愛が欲しい一番星と愛を知りたい転生者   作:だんご大家族

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記録② 偽りの笑顔で輝く一番星と手を伸ばす引き立て役
一話


 

「部屋でアイと一緒に寝る回数を減らしたいんだが、同じ女性として何か良い案はないか? ミヤコさん」

「無理ね、諦めなさい」

 

 斎藤家のキッチンで夕食を作りながらミヤコさんに聞く。

 わかってはいたがノータイムで一蹴される。もう少し悩んで答えてくれませんかねぇ?

 

「アイさんと貴方が家族になった経緯は聞いたけど、第三者からしたら、弱ってるところにつけこんで歳下の女の子を誑し込んだようにしか聞こえないわ」

「耳が痛いな」

「だいたい貴方たち、本当に14歳と16歳なのかしら。小学生でそんな考えに至るなんて、精神年齢高すぎない?」

「虐待から心を自衛するために精神だけ急成長するってあると思うんだよな。自分の場合、生まれてすぐに自我が芽生えてたから実母に捨てられた時の記憶も残ってるし。その影響で周りより早く精神面が育ったんだと思う」

「サラッと初耳の重い話ぶち込んでこないでちょうだい。夕飯の前にお腹いっぱいになりそうよ……」

「それはすまない」

 

 夕飯の量を減らすか? と聞く。

 減らさずにアレを追加でちょうだい、と返される。

 

 調理する手を止めて、ミヤコさんの視線から隠して小鉢にキューティクルベリーを生み出しミヤコさんの前に置く。キューティクルベリーに手を伸ばすミヤコさんを横目に調理に戻る。

 キューティクルベリーは食べると髪を艶々にする美容に良いグルメ食材の一つで、以前アイと二人でグルメ食材をこっそり食べている所をミヤコさんに見つかり、自分の能力がバレそうになったことがあった。

 なんとか誤魔化したが、それ以来時々こうして美容に関係する食材を要求されるようになった。どこから調達しているのか怪しまれているが、効果が出ているので今のところ内緒にしてくれている。

 

「今まで食べてたイチゴは何だったのかってぐらい美味しいわねこれ。おまけにしっかり効果が出てるし。本当にこれどこで買っているのかしら」

「そこは企業秘密で」

「わかっているわ。その代わり」

「他に美容の良いものを見つけたら優先的に」

 

 ならよし、とミヤコさんは書類に目を通しながらキューティクルベリーを食べる。

 次は何を渡すか。美容に良いグルメ食材は何があっただろう。完美牛やもち肌もやしなら調理した後の状態なら大丈夫か?どっちも名前しか知らないけど。

 

 ガチャリとリビングの扉が開く。

 

「ハ~ル~カ~!」

「おっと……」

 

 帰宅したアイが飛び込むように抱き着いてくる。料理をよそった皿を両手に乗せていたので、くるりと一回転し受け止める。当然、料理は1ミリもこぼさない。

 

「ただいまハルカ! 今日も疲れたよ~」

「おかえりアイ。だけど料理を持ってる時は抱き着かないよう言ったはずだが?」

「えへへ~」

「聞け」

「ぶみゅ」

 

 テーブルに料理を並べ抱き着いているアイの両頬を指で挟む。叩くのは昔を思い出してしまうと互いに理解してるので絶対にやらない。

 

「……お前らの距離感がバグってんのはいつものことだがよ、あんまアイドルがしちゃいけない顔させんのはやめてくれ」

「ああ、壱護さん。おかえりなさい」

「はぁ……おう、ただいま」

 

 一緒に帰宅した壱護さんが溜息を吐いている。

 まあ、いつものことだから問題ないだろう。アイを変顔させていた指を離して引き剝がし、

 

「二人とも、手を洗ってこい。食事にしよう」

 

 

 

 

 ★★★☆

 

 

 

 

 斎藤家にアイが引き取られ、自分が一部屋を貸し与えられてから約二年。

 地下アイドルから始まったアイのB小町としての活動も少しずつだが増えていき、段々と忙しくなっていった。大手事務所に比べれば大したことない活動ばかりらしいが壱護さん曰く、アイドルとしての成長速度は大手と大差はなく、中小の事務所ではかなり早いみたいだ。

 

 そんな中、自分は高校に進級したことで正式にバイト扱いで苺プロダクションに籍を置くことになった。主な役職は裏方や事務作業、それとアイの食事係(・・・・・・)。将来的にはアイのマネージャーもさせようと計画しているらしい。

 あとは役職ではないが、斎藤家の食事も自分とアイ、壱護さんとミヤコさんが揃った時は自分が作っている。今日みたいに。

 

 ちなみに夕飯の献立は、安く買えた牛肉を使った青椒肉絲(チンジャオロース)にわかめとかきたまの中華スープ。ピリ辛のきゅうりと大根の漬物に白米の中華料理。壱護さんの席には缶ビールを忘れない。

 

「相変わらず美味そうだな。いただくぜ」

「「いただきます」」

「どうぞ、いただきます」

 

 一家の主たる壱護さんの挨拶で夕飯が始まる。

 別に壱護さんが亭主関白だから、ではないが、気付いたら斎藤家で食べる時はこれが普通になってた。

 

「うまうま~」

「それはなにより。……頬に米が付いてるぞ」

「とって」

「はいはい」

 

 隣で青椒牛肉絲と一緒に白米を頬張っているアイの頬に付いた米粒を取って食べる。

 アイが白米に軽いトラウマを持っていることは前に聞いていた。なんだ、ガラスが混じった米を食べるって。アレルギーとかで食べられないのを無理やり食べさせられた、ならわかるが、ガラスが混ざった食事なんて、と初めて聞いた時は耳を疑った。その前に普通に食事に出していた自分に対して死にたくなったが。

 トラウマの理由を聞いて、数年は食べられるよう工夫に努め……現在はどうにか自分が炊いた白米だけは普通に食べられるようになってくれた。白米は色んなおかずに合うんだ、食べられないのは食事の楽しみが減るというものだ。

 

「おかわり!」

「ああ。二人はどうする?」

「俺はいい。残りは酒のつまみにさせてもらう」

「私もいらないわ」

 

 返事をもらい、自分とアイのおかわりを茶碗によそい、席に戻る。

 

 『トリコ』世界の肉体に成長中の自分が大食らいなのは当然だが、アイも年々と食事の量が増えている。壱護さんたちの前では普通の量に留めているが、あとで追加で食べておかないと自分はともかくアイがこっそり夜食を食べて怒られてしまう。

 そろそろアイにも食義を習ってもらうか? しかし食義の修行はかなり地味だ。アイが途中で投げ出してしまいそうである。

 

「ごちそうさま!」

 

 そうこう考えている間に食事が終わる。

 食器を片付け、そろそろ部屋に戻るかと考えていると、

 

「ちょっといいか悠」

 

 壱護さんに呼び止められる。

 リビングには壱護さん以外いない。アイは一足先に自分の部屋へ戻り、ミヤコさんは入浴中だ。

 近くに腰掛ける。

 

「お前さん、少しの間だがミヤコの下でマネージャー業を手伝ってくれないか」

「かまわない。進級と卒業のための出席日数だけは確保させてほしい」

「今回はそこまで長期間じゃないから安心しろ。今はミヤコだけでもなんとかなってるが、これから先忙しくなるのは間違いないからな。今から少しずつ手伝って覚えてもらいたい」

「……壱護さんの顔を見る限り、それだけじゃなさそうだな」

「なんでわかるんだよ。それも直感って奴か?」

「いや、顔色から予想を立てただけだ」

 

 前世では察しが悪いだけで殴られたからな。アイみたいに嘘が得意な相手じゃわかりにくいし、壱護さんみたいに営業で鍛えた相手も判断がしにくい。今回は自宅だからか気を緩めていたから壱護さん相手でも気付けた。

 

「お前の処世術どうなってんだ。……覚えてるか? B小町の方針のことを」

「……ああ」

 

 それだけでなんとなく理由が察することができた。

 基本的に自分はアイドル活動について、壱護さんの方針に疑問や意見を出すことは余程のことがない限りしない。

 しかし一度だけ壱護さんの活動方針に意見を出したことがあった。

 

 それがB小町のグループ人数と人気の出し方についてだ。

 当時、壱護さんはアイを含めた結成メンバー4人に何人か追加して、多人数のグループにしようとしていた。しかし壱護さんはグループの人数を増やしても、その全てをアイの引き立て役にしてB小町の人気を上げようと計画していた。

 アイにアイドルとしての天性の才能があるのは聞いていた。だが、だからといってアイの踏み台にして他メンバーを使い潰すのは間違っているとアイドルに興味ない自分でも理解できた。それじゃあグループである意味がないし、何よりそんな扱い方が、自分を奴隷の如く扱い血の繋がった息子を愛した前世の継母の姿と重なって見えてしまった。

 結果としてB小町のメンバーは現在も結成時の4人で、それぞれの個性を伸ばす方針に切り替えて活動している。

 

「急に事務所で直訴してきた時は驚いたがな」

「あのままだとアイを対象にいじめが起きる可能性があったからな。活動方針に口出すなとか言われて、後見人外されて施設に戻されるかも、とは思っていたが言わずにはいられなかった」

「……話を聞かないとぶん殴ってでも聞かせるって圧出されてたら、誰だって聞くだろうよ」

「……出してねぇよ?」

「目を見て話せ。目を」

 

 ……。

 いや、まあ。威圧して意見出したのは悪いと思ってるヨ。

 

「まあ今更の話は置いといてだ。……メンバー間で溝が出来てるみたいだ」

「……軋轢が生まれるのは防いでいたよな?」

「目の前で起きることはな。だが隠してるものは無理だ」

「それを何とかしろと?」

「社長って立場じゃできないことでも、同年代、バイトのお前ならって」

「……」

「圧は掛けんなよ?」

「掛けるか。自分を何だと思ってる」

「……何とも思ってないぞ?」

「目を見てもう一回言え」

 

 まあ十中八九、溝はアイとの間だ。修復しないとアイが悲しむだろう。

 いくつか聞いておき、自分は壱護さんの頼みを引き受けた。

 

 どうせ、自分が取れる方法なんて一つしかないのだから。

 何を作るか考えながら、自分は斎藤家を後にし部屋に戻るのだった。

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