愛が欲しい一番星と愛を知りたい転生者 作:だんご大家族
一話
「……ぅん……」
カーテンの隙間から漏れる朝の陽射しと胸元から聞こえてくる声で目を覚ます。不思議と今日は夢を見なかった。
視線を時計に向ければ、普段の起床時間よりだいぶ遅めの時間を差している。そのまま視線をずらせば自分の胸の中で寝息を立てている妹分――いや、もう妹として見たら駄目だな。それに自分も以前と違い彼女を抱き締めるように眠っていたようだ。
寝ているアイの髪を撫でるよう梳かす。髪に触れられたことに反応してか、胸の中に入り込もうと顔を
その際に布団から何も身に纏っていないアイの素肌が露出する。昨夜は行為を終えた後、共に何も着直さずに寝てしまった。布団を引き上げアイを隠すように被せる。
寝ているアイを改めて見て、改めて昨夜の情事を思い出す。
後悔していない、と言ったら嘘になる。けれど、覚悟は決めた。互いに誓い合った。なら、あとは運に任せるのみだ。
「……ぅんっ……ん、ハルカ?」
ずっと髪を梳いていたからだろう、アイが目を覚ました。
「おはよう、アイ」
「……」
寝起きで頭が働いていないからなのか、胸の中から自分を見上げると、へにょりと綻び、
「ハルカのけだもの~」
「――」
とんでもないことを口にしてくれやがりました。どこで覚えたんだろうね、そんな言葉。
ビキッと顔が凍り付き真顔に固まった。隠すように髪を梳いていた手で顔を覆う。
いや、別にアイに対してキレそうになったわけじゃない。寝ぼけているとはいえアイが言ったことは事実に近い。
自分の方は知識はあるとはいえ、互いに初めてだったのだ。アイが痛みを感じないよう覚えている知識を総動員させて、なんとか初体験を終えることができた。
そこまではいい。問題はそのあとだ。
事が済み、あとは余韻に浸るだけと思っていたら、
『やぁ――もっとぉ』
なんて、おねだりされてしまって。
あーだこーだと言い訳したり、怪我している点を指摘したが、
『ん、ハルカ……ハルカぁ――もっと、シよ?』
いや無理だって。
あんなに真剣に想いを交わした後なのに、あんな惚けた声と顔でおねだりされたら、誰だって抵抗できない。肉体・精神両方の耐性はかなり高いと自負していた自分ですらこの様なんだ。
だけどせめて、けだもの呼ばわりだけは否定させてほしい。
そりゃあアイの睦言? に負けて結局四回戦ほど致したが、一応理性だけは最後まで切れることなく保ち続け本能に抗って、無茶苦茶にしないよう最後まで耐えたのだ。
……改めて考えたら、アイ相手によく耐えたな。いや、昨日起きたこと考えたら理性を保つのは当たり前なのだが。
「……痛みとかはないか?」
「ん~……じんわりと?」
けだもの発言には取り合わず、話題を変える。
「そうか。今日は……次の打ち合わせだけだったな。動けそうか?」
「たぶん大丈夫ぅ……むふ~」
「……」
まだ寝足りないのか、自分の胸に顔を寄せてスリスリしてくる。
早めに起きていなければ色々と危なかった。
いや、自分の理性ってこんなに脆かったか? ちょっと食義の合掌時間か本数を増やして精神を鍛え直すか?
「ひとまず起きてシャワー浴びてきな。その間に朝食を準備しておくから」
本当は誕生日のお祝いとして準備していた料理だが、昨日は帰ってから飲まず食わずで終わってしまったので手付かずになっている。そのまま出すには少々重めなのでアレンジしておくか。
布団をめくり起床を促す。
「さむさむ……ハルカ」
「なんだ?」
「おはようのちゅーと子づくり、どっちかし――んむっ」
「ん……ほらさっさと入ってこい。風邪ひくぞ」
「…………えへへ。はーい」
★☆☆☆
アイがシャワーを浴びている間に寝間着を適当に着直す。この時、昨日釘パンチやノッキングを何度も打った片腕がいつものように動かせないことに気付いた。痛みは引いていたが経験則から罅がはいっている
いや、五連で限界と決めつけるのは駄目だ。もしまたアイに何かあった時に、五連で片付けられない相手が出てくるかもしれない。過去に加減がどうと言っていたが、アイを守れるならそんなものはゴミ箱に叩き捨てる。これからは食義だけでなく筋トレ等も日課に加えようと決めた。
そんな自分のことはさておき朝食だ。
スープは作っておいたセンチュリースープ(仮)でいいとして、メインは……よし決めた。
昨夜使おうと用意していたステーキ用の肉を叩き、脂身を除き一口サイズにカット。それを熱したフライパンでカリカリになるまで焼く。途中出てくる肉汁は肉にかけながら全て拭き取る。カリカリベーコンならぬカリカリステーキが完成したら一度皿に移す。
「あがったよ~」
次は、と思った時にアイが風呂から出てきた。
一度調理の手を止め、用意していた温めた雲苺ミルクをアイに渡す。
「ありがと。……これ、久しぶりだ」
「そうか? ……そうかもな」
入れ替わりで手早くシャワーを浴びる。
五分も掛からず風呂からあがり、料理の続きを始める。
と言っても後は米を手付かずのシチューに加えて煮込み、最後にカリカリステーキを加えて完成だ。
「お待たせ。食べようか」
「おかゆ?」
「リゾット……のつもりだな」
実際おかゆや雑炊、リゾットってあまり区別がついていない。確か調理法が違ったと思うが、まあ一般家庭にそんな細かいことは必要ないだろう。要は簡単で美味いかどうかだ。
リゾットとセンチュリースープ(仮)、あとは斜めに切ったきゅうりにトマトを乗せたブルなんとかもどきをテーブルに並べて手を合わせる。
「いただきます」
「いただきまーす」
リゾットは元のシチューからして薄めの味付けにしておいたが、カリカリに焼いたステーキ肉が触感と肉々しい味でちょうどいい塩梅が取れてる。脂も取れるだけ拭いたのでそこまで重たく感じることはない。
「もぐもぐ……おかわり!」
「ああ。食べ過ぎるなよ」
「だいじょーぶだよ。それにこれからは二人分食べなきゃだし」
「早い早い。昨日の今日でそれは早い」
「そう? 妊娠ってどれぐらいでわかるのかな?」
「……だいたい最短で一ヶ月くらいだったはず。自分としてはハズレてほしいが」
「ふ~ん……じゃあ子づくりして妊娠するのって、何パーセントぐらいなんだろ」
「いや、それは知らない。そこまで高くないとは思うが……一割、10パーセントもないんじゃないか?」
あとで自分も気になり、出掛ける前に軽く調べたが、妊娠する確率はおよそ20~30パーセントらしい。
予想より高かった。
「なら昨日はたくさんシたし、確率は高いってことだね!」
「……そーだな」
そんなに明け透けに言わないでほしい。言ってるアイよりも聞いている自分の方が照れてくる。
あとたぶん、確率は毎日致さなければ変わらないと思う。
それとなアイ? もう少し慎みを持とう。その勢いのままだと外でうっかり喋っちゃう、なんてことになりかねないからな?
赤裸々な会話を続けている内に朝食を食べ終わる。
アイの準備を横目に、自分は壱護さんに電話を掛けた。内容は大事な話があるからB小町全員とミヤコさんを含めて時間と場所を作ってほしいということ。
スピーカー越しに呻く声が聞こえたが、すまない、話を聞いた後はもっと痛むはずだから我慢してほしい。今回は殴られるのも覚悟してる。
「準備できたよ」
「わかった。今行く」
変装を済ませたアイに呼ばれ玄関へ向かう。扉を開けると、差し込んだ光がアイの両耳に付いているピアスに反射して、キラリと赤と青の輝きを放つ。
部屋を出て屋上へ向かう。屋上は基本的に立ち入り禁止だが、そこはまあどうとでもなる。
「それじゃあアイ」
「うん」
呼び掛けに、アイは自分に近づき腕を首に回す。横抱きにアイを抱え、そのまま直観に身を任せて集中して気配を静めていく。
自分ではよくわからないのでアイに聞いてみた。
「さっきよりハルカの存在感が薄くなってる気がする。こうして抱き着いてないと、たぶんどこにいるかわかんないかも」
なら『トリコ』の初期にだけ出た技術である消命は成功ということだ。
本来は警戒心の強い獲物に近づくため、気配をくらませる技術だが、
「じゃあ、いくぞ。昨日みたいにはしゃぐなよ」
「はーい」
こうして屋上から屋上へ走っていく姿を見られなくて済む、ということだ。
まあ、カメラに映ったらどうなるかはわからないが、そこは直観に任せたルートを辿ればいいだろう。たぶん。
そんなことを考えながら、アイを抱え事務所へと文字通り跳んで行くのだった。