あ、海老名さん的な意味じゃなくて…
ってなわけで7話です
いつも通り6時間の授業を消費して俺は奉仕部の部室に向かっていた。なんやかんやで毎日ちゃんと行ってるんだよな俺。まぁ依頼なんて滅多に来ないからね。できれば来て欲しくない。
速水も俺が奉仕部に入っているって聞くまでは、奉仕部のこと知らなかったって言ってたしあんまり奉仕部の存在は有名ではないんだろう。実にいいことだ。
ってあれ?あれは雪ノ下さんと由比ヶ浜さんだよな?
なんで二人とも部室の前で立ち尽くしてんだろ?入ればいいのに。
様子を見てるとどうやら、教室の中の様子を伺ってるみたいだ。
面白そうだし脅かしてみよ。
「わっ!」
「ひゃあっ!」
可愛らしい悲鳴をあげて、二人の体がビクッとなる。
大成功じゃん。やったね。
「柳くん……。何のつもりなのかしら。」
雪ノ下さんが睨みつけてくる。やだ、ゆきのん怖い。
「そうだよ!急に驚かさないでよ!ひどいよ、やなぎん」
あれ?由比ヶ浜さんもご立腹のようだ。ぷくーと顔を膨らませる。
「ごめんごめん!なんか二人とも全然こっちに気づいてなかったからつい、ね。悪気はなかったんだよ」
っと俺は軽いノリで謝る。まぁこれで大丈夫だろう。
「まぁあなたに悪ふざけをやめろっていうのも無理があるわね」
雪ノ下さんはこめかみに手を当ててため息をついている。
さすがゆきのん。俺のことわかってるね!
「んで、なにしてたの?なんで部室入らないの?」
んでって言った瞬間に『んでんでんでー』って歌いそうになった。危ない危ない。てかこのネタ分かる人いんのかな?あれだよ!『はっぴぃにゅうにゃあ』だよ!
「部室に不審者がいんの」
「不審者?比企谷くんじゃないの?」
奉仕部の不審者と言えば比企谷くんぐらいしか思いつかない。
「誰が不審者だよ。誰が」
「ひゃうっ!」
再び可愛らしい悲鳴と共に、女子二人の肩がビクッとなる。
「・・・・いつからいたの?」
「今来たところだ」
「・・・・そう」
そう言って雪ノ下さんはため息をつく。
「じゃあ比企谷くんじゃないとしたら部室にいるのは誰なんだ?」
「知らん、依頼者とかじゃないのか?」
「依頼者……そういう考え方もあったわね」
依頼者か。なるほどそれが一番妥当な答えだろう。
「まぁとりあえず確かめてみないと話が進まないよな!ってことで比企谷くんよろしく!」
「そうね。ここはあなたに任せるわ。比企谷くん」
「ヒッキーがんばっ!」
「なんで俺が……」
味方のいない比企谷くんはしぶしぶ部室の扉を開けるのであった。
「クククッ、まさかこんなところで出会うとは驚いたな。ーー待ちわびたぞ。比企谷八幡」
驚いたのに待ちわびていたのか。という疑問はこの際置いておこう
奉仕部の部室に立っていた男は、もう初夏だというのに汗をかきながらコートを羽織っていて、指抜きグローブをはめて、はっはっはと高笑いをしていた。
なんだこいつ?
「比企谷くん、あちらはあなたのこと知っているようだけれど……」
「知らない、あんなやつは知ってても知らない」
比企谷くんはあくまでも知らないふりをする。いや、知り合いだと思われたくないのだろう。
「まさかこの相棒の顔を忘れたとはな……見下げ果てたぞ、八幡」
「相棒って言ってるけど……」
そう言った由比ヶ浜さんの目は「クズもろとも死ね」という目だ。
「そうだ相棒。忘れたのか、あの地獄のような時間を駆け抜けた日々を……」
「体育でペア組まされただけじゃねぇか……」
あぁそういう繋がりね。やっとこの二人の関係性が理解できてきた。
「ふん、あのような悪しき風習、地獄以外の何者でもない。好きな奴と組めだと?クックックッ、我はいつ果つるともわからぬ身、好ましく思う者など、作らぬっ!・・・・・・あの身の引き裂かれるような別れなど二度は要らぬ。あれが愛なら、愛などいらぬ!」
あ、今のあれか。北斗の拳か。俺漫画読んだことないんだよなぁ……。
まぁあのセリフは結構有名だから聞いたことはある。
「っで何の用だ、材木座」
比企谷くんが諦めたように言う。
ここまでに来たらさすがに知らないフリはできないよな。
「むっ、我が魂に刻まれし名を口にしたか。いかにも我が剣豪将軍・材木座義輝だ」
間違いない。この材木座くんは絶対に……中二病だ。
これがあれか現役の中二病患者っていうのか。まぁなんと言うか……ウザいな。
あれだな、間違った方向に自分に正直に生きているって感じだな。
まぁそういうのは嫌いじゃない。でもウザい。
「ねぇ……。ソレなんなの?」
と由比ヶ浜さんが不快そうに比企谷くんに尋ねる。
まぁこういうのは男子より女子の方が理解できないのだろう。
それは仕方のないことだ。
しかも由比ヶ浜さんは友達が多く、クラスでも派手なグループに属しているのだからそういうのには無縁なのだろう。
でもね!由比ヶ浜さん。もの扱いはやめたげて!さすがにかわいそうだから!
「こいつは材木座義輝。・・・・・体育の時間、俺とペア組んでるやつだよ」
比企谷くんは名前よりもその後の『ペア組んでる』というところを強調して、材木座くんのことを紹介した。
つまり友達とは思われたくないんだね!
「類は友を呼ぶとはよく言ったものね」
雪ノ下さんのこの一言で比企谷くんの目が最高に腐っていった。
「それで、この散らばった紙が依頼内容と関係してることでいいの?」
俺は部室に散らばった紙を拾いながら材木座くんに尋ねる。
ここにいるってことは材木座くんは依頼者のはずだ。
「え?あ、はい!そうでございまする」
おい、今一瞬、素に戻ったぞ。
なに?俺が話しかけちゃいけなかったの?
人に話しかけて罪悪感をこんなに持ったのは初めてだ。
どうやって接したらいいかわからないんだよね……。
なんかごめんなさい!
「柳、それちょっと貸してくれ」
「あーいいよー。はい」
俺は言われるがままに比企谷くんに拾い集めた紙束を渡した。
つか量多いよ。
「これは……小説の原稿だな」
「ご賢察痛みいる。如何にもそれはライトノベルの原稿だ。とある新人賞に応募しようと思っているが、友達がいないので感想が聞けぬ」
「なにか今とても悲しいことをさらりと言われた気がするわ……」
なんだろう?俺まで悲しくなってきた。
「投稿サイトとか投稿スレとかがあるからそこに晒せばいいんじゃねぇの」
確かに比企谷くんの言う通りだ。
「それは無理だ。彼奴らは容赦がないからな。酷評されたらたぶん死ぬぞ、我」
作家目指すの辞めちまえ!って叫びそうなったぞ。メンタル弱すぎるだろ……。
確かにネットだと顔がわからないから、言いたい放題言われるかもしれないけどさ。
でもそれって、作家になって本を出した時も同じようなものじゃねーの?
売れたら面白いで売れなかったら面白くなかったってほうがシビアだと思う。
ラノベ作家の世界のことはよく知らんが……。
「でもなぁ」
比企谷くんが横をちらっと見る。
そうだ、この部には投稿サイトよりも恐ろしいのがあった。
「たぶん、投稿サイトより雪ノ下の方が容赦ないよ?」
「材木座くん、死ぬなよ!」
材木座くんは決して好きな人種ではないが命は大切だと僕は思います。
帰り道、俺は材木座くんの小説の原稿を鞄に入れて歩いていた。
重いよ何これ?軽く嫌がらせじゃね?
あーでも帰ってこれ読まないといけないんだよなー。
原稿は全て合わせて500枚弱はあった。おかげでもうカバンの中はパンパンである。
まぁちゃんと教科書入っているのもあると思うが。俺は置き勉はしない派だ。
理由は特にない。なんとなくだ。
まぁひとつあるとしたら、俺は小・中・高と歩きで10分以内でいける範囲だったので、昔から教科書を持って帰るのは苦ではなかったというのはあるだろう。
総武高も新居から一番近いという理由で選んだ。
「たでーま」
あぁ……やっと家に着いた。もう無理だ。疲れた眠い。
つか原稿用紙500枚持っただけでこれとは体力なさすぎだろ俺。
「おかえりーってえぇ?!なんで兄貴玄関で倒れてんの?」
「おー我が妹よ。悪いがこの鞄をリビングに持って行ってはくれぬか?」
「なに?その口調?」
と美和がが鞄に手をかける。はっはっは妹よその鞄は結構おも……。
「よいっしょっと。これをリビングっでいいのよね?」
くないの?あれ?
今俺は自分の目の前にある光景が信じれなかった。
高二男子の俺が苦戦したほどの重さの鞄を、中二女子の妹が軽々と片手で持ち上げていたのだ。
「重くないのか?」
思わず聞いてしまった。
「ん?別に普通だと思うけど」
「・・・・」
思わず黙ってしまう。
急に帰り道うだうだ考えてた自分が恥ずかしくなってきた。
もうやだ。俺こいつのお兄ちゃんやっていける気がしない!
「じゃ兄貴も落ち着いたらリビング来てね」
「・・・・わかった」
俺絶対、美和に腕相撲負けるな。
そんなことを思いながら俺はリビング転がって行った。
転がってね。
大事なことなんで二回言いました。
7話でしたー
更新遅くなってしまったな…