愛が欲しい一番星と愛を知りたい転生者   作:だんご大家族

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à la carte La carte2

 

 

〈センチュリースープ(仮)〉

 

 

 悠が部屋を出て行った後。

 

「…………」

 

 無言が部屋に満ちていた。誰も口を閉じている。視線は目の前のスープに釘付けだったが。

 一番に動いたのは食気でスカウトを受けたニノ。ゆっくりとスプーンを掴み、

 

「ま、待って!」

 

 アイの声でビクッと動きを止めた。

 

「な、なんですか? アイちゃん」

「……スープを飲む前に一つだけ、いいかな?」

 

 まだ何か言いたいことがあったのだろうか。

 ニノだけでなくミネとナベもアイに目を向ける。

 

「スープを飲む時は、覚悟して飲んで」

「はい?」

「その、ハルカの料理って時々、なんていうか凄いのが混じってて」

 

 グルメ食材のことは悠とアイだけの秘密。

 なのでアイは抽象的にしか言えなかったが、

 

「このスープもきっと凄いから……」

「凄い……」

「ぐ、具体的には……?」

「……さっきのニノちゃんの告白より、インパクトが凄いッ」

「「……っ」」

「だからなんでわたくしの告白と比べるんです!? ミネちゃんとナベちゃんも恐ろしい物と比べたみたいに息を呑まないでくれません!?」

 

 アイの例えは正確に伝わったのか、ミネとナベは絶句しゴクリと息を呑む。ニノだけは納得がいかないと文句を言うが、三人は意に返さない。だってそれだけの衝撃だったし。

 ひとしきりニノが騒ぎ、落ち着いて改めて、

 

「じゃあ、飲むわよ」

 

 ミネの一言に三人が頷いた。

 いただきます、と唱和してスプーンを手に取り、スープを掬う。濃厚な匂いがなければただのお湯にしか見えないスープ。それを口に含んだ。

 

 瞬間――口の中が爆発した。否、爆発したような衝撃を舌が文字通り味わった(・・・・)のだ。

 肉、魚、野菜、ありとあらゆる旨みが口の中に広がっていく。行儀が悪かろうがずっと口に含んでいたい、そんな気持ちになってしまうほどの美味しさに体中にビリビリと伝わっていく。

 

 

「な、なに、これぇ……」

 

 ミネは酔っぱらってしまったような、赤らめた顔でふにゃふにゃとした様相で呟く。

 

「んくっ……はぁ、はぁ……、ヤバい、美味しすぎて腰抜けるってどういうこと……!?」

 

 胸を押さえ、倒れないように押さえていない片腕で自分を支えるナベ。その腕もプルプルと震えている。

 

「――――」

 

 一口飲んだ姿勢で言葉も出ずに固まってしまってるニノ。

 

「か、覚悟してたしグルメ食材よりはマシだけど……美味しすぎだよハルカぁ」

 

 この中で唯一グルメ食材を何年も食べてきて、美味しい食事への耐性が付いていたアイでも今回の衝撃が強かったようだ。それでもグルメ食材を調理した料理に比べればまだ何とかなるようで、ゆっくりと一口二口とスープを飲んではにへら、と笑う。

 三人もそれぞれ大変なことになっているが、一分ほど経つとスプーンを持つ手の動きが再開される。

 四人全員が飲み切ると、

 

「ふ、ふへへ……」

「く、はー……ははっ……」

「ふふ、ふふふふ……」

「えへへ……えへへへへ」

 

 一息ついて笑い出した。部屋中に響くほど大きい笑い声。

 活動中にアイドルとして見せる笑みでもなく、嘘でできた作られた笑みでもない。心の底からの笑みを浮かべている。

 ミネが。ナベが。ニノが。そして、アイが。

 笑って、笑って、ひとしきり笑いあって――

 

「「「「おかわり!!」」」」

 

 全員、同時に叫んだ。

 しかし、おかわりをよそってくれる給仕(ハルカ)はいない。

 

「…………」

 

 全員、無言。

 ナベとミネが立ち上がり、キッチンから寸胴鍋を中身をこぼさないよう持ってくる。

 アイが皿をシンクに片付け、食器棚から深く大きい皿を新たに四皿テーブルに並べる。

 ニノが並べられた皿にスープをよそう。きっちり四等分……おっと、少し残ってしまったようだ。

 ポツリとニノが呟いた。

 

「おたま三杯分……」

 

 再び全員、無言。

 スープが冷めてしまう。即座に理解した四人は一糸乱れず、

 

「「「「じゃん・けん・ぽんっ!!」」」」

 

 腕を突き出した。さて勝敗は……、

 

「「「よっしゃー!!」」」

「チョキ……アイドルのチョキが負けた……」

 

 アイドルに相応しくない雄たけびをあげるミネ、ナベ、ニノ。

 アイドルを意識した結果負けて膝をつくアイ。

 

 多めによそわれたスープを満喫する三人。

 多めによそわれなかったスープを、それでも満喫してしまったアイ。

 

 飲み終わり、全員でごちそうさまと手を合わせて、

 

「いいもん! 今度ハルカに作ってもらうもん!」

 

 アイが盛大に火種に着火させた。

 なんですってー! ズルいわよアイ! とぐわんぐわん揺らすミネとナベ。

 えへへへ……あ待って、気持ち悪い……と笑いつつも次第に顔を青くさせるアイ。

 が、我慢ですアイちゃん! ……推しの嘔吐は、流石にイケ、ないわね……とよろしくない発想に至るクソ重ファンもといニノ。

 流石にドン引かれ、アイを隠すように守るミネとナベ。慌てて弁解するニノ。

 

 

 たった一杯のスープ。たった一度笑いあっただけなのに。

 四人の溝は消えてはいないが、それでも確実に薄くなっていた。

 

 

 

 

  ☆☆☆☆

 

 

 

 

〈お昼ごはん〉

 

 

「今日は何かな~」

 

 休憩室に備え付きのテーブルにお弁当を置いて椅子に座るアイ。ミネたち三人も向かいの椅子に座る。

 お弁当を取られ、何も食べる物がない悠もアイの隣に腰を下ろした。

 

「……なあ、コンビニで飯買いに行きたいんだが」

「ダメでーす」

「ダメよ」

「解説役なんだから、ここにいなさい」

「ふふふ……残念、回り込まれた。ですねお兄さん」

「なんでそこで息揃えるんだ。アイはともかく、仲良くなり過ぎだろう」

 

「全然? あたし、まだアイのこと好きじゃないし」

「アンタの目腐ってんの? アイのことなんて、末の子程度にしか扱ってないわ」

「相も変わらずアイちゃんは嫌いですよ~」

「そう見える? えへへ~」

 

「……、…………」

 

 口を開きかけたが、悠はもう何も言うまいと心に決めた。

 これが彼女たちの線引きというか割り切った結果なのだろう。

 それに、ニノを除いて誰も嫌い、なんて言ってないのだ。つまりはそういうことなのだろう。

 悠は溜息を吐き出し、言われた通りお弁当の中身を紹介した。

 

「まず汁物。大根と豆腐の味噌汁」

 

 拍子切りにした大根とさいの目切りにした豆腐を入れ細ネギを散らした白味噌の味噌汁。スープジャーに入れて持ってきているのでまだまだ温かい。アイはそのままスープジャーから飲み、悠の分を分けている三人は休憩室に常備してある紙コップに移して飲む。

 

「次におかず。だし巻き卵に余り野菜を入れたポテサラとレタスのサラダ。夕食で余ったアスパラと人参の端をバラ肉で巻いたアスパラベーコンもどき。あとは冷凍のきんぴらごぼう」

 

 綺麗に巻かれただし巻き卵はアツアツフワフワで薄めだがしっかりと味が付いている。アスパラと人参のバラ肉巻きは焼肉のタレで味を付けてありご飯との相性は抜群。付け合わせのポテサラも箸休めの役割を果たしてくれる。

 

「冷凍食品とは、お兄さんにしては手抜きでは?」

「手抜きは一般家庭に必要な技術だ。憶えとけお嬢様」

「ニノ、アンタはウチにもケンカを売ったわ。今度弁当の中身全部冷凍食品にして作ってきてあげるわ。首洗って待ってろ」

「飛び火が物騒!?」

 

 最後、これが今日のメイン。

 ご飯が入った容器を開けた途端、誰もが驚きの声をあげた。

 

「なにこれ!? イクラ!?」

「まさか、きゃ、キャビア……!?」

「黒くてキレー」

 

 容器の中には白米の上にイクラのような粒上の黒緑のナニかがたっぷりと乗せられていた。

 

「以前アイがイクラを食べたいと言っていたが、スーパーでもなかなか安く売ってたりタイムセールで値引きもされなくてな。仕方ないからそれっぽいものを海苔で作ってみた」

 

 さも理由を付けて自分で作ったように言っているがこの男。実際は『食戟のソーマ』原作で主人公が作った進化系のり弁を料理スキルに物言わせて再現してみただけだ。

 

「海苔でって、こんなのどうやって……」

「駄菓子にあっただろ。イクラみたいな球状のお菓子作るやつ。あれを参考にして作ってみた」

「ああ、あったわねそんな駄菓子。弟に買ってあげたことあったわ」

 

 反応したのはナベ。ミネも思い当たる節があるのか、

 

「あー、あの混ぜれば混ぜるほどってお菓子のシリーズね。あたしも覚えてる」

 

 と呟いていた。

 アイとニノは揃って首を傾げている。ついでにニノはアイとお揃いだったことに密かに興奮していた。お前さんアイ関係なら何にでも興奮するのな。

 

「上手く作れたから昼の弁当に持ってきてアイと二人で食べてみようと思ったんだが」

「いただきまーす」

「……うまっ、なにこれ海苔の佃煮より触感も白米との相性もいいじゃん」

「これは……っ、凄いですね。初めて食べました。上流階級の料理人では想像すらできないでしょうね」

「うま~(がつがつ)」

「聞けよ。はあ……そんなに勢いよくがっつくな。アイドルとしてはどうでもいいが、頬に米と海苔が付いている」

 

 アイの頬に付いた米粒と粒上の海苔を取って悠も一粒ずつだが食べる。一粒だが上手い具合に海苔のうまじょっぱさを閉じ込めることに成功していたので「まあいいか」と満足した様子で呟いていた。

 それをジトっとした見つめる視線が二つ。ドロリとした光のない瞳で睨む視線が一つ。

 反応するのも面倒な悠は食事が終わるまで三つの視線から目をそらし、アイだけを見つめるのだった。

 

 その後、事務仕事の合間に間食を取ろうとするたびに邪魔をされ、何も食べられず事務所内に腹の音を鳴らしながら仕事をする悠の姿があったそうな。途中で見かねたスタッフからお菓子を貰ったがことごとくをB小町に奪われていたのには、スタッフも朝とは違った視線を送るのであった。

 

 ――ぐぅ~。

 

「……腹へったなぁ」

 

 ドンマイ☆

 

 

 

 

  ☆☆☆☆

 

 

 

 

〈ミヤコさんへのご褒美〉

 

 

 ある日の斎藤家。

 テーブルを挟んで悠とミヤコが向かい合って座っていた。

 

「というわけで約束通り美容に良い食材を用意した」

 

 ドン! と悠がミヤコの座る前に並べる――というより広げた食材。

 きゅうりにナス、大根にキャベツ、トマトに小さなかぼちゃ。その他色々と、それはもう何十種類もの野菜がテーブルの上に所狭しと並べられていた。

 

「…………」

「…………」

「なに、これ」

「野菜」

「それは見たらわかるわよ……」

 

 悠の返答にミヤコは頭を抱える。

 久しぶりの、ほんっっっとうに久しぶりの一日完全オフの日。ミヤコは絶対何もしないと心に決めていた。スマホの電源も落とし、書類は全部自室に叩き込んで鍵をかけた。美容院とか行きたかったが、それは今度だ。……今度がいつになる事から全力で目をそらして。

 

 そうやって部屋で寛ぐミヤコの前に現れたのが目の前の悩みの種の一つもとい一人。

 夫の壱護がアイドルとしてスカウトし養子として引き取ったアイのおまけみたいに連れてきた少年。その実なかなかに優秀で家事に事務作業、最近では自分の下でマネージャー業までそつなくこなす。正直、今日一日休みが取れたのは悠の存在が少なからずあった。

 特に家事に関しては頭が上がらない。朝夕と、理由がなければほぼ毎日彼が作ってくれるのだ。事務所に籠らなければならない時はスタッフ全員に夜食まで用意してくれる。

 

 それだけなら特に問題はなかった。しかし、悠は存在自体が問題だった。

 一つは事務所一番の人気アイドルのアイに最も近い異性という点。一般人としてのアイであれば特に問題はなかった。だが、アイは徐々に注目され始めているアイドル。これが世間にバレれば大炎上は確実でファンだけでなく今現在契約を交わしている企業からも干され、良くて事務所が閉鎖程度、最悪それに借金まで上乗せされるだろう。

 

 もう一つは最近知った、というか知ってしまった、知りたくなかった真実。

 B小町所属のニノの正体を知った後におまけとばかりに聞いてしまった。聞きたくなかった。

 名桐悠の実母が日本料理界を牛耳る薙切仙左衛門の娘だということ。

 つまり名桐悠は食の魔王とも呼ばれる存在の孫なのだ。しかもニノの正体はともかく悠の正体は壱護にも知らせておらず、知っているのはニノとミヤコ、それと悠自身が伝えたというアイだけ。

 何度でも言いたい。ほんっっとうに知りたくなかった。

 

 意識を戻し、ミヤコは目の前の光景を見つめなおす。

 

「……約束ってことはあれよね? 美容に良い食材ってことよね?」

「ああ」

「それが野菜(コレ)?」

「ああ。とは言っても食物繊維がどうたらみたいな話じゃない」

 

 言うと悠は無造作に大根を手に取り、手元に置いていた包丁を握りピッと振るう。途端に葉の部分にあたる頭が切れ、皮もスルリと剥けた。

 

「またアニメみたいな技術を覚えてる……」

「なんかやってみたらできたので」

 

 輪切りで切り落としフォークを置いた皿に乗せる。それをミヤコの前に押し出し、

 

「ただ食べる前に一つだけ」

 

 一言続けて戻した。

 

「この野菜は全て栄養価が高すぎて問題点が一つあるんだ」

「栄養価が高いのは良いことでは?」

「良いことなんだが、だからこそ普通ではありえない問題が出る」

「……聞きましょう」

「消化が早すぎて、すぐトイ……確か、花摘みだったか? に行きたくなってしまうんだ」

「花摘みって、流石にそんなに早くは」

 

 隠語を理解したミヤコの否定に悠は首を振る。

 

「早いんだ。そこだけ気を付けて食べてほしい」

「……わかったわ」

 

 悠の言葉に頷くミヤコ。

 それを聞いて今度こそ大根の輪切りが乗った皿をミヤコの前に押した。

 

「いただきます」

 

 そのままで、と思ったが、こと料理に関して悠は決して妥協して提供することはない。フォークで大根を突き刺し、一口大に切って口に運ぶ。

 嚙んだ瞬間、まるで肉汁がしたたる肉を食べたかのように大根から瑞々しい旨味があふれてきて、ミヤコは思わず口元を押さえた。

 

(え、大根って生でもこんなに美味しかったかしら!? それに噛むほどにあふれてくる水分が……待って、水分っていうよりうどんやおでんのような出汁よこれ! あっさりとして、けれど優しい味……!)

 

 生で食べているはずなのに既に調理されたかのような味わいにミヤコは驚く。切り残していた残りもすぐに食べてしまった。

 

「こんな大根がこの世にあったなんて……おかわり貰えるかしら!?」

「たくさんあるんだ。まずは色々食べて、それから好きな物を選べばいい」

「そ、そうね。それじゃあ次をお願い」

 

 ミヤコの催促に悠が手に取ったのはきゅうり。両の先端を切り捨てそのまま皿に置いた。

 マルのままなんてと普段なら思うところだが、先程の大根の影響かミヤコは躊躇う素振りすら見せずきゅうりにかじりついた。

 

(このきゅうりも……噛んでも噛んでもカリッとした歯ごたえがまったく消えないわ! それに味付けもしていないのに初めから塩がかかっているみたいな程よいしょっぱさと旨味……たまらない!)

 

 カリカリカリときゅうりを食べ進めていくミヤコを見て悠は次の野菜を準備していく。ついでにこっそり悠も近くの野菜を食べる。

 

(本当に美味いよなベジタブルスカイ産の野菜は……正式名称を知らないのに生み出せるのがわかったのも儲けものだ)

 

 悠の言葉通り、テーブルに並べられた野菜は全てグルメ食材で、作中ではこの野菜を食べてベジタリアンになってしまった人がいると言及されるほど。

 

 各々の野菜の名称は知らなかったし、生み出した食材の中には悠が漫画で見たことがなかった野菜もあった。この事から、生み出せる物は正式な名前や形を知らなくても、『ベジタブルスカイの野菜』等といったある程度抽象的な表現でも大丈夫なことがわかった。

 

(麻薬系の違法食材や一部例外(・・)はあるが捕獲レベルの高すぎる食材は生み出せないが、制限が思った以上に緩いのが知れたのはよかった。これでアイにもっと色々食べさせてやれる)

 

 ――そのお礼も兼ねて今日は満足するまでミヤコさんに食べさせるか。

 なんて考えながら、悠は食材の説明と切り分けに戻るのだった。

 

 

 

 

 後日談というか今回の結果(オチ)

 

「……」 「……」

「……」 「――」

 

「社長。この案件なのですが……社長?」

「え? ……あ、ああ! そいつは通してくれ。それと」

「アイさんのスケジュール調整ならこちらに。名桐くん、頼んでいた書類は?」

「出来ています。先方へ送る資料も出来たので時間が空いた時に確認お願いします」

「早くて助かるわ、ありがとう」

 

 テキパキと仕事をこなすミヤコ。

 その様子に思わず魅入ってしまっている壱護とB小町の四人。いや、それだけではない。スタッフも今日は朝からミヤコとすれ違うたびに振り返り、仕事中もチラチラとミヤコを盗み見ているのだ。

 それもそのはず。一日休んだだけのミヤコが凄く綺麗になっているのだ。外見では特に変わった様子はない。なんていうか内側から輝いている。それがミヤコを見た全員の感想だった。今日は事務所で作業しているだけだが、外に出たら間違いなくナンパやスカウトされてしまうだろう。

 特に夫である壱護なんて朝からずっとミヤコを目で追いかけてしまっているのだ。

 

 B小町メンバーもそうだ。ただ、驚きはそれほど大きくはない。アイは昨日の内に悠との会話で聞いており、

 

『グルメ食材なら仕方ないね! 当然食べさせてくれるよね! ……ね?』

 

 と納得と催促していた。

 他の三人も驚いてはいたが、どちらかといえば、

 

「まーたアイツが料理でやらかしたか」

 

 程度のものだ。

 ただしミヤコがああなってしまった原因である悠に関しては、ミヤコに食べさせたであろう料理を絶対に作ってもらうと、標的を目の前にした肉食獣の顔でロックオンしていたが。

 

「おい悠」

「なにか?」

「昨日、休暇取っていたミヤコに会ってたんだよな」

「ああ」

「な、何をしてたんだ……?」

「何って」

「ま、まさかだとは思うが……ミヤコ相手に若いツバメでもしてたんじゃないだろうな……っ!」

「若いツバメ? ……ああ、そういう隠語か。それは自分よりもミヤコさん相手に失礼だろう」

 

 ミヤコがその場を離れると、不安になって問い詰めてきた壱護。胸元を掴まれ揺すられながら隠語に首を傾げるもすぐに理解し答える。

 ちなみに若いツバメとは年上の女性の愛人となっている若い男を指す俗語だ。確かにミヤコの方が年上だが悠を若いツバメと指すほどミヤコと歳が離れているわけではない。

 

 その後、誤解を解く悠とミヤコに疑いの目を向ける壱護に軽蔑の視線を送る三人。

 年下の少女からの視線と、

 

「今までも綺麗だったのが更に綺麗になった途端、不安になってる自分がいるんだよぉ!」

 

 都合の良い自分の感情に、壱護は床に崩れ落ちる。

 悠は愛がわからないなりに壱護を励まし、その後ろから壱護を煽るミネたち。

 そして、部屋に戻って視界に入った夫としゃがみこんで溜息を吐いている部下、調子に乗って煽っているアイドルを見て、ミヤコは仕方ないわね、といった風に笑うのだった。

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