モンド城正門side
「待っててカルト、あと少しだから」
「フィッシュル!」
「アンバー」
エミが正門をくぐるとアンバーが城壁から降りてくる
「カルトは...」
「大丈夫。生きているわ。」
「そっか,よかった,,,!」
「バーバラはどこにいるかわかる?」
「物資と負傷者の数の影響で今は教会に移動してるはず、私も手伝うよ」
「ありがとう。」
フィッシュルとアンバーはカルトを支え西風教会に歩き出そうとしたそのとき、背後から轟音が響き渡る。二人が後ろを見ると正門は破壊されており数多くの騎士が血を流し倒れていた。中には打ち所が悪く息を引き取っている者もいた
「正門が...まさかジン団長まで..!」
「た、助けてくれ」
一人の騎士が血を流しながらフィッシュルたちに助けを求める。その騎士は瓦礫によって足をつぶされており自分では起き上がれない状況だった
「フィッシュル、カルトをお願い!」
「うん」
アンバーはフィッシュルにカルトを預け足を潰されている騎士を助けに行った。
「アンバー、頼む足が潰れちまって」
「うん!すぐに助けるね」
アンバーは瓦礫をどかしていった
「クソッ、痛ぇ」
「大丈夫すぐに医療班に連れていくから」
「ああ、助か...」
騎士がアンバーにお礼を伝えようとするがその言葉はアンバーに届くことはなかった。その騎士の頭はギーグによって踏みつぶされてしまったからだ。
「え.....」
「.............」
そんなギーグは目の前にいるアンバーと自分が殺した騎士を気にすることなく歩いていく
「よくも!」
「...ん?ああなんだ、いたんだ。ていうかなんで僕の足こんなに血だらけなんだ?うわ、その人頭砕かれてるじゃん」
「アンタが殺しといて何言ってるの!」
「殺した?一体何のこと?」
「ふざけないで!?彼を殺した張本人が!」
「だから本当になんのこと?僕はただここ歩いていただけんだけど」
「は...?」
何を言っているの?目の前の男は。アンバーは心の中でそうつぶやく。確かに目の前の敵が自分の仲間の一人を殺したところをみた。でも目の前の敵は本当に何も知らないような態度を取る。そんな態度にアンバーは怒りを抱いていたが次第に不気味さに変わっていった
「でもこの状況を見るに殺したのたしかに僕のようだ。ごめん。」
(もしコイツの言っていることが本当なら私たちはコイツにとって道に転がっている小石とかと変わらないってこと?)
この時ギーグは冗談を言っているわけではなく本当に彼の目にはアンバーも殺した騎士も写っていなかった。彼からしてみればただただ何もない道を歩いているに過ぎなかったのだ。そのため彼は自分が騎士の頭を砕き殺しているとは気づいていなかった。人間が蟻を殺して道を歩いていたのに気づかなかったように
「でもこれだけは言わせてほしい。今の今まで君たちの姿は僕の目に映っていなかったんだ」
「...!」
その言葉にアンバーは恐怖した。今まで数多くの犯罪者と関わってきたがギーグのような本当にただ無自覚で人を殺すような敵とは遭遇したことがなかったからだ
「でもまぁ、どうせ」
「!ウサギ伯爵!!!」
アンバーはギーグが動く前に自分の爆弾人形”ウサギ伯爵”投げつけたが微かに煤がつくだけでギーグはダメージを負っていなかった
「なにそれ?」
「くっ!」
アンバーは炎元素を纏った弓矢を複数放ったがギーグはそのすべてを指の間で受け止めてしまった
「はぁ、弱すぎる。同じ騎士団なのにこんなにも実力が違うなんて」
「....だったら!」
アンバーは上空に巨大な炎の弓矢を放つとその弓矢が分裂し雨のようにギーグに襲い掛かる。ギーグは人差し指を上に向けると指先から小さな竜巻が発生し弓矢をすべて砕いてしまった
「そんな...」
「もういい?」
ギーグはアンバーのを手刀で貫こうとしたとき
「セレネ・ティアーズ」
「これは...」
光を纏った水弾がギーグに命中する。ダメージこそなかったが視線をアンバーから移したその隙にアンバーの元に瞬間移動し手を掴み再度瞬間移動を使いギーグとの距離を離すことに成功した
「やっぱり連続の瞬間移動は疲れますね。」
「モナ...!」
「準備を。」
「殺される?」
「「!」」
ギーグは手に風の刃を作り出しそのままアンバーとモナを切り裂いた。だが切り裂いた瞬間二人は水飛沫をあげ消えた
「水分身か」
「はぁー!!!」
「またその攻撃...あれ」
ギーグはアンバーが放った6本の矢をさきほどと同じように掴もうとするが体の自由が利かずそのまま全ての矢がギーグの体に突き刺さった。
(一瞬体の動きが)
「まだまだ行きますよ!」
モナ再び同じ技を繰り出す
「(なるほどあの女の技の影響か)だったら君から始末するまで」
「させない!」
アンバーはギーグの顔に目掛けてウサギ伯爵を投げつけ視界を奪いモナの攻撃を回避させることなく食らわせた
「神の目の力....ちょっと試してみようか」
ギーグは元素力を溜めそれを一気に開放しここら一帯を吹き飛ばそうとしたその時、ある女性が背後から一本の氷の槍がギーグを貫いた
「ロサリアさん!!」
「...なに?痛いんだけど」
「安心して、すぐに感じられなくなる」
ロサリア、モンドのシスターでありながらモンドに害するものを裏で処理をしている執行人。彼女は今回バーバラ達後方支援の護衛を請け負っていたが前衛の主力がやられたことにより彼女も前線に出てきたのだ
「そんなことシスターが言うもんじゃないよ」
ギーグは氷の槍を破壊しロサリアに迫る。だがギーグの攻撃の速度は先ほどと比べてかなり遅くなっておりロサリアはその攻撃をかわして、蹴りを入れる。
「この体の不自由さ...だるいな」
「体を貫いてもほとんどダメージなし。面倒ね」
だがギーグにはダメージは入っておらず確かにアンバーと矢とロサリアの槍に貫かれたはずの彼はなんともない様子だった
「体の調子が戻ってきた。なるほどあの魔女が使う技の持続時間は大体6秒くらいのようだね」
「6秒って...!?本来なら数十分は動けなくなるはず...!」
ギーグの発言にモナは驚きを隠せなかった
「いやむしろ6秒も僕を止めたのを誇るべきだ。だがここまでだ。.....はぁあああ!!!」
「この元素量は...!」
ギーグは体に力を入れると凄まじい量の風元素が放出された。その様子を見て3人は背中に嫌な汗が垂れたのを感じた
「自分でも驚いてるよ。まさか僕にこれほどの力が身に着くなんて!」
「ゔっ!」
「ロサリアさん!!!」
ギーグは一瞬でロサリアの背後を取りそのままアンバーたちのところまで蹴り飛ばした。ロサリアはかろうじて意識を保っているが口からは血を出し呼吸が荒くなっていた
「...まったく見えなかった」
「今の速度カルト並みでしたよ。でもなぜ?もう彼からは龍の力は感じないのに」
「おお、そこの魔女、いい着眼点だね。君の言う通り僕はさっきまでと違って毒も出せないし体の再生もできなくなったよ。喪失、これは生物が成長するにおいて必要不可欠なこと」
「成長...まさか!」
「そう!僕は毒と再生の力を失う代わりに神の目とこの体を得た。おそらく龍の力がそのまま僕の膂力になったんだろうね。つまり僕はあのカルト・スカーレットと同じいや、それ以上の存在になったんだ!!!」
「最悪ね...!」
ギーグは手を大きく広げ高笑いをあげた
「これも神の恵みというやつかな?」
「モナ、アンバー、貴方達カルトに勝ったことある?」
「そんなの」
「あるわけないじゃないですか」
「だったら作戦は決まったわ。アイツを倒せるのは多分カルトだけ、だから彼が目覚めるまで時間を稼ぐ」
「そうですね。あの敵は私たちの手には余り過ぎる。でもさっきの攻撃でほとんどの西風騎士たちは戦闘不能になっています。私たち3人でなんとかなるかどうか...」
「それでもやるしかない!」
3人は臨戦態勢を取る
「いいよ、来なよ。この体と神の目の力、君たちで試してやる」
「行くわよ!」
「「はい!」
こうして3人はギーグとの戦いに臨むのだった
「バーバラ!!!」
「エミ...?それにカルト!?」
「なんだって!?」
「あの”災害が負けた...?」
カルトのボロボロな姿を見て周りの負傷者は驚きを隠せないでいた。カルトが血だらけでここにいるということは”災害”と呼ばれるほどの強さを持つ彼が負けたことを意味するからだ
「お願いカルトを助けて!」
「う、うん!」
バーバラはカルトの近づき容体を確認する
(この出血量から見て血が足りないのは明白...そして呼吸なし、あと皮膚に若干の紫色の跡...毒それもかなり強力なやつ。でもとりあえず今は)
「エミ、カルトの血液型は確かB型だったよね?」
「うん」
「皆さん!この中に血液型がBの方はいらっしゃいませんか!血が足りません、どうかご協力をお願いします!!!」
(俺、Bだ)
「私も...)
(でもこの血液ってアイツを治すために使われるものなんだよな)
この場にはB型の人間は複数いた、だがそのどの人物もバーバラの呼び声に応える者はいなかった
(やっぱり皆まだ...)
龍災を収めた立役者の一人になったとはいえ人々にはカルトに対して恐れを抱いていた。
(もしここでアイツを治して、この戦いに勝っても)
(今度は私たちが彼に殺されるかもしれない)
(自業自得だってことは分かってる!でも...)
「あ、貴方は...!」
「....!」
フィッシュルは一人の女性に駆け寄った
「貴方確かB型だったわよね?お願い、カルトを助けて!」
「ち、違うわよ!私はB型じゃない!」
「え、」
「悪いけど、他の人を当たってもらえる?ほら、あそこの男は確かB型だったはずよ!」
「な、お前!」
フィッシュルは女性に言われた通り男性に近づき輸血のお願いをするが先ほどと同じくはぐらかされてしまう。そしてまた他の人へ擦り付ける
「なんで...なんで、皆協力してくれないの!?このままじゃカルトが...」
「怖いんだよ!!!!!」
フィッシュルの言葉に一人の男性が荒々しく返す
「もしソイツをここで治してこの戦いに勝ったとしても今度は俺たちが狙われる!」
「そんなことカルトはしない!」
「それは貴方達だからよ!貴方達はあの時彼の味方をしていたからそんなことを言えるのよ!」
「彼を迫害し全てを奪ったの私たちよ!でも怖いものは怖いの!」
「俺たちにも大切なものがある。もしかしたらソイツは復讐としてそれらに手をだすかもしれないだろ。だったらいっそのことここで」
「みんな、何をする気!?」
負傷者たちはそれぞれ自分の武器を持ってカルトに近づく
「恨むなよ、これも俺たちが生きるため、そして俺たちの大切なものを守るためだ」
「これでやっと解放される...あの時から続いた怯える毎日から」
「待って!」
フィッシュル、いやエミはおぼつかない足でカルトの前に立ちふさがる
「皆これまでカルトに何かされた!?彼が貴方達になにか危害を加えたの!?この間だって風魔龍から私たちを守ってくれたじゃない!」
「ああ、その通りだ。だがこの戦いが終わった後は?三日後は?一年後はどうだ?その時は俺たちはソイツに殺されてるかもしれない」
「彼は私たちにとって災害でしかないの。だから...」
「カルトは災害なんかじゃない!」
エミは涙を流しながらそう叫ぶ
「私たちを守ってくれた彼のどこが災害なの!?むしろ理不尽にエルタとカルトを傷つけた貴方達の方が災害じゃない!!!」
「「「....!」
「お願い...カルトを助けて。もうこれ以上...私の大切な人を奪わないで!!!」
「「「.........」」」
エミの言葉を聞き人々は足を止め、武器を持っている手は震えはじめていた。
「”大切な人を奪わないで”か...」
そんな人々をかき分けて一人の青年がナイフを持って近づいてくる。その青年は龍災中カルトが城外で助けた女性の恋人だった
「俺はソイツのせいで彼女に別れを告げられたよ。」
「待って」
「どけ!」
青年はエミをはねのけカルトに近づいていく
「なんで俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだろうな。あの時お前が来なかったらこんなことにはならなかった!」
青年は唾液を飲み、ナイフを持つ手に力を込める。そんな彼の前に今度はバーバラ立ちふさがる
「ふぅ~」
「...ナイフを下ろして」
「嫌だね。」
「...ッ!」
そして青年はナイフを掲げそれを振り下ろし刃を突き刺した...........
自分の腕に
「いってぇ~」
「な、貴方何を!?」
「コイツを助けるのに血が必要なんだろ?俺はB型だ」
「おい!お前、どういうつもりだ!?」
「貴方は彼のせいで恋人と別れたんでしょ!?なのに」
「ああ、しばらくはそう考えていたよ。でも気づいちまったんだ。彼女を助けたのはカルトで、そんなコイツに俺は礼どころか罵声を浴びせた。ハッ、そりゃ別れも告げられる」
青年は自嘲しながら語り始める
「今更かもしれないが俺はコイツに謝罪と感謝を伝えたい。だから頼むバーバラさん、コイツを...俺の大切な人を守ってくれた英雄を救ってくれ!」
「.....わかった。協力ありがとう。そしてその言葉をどうか彼に直接伝えてあげて」
「ああ」
バーバラは水のチューブで青年の腕とカルトの腕をつないだ。すると水のチューブの中を血液がカルトの中にどんどん入っていく
「時間がない。輸血を行いながら解毒をする」
そしてバーバラは水球を作り出しそれをカルトの腹の傷口にいれていく。輸血と解毒、それを水元素を正確に操りそれらを行っていく。水元素の扱いに長け医術にたけているバーバラだからこそできる方法だ
「ありがとう。本当にありがとう...!」
「いいんだ。これは俺のためでもあるしな。それとさっきは突き飛ばして悪かったな。少し押しただけでああなるとは思わなかったんだ」
「ううん、気にしないで。これはさっきの戦いの影響...だから...」
「おい大丈夫か!?」
「大丈夫」
エミは青年にお礼を言うと力が抜けたのかその場で座り込んでしまう。だがその表情にはやわらかいものだった
「おい、!余ってる包帯全部こっちにくれ!」
「くれって...」
「とっとと動け!どっちにしろカルトが復活しねぇと全員殺されるんだからな!」
「~わかった!わかったよ!!!」
「...確かに私も彼に助けられたことがあった。でも私は怖がってお礼も言えずにいた。はぁ、口にするとなんだか情けなくなってくるわね」
「アイツを災害にしたのは紛れもない俺たちだったんだな」
青年の行動から周りの負傷者もだんだんとカルトに包帯や薬を提供するようになっていった
「みんな....!」
「おい!全部の物資もってこい!コイツを助けるぞ!」
「ええ!そして皆で謝りましょう!」
「はぁ、せめて楽に殺してくれることを願おう」
「大丈夫だよ!みんな、」
バーバラが治療をしながら人々に話かける
「カルト、昔から口は悪いけど優しいんだよ。ねぇ、エミ?」
「うん!それに鹿狩りの机だってしょっちゅう直してたんだから!」
「あ、それ見たことある」
(ねぇカルト。今皆が貴方を助けようとしているよ。もう貴方を災害と呼ぶ人はいない、変わり始めてるの。だからお願い、帰ってきて!)
エミはカルトを見ながらそう祈り続けるのだった
カルトside
ここは、どこだ。真っ白でなにもねぇ
「俺は確か...あの野郎に」
俺は死んだのか...だったらここはあの世か?
「..........うう、ああああああ!!!」
「....!なんだよ、人いんじゃねぇか」
しばらく歩いていると一人赤髪の子どもが泣いていた
「ああ、ぐすっ」
「なんだその、泣いてるところ悪いんだがここがどこか教えてくれねぇか?」
「...........」
「おい、」
「お...ま」
「あ?」
「お前....」
なんだ、コイツ。それにコイツどっかで
「なぜここにお前がいる!!!」
「ッ!」
子どもは鬼の形相で俺の首を絞めてきた
「お前に....お前にここに来る資格なんてない!」
ああ、そうか、分かった。目の前にいるのが誰か
「お前はここにいちゃいけないんだよ!死ぬな!生きて永遠に苦しめ!モンドの敵を殺し続けろ!それが...」
「俺にできる唯一の償いそして存在意義、だろ?」
「そうだ。お前のせいでアイツらは苦しみ、傷つけられた。そして」
「エルタは死んだ」
「まだ敵は死んでいないぞ...」
「...わかってるよ、俺」
俺がそう答えると過去の俺は砂となって消えていった
「進まないと...そして今度こそ全部終わらせてやる」
自分の存在意義を再認識した俺はこの真っ白な空間を再び歩き始めた。だが
「そうだ、お前は生き続けなければならない。世界の柱としてな」
この時俺は気づかなかったんだ。俺の中にいたもう一つの存在を。それゆえ想像もできなかった。この存在がいずれ俺、いやこのテイワット全体に牙を向くことになるなんて
「戦況は悪くなるばかりだ...」
アルベドは騎士団の医務室に足を運んでおりある一室の扉を開ける。そして彼は右手をベッドで寝ている病人の胸に添える
「...............」
「風神バルバトス、今こそ君の力が必要だ」
読んでくださりありがとうございました!
私は信じています。エスコで綾華が再び覇権をにぎると