愛が欲しい一番星と愛を知りたい転生者   作:だんご大家族

21 / 68
 えー、推しの子最新話見ました。
 感想はともかく、母親関連の流れをどうしようかと思いましたが、このまま当初の設定のまま行くことにします。細かく言えば書き始めた125話前後くらいの情報で。名前とか影響の少ない設定は付け足していくと思いますが。
 詳細が気になる方は原作の方を雑誌かネットで読んでください。今なら1話から20話までタダで読めるんで。(ダイマ)


 まあ、初めからオリ展開とか伝えているし、旧B小町メンバーの設定なんか根本からまったく違うから是非も(しかた)ないよネ。


六話

「違う……と言ったら、素直に回れ右して帰ってくれますか?」

「まさか。既に確認は取れている」

「でしょうね。──名桐悠です。そちらは?」

「我らは然る御方から君を探すよう命じられた。名前は好きに呼んで構わない」

「それでは黒服Aと。それで黒服Aは私に何の用でしょう? 黒服Aに話しかけられるなんて緊張してしまいますよ。あ、もしかして黒服Aはスカウトの類ですか? これでもある事務所に内定が決まってますので黒服Aの誘いには乗れません。黒服Aの次のスカウトに期待してますよ頑張れ黒服A負けるな黒服A。社会は厳しいぞ黒服A」

「っ……、花邑(はなむら)と、呼んでくれ」

「ああ失礼、黒ふ……花邑さん」

 

 最後にもう一度わざと名前を間違えてやると、息を呑むがすぐに変わらない対応で応じる。そこでキレて怒鳴るなり手を出すなりしてくれれば大事にして逃げ出したのに。

 それとアイ。後ろで「こんなに喋るハルカ初めて見た」とか呟かないで。意識を自分に誘導させたいから。

 とはいえ、流石にアイを後ろに隠したまま会話を続けるのはよくない。

 

「……へい、マイシスター」

「……なに? お兄ちゃん」

 

 普段絶対に言わないであろう突然のセリフに、それでも綺麗に合わせてくれるアイ。

 

「兄は少しこの黒服と楽しくない会話をしなくてはいけなくなった」

「借金でもしてたの? 地下労働施設に行っちゃうの? お兄ちゃんが行っちゃうのは嫌だな~」

「兄も嫌だ。だからこそ話し合いだ。そこでその間、近くのスタバで待っていてくれないか?」

「え……でも……」

 

 わずかに妹の演技からアイに戻る。

 

「大丈夫。兄も話を終えたらすぐに向かうから。この前話してくれたオススメカスタマイズを買って待っててくれ」

「……うん、わかった。早めに来てね?」

「ああ、約束だ」

 

 それでも嘘を突き通して、アイを行かせる。黒服たちもアイには用がないので目もくれず素通りさせる。

 ──と思った自分が愚かだった。

 

「──行け」

「はい」

 

 アイが人ごみに紛れると花邑さんが短い一言と顎をしゃくり、黒服の女の一人がスタバに向かおうとする。様子を見るだけか自分への対抗策として確保するか知らないが、

 

「手を出すなよ黒服B。じゃねぇと──潰すぞ

「ひっ……!?」

 

 アイは自分にとって泣き所であり──逆鱗だぞ。

 感情のままに圧を込めた一言に震え上がった黒服の女は怯えたままスタバの方へ向かっていった。

 花邑さんはサングラスのズレを直す。顔色は変わっていないが一筋の汗が流れている。

 

「部下を脅すのはやめてくれ。彼女には君の代わりに彼女の護衛をするよう指示しているんだ」

「誤解を招く指示を目の前で出す方が悪い」

 

 取り繕うことなく言葉を返す。

 やはりというかアイのことも調べてあるか。

 

「それはすまない。君としっかり話し合いをしたかったんだ。もちろん、彼女は……B小町アイは、君と会話する間、責任を以て警護する」

「……それで? 目立つ黒服を引き連れるだけじゃなく周りに私服の同僚を配備させて、食の魔王が自分になんの用だ?」

 

 要件を聞くと、後ろに引き連れた黒服どもが小声で騒ぐ。

 

 

「バレてる!? ガキのくせになぜわかったんだ!?」

「それ以上にご当主のことまで知っているだと!?」

「落ち着け、彼の近くには織崎(おりさき)家の娘がいる。彼女から聞いたんでしょう」

「それより静かに。対応は隊長に一任されているんです。我らは万が一の警戒を怠るな」

 

 

「そこまで知っているなら話は早い。薙切家現当主、薙切仙左衛門殿……信じられないかもしれないが、君のお祖父さんなんだ」

「……で?」

「君のことは何年も前から報告に挙がっていた。情報を何度も精査し、君が行方不明になっていた仙左衛門殿の愛娘、未那様の忘れ形見だと確証を得られたのが一、年と少し前。それからはずっと、我々は仙左衛門殿の命で君と接触できる機会を窺っていたんだ」

「……」

「どうだろう、仙左衛門殿と……お祖父さんと会ってはもらえないだろうか?」

 

 手を差し出される。

 いいえ、と言うのは簡単だ。アイを連れ出し黒服を撒いて逃げるのも簡単だ。

 だからこの際だ、と思った。差し出された手には触れず、自分は口を開く。

 

「質問が二つある」

「私がわかることであれば」

「一つ。どうして接触したのが今なんだ」

 

 黒服たちが所属しているのは日本料理界を牛耳っている家が組織する傘下だ。その影響力はかなりのもので、朧気になってきている原作の終盤では政府が相手でも懐柔と説得することを当主の一言で実行していた。そんな老獪が名前も付けられず棄てられていたとはいえ、何年も自分を放置していたのは何故だ。機会を窺っていたと言っていたが、その気になれば事務所や自宅、学校、果ては施設に面会を申し込むことはできたはず。

 

「確かに薙切家は日本でも有数の名家の一つだ。しかし、それでも手を出せない相手はごまんといる。悠くん関係で言うならばまず、君がいる事務所に所属しているグループB小町メンバーの藤乃様……ニノ様のご実家の織崎家」

 

 それは以前ニノ本人から直接聞いた。料理界では最古の家柄を誇る織崎家。原作では『東の紀ノ国。西の一色』と並び称され挙げられていた一色家も織崎家から見れば格下の名家らしい。何度も思うが、どうして名家のお嬢様が弱小事務所のスカウトを受けたんだ。そして壱護さん、よくそんなお嬢様をアイの踏み台にしようとしたな。

 

「彼女がいる苺プロダクションは間接的に織崎家の縄張りのようなものになっており、何度も君との接触を頼み込んだのだが最後まで許可が下りなかったんだ」

 

 つまり、互いに正体を知った時からニノが実家に働きかけて手を出させないようしてくれていたということか。

 今度、感謝しておくか。報酬にアイを要求したらアイアンクローをくれてやるが。

 

「なら事務所以外……施設はどうなんだ」

「施設はもっと難しい。とりわけ君が過ごした『未来の家』は四條家当主本人が直接運営している施設だ。迂闊に手を出しては一方的に被害を受けてしまうため、会話も見張りもできなかった」

「……」

 

 師匠、あなたの家があの魔王でさえ手が出せないなんて知らなかったんですが?

 だから市長が師匠の名付けをすんなり通しているのか。それぐらいなら安物だと……なら自分の苗字を変えたのって相当凄いことなのでは? 名前も知らない市長の株が上がった気がする。

 

 それにしても、と思う。自分が転生したのは本当に『食戟のソーマ』の世界なのだろうか。

 確かに薙切や遠月グループなどが存在しているため、間違ってはいないだろう。しかし、今の会話だけでも出てきた織崎家、四條家など原作には存在していない。自分が知らないだけで原作に登場していたり設定上では存在が仄めかされていた、だったのなら知らない理由付けに無理はない。

 

 それに原作原作と何度も言っているが──そもそも原作とは何だ?

 確かに同姓同名の人間がいる。同様の理念を掲げた組織が存在する。

 だが、記憶に残されている記録は全て、全て──漫画だ。

 創作物だ。大衆娯楽だ。誰かを楽しませるだけの消費物だ。

 

 ──違うだろ。

 

 この世界は現実だ。人も物も何もかも、原作(オリジナル)から派生した偽物(スピンオフ)じゃない。ちゃんと生きているんだ。

 だから、原作……いいや、『食戟のソーマ』とこの世界は違う存在だ。原作なんて道筋は存在しない。

 

 ああ、くそ。頭を振って閑話であろう考えを頭の隅に追いやる。こんないつでも考えられることなど考えてる場合ではなかった。

 自分は二つ、と次の質問に移った。

 

「魔王の娘……自分の母の行方は?」

「依然、行方不明だ」

 

 きっぱりと。

 初めから決められた回答を言うかのように、花邑さんは母親に対する質問に即答した。

 しかし、自分でも嘘だと見破れた。

 

「それはまだ調査中だからか? もしくは捜索を断念したからか? 或いは──」

「……」

「そもそも探す気などないから、か」

「ッ、ちが……」

 

 即座に否定しようとする。だが、それは悪手だ。

 

「前二つと違い反応したな。そういえば忘れ形見と言ってたなさっき。ああ、つまり薙切家では母は既に亡い者として扱っているか。身内であろうと容赦はしない、魔王の名は伊達ではないってことか」

「それは違う! 仙左衛門殿は確かに料理の対する評価は誰であろうと公平だが、家族の情に厚い方だ。決して未那様を……」

「それでも当主として判断を下したんだろう? だったらそれが答えだ」

「それは……!」

「それにニノから母、薙切未那について聞いたことがある」

「ッ……!」

 

 それはニノの正体を知ったあとの頃。

 興味本位で母のことを聞いたのだ。

 

『……未那様の情報は少なく、また、よい話を聞けませんでした。それでもいいですか? ……わかりました』

 

『お兄さんのお母様……薙切未那様は薙切仙左衛門様の長女に生まれました。兄に薙切宗衛様、妹に薙切真那様』

 

『薙切家に相応しい才覚を発揮し続け、現在も海外で躍進を続ける宗衛様。神の舌を持ち、幼少から国内外問わず味見役を依頼され評価されていた真那様』

 

『そして未那様は……何も。突出した才能も神の舌のような異能も何も持たない、ごく普通の女の子でした』

 

『普通の家でしたら……否、普通の家でも駄目ですね。優秀な兄と妹に挟まれ、周囲からの評価も低い』

 

『それでも未那様は奮起されたそうです。努力を重ねて小学生ながら料理コンクールで優勝もしたみたいです。……この方です』

 

『ええ、良いお顔です。その後、周囲の反対を押し切って遠月学園中等部に入学。高等部にも進学されました。……ですが』

 

『何かがあった。情報が見つからず、そう言うしかありませんが、結果的に未那様は遠月学園から行方を眩ませました。お兄さんが生まれ……遺棄されたのはそれから一年以内です』

 

『わかりません。遠月学園からの未那様の情報が抹消されているみたいで、記録はほぼ残されていないと調べた家の者が言ってました』

 

『ただ……二つだけ調べがついたことがあります』

 

『一つ。未那様が一度だけ食戟を……ああ、食戟とは……知っている? そうですか。食戟をした記録が残っていたそうです』

 

『勝敗は惨敗。その時の審査員の一人に……仙左衛門様が務めていたそうです』

 

『二つ。これはもう噂程度でしかありませんが……──』

 

 

「当時、母には蔑称(二つ名)が付けられていたらしいな──“薙切の出涸らし”と」

「何故それを……っ!?」

 

 花邑さんは思わず反応し、ハッとして口を抑える。どうやらニノが教えてくれた噂は本当だったのだと理解した。

 

「出涸らしってのは茶葉を何度も煎じたり煮出すなどで、味と香りが薄くなっていること。またはそうなったもの。……優秀な人間ばかり輩出している薙切でもどこかで才能が薄くなる。それが出涸らし(母だった)。そして母が生まれたことでリセットされたように再び優秀な妹が生まれてきた。……なるほど、言い得て妙な二つ名だ」

「貴様ァッ!」

 

 流石の忍耐を持つ花邑さんでも息子の自分が言った言葉は我慢できなかったようだ。胸倉を掴み上げられる。背後に立つ部下の黒服たちも驚いて止めようとしている。

 

「息子とはいえ、何も知らない貴様に何がわかるッ!? 未那様の苦悩も知らずに生まれてきた貴様がッ!!」

「隊長!」

「そうだ、あんたの言う通り、自分は母を知らない。生まれてすぐ捨てた母のことなんて……泣いてる顔しか覚えていない」

 

 目の前に迫る怒りを燃やす瞳を真正面から見つめ返す。

 自分の言葉に怒りが戸惑いに変わったのを見て、口を開いた。

 ごめんね。お母さんを許さないで、と。

 母が自分に伝えた最後の言葉を。

 

「母は誰も責めず、ただ自分が悪いとしか言わなかった。そうして自分を置いて去っていった」

「み、未那様……」

「知れそうな奴に聞いても情報が消されてるって言われるし。……なあ教えてくれ花邑さんよ。母は……お母さんは、何に悩み、何で喜ぶ、どんな人なんだ?」

「っ、……ぅぅ……っ!」

 

 自分の疑問に言葉を出せない花邑さん。掴まれていた胸倉も静かに離し顔をクシャクシャに歪ませ「すまなかった」と小さな声で謝ってくる。最初に見た、出来る大人の姿はどこにもない。嘘一つない、本心から母に対して後悔の念を抱いていた。よく見ればサングラスに隠れた目元や口元に小皺(こじわ)があり、目の前の黒服が想像より年上の男性だとわかった。もしかすれば花邑さんは母が薙切家にいる頃から仕えているのかもしれない。

 

「……祖父には会わない」

「……そうか」

「今すぐには、だが」

 

 顔を上げる花邑さん。

 さっきとは対照的に自分が手を差し出し、

 

「隊長」

 

 言葉を口にしようとして、阻止された。

 花邑さんを呼んだのは先程アイの後を付いて行った黒服の女で、

 

 ――――

 

 ……なんで今、直観が働く。嫌な方に、それも昨晩の比ではない。

 なんでだ。何が起きる……? いや、起きた?

 待て、たった今、直観が働く直前に、誰が来た?(・・・・・)

 

 アイの護衛を(・・・・・・)していた黒服(・・・・・・)が一人で戻ってきた?(・・・・・・・・・・)

 

 理解した瞬間、自分の耳に聞こえてくる会話。

 花邑さんの耳に顔を寄せ、こちらに聞こえないようにしている会話を。

 

「……何故戻ってきた。彼女はどうした」

「対象ですが……保護者と帰宅しました」

「……何を言っている。彼女の保護者はどちらも仕事で来られるわけない」

「しかし間違いなく保護者と名乗り、対象も認めました」

「……どちらだ」

「いえ、斎藤夫婦ではなく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              ──星野アイの母親だと」

 

 

 

 

「──は?」

 

 確かに、聞こえた。

 ガツンと頭を鈍器で殴られたような痛みが襲う。前世で義弟に金属バットで殴られたよりも痛い。昨日、記憶を思い出した時にも痛みはあったが、それ以上の痛み。しかし体は決して倒れることも蹲ることも許さない。

 

 

「──は?」

 

 

 痛みはどんどん増していき、遂には麻痺したように痛みが消えた。

 代わりに一言、声が聞こえた。

 

 ──ほら、どうする?

 

 

 

 

「────は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ★★☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ★★

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。