3/5のデュエルプレイス   作:鎌足大

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第一章『邂逅』
ようこそデュエマシティへ


Side大輔

 

 光が霧散していくと俺がいたのは先ほどの空間ではなく大きな港。潮風と磯のにおいが鼻につーんとくるが嫌いじゃない。元々海町の育ちだしな。

 

「あっ!見つけましたよ!」

 

 向こうから女の子が走ってくる。長い赤毛にアホ毛がピョコピョコ揺れている。

 

「始めまして、私ナビゲーターのコッコ・ルピコと申します!」

 

 知ってる。けどあえて知らないふりをする。

 

「霧布田大輔だ。君が案内してくれるのか?」

 

「はい!市長より私が大輔さんの案内役を命じられました。大輔さんがこのデュエマシティに居住するに当たっての住居にはすでに荷物が運び込まれています。あとで確認してください」

 

 となるとあの下級神のお兄さんが用意した物もすでに配送済みか。ついたら早速確認しないとな。

 

 そのあとはルピコに連れられて新居に着くまでにシティの案内をしてもらった。

 

 天高くそびえる『試練の塔』、様々なイベントが開催される『バトルアリーナ』、ショッピングモールに商店街、カードショップなど色々連れられて新居に到着した。

 

「ここが大輔さんの新しいお家です!」

 

 ………神様や、住処は用意してほしいとは言ったけどさ、プールやテニスコート、さらには芝生の庭付きの豪邸はやり過ぎでしょう。どんだけ大盤振る舞いしてくれたの!?

 

「ビックリしました。大輔さんって実はお金持ちだったんですか?」

 

「………チョットツテガアッテネ」

 

「声裏返っていますよ!?」

 

 とりあえず家の中に入ろう。

 

 ………内装もめちゃくちゃゴージャス。これ完全に一人向きじゃねぇよ。やっべーな友達とか出来たら庭でBBQとかパーチーやり放題じゃん。

 

 リビングには段ボールがいくつかある。中身を開ければ緩衝材で梱包されたスマホとタブレットがあった。両方用意してくれるとはサービス良いな。

 

 資金の方は、シティではDP(デュエポイント)が電子マネーとして流通しているそうだ。ちなみに1DP=10円で換算されている。

 

 スマホのアプリに表示されたDPの残高は一千万DP………円換算で一億!?高校生が持って良い額じゃねぇ!!

 

 とりま贅沢三昧でもしない限りは数年は普通に暮らせるな。デュエルすればデュエリストレベルに応じてポイント入るって言ってもいたからな。

 

 よしっ、最悪明日の昼までに荷ほどき済ませて街に繰り出して買い物とデュエル三昧するぞ。今から楽しみだ。

 

 まずはショップでカード生成して、『スパゲ』と『サイブレ』は確実にほしい。デッキは到着時に五文明のBASICデッキ貰ってるし、パックも買って改造しまくるぞ。

 

 ウキウキ気分で荷ほどきをするそのときだった。

 

 突然庭で何かが光ったと同時にザバーンッ!と大きな音が聞こえた。プールの方か?

 

 慌ててプールに出てみるとそこには、プールの真ん中に女の子が浮いていた。

 

 

親方っ、プールに女の子が……!!

 

 

 ってバカ言ってる場合じゃねぇ!慌ててプールに飛び込んで女の子をプールサイドまで引っ張ってくる。

 

 濃いセミロングの赤髪に青のセーターと緑のスカートから伸びる足は黒ストッキングで覆われている、どこかの学校の制服か?首にはヘッドホンをしている。

 

 ……………ん?まさかな(汗)だってここデュエプレの世界ぞ。作品違うぞ。でもコラボしてたし………。

 

 とりあえず早々に救急車を呼んで貰って彼女を病院に運んで貰った。念のためにルピコにも連絡を入れておこう。

 

 

 

病院―――――

 

「気絶しているだけですから時期に目覚めるでしょう」

 

 お医者の先生から経過を聞いてほっと胸をなで下ろした。来ていた制服姿から病院服に替わっている。

 

 ルピコを呼びつけて服やらの調達を頼んだ。シャツやズボンはともかく下着類を男が買うわけにも行かないしな。ヘッドホンは電気屋に修理に出した、直ると良いんだが。

 

 しかし改めてみると………似ている。転生前に読んでいたあの漫画のヒロインの一人に。

 

 世の中には同じ顔の人間が5人いる………てかあのヒロイン達は五つ子姉妹だから全員が同じ顔だ。そしてこの娘はその中の一人に似ている。

 

 『五等分の花嫁』。生前の俺が読んでいた漫画で、成績が悪くて転校した五つ子姉妹に同級生で成績トップの主人公との勉強や恋のラブコメ漫画だ。この娘はそのヒロインの五つ子姉妹の三女・中野三玖にそっくりだ。そして俺の推しヒロインでもある。

 

 戦国武将が好きな歴女で。好きな武将は『武田信玄』。俺個人としては『織田信長』を推したい。信長生存ルートのラノベ好きだったし。

 

 でも彼女は主人公と結ばれなかった。一番可能性高かったのにな。

 

 お触りは本来厳禁なのだが、柔らかそうな彼女の髪をそっとなでる。

 

「ん………」

 

 おっと気がついたか。

 

「知らない、天井……ここ、どこ?」

 

「病院のベットの上だぜお嬢さん」

 

「っ!……だ、誰?」

 

「あんたが現れた家の家主、そんでもって救急車呼んだ張本人。霧布田大輔だ、君の名前は?」

 

「………中野、三玖」

 

 やっぱりそうか。彼女はやっぱりあの中野三玖だ。

 

「家は?家族はいるのか?」

 

 とりあえず当たり障りのない質問をしよう。しかしきょとんとした彼女から発せられた言葉は、

 

「判らない。家族がいたのかも、家がどこなのかも」

 

 ……………マジすかッ!?

 

 驚いたところでタイムリーにスマホのバイブに気付く。表示された電話アプリの画面には『転生担当の下級神』と表示されていた。

 

 廊下に出てすぐ応答に答える。

 

『どうも先ほどぶりです』

 

「やっぱりあんたか。どこぞのスマホ太郎みたく神様が気軽に電話してきても良いのか?」

 

『本来はダメですが少々緊急事態がありまして。そちらに中野三玖さんいらっしゃいますね?『五等分の花嫁』のヒロインの一人の』

 

「やっぱり本人か。今病院、それと名前以外記憶を失っている、どうなってるんだ?」

 

『実はあなたを殺した屑神の余罪が発覚しましてね。彼女の運命に関することにも死につながる改変をしていたのです』

 

 なんだって!?……会ったことはないがあのクソ神めぇ!!

 

『ギリギリでしたよ。彼女が車に轢かれる寸前で我々の元に転移させたのです』

 

 ナイス判断、あんた出世できるよ!

 

『でも問題がそのあとでして―――――』

 

 

 

Side三玖

 

 スマホが鳴って男の人が病室を出て行った。

 

 頭を枕に預けて再び天井を見上げた。もう一度自分の関する記憶を思い出そうとするけど、名前と歴史が好き以外は思い出せない。あのときの転移特典が機能してしまっている。

 

 

 

三玖がデュエプレ世界に来る少し前―――――

 

「と言うわけでして、あなたはこちらの不手際で危うく死ぬところでした。本当に申し訳ありません!」

 

 さっき車に轢かれそうになったのは人の運命を勝手に書き換えた神様によるもので、私は本来ならフータローと四葉を祝福していたそうだ。

 

「今運命を本来の軸に戻す作業をしています。その作業が終われば元に世界に戻し「……イヤ」えっ?」

 

 帰りたくない。たとえ介入されたことでも一度でもなんなことを考えついた自分が汚くて嫌だ。元の運命に戻っても、ちゃんと二人を祝福できる自信がない。

 

「大丈夫ですよ。戻れば記憶だってリセットされますし」

 

「それでも帰りたくない!」

 

「う~む………なら他の世界へ転移してみますか?」

 

 他の世界?

 

「世界は無数に存在しています。そんな中の世界に一度飛び込んで頭冷やすのも手でしょう。こちらの不手際もありますし転移特典もおつけします。もし死にそうになったら強制的に元の世界に戻しますからね」

 

 他の世界に行ける。ちょっと興味がある。頭冷やすぐらいならちょうど良いかも。

 

 受け取ったバインダーとペンで自分の希望を書き込んだ。

 

 

・戦国武将に会える世界

 

・歴史が変わっても問題ない世界

 

・体力無限

 

・武術の達人

 

 

 運動得意じゃないからこれぐらい良いよね?

 

 神様にバインダーを返して違う世界に送って貰おうとしたそのときだった。

 

 突然私の身体に激痛が走り、変な模様が蛇が這うように私の身体に浮かんできた。

 

「これは………まさか神紋の呪い!?バカな、上級神しか使えない呪いがなぜ………まさか、あいつは囮で他に黒幕がいてこうなること読んで彼女に呪いを……」

 

 呪い?よくわからないけど自分に大変なことが起こっていることだけは理解できた。

 

「ムムッ!特典要望の願いが勝手に変わっていく!?」

 

 

・中野三玖の名前と自身のこと以外の記憶を抹消

 

・中野三玖の元いた世界での存在を消去

 

・記憶が戻らなければ元いた世界には帰れない

 

・記憶が戻る方法は********

 

 

「解析不能の願いまで、このままでは。……………しょうがない、不本意だと思いますが現状信用できる人の元へ転移させます。彼も今回のことの被害者です。別の世界であなた方の活躍は物語として知られています。彼はその物語が好きだ。あなたのことだって理解しています。転移後には私の方から彼に連絡して保護を頼みます。大丈夫、彼もあなたがしてきた努力を肯定してくれる人です」

 

 私を……肯定………認めてくれる人?彼の…ように………*****のように、あれ?*****って誰だっけ?

 

 気を失った私は、次に目を覚ましたときには病院のベットの上だった。

 

 

 

Side大輔

 

『と言うわけで彼女は真犯人の呪いで元いた世界の記憶も存在も消されてしまいました。どうやら彼女の運命を変えたときに時限式の呪いをかけていたようです。霧布田さん、彼女の理解者の一人としてお願いします。いつまでになるか判りませんが彼女の保護をお願いします!』

 

 なんてこった。彼女の記憶がなくなるだけではなく、元の世界での存在まで消されるなんて………どこのクソッたれだ?あんな良い娘を、あんなに一途な娘を、あんなにも頑張り屋の彼女の人生狂わせた神はっ!?

 

「…………判った。彼女は責任を持って保護する」

 

『差し上げたDPに追加入金をします。預かって貰うのですから可能な限りのサポートをします。それと保護に当たって、あなた方に追加の加護を与えます。あなたもこの加護のことは知っているはずです。その加護とは――――』

 

 付与された加護は、この世界においてハイリスクハイリターンの加護だった。

 

 

 通話を切って再び病室に入った。彼女はベットに横たわってずっと外を見続けている。

 

「………事情聞いたよ」

 

「そう……」

 

「君のことを任された。退院したら俺ン家こいよ。新築同然で個室もある。芝生の庭にプールも完備された豪邸「君は……」ん?」

 

「君は私のこと知っているんだよね?」

 

「………知っている。中野三玖、五つ子姉妹の三女で、歴史や戦国武将が大好きで、口数は少ないけど芯が強くて優しくて、姉妹では誰よりも努力してきた」

 

「私は不要だったのかな?記憶も存在もなくなって、元の世界にも帰れない。仲のよかったその姉妹のことも、大切な人たちのことも………私がいらないから消えちゃっったのかな?」

 

 泣いている。無理もない、帰る場所もなく頼れるのは初対面で自分のことを知っている異性。不安がないはずない。むしろ不安しかないだろう。俺自身その不安を取り除けるかも判らない。

 

 でもやるしかないんだ。そうでないと彼女は――――

 

 

『神紋の呪いは今は落ち着いていますが、強い不安を感じると恐らく再発して彼女の命を奪います。出来るだけ彼女の不安を取り除いてください。そのためにあなた方にこの加護を授けます。かつて『ザキラ』率いる『ガルド』の26人達が有していた『真のデュエル以外で死なない肉体』、そしてこちらの采配で『寿命以外では死なない肉体』。まず死ぬことはありませんが激痛はしますので注意してください』

 

 

 俺がなるんだ、彼女の―――――三玖の安息の地に。

 

 泣いている三玖を力一杯抱きしめる。自分がここにいると示しているかのように。

 

「い、痛いよ………」

 

「痛いよな。でも痛いってことはそこにちゃんと存在しているんだ。いらない存在?んなもんクソくらえだ。俺が居場所になってやる。嫌なことがあれば聞いてやる!泣きたいなら背中でも胸でも貸してやる!一人が嫌なら側にいてやる!生きていて、ずっと独りぼっちなんてことはない。俺は、俺だけは三玖の味方でいてやる!」

 

「………信じて、いいの?」

 

「言っただろ、俺は三玖の味方だ。相手が神だろうが大魔王だろうが、俺が三玖を守ってやる!」

 

 後ろに手が回った。三玖も俺を抱き返してきた。少しは信頼してくれたかな?

 

「私、迷惑沢山かけるかもしれないよ?」

 

「迷惑上等、乗りかかった船だ」

 

「家事やお料理も、上手く出来る自信ない」

 

「俺だって得意じゃねぇ、少しずつ二人で覚えていこう」

 

「私普通の女の子より変わっているよ?好きなのはイケメンの俳優とかじゃなくて髭のおじさんだし」

 

「戦国武将はかっこいいだろ。俺は信長が好きだ。あの人の自由な生き方と生きていたらのIFは想像しただけでワクワクする」

 

 記憶を失っても人と変わっているところはやっぱりコンプレックスになっているな。

 

「個性なんて人それぞれだ。世の中には女装趣味の男だっているし、男装趣味の女だっている。確かに変わっているがそれがそいつらの個性ってヤツだ。戦国武将が好きな歴女なんて比べたら小さい小さい。俺なんか転生前から子供向けのカードゲームやってるんだぜ。だからこの世界に来た」

 

「カードゲーム?」

 

「そう、激しく熱かりしカードバトル『デュエル・マスターズ』。この世界はデュエマが盛んに行われている世界だ。老若男女問わずにだ。興味があるなら教えるぜ」

 

 正直言ってデュエマに興味持ってくれれば話の種になる。話題さえあれば会話も続くしな。

 

「私でも、出来る?」

 

「基礎からきっちり教えてやるよ」

 

 こうして俺と三玖の間につながりが出来た。

 

 ちなみにルピコは俺たちが抱き合っているのを見かけて終わるまで廊下でずっと待ってくれていたそうだ。すまん、パフェでも奢ってやるよ。

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