うちはの呪術師   作:狼ルプス

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デート

 

「ん、んん………………っ」

 

 

小鳥が囀る朝、半目に目を開いてパチパチと瞬きをし、両腕を上に伸ばして欠神をする。

 

天井を見ながら、意識がゆっくりと覚醒してゆく。眠気も完全になくなったころ、誰か別の人間の体温を感じ、自身の左側へと視点をやる。

 

「まっ…そうだよな」

 

 

家入硝子―――俺の恋人が寝間着姿で隣に寝ている。どうしてここにいるのかって?それは硝子が勝手に俺の部屋に入り込んでくるからだ。恋仲になって以来これがもう数週間も続くと慣れてきてしまう。だからまず彼女を起こすことから朝が始まる。

 

「硝子、起きろ。硝子」

 

「………んぅ」 

 

 

「おい、起きてるだろ…」

 

「後1時間…」

 

「長すぎだろ…昨日は何もなかったじゃないのか?」

 

「ぐぅ……」

 

「おい。ようし、そう来るならこっちにも手がある」

 

 

その方法、それはこれだ。

 

 

 

 

「くひっ!?んっ…くくくくくくっ!!!!」

 

 

くすぐり攻撃に硝子はたまらず表情を歪ませる。

 

「んっ…くひひっ…!!あはっ!!や、やめっ!!」

 

「俺がいつまでも大人しいと思ったら大間違いだぞ硝子?」

 

「あはははっ!?お、おい、や、やめっ…て…ん~っ!?!?!!?くっ…くっははははっ!?」

 

くねくねと体をよじらせる硝子。ヤバい、なんか変な物に目覚めそうな気がする。取り敢えず理性がある内にマジで何かに目覚める前にやめておこう。

 

 

「んん……あぁ、せんな。……おはよう」

 

くすぐりを止めると硝子は涙目になり息を整えながら挨拶をして来る。

 

「………おはよう硝子。その、大丈夫か?」

 

「平気だ。お前も案外そう言う所あるんだな?」

 

「お前が起きないからだろ?」

 

恋人になって以来彼女はよく俺の部屋に侵入しては俺のベットの中に潜り込む事が多くなった。どうやらピッキング作業で鍵を開け俺の部屋に侵入しているらしい。最初は戸惑いもあったが慣れて来るともう受け入れてしまっている。と言うか普通なら侵入されたら気づくと思うが何故か硝子の場合気づく事が出来ない。敵意や害をなす気配を全く感じさせないからか?

 

 

「閃凪」

 

「どうした硝子ぉっ⁈」

 

いきなりなんだと思い俺はベットに押し倒される。

 

 

「あのぉ…硝子さん?」

 

「さっきはよくもやってくれたな…」

 

「…根に持ってる?」

 

「当たり前だろ?」

 

「あの、なんで近づいてんむっ⁈」

 

 

整った綺麗な顔が上から降りてきて、熱いキスを交わしてくる。隙間なんて無く、逃がさないとでも言うように首に腕を回され、彼女が満足するまで口の中を貪られた。

いやらしい水音が部屋に響き、2人の顔が離れると唾液の橋が口から引かれた。それを硝子は舌で舐め取り、艶やかな表情で笑みを浮かべる。

 

「はぁ…はぁ…お前、流石に朝から、んむっ…」 

 

 

「……ちゅ………んはぁ……覚悟しろよ?さっきのくすぐりの倍は返してやるよ?」

 

「……っ……勘弁してくれ」

 

「ダメぇ。大人しくしてれば優しくしてはやるよ?」

 

 

「……お手柔らかにお願いします」

 

もう抵抗する気も失せた俺の胸板に手を置いて、ニッコリと笑みを浮かべる硝子に唇を重ねられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「動物園?」

 

 

「そ、買い出しに行った時たまたま当たったやつ」

 

今手元に二枚のチケットがある。硝子から手渡されたものだ。たまたま福引でペアチケットが当たったみたいだ。硝子って運は何気にいい気はする。前もコンビニのキャンペーンでくじを引いたら一等が出たし…

 

「なぁ、これ悟には…」

 

「大丈夫、あの2人にはなんも言っちゃいないよ」

 

「そうか」

 

「土曜日、予定空けとけよ?行くだろデート?」

 

「ああ、わかった。楽しみにしてる」

 

「楽しみすぎて寝不足になるなよ?」

 

「俺は遠足前の小学生じゃないからな?」

 

 

 

楽しみにしてるのは本音だが、そこまでガキじゃない。ただもしこの事を悟に言ったら間違いなく悟はついて来るだろうし傑はこう言う場合は空気を読んでくれるが悟に余計なこと言って巻き込まれるのが目に見える。

 

 

 

 

 

 

そして学業や任務をこなしていくと約束の土曜日がやってきた。待ち合わせの時間が結構早いので、起きて早速支度を始める。

 

何で街中に待ち合わせの場所を決めたのか、高専から一緒に行けばいいのにと思ったが、そこは一般みたいにそうしたいのだろうとあえて言わず硝子に従った。後は悟の事もある、アイツは基本起きるのは遅い方だから早めに出る事になった。

 

顔を洗い、朝食を済ませ歯磨きをしたら着替えて髪の毛を整え、部屋を出る。寮から出ようとすると傑にバッタリ会った。やはり髪を解いてる状態の傑はまた雰囲気が違うな。

 

「傑、起きてたのか?」

 

「閃凪?ああ。何か今日は早く目が覚めてね。君もこんな朝早くから何処か出かけるのかい?」

 

「硝子と動物園デートなんだ。後は察してくれ」

 

「あー、了解。悟には適当に誤魔化しておくよ。しっかり楽しんで来な」

 

「ありがとう。今度何か奢るよ」

 

傑に一言礼を言い寮から出でいく。既に硝子は待ち合わせ場所に行っているようで少し急いで向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇硝子side

 

 

 

 

 

「(早く着きすぎたか…)」

 

今日行く動物園はそこそこ遠い場所にあるし、クズどもに知られなければ邪魔されることなく二人でゆっくりと過ごせる。夏油はマシかもしれんがそれでボロが出て五条に伝わったら最悪だからな。

というわけで、あいつらに今日の事がバレないようにあいつらが起きていない時間帯に外で待ち合わせしている筈ったんだけど…

 

 

 

「ねぇねぇ、お姉さんこれから暇?暇だったら俺らと遊んでよ」

 

 

「絶対楽しいから!ねっ?ほら行こうよ」

 

ご覧の通りナンパに捕まった。朝っぱらから暇な男どもだな。ガン無視して携帯をいじるが中々ナンパ男どもはめげない。

 

「もしかして彼氏待ちとか?でも俺らの方がイケメンだし夜の方も満足させるよ」

 

「おいそれはやべぇだろww」

 

 

「(ウゼェ…潰すか?)」

 

同じクズでもあの二人の方がまだマシだと思える。というかそういう発言はあいつらの顔面偏差値を超えてから言え。

 

イライラする。あまりに酷かったら股間蹴り上げるか?こんなゴミどもに負ける気は毛頭ないし

 

「ねぇ聞こえてんでしょ?ちょっとは返事してよ」

 

ナンパの一人が私の肩を抱き寄せようとしたが、横から伸びてきた腕に阻止される。

 

 

 

「悪い硝子、遅れた」

 

そこに息を切らした閃凪が立っていた。黒と白との組み合わせのオシャレな服装だが、シンプルながら様になっている。

 

「この人たち知り合いか?」

 

「違う」

 

「そうか」

 

 

閃凪はナンパどもを鋭く睨みつけながらと聞いてきた。ナンパ男の腕をギリギリと締めている。全然知り合いとかじゃないので首を振りながら即答する。

 

「悪いが他をあたってくれ。俺の彼女なんだ」

 

「いだだだ⁈わ、かったから放せよ!!」

 

閃凪はパッと腕を放す。ナンパどもは何かヤバそうな男連れてるとか言いながら逃げ去った。

 

 

 

「ごめん硝子、俺がもっと早く来てたら」

 

「平気、あいつらに触られる前に閃凪が止めてくれたし」

 

「……そうか、それとさっきの奴らに嫌なこと言われたりしてないか?顔がしかめっ面になっていたが」

 

「!……じゃあさ」

 

するっと閃凪の左手を取りしっかり握る。大きな手…私の手を包み込めるような大きな手…

 

 

「さっきの嫌な気持ちが吹き飛ぶようにさ。楽しませてよ、今日は」

 

そして顔を近づけてグッと距離を縮める。閃凪の目が大きく見開かれ驚いている様子が伝わってくる。一瞬だけ写輪眼になりかけていたけど、相当動揺してるんだな。

 

 

 

 

 

 

 

「そうだな…しっかりとエスコートさせてもらうよ」

 

「うん」

 

 

硝子side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

傑side

 

 

今、私の目の前に、触れ合い広場で動物に群がれるのを前にして楽しそうな閃凪と、閃凪を微笑ましそうに見ながら写真を撮る硝子がいる。そして私の隣には双眼鏡で二人の様子を盗み見ている悟。

 

何で私はこんな所にいるのか。今日は任務もないため部屋でゆっくり過ごそうと思っていたのに、突然悟が自室に入ってきたことでそれは台無しになった。

 

 

「傑!!あいつらがデートに行ったて知ってたか?」

 

「悟、何度も言うがノックしてから入ろうか?」

 

どうやら悟は反転術式について聞こうと硝子を探していたらしく連絡しても無視される始末で歌姫先輩に聴きに行ったところ、2人がデートに行った事を知ったらしい…先輩、いくら悟が嫌いだからってそれは言ってはいけないのでは?

それに今日の2人は完全にデートだ。それを邪魔するのは良くない。邪魔なんてしたら硝子に殺されるし閃凪に関してはその辺りが未知だから余計に怖い。

 

 

「あの二人は今日デートに行ってるんだぞ。そこに私たちが邪魔したら悪いだろ。それに私は硝子を敵にはしたくないんだ」

 

「硝子がデートとか気になり過ぎんだろ!!ますます行くしかねぇわ!!硝子のイジるネタが出来るしな!」

 

 

「どうなっても知らないからね?」

 

 

火に油を注いでしまった。という訳で2人のデートを尾行することになり今に至るという事だ。悟にはバレないように閃凪に謝罪文のメールを送るとしよう。

 

「お、傑。あいつら移動するらしいぞ。行こうぜ」

 

「分かった」

 

それにして閃凪は本当に楽しそうだな。彼はやたら動物に好かれる体質らしく彼が外で瞑想をしていたのを見た事があったが、まるで自然に溶け込むような感じで鳥も集まり肩や頭、膝などに乗り彼から逃げる様子もなかった。私も試しにやったが閃凪程の集中力は出来なかったが、試しに聞いたら『動かない事が大事』と言われ全くわからなかった。

 

 

 

そうこうしている内にいつの間にかお昼時になっていた。二人は露店でホットドッグやら飲み物などを買いベンチに座った。私たちも適当に食べ物を買い、見つからないように少し離れた場所にあるベンチに座る。

 

「偶にはああいうので癒されるのもいいな。モルモットとかも久しぶり触ったなぁ」

 

「ウケるほど周りに群がられてたな」

 

「昔から動物は好きなんだ。飼った事はないけど」

 

「そうなん?」

 

「ああ、ところで次はどこ行く?」

 

二人の間には穏やかな雰囲気が流れていた。他愛内会話や私達の事やわプライベートの事やら愚痴、いろんな事を話していた。

 

 

 

 

 

 

「閃凪、アーン」

 

と、硝子がフライドポテトを一本摘まみ上げ閃凪の口元に近づける。おぉ中々に大胆だね硝子。

 

「…ありがとな」

 

少し恥ずかしながらも閃凪は硝子のポテトを咥えた。閃凪に聞いたけど今まで女性と付き合った事はないらしく硝子で初彼女との事だ。彼も色々と緊張しているだろうし恥ずかしいのも無理はないのかもしれない。

 

 

 

「ん、硝子ストップ」

 

「何?どうかs」

 

「ついてる」

 

閃凪が硝子の口元をグッと指で拭い、そのまま拭った指を舐めた。舐めた!!?

 

 

「ふっ、口元につくとか子どもみたいだな」

 

「……ずるいだろそれ」

 

普段私達には見せない硝子の赤く染まった耳、閃凪も笑顔で満足そうな顔だ。ただその本人も恥ずかしかったのか耳がほんのり赤い、恥ずかしいならやらなければいいのに。

 

 

「…なぁ」

 

「こっち見ないでくれ悟」

 

「一応これ少し辛いモンだけど、口の中が甘いんだけど?なんだこの感じ…」

 

「安心しろ悟、私も同じ気持ちだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら何してんだ?」

 

「「どわぁーー!!!」」

 

横を見ると閃凪がいた。え?どう言う事だ?彼は硝子と一緒に…

 

 

 

 

 

「お前なんで気づいて⁈ってか、あっちにも閃凪いるし!どうなってんだ⁈認識阻害の呪具使ってんのに⁉︎ドッペルゲンガーって奴?」

 

「違う。“影分身の術“、その名の通り分身の術だけど、ちょっと変わった分身さ。悟の六眼だと見破られるから硝子と一緒にいるのが本体で今お前達に話しかけてるのが分身体だ。俺がトイレに行った時に分身してお前らに話しかけるタイミングを伺ってた。後、傑が密告してくれたからな」

 

「はぁっ⁈どういうことだ傑⁉︎」

 

「園内に入る前にコッソリ連絡したんだよ。人のデートを尾行するなんて見苦しいこと、親友として恥ずかしいよ。後悟、他人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死ねばいいって言葉知ってるかい?」

 

「知らねぇよそんなの!後裏切るんじゃねぇよ!!お前だってノリノリだったじゃねぇか!!」

 

「確かにあまり見ない表情をする閃凪を見れたのはおもs…貴重だったのは確かさ」

 

「傑、お前今『面白いって』言いかけただろ?」

 

危ない危ない、危うく本音が出るところだった。閃凪は呆れてため息を吐き、ゴミを見るような目で私達を見下ろす。

 

「取り敢えず傑は密告してくれたからお咎め無しとして、悟…お前は色々と覚悟しろよ?」

 

「な、なんだよ?」

 

「帰ったらマジ殴りに、しばらく口聞かないからな」

 

 

「え」

 

 

わぁ…あの悟が衝撃を受けて固まっちゃってるよ。だからあれほど止めたのに、それと私はどうやらお咎めなしのようで助かった。

 

「そう言う事だがら、硝子が勘付かない内に連れて帰っとけよ傑。それとこれ渡しとく」

 

閃凪は机の上に諭吉を数枚私に渡してくる。

 

「い、いや、これは受け取れない」

 

「朝なんか奢るって言っただろ?それで適当になんか買うなり食うなりしてくれ」

 

 

「…わかった。お言葉に甘えさせてもらうよ」

 

「んじゃ、俺は人気のない場所で消えるから後のことはよろしくな」

 

 

閃凪から諭吉を受け取り。未だ固まっている悟の服の首根っこを掴み引きずりながらこの場を後にする。

 

翌日から閃凪は悟が話しかけも一切無視をする様になり泣きつかれることになったのは言うまでもない。

 

自業自得だよ悟。しっかり反省しな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閃凪side

 

傑から連絡が来た時は溜息を出さずにいられなかった。分身を使い硝子にバレることなく馬鹿2人を帰らせることに成功し硝子とデートを最後まで楽しむ事ができた。

 

因みに影分身の術は実体を持った分身であり、分身が消えた際にその経験は本体に還元されるという効果もある。

この術は危険な場所への偵察にも使われたらしくその応用で分身の経験を本体に還元させる事で修行効率をアップさせると言う裏技的な使い方もあり、師匠との修行の時も世話になった術だ。

 

 

「閃凪」

 

「ん。どうした硝子?」

 

「キスしないか?」

 

「はぁ!?」

 

硝子の発言に顔が一気に熱くなる。硝子は本当ハッキリ言うから偶に心臓に悪い。

 

「い、いきなりどうしたんだ?」

 

「動揺しすぎじゃん。ウケる」

 

 

硝子の言う通り流石に付き合っているのにいつまでも動揺しては不味い。

 

「じゃあ……する?」

 

「ああ。ただお前からしてくれたら嬉しいんだけどな?」

 

「……わかった」

 

そして俺は硝子の肩に手を乗せてそっと自分の唇を硝子の唇に重ねる。

数秒の軽いキスだったが、顔を見つめているとお互い思わず笑ってしまった。

 

そして園内を出て帰路につこうとすると硝子が俺の左手を握る。

 

「硝子?」

 

「ほら、帰るぞ」

 

「……ああ」

 

繋がれた手を離さないという思いを込めながら硝子の手を強く握る。それに応えるかのように、硝子も手を強く握り返した。

 

そんな行動を俺達は寮に着くまでの間ずっと繰り返した。

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