男女比が狂った世界の美少女堕天使、VTuberになる 作:霧夢龍人
「ふぁっきんクソ神ィーーー!!」
蒼穹の天上に向けて汚い罵倒を浴びせながら堕ちてくる人影。
新幹線も真っ青な速度で自由落下する女は、眼下のビル群が立ち並ぶ街へグングン速度を上げて落ちていく。
「死ぬぅーーーー!!!?」
やがて・・・ドゴォン、と凄まじい音を立てながら、アスファルトの地面に頭からめり込んでしまう。
落下の衝撃が凄かったのか周りにはクレーターが出来ており、周囲の歩いていた人達に被害が出ていないのが奇跡だった。
そしてそのクレーターを作り上げた人物は、リアル犬神家のような無様な格好でめり込んでいた。
流石の
「し、死んだかと思った・・・」
ようやく頭をアスファルトから抜き、一息ついたルシファー。
普通なら死ぬ、というか木っ端微塵になっているだろうが、それでもこうして生きているのは流石神に最も近い天使たちの一柱というべきか。
何事もなかったように汚れてしまった服を軽く叩き、周囲の様子を確認する。周囲の人間たちは慌てたように救急車や警察を呼ぶが、当の本人は気にした様子もなく、ただ自分が
そして、とある違和感に気が付いた。
「あれ、何か女しかいなくね?」
ルシファーが落とされた地は、所謂都会に位置する場所だった。その証拠に、高く積み上げられた建物がそこかしこに建ち並んでいるからだ。
それならば、周りにいる人間たちも半々とは行かない迄も、だいたい同じくらいの男女比で歩いているだろう。
だがどうだ。
目の前の景色は、女、女、女、女女女女女───全て女だった。
視界の端に、顔の整った男が女を引連れて歩いているのを目撃するが、イケメンセンサーを保有するルシファーには分かる。
あれは男装した女性だと。
そしてそれ以外、男らしき姿はない。
まさか、とルシファーは最悪な仮説が頭の中で組み上がった。
「も、もしかして・・・男女比が歪な世界みたいな、そんなエロゲーでよくある設定の世界じゃない・・・よね?」
指先が震えて上手く声が出せないが、それでも神に祈るように、文字通り震える声でルシファーは呟いた。
どうか、どうかそんな世界ではありませんようにと。
しかし、神は残酷だ。
「へ?なにこれ?」
ひらりと天空から一枚の紙切れがルシファーの近くに舞い降りてきた。僅かに神の気を纏わせたそれは、神からの手紙に等しい。
ルシファーはその手紙を手に取り、静かに内容を読んで───
「は?このクソ神・・・まじで次会った時ぶち犯す」
───持っていた紙をビリビリに破いた。
書かれていた内容はこうである。
『ごめんね笑 間違って男女比が歪な世界に落としちゃった笑 でもルシファーなら大丈夫! 応援してるよ笑 がんばれー笑笑』
煽りに煽りを重ねた文章は、ルシファーを怒らせるツボを捉えていた。ここまで来れば、逆に仲がいいのではと疑ってしまうほどだ。
彼女からすれば溜まったものでは無いのは間違いないが。
そもそも、天界とは非常に男女比が歪な世界である。それは、天使や大天使にも当てはまり、男と女の数では圧倒的に女の方が多いのだ。
だからこそルシファーは、例えモテなかったとしてもしょうがないと高を括っていた。たまたま男と出会ってないだけで、その気になれば出来ると。
そしてゆくゆくはイケメン達を侍らし、ハーレムを作るのだと。
それゆえ、今のような醜い欲望を抱えていたルシファーからすれば、神の手紙は完全にクリティカルヒットしていた。
思わず地面に手を付き、項垂れる。
「
ちなみに余談だが、数百年ほど前に起きた悪魔との戦いで、ルシファーは八面六臂の活躍を見せ、一時期は男女混合のファンクラブが出来上がるほどの人気を博した。
ただまぁ、戦い後のあまりにもだらけきった姿を見てドン引きしたものが相次ぎ、その結果たった三日で解散してしまうという伝説を持つ。
そんな中でも、同期の
意外と人気はあるのだ。
だからこそ、ルシファーは耐えていた。
モテなさすぎて同期と怪しい雰囲気になり、間違いを犯しかけたこと数十回。
部下達に慕われすぎて危うく貞操が奪われかけること数百回。
そして、もしかして自分の恋愛対象は女の子ではないか?と悩むこと数知れず。
それでもルシファーは耐えた。今日まで耐えきったのだ。
ある時は自分に彼氏がいる妄想をすることで乗り越え、ある時はショタが自分の帰りを待っていると乗り越えた。
ぶっちゃけ限界だった。
これで報われると思っていたのた。これでようやく下界に降りて彼氏を作れると。
それなのに、この仕打ちである。
「ちくしょおぉぉぉ!!!!」
ダメージを受けすぎて、ルシファーはもはや立ち上がれなかった。
傍から見れば、地面に突っ伏して奇声を上げる変人である。
周りの人間たちはそんな彼女を避けるようにして、目線を合わせないようにしていた。
しかしそんな無様な彼女になんと、手を差し伸べる者がいたのである。
「大丈夫かい、キミ?」
「・・・へっ?」
声につられて顔をあげたルシファーは───絶句した。
アッシュグレイのボブで切り揃えられた髪に、翡翠のような美しい瞳。そして、どこか不安げに揺れた顔が加護欲を擽ってくる。
分かりやすく言えば、美男美女がほとんどな天界でも通じる・・・否、TOPレベルの顔面偏差値を、目の前の美少女は持っていた。
「いきなり話しかけてごめんね、ボクは
思わず呆然とした表情で眺めて暫く、何の返答もないルシファーが戸惑っていると思ったのか、今度ら申し訳なさそうな表情で尋ねてきたのだ。
「えと、天使・・・いや、堕天使?のルシファーです」
「・・・堕天使のルシファーさん?ふふっ、キミ面白いね」
名前を聞かれたので当然自分の名前を答えたルシファーだが、
それもそのはず、彼女からすれば道端のど真ん中で地面に張り付いて奇声をあげる人間に名前を聞いたら、厨二病真っ盛りでも恥ずかしくて言えないような名前を言ったのである。
笑わない方が難しいだろう。
乙女ゲーで言うなれば『こいつおもしれー女だな』状態である。
「それで?キミの本当の名前はなんだい?」
「・・・ルシハです」
「ルシハさんね!うむうむ、可愛い名前だ」
ルシファー、改めてルシハは諦めて、自分の名前を偽ることにした。天界で名前を偽ることは違法だが、ここ天界じゃないし!堕天してるからいいよね!の容量だ。
ルシハは聞き分けのいい子なのである。
「それじゃあ、ルシハさん。ボクから提案があるんだけど、一ついいかい?」
「な、なんですか?」
少し警戒を滲ませながら聞き返すルシハ。
そんな彼女の様子を見てニヤリと笑ったかと思うと、端正な顔を歪ませて
「ボクと契約して───VTuberになってよ」
ルシハにも届きうる顔面偏差値とスタイルの良さ、間違いなくこの世界でモテること間違いなしのルックス。
そこら辺の女子に言えば、二つ返事で了承を得られるだろう。
そんなルックスの暴雨がルシハを襲い───
「あ、いやいいです。契約とかなんか怖いので」
───二つ返事で断られた。