これからも頑張ります!
では本編をどうぞ。
黒井さんの袖に情けなく縋っている天内を横目に、俺は部屋を出る。
自己紹介はしたし、もうここにいる必要もないだろう。
それに俺はまだ新しい自分の部屋すら見ていない。
「お話は終わりましたか?」
「はい。なんとか...」
「では、お部屋までご案内しますね。」
部屋を出て少し廊下を歩いていると、ここまで案内してくれた使用人の男性が
話しかけてくる。どうやら俺の部屋まで案内してくれるようだ。
「そういえば、さっき庭のほうが騒がしかったですが何かありましたか?」
「い、いえ...ナニモアリマセンデシタヨ。」
先が見えないほど長い廊下を二人で歩いていると、さっきの庭での一件について聞かれる。
どうやらこの使用人の人は直接「あれ」を見てはいなかったようなので、
なんとか誤魔化す。バレるとさすがに気まずい。
その後は話題をずらし、適当に雑談をしていると階段を上ってすぐのところに俺の部屋があった
「こちらが、星影様のお部屋になっております。」
「おー、すげー...」
てっきり旅館のような純和室かと思っていたが、内装は和と洋が中和した和洋室というやつだった
もちろん畳の部分もあるが、眠るのは布団ではなくベッドで、いつもベッドを使っている
俺としては、かなりありがたい。
そして部屋の真ん中には先に送ってあった荷物が置いてあった。
「それでは私は外で待っておりますので荷物のセットが終わったらお呼びください。」
「ありがとうございます。」
使用人の人に礼を言い、さっそくトランクを開ける。
とは言っても、服や生活用品など必要最低限の荷物しか持ってきていないのでそこまで
時間はかからないだろう。
実際10分くらいでほとんど準備が終わってしまった。
「これでよし。」
最後に壁に星が書いてあるカレンダーを張り付ける。
やっぱり術式に関係しているのか天体に関するものを見ていると落ち着く。
結果、ほとんど部屋の見た目は変わらなかったがこれからいろいろ物が増えていくだろう。
たぶん。
「準備、終わりました。」
「かしこまりました。では行きましょうか。」
「当主様へご挨拶に。」
そう、この屋敷は代々星漿体に使える家柄である黒井家の屋敷であり、もちろん当主も存在する。
これからこの屋敷に住まわせてもらう以上、挨拶は必須だろう。
「緊張していますね。」
「そりゃしますよ、緊張くらい。」
「大丈夫ですよ、当主様は寛大なお方ですから。」
実際、俺はかなり緊張している。一応俺はこの屋敷に客人という立場で招かれたものの、
当主様にNOと言われたら帰るほかないのだ。そうなると俺の呪術師としての信用はガタ落ち。
最悪、また「師匠」に世話になるかもしれない。考えるだけで寒気立つ。
こんどは一体いくら持っていかれるのだろうか...
絶対に失敗できない。絶対に。
「当主様、護衛の方がご到着されました。」
「ああ、どうぞ入ってください。」
いつの間にか部屋に着いてしまっていたようだ。
中から男性の声が聞こえる。
「ふぅ...では失礼いたします。」
一度深呼吸をし思い切ってふすまを開ける。
その大広間には六十代くらいの男性が座っていた。決して老けているという印象は受けず、
力強さすら感じる。
「本日より星漿体、天内理子様の護衛を務めさせていただく星影輝と申します。
以後お見知りおきを。」
「おや、まだ若いのに随分としっかりしているじゃないか、頼もしいね。では私も自己紹介をし
ておこうか。」
「私は黒井源三。黒井家の現当主だよ。」
黒井源三
かなり有名な資産家でたまに新聞に載っていることがあるくらいのビックネーム。
呪術界からの援助があったとはいえほぼ自費でこの屋敷を建てた大金持ちだ。
そして黒井美里の実の父でもある。
「本当なら黒井家内で完結させるべき問題に協力していただいて改めて感謝する。」
「いえ、お任せください。必ずや天内様を守りきって見せましょう。」
「ああ、本当に頼もしいね。これでやっと安心してお嬢様をお守りできる。」
源三が安心したように息を漏らす。
だが俺はその様子に少し違和感を覚える。
「我々黒井家には代々星奬体となった御方に全身全霊を尽くして仕える使命がある。美里にも
よく言いつけておりますが、お嬢様をどうか...」
「ええ、存じております。」
まただ。
何だ、この違和感は。
うまく言葉にできないけど何かが決定的に俺とずれている。
まあこれだけ年が離れていればそんな時もあるか...
というか長居すると俺のSAN値がゴリゴリ削れていくし早く出よう。
「それでは、早速屋敷周辺の見回りに行ってまいります。」
「頼んだよ。期待の新星呪術師くん。」
「はっ!では失礼いたします。」
俺は頭を深く下げた後に部屋を出る。
疲れた。特に心が。
今日だけで俺はどれだけ神経をすり減らせればいいんだ。
廊下には使用人の人が立っていた。どうやらまた待ってくれていたらしい。
「やはり、まだ若いのにご立派ですね。」
「いえ、ただ口がうまいだけですよ。じゃあ俺は見回りに行ってきますね。」
「はい、いってらっしゃいませ。ご武運を。」
まずは屋敷の周りを調査した見つけた呪霊を祓っていくか。
数十分前に入ってきた大きな門から外へと出た俺は、あの違和感のことなどすっかり忘れ、
「期待の新星ってなんかいいなぁ。」
などと当主様の言葉を思い出して二ヤついていた。
10才の子供から金を巻き上げるとか、誰だそんな守銭奴呪術師は()