かったし、フューレンでも蔑む目は多かったが、奴隷と認識されていたからか直接的な言葉を浴びせかけられる事はなかった。

 つまり、ハジメと旅に出てから初めて、亜人族に対する直接的な差別的言葉の暴力を受けたのである。有象無象の事など気にしないと割り切ったはずだったが、少し、外の世界に慣れてきていたところへの不意打ちだったので、思いの他ダメージがあった。シュンと顔を俯かせてしまったシア。

 よく見れば、デビッドだけでなく、チェイス達他の騎士達も同じような目でシアを見ていた。彼等がいくら愛子達と親しくなろうと、神殿騎士と近衛騎士である。聖教教会や国の中枢に近い人間であり、それは取りも直さず、亜人族に対する差別意識が強いということでもある。何せ、差別的価値観の発信源は、その聖教教会と国なのだから。デビッド達が愛子と関わるようになって、それなりに柔軟な思考が出来るようになったといっても、ほんの数ヶ月程度で変わる程、根の浅い価値観ではないのである。

 あんまりと言えばあんまりな物言いに、思わず愛子が注意をしようとするが、その前に俯くシアの手を握ったユエが、絶対零度の視線をデビッドに向けた。最高級ビスクドールのような美貌の少女に体の芯まで凍りつきそうな冷ややかな眼を向けられて、デビッドは一瞬たじろぐも、見た目幼さを残す少女に気圧されたことに逆上する。普段ならここまでキレやすい人間ではないのだが、思わず言ってしまった言葉に、愛しい愛子からも非難がましい視線を向けられて軽く我を失っているようだった。

 

「………何だその眼は?無礼だぞ!神の使徒でもないのに、神殿騎士に逆らうのか‼︎」

 

 思わず立ち上がるデビッドを、副隊長のチェイスは諌めようとするが、それよりも早く、ユエの言葉が騒然とする場にやけに明瞭に響き渡った。

 

「……小さい男」

 

 それは嘲りの言葉。たかが種族の違い如きで喚き立て、少女の視線一つに逆上する器の小ささを嗤う言葉だ。唯でさえ、怒りで冷静さを失っていたデビッドは、よりによって愛子の前で男としての器の小ささを嗤われ完全にキレてしまった。

 

「……異教徒め。そこの獣風情と一緒に地獄へ送ってやる」

 

 無表情で静かに呟き、傍らの剣に手をかけるデビッド。突如現れた修羅場に、生徒達はオロオロし、愛子やチェイス達は止めようとする。だが、デビッドは周りの声も聞こえない様子で、遂に鞘から剣を僅かに引き抜いた。

 その瞬間──

 

「うるさいですよ」

「ガッ⁉︎」

 

 ハジメはデビッドにカレーに添えてあったらっきょうの様な物を指で弾き額を撃ち、即座に移動してから首を掴まえ締めた。誰もが、今起こった出来事を正しく認識できず硬直していた。視線は、白目を向いてハジメに掴まれているデビッドに向けられたままだ。と、そこへ、大きな破裂音がし何事かと、フォスがカーテンを開けて飛び込んできた。そして、目の前の惨状に目を丸くして硬直する。

 代わりに、フォスが入ってきた事で愛子達が我を取り戻した。

 そして、ハジメは白目を向いたままのデビッドを投げ捨て、全体に聞こえるようにそして、教会の騎士達だけに〝威圧〟を発動して先生に冷えきった声音で告げた。

 

「先生、僕が戻らなかった理由はこれです。この人達、教会は腐っている。信用出来ないし、ただ魔力が使えないだけで亜人を差別する人達に僕は力を貸さない。寧ろ敵側についた方がマシだと思っている」

 

 『わかったか?』とそう眼で問いかけるハジメに、誰も何も言えなかった。直接、視線を向けられたチェイス達騎士は、かかるプレッシャーに必死に耐えながら、僅かに頷くので精一杯だった。

 ハジメは、続いて愛子と優花達にも視線を転じる。愛子は、何も言わない。いや、言えないのだろう。迸る威圧感のせいだけでなく、ハジメの言葉を了承してしまったら何も分からぬまま変わってしまった教え子を放置してしまうことになる。それは、愛子の教師としての矜持が許さなかった。

 

「………少しやり過ぎました」

 

 ハジメは、溜息を吐き肩を竦めると〝威圧〟を解いた。愛子から返事はなかったが、なんとなくその心情を察したハジメは、無理に返事を求めなかった。生徒達は、明らかに怯えた様子だったので、敢えて関わっては来ないだろうと推測した。

 凄まじい圧迫感が消え去り、騎士達がドウッと崩れ落ちて大きく息を吐いた。愛子達も疲れたように椅子に深く座り込む。ハジメは、何事もなかったように食事を再開しながら、シュンとしているシアの頭を撫でながら話しかけた。

 

「シア、これが〝外〟での普通なんだ。気にしていたらキリがないよ?」

「はぃ、そうですよね……わかってはいるのですけど……やっぱり、人間の方には、この耳は気持ち悪いのでしょうね」

「そんな事ない」

「ふぇ?」

「僕はシアの耳は好きだよ」

「……私も」

「…ハジメさん、ユエさんっ!」

 

 シアが涙目になりながら赤く染まった頬を両手で押さえイヤンイヤンし、頭上のウサミミは「わーい!」と喜びを表現する様にわっさわっさと動く。

 

「ちなみに地球の男子どもはウサミミ好きだよ………そこの男子も対象」

「「オイ!南雲⁉︎」」

 

 それで、シリアスな雰囲気は一気に吹っ飛んでしまった。

 

~〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 夜中。深夜を周り、一日の活動とその後の予想外の展開に精神的にも肉体的にも疲れ果て、誰もが眠りついた頃、しかし、愛子は未だ寝付けずにいた。愛子の部屋は一人部屋で、それほど大きくはない。木製の猫脚ベッドとテーブルセット、それに小さな暖炉があり、その前には革張りのソファーが置かれている。冬場には、きっと揺らめく炎が部屋を照らし、視覚的にも体感的にも宿泊客を暖めてくれるのだろう。

 愛子は、今日の出来事に思いを馳せ、ソファーに深く身を預けながら火の入っていない暖炉を何となしに見つめる。

 するとドアからノックの音が聞こえ愛子は向かってドア越しから声をかけた。

 

「誰ですか〜、こんな時間に?」

「………先生、南雲です。少しいいですか?」

 

 『愛子は何故、こんな時間のここに?』『そもそも部屋の前で警備をしている神殿騎士はどうしたのか』と疑問に思ったが何か理由があると思いドアを開けた瞬間、隙間を縫う様にハジメが入室してきた。

 

「こんばんは先生」

「………こんばんはです南雲君………騎士の人達はどうしたのですか?」

「……魔術で一時的にお休みしてもらっています」

「………夜中に女性の部屋に訪れるのはデリカシーが欠けていると思いますが」

「それは悪いことをしました。他の人に見られたくなかったんですよ、この訪問を。先生には話しておきたい事があったんですが、さっきは教会や王国の人がいたから話せなかったんですよ。内容的に、発狂でもして暴れそうですし」

「話ですか?」

 

 『もしや、本当は戻ってくるつもりなのでは』と、期待に目を輝かせる先生。生徒からの相談とあれば、まさに教師の役どころであると思ったのだろう。しかし、ハジメは、その期待を即行で否定していく。

 

「すみませんがまだ戻るつもりはないです。そんな期待した目で見るのは止めてください……今から話す話は、先生が一番冷静に受け止められるだろうと思ったから話します。聞いた後、どうするかの判断は任せます」

 

 そしてお互いにこれまで何があったのかという情報交換を始め、ハジメは、オスカーから聞いた〝解放者〟と狂った神の遊戯の物語を話し始めた。ハジメから、この世界の真実を聞かされ呆然とする愛子。どう受け止めていいか分からないようだ。情報を咀嚼し、自らの考えを持つに至るには、まだ時間が掛かりそうである。

 愛子の口から話されたのは、ハジメが地下にいる間やライセン大迷宮を攻略してる間は、地上もそれなりのイベントがあり、まずハジメの落ちたオルクス大迷宮の戦いの後、ハイリヒ王国が『南雲ハジメ支持派』と『南雲ハジメ敵対派』に内部分裂した事。次に、傭兵たちの集まりから成るヘルシャー帝国のガハルド皇帝が訪問し、勇者と腕試しをした事などだ。

 

「本当に色んな事があったんですねそちらでも………まぁ、そういうわけで、僕が奈落の底で知った事は全てです。これを知ってどうするかは先生に任せます。戯言と切って捨てるもよし、真実として行動を起こすもよし。好きにして構いません」

「な、南雲君は、もしかしてその〝エヒト神〟をどうにかしようと……旅を?」

「はい、僕は神殺しをするつもりです ………あと、手紙のやり取りをしてるなら伝えてくれませんか?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と」

「どっ、どういう事ですかっ?!」

「僕はベヒモスと一緒に落ちた事になってるんですよね?」

「はい、そう聞きましたけど…」

「それは違います。本当は僕を明確に狙って魔法をぶつけられたんです」

「え?狙って?」

 

 わけがわからないといった表情の愛子に、ハジメは罪悪感を感じながらも愛子を更なる悩みに突き落とす言葉を残す。

 

「僕は、クラスメイトの誰かに殺されかけたって事です」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ここから北にある山脈で行方不明になった冒険者達を捜すとともに清水も捜しましょう」

「ありがとうございます!」

「……ところで、香織はどうでしたか?」

 

 清水が数日前からいなくなった事を聞いたハジメは、冒険者達を捜すのと並行して捜すことにした。

 そして教え子がいなくなってショックを受けている愛子の気持ちはわかり、自身の恋人である香織はそれ以上かもしれないと感じたハジメは香織の様子を尋ねた。

 

「南雲くんが生きている事を信じていました。だから、今受けている依頼を終えたら、会うべきだと思います」

 

「……そう、ですか」

 

 ハジメの内心は複雑だった。今すぐにでも会いに行きたい。だが愛子の下に居ないと言うことは、『敵対派』の一部である光輝と共に居ると言うこと。その前線組の中には、同じ派閥の檜山たちも居ることだろう。彼らに目をつけられるのが厄介だとハジメは思うのだった………

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。