FGOで世界最強   作:紫道麻璃也

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ティオ・クラルス

「……何故、滅ぼされたはずの竜人族が生存して、しかもこんな場所にいるかは不明なんだよな」

 

 戦闘を終えジークの姿に戻ったハジメは今、気絶している竜人族の彼女が何故こんな所にいるのか考えていた。

 

「……ん、確か五百年くらい前に滅びたはず」 

「………やっぱ本人に聞くしかない?」

「あっハジメさん!」

 

 そんな事をユエと話してると、彼女を介抱してるシアが突然声を上げた。

 

「どうしたのシア?!」

「ハジメさん、この人、目が覚めそうですよっ!」

「わかった、今向かう」

 

 ハジメとユエがシアの下へ向かって竜人族の彼女を見ると、僅かながらも声を出して薄目を開けながら目を覚ました。

 

「……ここは?」

「目は覚めました?」

「……はっ‼︎」

「っうぉっ?!」

 

 竜人族の彼女は完全に目を覚ました瞬間、すぐさま上体を起こしたのでハジメは少し驚き、体を後にずらしながら避けた。

 

「うむ、介抱してくださり感謝する……。って、そっ、そなたは?!」

 

 竜人族の彼女は感謝の言葉を言っていたがハジメを見た瞬間、驚くように目を見開き声を上げながら少しハジメから離れた。

 

「まぁ、警戒はするよね……ボコボコにしちゃった件はすみません、僕は南雲ハジメ。貴女は?」

「あっいや、別に謝らなくてよい。アレは妾の失態じゃ……。そうじゃった妾も申し遅れた。妾の名はティオ・クラルス。最後の竜人族クラルス族の一人じゃ」

「……ねぇティオさん、すまないがどうしてあんな事になった経緯を教えてくれませんか?」

「う、うむ実は…」

 

 ティオの話を要約すると、ティオはある目的のために竜人族の隠れ里を飛び出して来たらしい。その目的とは、異世界からの来訪者について調べるというものだ。詳細は省かれたが、竜人族の中には魔力感知に優れた者がおり、数ヶ月前に大魔力の放出と何かがこの世界にやって来たことを感知したらしい。

 竜人族は表舞台には関わらないという種族の掟があるらしいのだが、流石に、この未知の来訪者の件を何も知らないまま放置するのは、自分達にとっても不味いのではないかと、議論の末、遂に調査の決定がなされたそうだ。

 ティオは、その調査の目的で集落から出てきたらしい。本来なら、山脈を越えた後は人型で市井に紛れ込み、竜人族であることを秘匿して情報収集に励むつもりだったのだが、その前に一度しっかり休息をと思い、この一つ目の山脈と二つ目の山脈の中間辺りで休んでいたらしい。当然、周囲には魔物もいるので竜人族の代名詞たる固有魔法〝竜化〟により黒竜状態になって。

 と、睡眠状態に入ったティオの前に一人の黒いローブを頭からすっぽりと被った男が現れた。その男は、眠る黒竜の姿で眠るティオに洗脳や暗示などの闇系魔法を多用して徐々にその思考と精神を蝕んでいった。

 当然、そんな事をされれば起きて反撃するのが普通だ。だが、ここで竜人族の悪癖が出る。そう、例の諺の元にもなったように、竜化して睡眠状態に入った竜人族は、まず起きないのだ。それこそ尻を蹴り飛ばされでもしない限り。それでも、竜人族は精神力においても強靭なタフネスを誇るので、そう簡単に操られたりはしない。

 では、なぜ、ああも完璧に操られたのか。それは……

 

「恐ろしい男じゃった。闇系統の魔法に関しては天才と言っていいレベルじゃろうな。そんな男に丸一日かけて絶え間なく魔法を行使されたのじゃ。いくら妾と言えど、流石に耐えられんかった……」

 

 一生の不覚!と言った感じで悲痛そうな声を上げるティオ。しかし、ハジメはツッコミを入れる。

 

「それはつまり、調査に来ておいて丸一日、魔法が掛けられているのにも気づかないくらい爆睡していたって事じゃないのか?」

 

 全員の目が、何となく残念な子を見る目になる。ティオは視線を明後日の方向に向け、何事もなかったように話を続けた。ちなみに、なぜ丸一日かけたと知っているのかというと、洗脳が完了した後も意識自体はあるし記憶も残るところ、本人が「丸一日もかかるなんて……」と愚痴を零していたのを聞いていたからだ。

 その後、黒いローブの男に従い、二つ目の山脈以降で魔物の洗脳を手伝わされていたのだという。そして、ある日、一つ目の山脈に移動させていたブルタールの群れが、山に調査依頼で訪れていたウィル達と遭遇し、目撃者は消せという命令を受けていたため、これを追いかけた。うち一匹が黒いローブの男に報告に向かい、万一、自分が魔物を洗脳して数を集めていると知られるのは不味いと万全を期してティオを差し向けた。ティオも黒いローブの男の命令に抵抗しようとしたが無理だったらしい。

 で、気がつけばハジメにフルボッコにされて目を覚ましたらしい。

 

「……ふざけるな」

 

 事情説明を終えたティオに、そんな激情を必死に押し殺したような震える声が発せられた。皆が、その人物に目を向ける。拳を握り締め、怒りを宿した瞳でティオを睨んでいるのはウィルだった。

 

「……操られていたから…ゲイルさんを、ナバルさんを、レントさんを、ワスリーさんをクルトさんを!殺したのは仕方ないとでも言うつもりかっ⁉︎」

 

 どうやら、状況的に余裕が出来たせいか冒険者達を殺されたことへの怒りが湧き上がったらしい。激昂してティオへ怒声を上げる。

 

「……」

 

 対するティオは、反論の一切をしなかった。ただ、静かな瞳でウィルの言葉の全てを受け止めるよう真っ直ぐ見つめている。その態度がまた気に食わないのか再びウィルは食ってかかる。

 

「大体、今の話だって、本当かどうかなんてわからないだろう!大方、死にたくなくて適当にでっち上げたに決まってる‼︎」

「……今話したのは真実じゃ。竜人族の誇りにかけて嘘偽りではない」

 

 なお、言い募ろうとするウィル。それに口を挟んだのはユエだ。

 

「……きっと、嘘じゃない」

「っ、一体何の根拠があってそんな事を……」

 

 食ってかかるウィルを一瞥すると、ユエはティオを見つめながらぽつぽつと語る。

 

「……竜人族は高潔で清廉。私は皆よりずっと昔を生きた。竜人族の伝説も、より身近なもの。彼女は〝己の誇りにかけて〟と言った。なら、きっと嘘じゃない。それに……嘘つきの目がどういうものか私はよく知っている」

「ふむ、この時代にも竜人族のあり方を知るものが未だいたとは……いや、昔と言ったかの?」

 

 竜人族という存在のあり方を未だ語り継ぐものでもいるのかと、若干嬉しそうな声音のティオ。

 

「……ん。私は、吸血鬼族の生き残り。三百年前は、よく王族のあり方の見本に竜人族の話を聞かされた」

「何と、吸血鬼族の……しかも三百年とは……なるほど死んだと聞いていたが、主がかつての吸血姫か。確か名は……」

「ユエ……それが私の名前。大切な人に貰った大切な名前。そう呼んで欲しい」

 

 ユエが、薄らと頬を染めながら両手で何かを抱きしめるような仕草をする。ユエにとって竜人族とは、正しく見本のような存在だったのだろうと分かる。話す言葉の端々に敬意が含まれている気がする。ウィルの罵倒を止めたのも、その辺りの心情が絡んでいるのかもしれないと理解できた。

 ユエの周囲に、何となく幸せオーラがほわほわと漂っている気がする。ウィルも、何やら気勢を削がれてしまったようだ。

 だが、それでも親切にしてくれた先輩冒険者達の無念を思い言葉を零してしまう。

 

「……それでも、殺した事に変わりないじゃないですか……どうしようもなかったってわかってはいますけど……それでもっ‼︎ゲイルさんは、この仕事が終わったらプロポーズするんだって……彼らの無念はどうすれば……」

 

 頭ではティオの言葉が嘘でないと分かっている。しかし、だからと言って責めずにはいられない。心が納得しない。ハジメは内心、「また、見事なフラグを立てたもんだな」と変に感心しながら、ふとここに来るまでに拾ったロケットペンダントを思い出す。

 

「ウィル、これはゲイルって人の持ち物か?」

 

 そう言って、取り出したロケットペンダントをウィルに放り投げた。ウィルはそれを受け取ると、マジマジと見つめ嬉しそうに相好を崩す。

 

「これ、僕のロケットじゃないですか!失くしたと思ってたのに、拾ってくれてたんですね。ありがとうございます‼︎」

「あれ?ウィルの?」

「はい、ママの写真が入っているので間違いありません!」

「マ、ママ……?」

 

 予想が見事に外れた挙句、斜め上を行く答えが返ってきて思わず頬が引き攣ってしまった。

 写真の女性は二十代前半と言ったところなので、疑問に思いその旨を聞くと、「せっかくのママの写真なのですから若い頃の一番写りのいいものがいいじゃないですか」と、まるで自然の摂理を説くが如く素で答えられた。その場の全員が「ああ、マザコンか」と物凄く微妙な表情をした。女性陣はドン引きしていたが……

 ちなみに、ゲイルとやらの相手は〝男〟らしい…。

 母親の写真を取り戻したせいか、随分と落ち着いた様子のウィル。何が功を奏すのか本当にわからない。だが、落ち着いたとは言っても、恨み辛みが消えたわけではない。ウィルは、今度は冷静に、ティオを殺すべきだと主張した。また、洗脳されたら脅威だというのが理由だが、建前なのは見え透いている。主な理由は復讐だろう。

 

「駄目だ」

「なんでですかっ⁉︎ハジメ殿だって命懸けで戦ってたじゃないですか!」

「………戦いはした。しかし、それはティオが僕達に対しての敵意持っての行動じゃない、操られてただけだ。だから僕は、どんな事を言われてもティオを殺さない。それに、ウィルのそれは建前でただの復讐だろ」

「……ッ!」

「復讐なら他人の手じゃなく自分でやれば良いし、復讐なんてしたって何も生まないしな……」

「……ッハジメ殿は復讐をした事があるんですか?」

 

 ウィルはハジメの発言で復讐をした事があるのだろうと思ったのだろう。だがハジメは首を横に振りジークからハジメの姿に戻りながら言葉を返した。

 

「したことはない。………だが幾つも観てきた。やっても残ったのは、一時的な快楽と悦楽、そして虚無感しか無かったけどな」

「………」

「ティオさん」

「なんじゃ?ごしゅ………ハジメ殿?」

「?………いや、貴女が話していた黒いローブの男について話してくれ」

 

 ティオは、黒いローブの男が、魔物を洗脳して大群を作り出し町を襲う気であると語っていた。その数は、既に三千から四千に届く程の数で、何でも、二つ目の山脈の向こう側から、魔物の群れの主にのみ洗脳を施すことで、効率よく群れを配下に置いているのだとか。

 魔物を操ると言えば、そもそも俺達がこの世界に呼ばれる建前となった魔人族の新たな力が思い浮かぶ。それは先生達も一緒だったのか、黒いローブの男の正体は魔人族なのではと推測した。

 しかし、その推測は、ティオによってあっさり否定される。何でも黒いローブの男は、黒髪黒目の人間族で、まだ少年くらいの年齢だったというのだ。それに、黒竜たるティオを配下にしてしまった罪悪感なのか、仕切りに「ごめんなさい」等と口にし、悲痛そうな表情でよく見ると首には首輪みたいなのが着いていたらしい。

 黒髪黒目の人間族の少年で、闇系統魔法に天賦の才がある者。ここまでヒントが出れば、流石に脳裏にとある人物が浮かび上がる。先生達は一様に「そんな、まさか……」と呟きながら困惑と疑惑が混ざった複雑な表情をした。限りなく黒に近いが、信じたくないと言ったところだろう。

 

「ティオさんの話しを聞くと黒いローブの男は清水の可能性が高い………だが、何故だ?清水はそんな事をするとは思えない。それに、首輪……っ、これは」

 

 ハジメはティオの話を聞いてオルニスを飛ばしながら考え事をしてると、遂に無人探査機の一機がとある場所に集合する魔物の大群を発見した。そしてその数に思考が一旦、止まってしまう。

 

「こりゃあ、三、四千ってレベルじゃないぞ?桁が一つ追加されるレベルだ」

 

 ハジメの報告に全員が目を見開く。しかも、どうやら既に進軍を開始しているようだ。方角は間違いなくウルの町がある方向。

 

「………このままだと、一日あれば町に到着するレベルだ」

「は、早く町に知らせないと⁉︎避難させて、王都から救援を呼んで……それから、それから……」

 

 事態の深刻さに、愛子が混乱しながらも必死にすべきことを言葉に出して整理しようとする。いくら何でも数万の魔物の群れが相手では、チートスペックとは言えトラウマ抱えた優花達と戦闘経験がほとんどない愛子、駆け出し冒険者のウィルに、魔力が枯渇したティオでは相手どころか障害物にもならない。なので、愛子の言う通り、一刻も早く町に危急を知らせて、王都から救援が来るまで逃げ延びるのが最善だ。

 と、皆が動揺している中、ふとウィルが呟くように尋ねた。

 

「あの、ハジメ殿なら何とか出来るのでは……」

 

 その言葉で、全員が一斉にハジメの方を見る。その瞳は、もしかしたらという期待の色に染まっていた。

 

「そんな目で見なくても最初からそうするつもりだし、それに宿の人には色々とお世話になったしな」

 

 ハジメの答えを聞くとウィルに愛子、優花達全員が喜びを顕にしていた。

 

「喜んでないで、急いで町に戻るよ‼︎」

 

 そんな中、思いつめたような表情の愛子がハジメに問い掛けた。

 

「南雲君、黒いローブの男というのは見つかりませんか?」

「ん?………いや、さっきから群れをチェックしているんですが、それらしき人影はないです。まぁ、何処かに隠れてるかもしれませんが……」

「そ、そうですか……」

「先生、まずは町に向かう事を優先してください。黒いローブの男はその後です」

「まぁ、ご主じ……コホンッ、ハジメ殿の言う通りじゃな。妾も魔力が枯渇している以上、何とかしたくても何もできん。まずは町に危急を知らせるのが最優先じゃろ。妾も一日あれば、だいぶ回復するはずじゃしの」

 

 一同へ、後押しするようにティオが言葉を投げかける。若干、ハジメに対して変な呼び方をしそうになっていた気がするが……

 

「じゃあ、皆行くよ。ティオさん」

「ん、なん…⁉︎──ッ//」

 

 ティオが、魔力枯渇で動けないのでハジメがお姫様抱っこ状態でティオを持ち上げ移動する。

 その時のティオの表情は顔を隠しており余り見えなかったがユエとシア、そして優花がハジメをジト目で見ていた。

 

「「「…………」」」

「………?」

「…………//」

 

 背中に刺さる視線に疑問に思いながらもハジメは、そのままティオを運びながら下山した。そして一行は、背後に大群という暗雲を背負い、急ぎウルの町に戻っていった……

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