クソザコ従者の赤錆ちゃん(仮)   作:やーなん

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余計な一言

 

 

 

「我が主はああ言ったが、どうする皆?」

 

 師匠がみんなに問いかける。

 彼はワガママで仕事を後回しにする主人に溜息を吐いていた。

 

「我が主は我らの自主的な活動に口出しをなさらない。

 私は王女様が心配だ、本戦当日まで護衛を願い出ようと思う」

「あ、じゃあ私も」

 

 セーフティがまさしく騎士の鑑みたいなことを言うので、私も同調しておいた。

 あの女王様が心配というのも嘘ではない。

 

「ふん、戦いになったら呼べ」

「拙者も同じく」

 

 ウルフとセンセイは興味なさげだった。

 

「では、私は我が主を宥めて、この案件を早く終わらせるように誘導しておく」

 

 我が主の子守りとは、師匠も気苦労が多そうである。

 

「では赤錆殿、行こうか」

「はい」

 

 そう言うわけで、私とセーフティはあの世界に戻ることにした。

 

 

 

「…………」

 

 そして、少し後悔した。

 

 私を見て、貴族たちがざわめいていた。

 それはなぜか? 私はいつものあの悪魔のコスプレみたいな格好でいるからだ。

 

「見ての通り、我が国は悪魔を召喚した。

 我が魂を対価に、我が国の勝利を願ったのだ」

 

 女王の言葉に、貴族たちも顔を見合わせざわめき合う。

 

 そう、私は彼女の政治パフォーマンスの道具にされていた。

 魂を対価にとはよく言ったモノである。

 我が主の興味は彼女から得られる“魔剣”にしかないのだから。

 

「……」

 

 私はしれっと普通の護衛みたいな顔をしているセーフティに視線を向けた。

 彼は気まずそうに顔を逸らすだけだった。

 

 ここは中堅国家の貴族が集まるサロンだ。

 女王はその政治手腕を駆使して、味方を増やす為に尽力していた。

 

「やはり、ドーンハート王国に任せるべきか」

「どちらに転んでも、戦力の温存にはなる。

 此度は彼らに任せ、我らは別口で対処するべきかもしれん」

 

 他国の貴族たちも生き残ることに必死だ。

 その為に私には思いもよらぬ策謀を張り巡らせているのだろう。

 

 正直、欠伸が出そうだ。

 

「女王よ、此度の契約とは我らを見世物にするものだったか?」

「……いや悪かった。

 必要に応じて呼ぶゆえに、それまで待つがいい」

 

 私の尊大な演技に、彼女はすぐに察してくれた。

 顔見世を終えた私はもう用済みだしな。

 

 私が透明になると、貴族たちもギョッとする。

 透明になるにしろ転移の魔法にしろ、非常に高等な技術らしいし、心得の無い人が見ると驚くのも当然だろう。

 

 私はサロンを離れて、パーティ会場の方に向かって行った。

 貴族の交渉よりは面白いかもしれない、と思ったが違った。

 

 煌びやかな広大なホールに、音楽隊の優雅な音楽が鳴り響いている。

 豪華な装飾で彩られた会場で、貴族たちが談笑をしている。

 

 だがそこは、政治パフォーマンスの場だった。

 

「議会のように不完全な方法ではなく、統一国家による絶対的統治が必要なのだ!! 

 我々人類には進歩が必要なのだ、進歩無くして何が人間か!! 

 今の我々に進歩はあるのか? 神に期待されていないからと、それで納得するのか!?」

 

 例の戦争国の代表──第一王子らしい──が演説を行っていた。

 

 私はスゴイ度胸だと思った。

 なにせ、パーティ会場の上座には。

 

「…………」

 

 自らを賢しく見せようと必死な人間を、その造物主がつまらなそうに見下ろして座っていたのだから。

 

 パーティ会場は華やかで騒々しいのに、彼女の周囲は静かであるような錯覚すら覚えるほどにヒトの密度が段違いだった。

 天井の女神が地上を見下ろしているように、孤独に見えた。

 

 誰も、彼女に意識を向けない。

 まるでそこに誰もいないかのように。

 

「おや、赤錆さん」

 

 聞き覚えのある声に振り返ると、そこにはアイアンハートが居た。

 

「ここでなにやってるんだ?」

「言いませんでしたか? 私は運営スタッフとしてメアリース様に侍っていると」

「ああ、そう言えば」

 

 そんなことを言っていたような気もする。

 

「ところで、あんたってリェーサセッタ様の神官になったんじゃないのか?」

「リェーサセッタ様とメアリース様は盟友です。

 お互いに別々のやり方で同じ影響下の世界を管理しておいでなのです」

 

 要するに、彼女は二柱両方に仕える神官と言うわけらしい。

 

 そこでふと、アイアンハートがメアリース様の方に振り向いた。

 同時に、視線を感じた。

 

「承知しました。

 赤錆さん、主上があなたをお望みです」

「嘘だろ」

「来てください」

 

 私は有無を言わさず壇上の上座へと連れて行かれる。

 十段くらいある階段の壇上に座る女神は、まさしく天上から地上を見下ろす神そのものを象徴していた。

 

「お呼びですか、メアリース様」

 

 私は一介の騎士の従者として対応した。

 礼をして、彼女の言葉を待っていること数秒。

 

「……なるほど、佳作ね」

 

 かさく……? 

 

 私はアイアンハートに助け舟を求めて視線を送るが、彼女の表情は強張っていた。

 

「所詮、あの『悪魔』に偶然拾い上げられた程度の人間だったわけね」

 

 これはもしかして、バカにされているのか? 

 

「かさく、とはどういう意味でしょうか?」

 

 私はムッとして聞き返した。

 

「文芸や芸術作品において出来栄えのいい作品。またはコンクールなどで入賞作品の次に評価された作品に対する表現。

 でも私はより一般的に使われる、見所の有る選外作品としてあなたを形容したわ」

 

 女神は辞書をそらんじるかのようにそう言った。

 

「……なあアイアンハート、これは褒められているのか?」

「いえ、基準値以下と低評価をされています」

「はあ!?」

 

 どういう意味だそれ!! 

 

「憤ることはないわ。

 そこにいる有象無象の連中は佳作以下。

 評価にも値しない無価値な連中だもの」

 

 冷めた無表情の視線が、パーティ会場を見下ろす。

 私は、気まぐれに彼らを皆殺しにしかねないような冷たさを感じた。

 

「人間をモノ扱いで、彼らはゴミですか?」

「そこまでは言っていないわ。

 失敗作として処分しない程度には役に立つ、帳簿の数字を加算してくれる者どもだもの」

 

 それ、モノですらないってことでは? 

 数字、数字って。

 

「私が残酷なことを言っていると思う? 

 なら歴史好きの人間すべてが残虐な人間ね。

 昔の人間が戦争で何万の軍勢を率いて敵の軍勢を打ち破った、みたいなことを無邪気に楽しそうに語ったりするのだから」

「…………」

 

 私はすぐに悟った。

 彼女と、私は、決定的に価値観が違いすぎるのだと。

 

 これが神の視点か。

 人類とはそう言う生き物なのか!! 

 

「この無駄なパーティに私のリソースを割いているのも退屈なのよ。

 話し相手なりなさい。なんでも答えてあげるわ」

 

 恐らく栄誉なことなんだろうが、不思議だ。

 ちっとも誇らしい気持ちに成れない。

 

「では、なぜ先ほど戦争をした国を罰さなかったんですか? 

 この世界は、争いの無いはずなんでしょう?」

「ああそれ?」

 

 人類の造物主はあっけらかんとこう答えた。

 

「それは所謂、キャッチコピーよ。

 或いは作品のテーマのコンセプト。もしくは政治の公約みたいなものよ」

「……?」

 

 私は馬鹿な自覚がある。

 学も無いが、言いたいことは何となくわかった。

 その上で、意味が分からなかった。

 

「恐れながらメアリース様。この世界は、争いの無い世界として創造されたのではないのですか?」

 

 私の代わりにアイアンハートが尋ねた。

 彼女は不安そうだった。

 

「逆に聞くけど、どのレベルまで争いが無ければ、争いが無いと表現できるの? 

 国家規模、街規模、村規模、それとも個人レベルの話?」

「それは……」

 

 アイアンハートが口ごもった。

 女神の言いたいことは分かる。

 要するに、争いが無いなんて不可能ということが。

 

「少なくとも、他の世界と比べればこの世界は非常に民主的に平和を享受してきたわ。

 その為のルールを私は与えた。それで十分じゃない」

「メアリース様は平和を愛していないのですか?」

 

 私は問わずにはいられなかった。

 

「私は人類文明を司る者。だから戦争を否定できないのよ。

 だって人類の発展と戦争は表裏一体。

 軍事開発されたものが一般社会に普及するなんて例は枚挙に暇がないもの」

「だから、この世界の戦争を認めるんですか?」

「この世界の住人がそれを望むのなら、どうして私が口を挟めると言うの? 

 それとも私が優しく母親のように喧嘩をするなと諭せばいいのかしら?」

「だって、この世界を与えたのはあなたなんでしょう!?」

「じゃああなたが共同住宅の大家なら、住人たちのトラブルに首を突っ込まないといけないの? 

 住人同士で勝手に殺し合いを始めたら、それって大家の責任なの?」

「……」

「私はちゃんと大家としての役割を果たしていたわ。

 私は管理者であって、当事者ではないのよ」

 

 私は、何も答えられなかった。

 そう、メアリース様を責めても無意味だった。

 

 この世界の戦争は、この世界の住人が自ら望んで始めたことなのだから。

 上手く回っていたこの世界の摂理を乱したのは、この地の人間なのだから。

 

「そもそも、人間同士で争わない人間なんて、人間と言えるかしら?」

 

 ここで、この女神の悪い癖が出た。

 つまり余計な一言である。

 

「……言っている意味が分かりません」

「あなたはなぜグラシア帝国を罰さなかったのか、と問うたけど」

 

 彼女は頬杖をついてこう言った。

 

 

「──それはもう試したわ」

 

 

「え?」

 

「我が影響下の世界は現在では約八万ほどだけど、創造と破壊のサイクルはもう数えるのを億劫なほど行っているわ。

 この世界と同様のコンセプトで、同様の提案をしたこともある。少しずつ、条件を変えてね」

 

 この女神は、何を言っているんだ? 

 

「あなたが考えたように、戦争を起こした国々を徹底的に弾圧したこともあったわ。闘争の意思を奪ったこともあった。思想から徹底的に争いを排したこともある。

 でも全て滅ぼした。そうして出来上がった社会に住む存在を、私は“人間”とだとは思えなかった」

 

 彼女が指を鳴らした。

 直後、私の脳裏に無数の景色が浮かび上がった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 無気力に、幽鬼のように仕事に向かう人々。

 誰かが地面に倒れていても、誰も気にも留めない。

 

 彼らは全員、生きている“だけ”だった。

 そんな光景が、何十、何百と過ぎ去っていく。

 

「……人間とサルを分けるのは何だと思う?」

 

 唖然とする私に、女神が問いかける。

 

「協調性とか、文化があるとか」

「サルも教えれば、貨幣制度も理解するわ。

 人間同様、最古の職業のひとつと言える娼婦の真似事もね」

 

 じゃあ今見せた光景の人々は、サル同然だと言うのか。

 

「私が定義する人間とは、──尊厳の有無よ。

 そう言う意味では、彼らの主張は私にとって好ましい」

 

 私は、未だ演説を続けている王族を見やる。

 少なくとも彼らは、神に従う人生を良しとはしなかった。

 

「でもそうなったら面倒ね。

 新しいこの世界の担当を決めないと」

「新しい、担当?」

「ええ、どの魔王を派遣するか決めるのよ」

 

 その言葉に、私は無いはずの胸がキュッと締め付けられる気がした。

 

「こ、この世界を滅ぼすのですか……」

「いいえ」

 

 だが、女神は退屈そうなまま私の言葉を否定した。

 

「この世界の魔物の活動を活性化させるのよ。

 とりあえず十五倍くらいで様子見かしら」

「な、なんでそんなことをする必要があるんです!!」

 

 魔物は人類の敵だ。

 それを活性化させるなんて、人類の味方であるはずの彼女がどうして。

 

「だって、彼らは闘争を求めているじゃない。

 その結果として、人類の団結という結果を欲しがっている。

 なら、人間同士で争うなんて残酷な事態になるより、幾ら殺しても心も痛まないし後腐れの無い魔物を相手にした方が、ずっと良いはずでしょう?」

「ほ、本気で、そう言っているんですか?」

「ええ」

 

 私は、理解した。

 彼女は何の悪意も無く、それが彼らの為になると思ってそう言っているのだ。

 ズレている。決定的に、私達とその思考や価値観が。

 

「それは、彼らに説明したんですか?」

「いえ。だって誰も聞いて来ないじゃない」

 

 彼女は私を向いて、さも当然のようにそう答えた。

 

 ああ、これは本当に聞かれていないから、言ってないだけだ。

 私が聞けば、こうして答えてくれるように。この世界が闘争を選んだ結果、女神がどうするか誰も聞いてこないから、説明していないだけで。

 

「このパーティが始まってからずっと、誰も今後について相談に来ないのよ。

 私と言う至高の存在が、こうして目の前にいるのに」

 

 彼女はただ、聞かれるまでその説明の義務を必要と感じていないのだ。

 聞かれれば、聞きたくないような話まで話す癖に。

 

「でもこのパターンだと、約86.3%の確率で五百年以内にその世界を滅ぼせと魔王に命じることになるのよね。

 折角、肥沃な穀物世界に育ったのに、勿体ないわ」

 

 そして、彼女の視線が私に向けられた。

 

「あなた達の仕事の重要性が理解できたかしら?」

 

 私は胃の中身がせり上がるような感覚に襲われた。

 

「あなた達が仕事をこなしたのなら、私からも褒賞を考えておくわ」

「ッッ、失礼します!!」

 

 私は我慢できず、その場から離れた。

 

 

「おえッ、げほッ、げほッ」

 

 大理石がふんだんに使用され、惜しげもなく灯りが灯されたトイレの洗面台に、私は何もないはずの胃の中をぶちまけていた。

 

「大丈夫ですか?」

 

 アイアンハートの声が聞こえた。

 彼女は私の背をさすってくれているようだった。

 

「はあ、はあ、正気かアイアンハート!!」

 

 私は彼女に食って掛かった。

 

「あんな、あんな神になんて仕えるだなんて!!」

「気持ちは痛いほど理解できます」

 

 彼女はいつも通りのすまし顔で、それが今は憎々しかった。

 

「どこがだ!! 人間を数字かモノとしか思っていないんだぞ、お前はあんなのに仕えて嬉しいのか!! 

 あれが神の御許だと言うのか!!」

「まず落ち着きましょう。鎮静の魔法を使いますね」

 

 彼女の手から魔法の光が放たれた。

 回復魔法の一種なのか、私の胃も落ち着いてきた。

 

「赤錆さんもメアリース様と話したのなら、わかるでしょう? 

 あの御方は、()()()()()()なのです。

 実際に、論理的に実利を説いて、彼女が自分の判断を翻した例もあります。

 実際に対話できて、話を聞いてくれる。彼女は真実人類の味方なのです」

「……ああ」

 

 学の無い私でも、神話の神々に話が通じる連中だとは思っていない。

 そうでなければ、あまりにも救いが無さすぎる。

 

「私もあの御方の性格を素直に賞賛できません。

 ですが、あなたがこの世界の命運で気持ちを乱すような所業の責任を、あらゆる世界で背負っている。

 かの御方は偉大な女神であることに、私は異論を挟めません」

「……」

「それに、あの御方を見限ったら、人類そのものを見限ってしまったみたいじゃないですか……」

 

 アイアンハートの言いたいことは分かる。

 彼女は本当に、人間そのもの。人間らしさそのものだった。

 

「私を始めとした多くの神官が、あの御方のやり方に納得しているわけではありません。

 そんな人たちを傍に置いているのは、メアリース様も自分の判断に完全に納得しているわけでは無いと言うことです。

 そのように向上心と理想に満ち溢れている御方なのです。

 だから私はそこに希望を見出しました」

 

 希望、希望か。

 なら私も出来ることをするべきだろう。

 

「……ならとりあえず、このことは我が主や女王様にも報告しよう。

 別にメアリース様も隠しているわけではないみたいだしな」

「ええ、それが良いでしょう」

 

 この話を聞けば、女王たちの結束はより硬くなるだろう。

 

 私達がトイレに出ると、パーティ会場を横切ることになる。

 私達は気づいてしまった。

 会場に鳴り響く音楽が消え、人々のざわめきが大きくなっていることに。

 

「何事でしょう。赤錆さん、申し訳ないですが」

「いや、付き合うよ」

 

 彼女は運営スタッフとして来ているので、トラブルは見逃せないのだろう。

 私達は人だかりをかき分け、騒ぎの中心へと近づいた。

 

「毒殺ですって?」

「まあ、怖いわ」

「主上の御前だというのに、嘆かわしい」

 

 そして、貴族たちのざわめきから、何が起こったのか察した。

 

 私達が騒ぎの中心に辿り着くと、中年の貴族が真っ青な顔で泡を吹いて倒れていた。

 即座にアイアンハートが魔法を唱え治療を始めた。

 

 服毒したらしい貴族は、うわごとのように何かを呟いていた。

 

「め、めあ、りす、さま、おじひ、じひを」

 

 彼はこの場に居る女神に救いを乞うていた。

 

「アイアンハート、どうだ!!」

「特殊な毒のようで、解毒な魔法と胃を洗浄を試みていますが……」

 

 アイアンハートの表情は芳しくない。

 どうやら助かる見込みは薄いようだった。

 

 その時だった。

 人だかりが左右に分かれ、女神がゆっくりと歩み寄ってきた。

 

「メアリース様!! 彼に救いを!!」

「それには及ばないわ」

 

 もし彼を救うには、それこそ神の奇跡が必要だっただろう。

 

「か、かッ、ぞく、わた、し、に、は、かぞく、がッ」

「安心しなさい」

 

 女神メアリースは、少しも慈悲を感じない声音でこう言った。

 

「非業の死を遂げた者には、今世よりマシな来世を与えることになっている。

 お前を殺した者は、我が盟友が見ている。

 お前を失った家族もまた、我が盟友が慰撫するだろう」

 

 女神が手を振る。

 すると、憐れなほど痙攣しえていた貴族の男は静まった。

 

「お前から痛みを消したわ。

 残りの二十秒、苦痛なく今生を噛み締めなさい」

 

 麻酔の類の魔法なのか、彼は表情さえも分からなくなった。

 それが彼女なりの慈悲なのだろう。

 

 だけど、私は。

 

「なぜ、助けなかったのですか? 

 メアリース様なら彼を助けられたんでしょう!!」

「ええ、勿論」

「ならなぜ!!」

「あの毒の解毒技術は、レギュレーション違反だから」

 

 レギュレーション、違反? 

 なんだそれは。それに違反するのが、命よりも大事だと言うのか? 

 

「ふざけるな!!」

「止めましょう、赤錆。

 メアリース様を責めるのは筋違いです」

「わかってる、だけど!!」

 

 なぜ、目の前で死にそうになっている人間を助けないのか。

 それが人間なのか? この野次馬たちのように? 

 

「だから言ったでしょう、赤錆」

 

 心乱れる私を、悪意なく神経を逆撫でするように女神は言う。

 

「魔物の相手をして死んだ方が、よっぽどマシだって」

 

 本当に、彼女は余計な一言が多すぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 





別の世界の話にしようかと思ったのですが、やっぱり今回の一件はさっさと解決させようと思いました。
戦闘シーンも書きたいですしね!!

ではまた次回!!

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