愛が欲しい一番星と愛を知りたい転生者   作:だんご大家族

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 お待たせしました。
 いつも以上にまとまらず、また文字数が一万を越えそうだったのでひとまず区切って投稿することにしました。残りはまだ半分も書けていませんので、次話も遅れると思います。
 書き始めた当初はもう少しコンパクトに終わらせるはずだったんですがね……このままだとこの章だけで二十話いきそうかも。(´・ω・`)

 それと前話の数日後がちょうどこの作品を投稿して一年だったので何か記念IFでも書こうと思ったのですが、
①食戟のソーマ√:遠月学園内チート無双にしかならなかったので没。
②原作推しの子√:書いてて私の心が砕けそうになったのでそもそも無理。
 他にも考えましたが、本編もまとまらない頭ではIFも思いつかないので諦めることになりました。ユルシテ、ユルシテ


七話

 気を失ってしまったえりなちゃんをパネルマットに寝かせる。子どもたち用に準備してもらっていたタオルケットを掛けて、緋沙子ちゃんと藍久愛海と瑠美衣が側で見ていた。

 その作業の合間に、

 

「斎藤アイ、だったな」

「はい。……えっと、もしかしなくてもハルカのお爺ちゃんの」

「うむ。以前、君には怖い思いをさせてしまった。本当にすまなかった」

 

 椅子に座って待っていたアイに頭を下げる爺さん。

 

「……怖い出来事だったですけど、あの出来事のおかげで色々気付くことがあったから、気にしないでください」

「だが、君は精神的な障害を負ったと聞いたが……」

「確かに男性恐怖症になってからアイドルの仕事はちょっと大変ですけど、辛い時はハルカやおとーさん、苺プロのみんなが助けてくれるのでなんとかやっていけています。それでも気になるなら、これから先、もし私やハルカに何かあった時、アクアとルビーを──子どもたちを助けてくれますか?」

君もそう言うのだな……うむ、もちろんだとも」

「……ありがと、おじーちゃん♪」

「……、…………その呼び方、いとおかし

 

 そんな感じで、アイと爺さんの交流が済んでいた。

 あとはミネが軽いお説教を受け、終わった頃に、

 

「──はっ」

 

 えりなちゃんが目を覚ました。

 心配そうに覗き込んでいた緋沙子ちゃんを見て、安心したように呟く。

 

「ああ、緋沙子」

「えりな様……お加減はいかがでしょうか?」

「ええ……大丈夫よ。それより緋沙子。(わたくし)、すっごい夢を見たの」

「どんな夢でしょう」

「悠お兄様が双子の赤ちゃんを連れて、しかも双子の赤ちゃんのお母様がB小町アイだったのよ」

 

 体を起こしながら答えるえりなちゃんに、緋沙子ちゃんは申し訳なさそうな顔で言う。

 

「ええ、はい。その、夢じゃないんですよね……」

 

 ちらりと視線をえりなちゃんからズラす。

 そちらへえりなちゃんも顔を向けると、

 

「やっほー♪」

「あう」

「あっうー♪」

 

「──」

「お、お気を確かにえりな様っ」

 

 虚ろな瞳で言葉を失うえりなちゃん。

 そんな彼女を緋沙子ちゃんが後ろから支えて意識を保つよう呼びかける。

 さて、どうするか。

 本当はある程度交流してから母親がアイだと暴露するつもりだったんだが。

 どうにかえりなちゃんが気絶しないでいると、

 

「このままだと話が進まないし、さっさと済ましますか」

 

 離れていたナベが近付いてきた。

 そばに置いていた色紙を手にすると、

 

「えっと……あらと、ひさこちゃんだったわね。苗字は新しいに戸棚の戸でいい?」

「あ、は、はいっ!」

「名前の方も教えてくれる?」

「えっと、緋色の緋、さんずいに少ないで沙、子どもの子で緋沙子です」

「しっかり覚えてんじゃん、すご。ウチは苗字がなかなか覚えられなかったのよね」

「そうなんですか?」

「ナベの漢字、難しい方のなのよ。新戸緋沙子……っと、はい、どうぞ」

「あ、ありがとうございます! ナベさん!」

 

 さらさらと描いて、緋沙子ちゃんに手渡す。

 アンタも早く描いてあげな、とアイを促し、アイも頷いて色紙を手に取った。

 

「じゃあえれなちゃんも……名前は漢字かな?」

「……えっと、いえ、名前はひらがなです。それとえりなです」

「はいはい。──はい、できた。どーぞ」

「あ……ありがとう、ございます……!」

 

 無言だったえりなちゃんも、受け取った色紙を見て、わぁ、と無意識だろう呟きと共に目を輝かせる。

 

「それじゃあ改めて自己紹介しよっか。B小町アイ改め斎藤アイです」

「な、薙切えりなですっ!」

「それとアクアとルビーのお母さん」

「……本当にアクアとルビーのお母様なんですか?」

「うん。正真正銘、アクアとルビーのお母さんだよ」

 

 証拠は無いんだけどね、と続ける。

 

「悠お兄様がお父様で……アイ、さんがお母様……つまりお二人は夫婦……? 推しのアイドルが結婚済みで、子持ち……」

「あはは、違うよ。私とハルカはまだ夫婦じゃないし、結婚もしてないよ」

「え? でも……」

「それより! お兄様って言ってるから、えれなちゃんってハルカの妹なんだよね?」

 

 ややこしい話になる前にアイが話題を変える。

 

「いえ、実際には悠お兄様のお母様が(わたくし)の伯母にあたるので、厳密には兄ではないんですけど、呼び始めた時の勢いというか……あと、えりなです」

「じゃあ私にとっても妹ってことだよね! ねぇねぇ、私のこともハルカみたいに呼んでみてくれないかな?」

「え? ……えぇ!?」

 

 カモンカモン、とアイは期待に満ちた目で呼ばれるのを待つ。

 驚きつつどうすればいいか迷いこちらを見てきたえりなちゃんに「呼んであげて」という意味を込めて頷くと、

 

「ア……アイ、お姉様──?」

「──~~っ」

 

 えりなちゃんは意を決して呼んでみた。

 衝撃を受けたような表情を浮かべた後、アイは嬉しそうに瞳や顔を輝かせて、

 

「お姉ちゃんだよっ、えりな(・・・)ちゃん!」

「わぷっ」

 

 えりなちゃんを抱き締めるのだった。

 まあ、無理もない。アイの身近にいる人間は自分含めて歳上ばかりだ。B小町のメンバーもオフではアイを末っ子のように見て接していたので、自分が姉と呼ばれるのはアイにとって琴線に触れたのだろう。実際、なかなか名前を憶えられないアイがしっかりとえりなちゃんの名前を記憶しているのがその証拠だ。

 反面、えりなちゃんは驚きや喜び、恥ずかしさといった感情がごちゃまぜになって再び気を失いそうになっていたが。

 ──さて、と。予定とはだいぶ違うが、そろそろ最後の準備にしなければ。

 

「はいはい、そこまでにしようかアイ。──みんなも席についてくれ」

 

 パンパンと手を叩き、部屋にいる全員を見回し、

 

「──食事にしよう」

 

 

 

 

  ☆☆☆☆

 

 

 

 

 物入れから追加の机と椅子を並べてもらい、自分はリュックからグルメケースと量を調整した調味料の入った小瓶を取り出す。皿やスプーンは施設で使っている物を借りた。

 透明なケースで中が丸見えなので薙切側は首を傾げている。一度飲んだことのある苺プロ側はもしかして、とケースを凝視していた。

 

「悠、そのケースは? 中は空のようだが」

「うん? 保温容器」

 

 爺さんの質問に簡潔に答える。

 それに強ち間違っているわけでもない。グルメケースはデータを打ち込めば、その食材、料理に適した保存状態を保ってくれるのでかなり便利だ。登録されてるのがグルメ世界のデータだけでこの世界の食材や料理の情報はないので、最初は付属してた取扱説明書を見ながらデータ入力するハメになったが。

 長方形に並べた机にそれぞれ座り、短辺に爺さんと自分が席を取る。

 長辺の片側にアイを除いたB小町、壱護さんとミヤコさん。反対側にアイとえりなちゃん、緋沙子ちゃん。師匠と護衛ということで少し渋った花邑が座った。アクアとルビーは借りたベビーベッドに入れたが、こちらを見ながら二人で会話しているようだ。

 

 自分だけが席に座らず、グルメケースのフタを外す。

 無言だった爺さんは、少しして匂いが届くと、ガタッと席を立つ。えりなちゃんも驚きで凝視している。

 

「この匂い……まさか、容器の中は空ではなくスープか──!」

「正解」

「なんという透明度だ……!」

「落ち着け爺さん。仕上げはまだなんだからさ」

「仕上げ……だと?」

 

 立ち上がった爺さんをそのままに、自分は用意した調味料のフタを取り、その全てをスープの中に振りかけた。

 おたまで混ぜることなく調味料がスープに溶けた瞬間、

 

ゆらぁ

 

 ありえないその光景に誰もが目を見開き、言葉を失った。一度見たことがあるアイも含めて。

 グルメケースの上にだけ立ち昇る湯気がオーロラへと変化して美しいゆらめきを魅せる。

 永遠に続くと思われた光景は以前と変わらず短い時間で溶けるように消え、無色の湯気に戻った。

 おたまでかき混ぜて掬おうと皿に手を伸ばすと、

 

「ぴゃっ!?」

 

 アイの悲鳴が聞こえた。

 見れば、爺さんの着物の上半身がいつの間にかはだけて鍛え抜かれた裸体が丸見えになっている。匂いだけでおはだけしたのだろう。

 ミネとナベは……驚いているが、ただ驚いているといった感じだ。隣でニノがおはだけのことを説明している。初対面の爺さんの着ている服がいきなり脱げたら、普通は疑問とか距離を置くと思うが……この世界、というか料理界以外でも服がいきなり脱げることは驚きで済む程度なのか。──マジかぁ。

 

「爺さん……アイがいる前ではできれば、おはだけは抑えてもらいたいんだが」

「む、おお……匂いだけではだけてしまっていたとは」

 

 すまぬ、と謝って着直す。

 やれやれと呟いたが、あれ、待てよとスープをよそいながら思い出す。確か、おはだけって何種類かバリエーションがあった気がする。その中の一つに他人の衣服をおはだけさせる現象ってなかったか?

 ……。

 

「……む、むぅ? なにやら体が重いような……」

 

 アイをはだけさせたら釘パンチ。アイをはだけさせたらノッキング。アイをはだけさせたら──

 

 思い出した。『おさずけパルス』だかなんだか知らないが、美食を食べた時に放たれる精神力が周りの人間もおはだけさせるというふざけた現象だったはず。

 ──いや、させねぇよ?

 食圧を爺さんと爺さんの周りにだけ掛けておく。ついでに念も少々。そこまで強く掛けていないが、食圧で波動が周囲に広がらないようにしておけばいいだろう。直観もそう言ってる。

 えりなちゃんは大丈夫な、はずだ。たぶん。めいびー。

 

 

 でも、なんで自分はここまでアイの肌を晒させたくないんだ?

 男性恐怖症になったアイが肌を晒したくないと思うのは間違っていない。実際、最近は壱護さんもアイにグラビア撮影のオファーがきた時は、撮影時の服装を事前に聞いた上でアイに確認して受けるかどうか決めている。男性恐怖症になる以前にだってグラビア撮影は個人・グループ合わせて何度かあったが、特に何も思うことはなかった。

 独占欲? ……たぶん違う、はず。そもそも『斎藤アイ』は自分のものだが、『B小町アイ』はファンのものだと定義しているのだ。けれど、『B小町アイ』だろうとアイが肌を晒すと考えると、胸の内が痛むような感覚に陥る。

 嫉妬、なんだろうか。わからない。こんな感情(きもち)ははじめてだ。

 

 

 そんな考えをおくびにも出さずにスープをよそい、全員の前に並べる。

 白い皿に透明なスープ。既にオーロラはなく、一見すれば何も入っていないように見えるが、

 

「すごい。さっきのオーロラもだけど、この透明なスープも以前よりさらに澄んで綺麗……! 」

「CGじゃないのよね……写真撮っとけばよかった……」

 

 花火のように一瞬の輝きを魅せたオーロラと、アクを完全に取り除いたどこまでも透明なスープに目を奪われ、

 

「舌で味わうことなく、香りだけでお腹が膨れそう……」

「庶民は、香りだけでご飯を何杯も食べられると聞きますが……まさか事実だったなんて」

「緋沙子くん、それは冗談の一つ……とは言い難いな、この匂いを嗅いでしまうと」

 

 数えきれない程の食材と調味料が一つに混ざり合い、ハーモニーを奏でる香りに息を吐くことを忘れそうになっている。

 

「悠、音頭を」

「爺さんでもいいんだけど」

「否、この集まりはお主が発案なのだ。加えて、この素晴らしき料理も作ったのも悠だ。ならば音頭を取るに相応しいのはお主しかいない」

「……それじゃあ」

 

 席に座り、全員を見渡す。

 誰もが頷いたり肯定の意を示したので、応えることにした。

 

「全ての食材に感謝を込めて──いただきます」

『いただきます』

 

 合掌と共に言うと、誰もが茶化すことなく口をそろえて唱和する。

 誰もが無言でスプーンを手に取り、スープを掬い、口へ運んだ。

 

「~~っ!!」

 

 誰かは口を押さえ、誰かは悦に入った表情を浮かべ、どっかの誰かは服を弾け飛ばす──という幻覚を見せた。実際にはおはだけしているだけだったが、ホントどうなってんの? 薙切のリアクションって。

 薙切家の血に疑問を持ちながらも自分もスープを飲む。肉、魚、野菜、ありとあらゆる旨みが口の中に広がっていく感覚に、改めて感謝を胸の内でだけ呟く。

 食材たちに。そして、この味に到達させてくれたアイに向けて。

 

「あはは、なにこれぇ、美味しすぎぃ……」

「ぅんっ……前に飲んだ時もヤバかったのに、あれ以上ってどういうことなの……!」

「────」

「ニノはまた言葉を失ってるわね。手と口だけは動いてスープを飲むbot化してるけど」

 

 未完成のスープを飲んだことのあるミネたちはそれぞれ頬を染めたり、目から光を失ってはいるが、思い思いの感想を出している。壱護さんとミヤコさんは一度飲んだからか、落ち着いて飲んでいる。あ、でも視線はスープにしか向いてない。

 

 一方、初めてスープを飲んだ薙切勢と師匠の五人は一口目で手が止まっている。その目は大きく見開かれ、震える視線でスープを見ていた。普通なら味の感想や使っている食材を言うのだろうが、それすら言わない。

 

「……悠。この領域に至るのに何年掛けたのだ──!」

「そうだな……十四、五年は掛かったかな。最後の一ピースはある人に見つけてもらったから、自分一人の力じゃ無理だったけど」

 

 ちらりとアイに視線を送る。

 視線に気付いたアイは、何も言わずにただ微笑み返してくれる。

 

「……そうか」

 

 服を爆発四散──そう幻視するだけで、実際ははだけ飛んでるだけだが──させながらの問いに答える。おさずけは抑えたが、おはじけまでは無理か。けど、爺さんさっき言ったよな抑えてくれって。アイが上半身裸の爺さんを見ないようえりなちゃんに話しかけて視線を向けないようにしてんだからさ。

 

「──見事。それしか言葉が見つからない」

「そうか」

「うむ。まこと──美味しいスープだ」

「──本当に、本当に美味しいスープです悠お兄様! まるで……まるでこの世界には存在しない味を生み出したかのような味、はじめてです!」

 

 爺さんの言葉にえりなちゃんも声をあげる。

 追従するように花邑は一度、緋沙子ちゃんは何度も首を縦に振っていた。

 師匠は何も言わなかったが、優しい表情を浮かべて自分を見ている。

 

 ああ、やっぱりいいな。

 自分が作った料理を美味しいと言って食べてもらえるのは。

 ただ、素直に返すのは少し照れくさく、そうかとしか返せなかったが。

 喜びに浸りながらスープを飲もうと掬うと、

 

「ぱぁぱ! ぱぁぱ!」

 

 瑠美衣が自分を呼ぶ声が聞こえるのだった。




Tips『設定紹介』:
 区切ったことで今回の本編Tipsは無いので、今回は原作との相違点を一部紹介しようと思います。

施設関連
『原作』:
・「花ぞの園」 脱走の描写の仕方から、所在地は東京外だと予想。
・東京渋谷へは脱走して。
・壱護に引き取られてからの関りはなさそう。
『本作』:
・「未来の家」 東京郊外。
・東京渋谷へは遊びに。
・斎藤家に引き取られた後も悠の影響で何度も訪れているため、関係は良好。

アイの身元関連
『原作』:
・身元引受人を立て、後見人として。
 戸籍上は斎藤壱護が親であるが、書類含めて使用している苗字は星野。
『本作』:
・壱護が四條が出した条件を吞み、特別養子縁組を適用させたため、実子と等しい養子となる。
 養子縁組をしたため、書類上でも苗字は斎藤。通称名として口頭では星野を使用していたが、誘拐の一件を機に口頭でも斎藤を使うようになった。

B小町関連
『原作』:
・アイが中心のグループでメンバーは七人。
・渡辺、高峯、ニノ(新野冬子)の初期メンバーは原作開始時では既に脱退。
『本作』:
・初期は原作同様アイ中心だったが、悠の存在や壱護の心境の変化により、売り出し方を変更。人気度ではなく曲ごとにセンターを変えている。メンバーは四人。
・ナベ(渡邊)、ミネ(高峰)、ニノ(織崎藤乃)は初期から変わらず。めいめいやきゅんぱんといった、後期メンバーの登場はない。
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