愛が欲しい一番星と愛を知りたい転生者 作:だんご大家族
料理食べてるだけの短編を書きたかったのに、どうしてこうなった?
〈初めてのグルメ食材〉
家族になって数日後。
悠とアイは先日偶然辿り着いた公園のブランコに乗っていた。
「ねぇねぇ、ハルカ」
「どうした?」
「さっき話してくれたてんせーとくてん? で出せる食べ物ってどんなものがあるの?」
「色々だ。そうだな……」
少し考えたハルカは掌を上に向けて差し出し、
「パープルバナナ」
そう呟いた。
途端に掌に苦々しい見た目のバナナが一房現れた。
「わっ、本当に出た! ……でもなんか美味しくなさそう。変な色してるし」
「自分もそう思う。だが……」
「あ……」
一本もいで皮を剝き果実を半分ちぎり、悠は頬張る。残りの半分をアイに差し出す。
差し出されたバナナを受け取ったアイは恐る恐る口に入れた。
「……もぐ、……ぅん!?」
「変な色だが美味いだろ」
「もぐもぐ!(コクコク) ……普通のバナナよりすっごく甘い! 変な色なのに!」
「だろう」
パープルバナナを掌から消す。
ただ、二人して変な色と言い過ぎである。変な色ではあるが。
「他にどんな食べ物があるの!? 食べたい!」
「残念ながら今日はこれだけだ」
「えー! けちー!」
「もうすぐ夕飯だからな。それにグルメ食材ばかり食べてると、普通の食材が美味しく感じなくなってしまうぞ」
「美味しい物ばかり食べちゃダメなの?」
「ダメではないが。こういうのは時々……一日一食ぐらいが一番美味しく感じるだろうからな」
とにもかくにも、これが星野アイが初めてグルメ食材を食べた日だった。
なお、雲苺ミルクとレモモンのレモネードは気付いていないのでノーカン。
☆☆☆☆
〈嫌いなモノ〉
「そういえば、アイ」
「なーに?」
「アレルギーや嫌いな食材はあるか?」
「あれるぎー?」
「……」
これは困った、と悠は顔に出さずに呟いた。
「アレルギーってのは、特定の物を食べたら体が痒くなったり、息がしづらくなったり、最悪死んでしまうかもしれない。そんな病気? うんまあ、病気だ」
「そんな病気があるんだ! 知らなかったな~」
違う。
アレルギーは生理機能の一つである免疫反応が、特定の抗原にだけ過剰反応を起こしてしまうものであり、病気ではない。
だが、悠の間違いを訂正してくれる相手はこの場にいない。
なので悠とアイにとってアレルギーは病気だと分類されてしまった。
「う~ん、お母さんと暮らしてた頃はそんなこと起きたことなかった、かな」
「そうか」
「うん。お母さんの機嫌が悪い時はいつも叩かれてた後にご飯を食べたり、食べさせてもらえなかったから、痒い時はなかったな~。あ、お腹蹴られて吐きそうになりながら我慢して食べたことはあったよ!」
「……」
……。
瞳を黒く輝かせて話す少女と無表情ながらも瞳が死んでいく少年。
「だよな、メシ与えながら蹴るなって話だよまったく。吐いたらまた蹴り飛ばしてくるわ、掃除しとけって汚い水とモップをぶちまけてくるわ、その日から数日は残飯しか食事として出してこないわ。そんなもん食って生き延びた
「……。……っ、うん! そうだね!!」
ハハハ、えへへ。
ハハハハ! えへへへ!
かたや、アイの当時の食事の話を聞いて前世の食事関係の記憶を引き出してしまい、アイが聞いたことない長文を死んだ魚のような濁った瞳で捲し立てる悠。しまいにゃ笑い出す始末。
かたや、光をまったく反射しない真っ黒なのに死んだ魚のように瞳を濁らせいきなり飛び出た悠の素を見てしまい言葉を失うアイ。言いそうになった本音の言葉を飲み込むと、星の瞳を黒く染め輝かせて、嘘の笑みを浮かべ二人で笑い出す。
……。
何だこの負の空間。
絶対、小学生たちが出していい空気じゃないぞ。クッソ重ぇ。
★★★★
〈嫌いなモノ その2〉
「……大丈夫? 元の悠に戻った?」
「大丈夫じゃない。が、前世を思い出す方がキツい。なので話を戻そう」
「うん。……なんの話をしてたっけ?」
「アレルギーと嫌いな食材があるか、だったな。嫌いな食材はあるか?」
「嫌いな食べ物はないかな~」
あ、でも。
そう言葉を続けるアイ。
「嫌いじゃないけど、白いご飯は苦手かな」
「白いご飯……ただの白米が?」
アイの言葉に疑問を抱く。
炊き加減で好き嫌いがあるのか、と悠が考えていると、
「ご飯の中にガラスの欠片が入ってたことがあってね、間違えて食べちゃったんだ」
「…………おうふ」
予想の斜め上からの一撃が悠のボディーに突き刺さる。
「血が出てすごく痛かった。でも泣いたり声を上げたらお母さんに叩かれちゃうから我慢してたの。そしたら急にお母さんに叩かれて、どうしてって思ってたら服を血で汚くしちゃってたんだって」
「……」
「だから、ご飯は食べられないわけじゃないけど、苦手なんだ」
「……ごふっ」
嘘でできた笑みで締めくくられたアイの言葉に、悠は崩れ落ちた。
何故か。この数日の食事の中に白米は何度か出されてる。それを悠は何も気づかずにアイに配膳してたのだ。
「大丈夫? ハルカ」
「あ、アイ……すまない」
「え? ……あ、ご飯出てたこと? 気にしないで! ゆっくりガラスが入ってないか探しながら食べれば問題ないし!」
「……じょ」
「うん?」
「上等だ! やってやろうじゃねぇか!」
「ひゃっ!?」
プチンと何かがキレた悠は立ち上がり叫ぶ。
驚いたアイに、ビシィッと指を突き付け、
「アイ!」
「は、はい!」
「自分は絶対に、アイが普通に白米を食べられるようにしてみせる!」
「はい! ……はい?」
「そうだな、準備段階から……手間か? いや、これぐらいなんとでも……(ブツブツ」
一方的に宣言する。
ブツブツと呟いて立ち去っていく悠を見て、
「……ハルカって絶対に変だ。でも」
変なことに必死になるとこがきゃわ~、かも。
クスクスと嘘のない笑みを浮かべ、トテトテと追いかけるのだった。
後日談というかその数時間後。
炊く前の白米を色の付いた布巾の上に一粒ずつ並べて、
「炊く前の米見れば、ガラスが入ってるかどうか心配することはないんじゃないか?」
「……えー」
わざわざ確認させてきたのには、素で引いてしまうアイなのだった。
後日談その2というか今回の
「ハルカ、ご飯おかわり!」
「ああ。好きなだけ食え。米もおかずもまだあるからな」
「うん!」
「 ヤ メ ロ 」
無事に白米を(条件付きで)普通に食べられるようになったアイ。
数年掛かって達成できた目標に表情少なくご満悦の悠。
そして、目の前のアイドルが情けない理由で終わってしまわないか、気が気でない壱護。
説得を諦めるまで、社長の苦労は続くのであった。
頑張れ、佐藤社長!
貴方の苦労はきっと報われるはず! 多分。めいびー。