FGOで世界最強   作:紫道麻璃也

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ミュウ奪還①

 ユエとティオと優花は、商業区にて買い出し中だった。といっても、ハジメの〝宝物庫〟には必要なものが大量に入っているので、旅中で消費した分を少し補充する程度のことだ。したがって、それほど食料品関係を買い漁る必要はなく、三人は、商業区をぶらぶらと散策しながら各種のショップを冷やかしていた。

 

「……ん、この紅茶おいしい」

「そうじゃの〜」

「うちの店にも欲しいかもしれないわね」

「………店?」

「向こうの世界でレストランの娘だから私」

「なるほどのぉ〜」

 

 そして、買い物を終え、二人は近くのカフェでくつろいでいると……

 

「ぐへっ‼︎」

「ぷぎゃあ‼︎」

 

 すぐ近くの建物の壁が破壊され、そこから二人の男が顔面で地面を削りながら悲鳴を上げて転がり出てきた。更に、同じ建物の窓を割りながら数人の男が同じように悲鳴を上げながらピンボールのように吹き飛ばされてくる。その建物の中からは壮絶な破壊音が響き渡っており、その度に建物が激震し外壁がひび割れ砕け落ちていく。

 そして十数人の男が手足を奇怪な方向に曲げたままビクンビクンと痙攣して表通りに並ぶ頃、遂に、建物自体が度重なるダメージに耐えられなくなったようで、轟音と共に崩壊した。

 野次馬が悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らすように距離を取る中、ユエとティオと優花は聞きなれた声と気配に、その場に留まり呆れた表情を粉塵の中へと向けた。

 

「ああ、やっぱり二人の気配だったか……」

「あれ?ユエさんとティオさんに優花さん?どうしてこんな所に?」

「……それはこっちのセリフ……デートにしては過激すぎ」

「全くじゃのぉ~、で?ご主人様よ。今度は、どんなトラブルに巻き込まれたのじゃ?」

「………南雲ってやっぱりトラブル体質?」

 

 ユエとティオと優花が感知していた通り、粉塵をかき分けて現れたのは()()()()()()()()()()()()()()をしているハジメとシアだった。二人はそれぞれ武器を携えてユエ達のもとへ寄って来た。道化師の姿をしているハジメはともかく,可愛らしい服を着ていながら、肩に凶悪な戦鎚を担ぐシアの姿はとてもシュールだ。

 

「あはは、私もこんなデートは想定していなかったんですが……成り行きで……ちょっと人身売買している組織の関連施設を潰し回っていまして……」

「……成り行きで裏の組織と喧嘩?」

 

 呆れた表情のユエにシアが乾いた笑いをする。ティオと優花は、どういう事かとハジメに事情説明を求めて視線を向けた。

 

「まぁ、ちょうど人手が足りなかったんだ。説明するから手伝ってくれない?」

 

 そう言いながらいつの間にか出していた懐中時計を懐に仕舞いながら、地面に転がる男達を通行の邪魔だとでも言うように瓦礫の上に放り投げていくハジメ。積み重なっていく男達を尻目に、ハジメは、ユエとティオに何があったのか事情を説明し始めた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 商業区の中でも外壁に近く、観光区からも職人区からも離れた場所。公的機関の目が届かない完全な裏世界。大都市の闇。昼間だというのに何故か薄暗く、道行く人々もどこか陰気な雰囲気を放っている。

 そんな場所の一角にある七階建ての大きな建物、表向きは人材派遣を商いとしているが、裏では人身売買の総元締をしている裏組織〝フリートホーフ〟の本拠地である。いつもは、静かで不気味な雰囲気を放っているフリートホーフの本拠地だが、今は、騒然とした雰囲気で激しく人が出入りしていた。おそらく伝令などに使われている下っ端であろうチンピラ風の男達の表情は、訳のわからない事態に困惑と焦燥、そして恐怖に歪んでいた。

 そんな普段の数十倍の激しい出入りの中、どさくさに紛れるように頭までスッポリとローブを纏った者が二人、フリートホーフの本拠地に難なく侵入した。バタバタと慌ただしく走り回る人ごみをスイスイと避けながら進み、遂には最上階のとある部屋の前に立つ。その扉からは男の野太い怒鳴り声が廊下まで漏れ出していた。それを聞いて、ローブを纏った者のフードが僅かに盛り上がりピコピコと動いている。

 

「ふざんけてんじゃねぇぞ!アァ⁉︎てめぇ、もう一度言ってみやがれ!」

「ひぃ!で、ですから、潰されたアジトは既に五十軒を超えました!襲ってきてるのは二人組が一組と三人組です‼︎」

「じゃあ、何か?たった五人のクソ共にフリートホーフがいいように殺られてるってのか?あぁ?」

「そ、そうなりまッへぶぁ⁉︎」

 

 室内で、怒鳴り声が止んだかと思うと、『ドガッ!』と何かがぶつかる音がして一瞬静かになる。どうやら報告していた男が、怒鳴っていた男に殴り倒されでもしたようだ。

 

「てめぇら、何としてでも、そのクソ共を生きて俺の前に連れて来い。生きてさえいれば状態は問わねぇ。このままじゃあ、フリートホーフのメンツは丸潰れだ。そいつらに生きたまま地獄を見せて、見せしめにする必要がある。連れてきたヤツには、報酬に五百万ルタを即金で出してやる!一人につき、だ!全ての構成員に伝えろ!‼︎」

 

 男の号令と共に、室内が慌ただしくなる。男の指示通り、組織の構成員全員に伝令するため部屋から出ていこうというのだろう。耳をそばだてていた三人のフードを着た者達は顔を見合わせ一つ頷くと、一人が背中から戦鎚を取り出し大きく振りかぶった。

 そして、室内の人間がドアノブに手をかけた瞬間を見計らって、超重量の戦鎚を遠心力と重力をたっぷり乗せて振り抜いた。

 爆音を響かせて、扉が木っ端微塵に粉砕される。ドアノブに手を掛けていた男は、その衝撃で右半身をひしゃげさせ、更に、その後ろの者達も散弾とかした木片に全身を貫かれるか殴打されて一瞬で満身創痍の有様となり反対側の壁に叩きつけられた。

 

「構成員に伝える必要はありませんよ。本人がここに居ますからね」

「ふむ、外の連中は妾達で引き受けよう。手っ取り早く、済ますのじゃぞ?シア」

「やっちゃってくださいシアさん!」

「わっかりましたですぅ‼︎」

 

 今しがた起こした惨劇などどこ吹く風という様子で室内に侵入して来たのはシアとティオと優花だ。いきなり、扉が爆砕したかと思うと、部下が目の前で冗談みたいに吹き飛び反対側の壁でひしゃげている姿に、フリートホーフの頭──ハンセンは目を見開いたまま硬直していた。しかし、ティオと優花の制圧をシアに任せる声に我に返ると、素早く武器を取り出し構えながらドスの利いた声で話しだした。

 

「……てめぇら、例の襲撃者の一味か……その容姿……チッ、リストに上がっていた奴らじゃねぇか。シアにティオ………ユウカだったか?あと、ユエとかいうちびっこいのもいたな……なるほど見た目は極上だ。おい、今すぐ投降するなら、命だけは助けてやるぞ?まさか、フリートホーフの本拠地に手を出して生きて帰れるとは思ってッ⁉︎『ズドンッ‼︎』グギャアアア!?!」

 

 好色そうな眼でシアとティオと優花を見ながらペチャクチャと話し始めたハンセンに、シアは冷め切った眼差しを向けて問答無用にショットガンを撃ち放った。飛び出した無数の鉄球によりハンセンは右腕を吹き飛ばされた状態で錐揉みしながら背後の壁に激突し、絶叫を上げながら蹲った。

 騒ぎを聞きつけて本拠地にいた構成員達が一斉に駆けつけてくるが、ティオが炎系魔法で階段を灰に変え上階へと至る道を無くしたため立ち往生する。更に〝ブレス〟縮小版を横凪に打ち払い、七階をハンセンの部屋を除いて全て消し炭にした。風通しどころか、見通しも良くなったフリートホーフの本拠地、茫然と上階を見上げる構成員達に、ティオは、風刃や炎弾をマシンガンの如く撃ち放っていく。

 優花も腰のポーチからナイフを取り出して男達に向けて投げた。ナイフには麻痺毒が塗布されており、掠るだけでも四肢が思い通りに動かなくなり倒れてしまう特注品だ。そしてポーチから投げられるナイフによる被害を受けたが一部の男達はナイフが尽きるのを障害物に身を隠しながら機を伺う膠着状態だ………だが、いつまで経っても優花が投げるナイフが無くなる様子が無い。何故かと言えば、それは作戦の別れる前にハジメが優花に渡した手袋が原因だ。手袋には〝複製〟という技能を付与しているからで、ポーチ内に入れている麻痺毒付きのナイフを複製して男達に向けて投げているのだ。

 容赦の欠片もない攻撃に、構成員達は蜘蛛の子を散らすように逃走を図るが……それが叶うものは少ないだろう。

 ティオと優花が、外の構成員を一手に引き受けている間に、シアは、ドリュッケンを肩に担いだまま、悲鳴を上げてのたうつハンセンにツカツカと歩み寄ると、ドリュッケンを腹に突き落とした。「ぐえぇ」と苦悶の声を上げて何とか大槌を退かせようとするが、超重量のドリュッケンを片腕でどうこうできる訳もなく、ハンセンに出来たことは、無様に命乞いをすることだけだった。

 

「た、たのむ。助けてくれぇ!金なら好きに持っていっていい!もう、お前らに関わったりもしない‼︎だからッゲフ⁉︎」

「勝手に話さないで下さい。あなたは私の質問に答えればいいのです。わかりましたか?分からなければ、その都度重さが増していきますので……内臓が出ないうちに答える事をオススメしますですよぅ?」

「……シアよ。お主、やっぱりご主人様の仲間じゃの……言動がよう似とるの〜」

「………『特性:ハジメ』って感染するの?」

「………かもしれんのぅ」

 

 後ろを振り返りながら、ツッコミを入れるティオと優花の言葉はさらっと無視して、シアはハンセンにミュウの事を聞く。ミュウと言われて一瞬、訝しそうな表情を見せたハンセンだが、海人族の子と言われ思い至ったのか少しずつ重さを増していくドリュッケンに苦悶の表情を浮かべながら必死に答えた。どうやら、今日の夕方頃に行われる裏オークションの会場の地下に移送されたようだ。

 ちなみに、ハンセンはシアとミュウの関係を知らなかったようで、なぜ、海人族の子にこだわるのか疑問に思ったようだ。おそらく、シア達とミュウのやり取りを見ていたハンセンの部下が咄嗟に思いつきでシアの誘拐計画を練って実行したのだろう。元々、シアはフリートホーフの誘拐リストの上位に載っていたわけであるから、自分で誘拐して組織内での株を上げようとでもしたに違いない。

 シアは、首のチョーカーに手を触れて念話石を起動すると、ハジメに連絡をとった。

 

〝ハジメさん、ハジメさん。聞こえますか?シアです〟

 

〝…………シア。ああ、聞こえる。どうしました?〟

 

〝ミュウちゃんの居場所が分かりました。ハジメさんは今、観光区ですよね?そちらの方が近いので先に向かって下さい〟

 

〝了解した〟

 

 シアは、ハジメに詳しい場所を伝えると念話を切った。既にドリュッケンの重さで呼吸もままならないのか、青紫っぽい顔色になっているハンセン。シアは、ドリュッケンにかけた重力魔法を解いて、通常の重さに戻すとハンセンの上から退かせて肩に担いだ。ドリュッケンの重さからは解放されたものの、既に出血多量で意識が朦朧とし始めているハンセンは、それでも必死にシアに手を伸ばし助けを求めた。

 

「た、助け……医者を……」

「子供の人生を食い物にしておいて、それは都合が良すぎるというものですよ……それにあなたのような人間を逃したりしたら、ハジメさんとユエさんに怒られてしまいます。というわけで、さよならです♪」

「や、やめ!」

 

 迷いなくドリュッケンを振り下ろしたシアは、振り下ろしたドリュッケンを勢いよく振り回して付着した血を吹き飛ばすと再び背中に背負い、ティオと優花に向き直った。

 

「ティオさん、優花さん。ここは手っ取り早く潰して、早くハジメさん達と合流しましょう!」

「う、うむ……シアも大概容赦ないのじゃ……」

「………シアさんは怒らせたくないですね………」

「?……何か言いました?」

「「な、何でもないのじゃ(ないよ)〜」」

 

 ボソッと呟かれた言葉に反応して笑みを返すシアにティオは冷や汗を垂らしながらシラを切り、優花は『触らぬ兎に祟りなし』とし、フリートホーフ本拠地の破壊活動に勤しむ。

 シアとティオ、優花が立ち去った後には、無数の屍と瓦礫の山だけが残った。〝フリートホーフ〟フューレンにおいて、裏世界では三本の指に入る巨大な組織は、この日、実にあっさりと壊滅したのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「…シア達の所は心配無用だな」

「……ん」

 

 シアから念話をもらったハジメとユエは、情報の場所に急行していた。ミュウがオークションに出される以上、命の心配はないだろうが精神的な負担は相当なもののはずだ。奪還は早いに越したことはない。

 目的の場所に到着すると、その入口には二人の黒服に身を包んだ巨漢が待ち構えていた。ハジメは、騒ぎを起こしてまたミュウが移送されては堪らないと思い、裏路地に移動すると錬成を使って地下へと侵入しユエと共に、気配遮断を使いながら素早く移動していく。

 やがて、ハジメは地下深くに無数の牢獄を見つけた。入口に監視が一人が居眠りしており、その監視の前を素通りして行くと、中には、人間の子供達が十人ほどいて、冷たい石畳の上で身を寄せ合って蹲っていた。十中八九、今日のオークションで売りに出される子ども達だろう。

 

「…完全にクロだな(基本的に、人間族のほとんどは聖教教会の信者であることから、そのような人間を奴隷や売り物にすることは禁じられているはずだ。人間族でもそのような売買の対象となるのは犯罪者だけで、神を裏切った者として、奴隷扱いや売り物とすることが許されるらしいが、眼前で震えている子ども達が、そろってそのような境遇に落とされべき犯罪者とは到底思えねぇし、正規の手続きで奴隷にされる人間は表のオークションに出されるが、ここにいる時点で、違法に捕らえられ、売り物にされていることは確定だな…)」

 

 そして、ハジメは、突然入ってきたことに怯える子ども達と鉄格子越しに屈んで視線を合わせると、静かな声音で尋ねた。

 

「ここに、海人族の女の子はいなかった?」

 

 てっきり、自分達の順番だと怯えていた子ども達は、予想外の質問に戸惑ったように顔を見合わせる。牢屋の中にはミュウの姿はなかった。そのため、ハジメは、他にも牢屋があるのか、それとも既に連れ出された後なのか、子ども達に尋ねてみたのだ。

 しばらく沈黙していた子ども達だが、ハジメの隣りにユエがしゃがみ込み優しげな瞳で「……大丈夫」と呟くと、少し安心したのか、一人の七、八歳くらいの少年がおずおずと質問に答えた。

 

「えっと、海人族の子なら少し前に連れて行かれたよ……お兄さん達は誰なの?」

 

 やはり、既に連れて行かれた後かと眉を顰めたハジメは、不安そうな少年に向かって簡潔に優しく笑みを浮かべながら返した。

 

「君達を助けに来た」

「えっ⁉︎助けてくれるの!」

 

 ハジメの言葉に、驚愕と喜色を浮かべて、つい大声を出してしまう少年。その声は薄暗い地下牢によく響き渡った。慌てて口を両手で抑える少年だったが、監視にはばっちり聞こえていたようで「何騒いでんだ‼︎」と目を覚ましてドタドタと地下牢に入ってきた。

 そして、ハジメ達を見つけて、一瞬硬直するものの「てめぇら何者だぁ⁉︎」と叫びながら短剣を抜いて襲いかかる。それを見て、子ども達は、刺されて倒れるハジメとユエの姿を幻視し悲鳴を上げた。

 だが、そんな事はありえなかった。ハジメは、突き出された刃物を左手で無造作に掴み取り、そのまま力を込めて短剣の刃を粉々に砕いてしまった。

 ハジメが、手を広げるとバラバラとこぼれ落ちる刃の欠片。監視の男は、それが何なのか一瞬理解出来なかったようでキョトンとした表情をすると、手元の短剣に目を落とした。そして、柄だけになっている姿を見て、ようやく何が起こったのか理解し、「なっ、なっ」と言葉を詰まらせながら顔を青ざめさせて一歩後退った。

 

「悪いね、僕は錬成師でもあるんだ」

 

 ハジメは、問答無用で一歩詰めると男の頭を鷲掴みにし、そのまま地面に叩きつけた。

 その光景に子ども達は目を丸くして驚いている。そんな視線にもお構いなしにハジメは、錬成で鉄格子を分解してしまう。子ども達の目には、一瞬で鉄格子を消し去ってしまったように見えたため更に驚いてポカンと口を開いたまま硬直してしまった。

 

「ユエ、悪いけどこの子達を頼める?僕は、どうやらもう少し暴れなきゃならないみたいだ」

「ん……任せて」

「もうすぐ保安署の人達も駆けつけて来るだろうし、その人達に預ければいいかな。イルワ支部長が色々手を回してくれるだろうし……細かい事は、あの人に任せよう」

 

 ユエが、若干、同情するような眼差しで遠くを見た。それはギルド支部がある方角だった。実は、ここに来る前に、適当に捕まえた冒険者にイルワ宛の念話石を届けてもらい、事の次第をイルワに説明しておいたのだ。

 

「申し訳ないけど、ランク金は役に立つよ」

 

 ちなみに、イルワの方から念話石を起動することは出来ないので、彼は一方的にハジメから、巨大裏組織と喧嘩しているという報告と事後処理もろもろ宜しくという話を聞かされ、執務室で真っ白になっていたりする。

 ハジメは、再び、地下牢から錬成で上階への通路を作ると子ども達をユエに任せてオークション会場へ急ごうとした。と、その時、先ほどの少年が呼び止める。

 

「兄ちゃん!助けてくれてありがとう‼︎あの子も絶対助けてやってくれよ!すっげー怯えてたんだ………俺、なんも出来なくて……」

「……」

 

 自分の無力に悔しそうに俯く少年の頭を、ハジメはわしゃわしゃと撫で回した。

 

「わっ、な、なに?」

「ま、悔しいなら………守りたいなら強くなればいい。今回は、僕がやっとくよ。次、何かあれば君が守ってくれ」

 

 そう少年に言うと、ハジメはさっさと踵を返して地下牢を出て行った。 呆然と両手で撫でられた頭を抑えていた少年は、次の瞬間には目をキラキラさせて少し男らしい顔つきでグッと握り拳を握った。ユエは、そんな少年に微笑ましげな眼差しを向けると、子ども達を連れて地上へと向かったのだった。

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