暗殺教室 孤独な捨て子の物語   作:rixk

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あけましておめでとうございます。

いやぁ皆さん、新年ですよ新年。
クリスマスをすっ飛ばして年末の挨拶もなく、新年のご挨拶から始まるシリーズはこちらになります。

2024年はもう少し投稿頻度上げたいなと思いつつ、なんだかんだで隔週投稿になりそう。

何はともあれ、新年初投稿、今年も当作品をよろしくお願いします。


では本編どうぞ!





15話 旅行の時間 四時間目

 

 

「ふあぁ~、いい湯だ~」

 

いやぁ~、疲れた体に温泉の湯が沁みわたる~。 あ~、溶けそう。

 

・・・・にしても、今日は大変だったな~。 暗殺の失敗はどうでもいいとして、強盗に遭遇するわ、他校の奴を殲滅するわ、かと思ったらまた級友と敵対するわで。

 

狐面は砕いてゴミ箱に捨てておいたから、荷物から俺だとバレることはないにしても、なんだかねぇ~。

 

合流した後も大変だったなー。 皆に迷惑と心配をかけた件で片岡にみっちり説教されたし、あんな誠心誠意謝罪したのなんて何ヵ月ぶりだろう・・・・。

まさかわざわざ店まで戻って財布の忘れ物がないか店員さんに聞いて、さらには俺が来たかも確認したとはね。

 

・・・・・・ま、今日の振り返りはここまでにしておこう。 風呂に入ってる間くらいは悩みや虚しさを忘れ、警戒心と虚飾の仮面を取っ払うって決めてるんだから。

 

「お、先客がいるかと思ったら・・・・誰だ?」

 

ガラガラと音をたてながら扉が開き、三つの人影が入ってきた。

 

「んみゅ? 渚と杉野と小田原じゃん、やほ~♪」

 

「・・・・・・マジで誰?」

 

「声と髪色でわかんないの~? 俺だよお────」

 

「待て、コイツ今俺のこと小田原って言ったな。 つまり蓮霧か!」

 

「むぅ、今名乗ろうとしてたのに」

 

軽く膨れつつ、扉の方へ向き直る。

 

「蓮霧君、なんというか・・・・、雰囲気がほわほわしてない??」

 

「ん~? そんなことないよぉ~?」

 

「結構ふにゃふにゃになってる!?」

 

「絶対のぼせてんだろ早く出ろ!!」

 

「い~や~だ~!」

 

「軽っ!? しかも軽いのに力強いなお前!!」

 

杉野に半ば強引に引き上げられそうになったので全力で抵抗する。

 

数秒間抵抗してると、諦めたのか湯船に戻された。

 

「・・・・なんつーか、お前ホントに蓮霧か? 普段の蓮霧とあまりにも違いすぎるってゆーか」

 

「むしろこっちが本来あるべき姿なんだよ♪ ・・・・普段はずっと気を張ってるからさ、お風呂の時くらいは完全にオフモードにしてないと疲れちゃうもん」

 

「もん、ってなんだもんって。 マジで別人みてーだな」

 

「アハハ~、一応自覚はあるよ。 そのうち二重人格にでもなったりしてね」

 

「流石にないだろって言いたいけど、この豹変ぶりを見ると否定しきれないな・・・・」

 

三人とも苦笑しつつ、シャワーで体を洗い始めた。

う~ん、今日一日で結構疲れたからか、段々眠く・・・・・・、

 

「・・・・z(ぜっと)z(ぜっと)z(ぜっと)

 

「「「いやzzz(それ)をそう発音する奴(いねぇ・いない)よ!!?」」」

 

「わ、急に大声上げないでよビックリするじゃん」

 

うとうとと微睡んでいると、突如として三人が何かにツッコミを入れたことで無理矢理意識が現実に引き戻される。

 

「蓮霧、悪いことは言わない。 今すぐ上がった方がいい」

 

「そうだよ、流石にお風呂で寝るのは危ないから、せめて寝るなら部屋に戻って」

 

「え、やだ」

 

「よし岡島、お前は左を持て。 俺は右を持ち上げる」

 

「おう、了解」

 

岡島と杉野がこっちに向かって来た。 なぜだかすっごく嫌な予感がする。

 

「「せーの!」」

 

「え、ちょ、離せ!!」

 

「「暴れんな! 頼むから大人しくしててくれ!」」

 

二人にそれぞれ右腕と左腕を持ち上げられ、脱衣所に強制送還させられた。

・・・・・・もう少し頭空っぽのままで居たかったのに。

 

「・・・・夜風でも浴びるか。 今日は色々ありすぎた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

「うーむ、美味い。 風呂上がりのコーヒー牛乳、これに勝る至福なし。 ・・・・いや、流石に過言か」

 

旅館の屋根に座り、先程買った瓶をあおる。 ここなら誰にも邪魔されることはないだろう。

 

「さて、早速だけど決意表明。 これからは気まぐれに、そして利己的に生きてこう。 あらかじめこう決めておけば、今後無意味な自己満足の人助けをする時に自分への予防線になる」

 

こういうのはハッキリと言霊にすることで効力を発揮する。 よくあるのだと誓いとか、神への祈りとか、あるいはなんらかの契りを結ぶ(まじな)いのようなものと同じ。

もっと身近なものだと口約束だろうか。 アレも、内容を言霊に乗せ、互いがそれを理解し承諾することで初めて有効なモノと成る。

 

「おや、ここにいましたか」

 

「・・・・・殺せんせー、何故ここに」

 

誰にも邪魔されないだろうと思ってたら邪魔が入るの、お約束ではあるけど最近やけに多くないか?

そんなことを思いつつ、隣に腰を下ろした殺せんせーに視線を向ける。

 

「ヌルフフフ、先生鼻が利くんです。 それで、蓮霧君はこんな所で何を?」

 

「いえ、別に。 風呂上がりの一杯片手に夜風を浴びながら、意味ありげに黄昏れてるだけです」

 

「意味ありげに黄昏れる時ってあんまり自分から言わないと思うのですが・・・・」

 

「そんなことより何の用ですか? さっきの口ぶりから察するに、俺に何か話があるんでしょう?」

 

さっさと話を終わらせてゆっくりしたい一心で本題に移る。

 

「あぁ、そうでした」

 

殺せんせーは軽く頷き、話を始めた。

 

「実は今日、神崎さん達が高校生に攫われまして」

 

「らしいですね。 そのせいで四班の暗殺も中止されたって聞きました」

 

「えぇ、あの場に君もいましたので、少しお話を伺いに」

 

「なんのことですか? 確かにその時間帯は道に迷って班から離脱してましたけど、俺はその場所とやらも知りません、よ・・・・・・」

 

誤魔化しの言葉を並べながら、何気なく隣を見ると、確かに砕いて捨てておいたはずの狐面が修復されて殺せんせーの手元にあった。

 

「はぁ・・・・、言い逃れはできなそうですね」

 

「ヌルフフフ、察しがよくて助かります」

 

「とは言ったものの、何から話すべきか・・・・」

 

正直、事細かに説明すると長くなるし何より面倒だ。

まぁ、俺がアイツ等に協力してた理由については軽く口走ってたから、渚あたりにでも聞いてもらえばいいとして。

 

「ん~、そうですね・・・・、俺が今のような虚無的な性格になった経緯のようなものでも話しましょうか。 意外かもしれませんが、昔の俺は結構明るい性格だったんです」

 

「おや、今の君もE組の中ではかなり明るい方だと思いますが・・・」

 

「いやいや、本当に明るいなら周りの雰囲気も明るくなると思いますよ? 前原とか杉野とか倉橋とかを見ればわかるでしょう?」

 

前原は、まあ、うん、チャラ男として・・・、杉野はあっさりと人の輪に入っていけて基本的に誰とでも打ち解けられる。 倉橋は天真爛漫を体現したかのような存在で・・・・、って、今はそんな話じゃなかったな。

 

「では殺せんせー、天才の心が折れる時、挫折する時って、どんな時だと思いますか?」

 

「ふむ、これはまた難しい質問ですね。 ひとえに天才と言っても、才能も性格も生い立ちも様々ですから」

 

「あはは、まあそうですよね。 じゃあカルマを引き合いに出しましょう、あの傲慢な天才はどんな挫折を味わうと思いますか?」

 

「そうですねぇ・・・、彼であれば、"その才能にあぐらをかき、刃を研ぐのを怠って敗北する"、でしょうか」

 

「あー、ありそう。 余裕で想像できるなぁその光景」

 

大体アイツは周りを下に見すぎなんだヨ。 何度か戦った時も、ハッキリ言って隙だらけだったし。 まあ、格闘戦に持ち込まれたら勝てないんだけど。

でも、勝敗を決するのが武器を壊すか手放させるって時点で"武器を持ってる俺には勝てません"って認めてるようなもんだし、ねぇ?

 

「・・・・では、蓮霧君は? 先程の言い方から察するに、そういった経験が今のキミを形成しているのでしょう?」

 

「・・・・はい。 俺の場合は、自分の才能に意味や意義を見出せなくなったんです」

 

「・・・・というと?」

 

「元々、この剣術の才能は生まれつきのものです。 俺はこのチカラを、誰かを守る為に扱ってきました。 ・・・・去年までは」

 

「・・・・・・・・・・」

 

殺せんせーは何も言わず、こちらの話に耳を傾けてくれている。

 

「去年の7月16日、とある事件が起こりまして。 今日神崎達を拐ったアイツ等が姉を拐ったんです」

 

「速水さんが・・・・・!?」

 

「もちろん、当時シスコンだった俺は一切の迷いなく救出に向かいましたとも。 そして無事に救出して、これでおしまいハッピーエンド、とはならなかったんです。 ・・・・ま、詳しいことは理事長にでも聞いて下さい」

 

あの日の詳細を知っているのは、アイツ等を除けば俺と速水さん、刃と理事長、それから当時の担任の五名のみ。 一応速水さんから両親に詳細が伝わっているだろうとは思うが、まあそれはどうでもいい。

 

「何はともあれ、結果として俺の行動は人を傷付けた悪として伝わり、親にたった一言、こう言われました。 ・・・・・"あんたみたいな子は私たちの息子じゃない"、ってね」

 

「・・・それは────」

 

「あぁ、ご心配なく。 俺だって、感情に任せて言っただけだろうってことくらいわかってますよ? でも、面白いことにあの言葉は純然たる事実なんです。 元々捨て子なんですよ、俺は」

 

「・・・・捨て子・・・・・!?」

 

おっと、殺せんせーが今日イチ驚いた表情に変わった。 ・・・・仕方ない、こっちも話しておこう。

 

「はい。 俺は一歳の誕生日の夜、両親に捨てられました。 "蓮霧"って名はその時に付けられた名前なので、俺は自分の真名すら知らないんです」

 

「・・・しかし、名前は人生で最初の贈り物です。 それを二度貰えたというのは、ご両親がキミを愛していた証に他ならないと先生は思います」

 

「・・・・ま、それはそうですね。 わざわざ新しい名を与えるあたり、何か事情があったんでしょう。 でも、だからと言って親が俺を捨てた事実は変わりません。 ・・・・殺せんせー、暇な時でいいので、俺と血の繫がった家族を探してもらえませんか? もし再会できたら、十数年間積もりに積もった怨念と憎悪を込めて斬り殺すので」

 

「ダメですよ!? いくら恨んでるからって、殺しちゃダメですからね!!?」

 

「そんなに慌てないでください、流石に冗談です」

 

「ホッ。 蓮霧君、冗談でもそういう事言っちゃダメですからね。 今のキミはホントにやりかねないので────」

 

「半殺しくらいで勘弁してあげるつもりですヨ」

 

「半殺しでもダメですからね!??」

 

「はいはい」

 

・・・・・・まあ、実際に両親と邂逅したらどうするのかは俺にもわからない。 色々質問攻めにするかもしれないし、一発ぶん殴るかもしれない。 はたまた、何らかの形で敵対して殺し合うことになったりするかもな。 ・・・いや、流石にそれはないか。

 

「えーっと、元々何の話でしたっけ・・・・、ああ、そうそう。 いずれにせよ、俺はあの日まで、チカラの使い方を誤ったことも、自分の信念のようなものに背くようなこともしなかった。 にも関わらず、俺は二度も親に捨てられたんです」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「ねぇ、殺せんせー。 俺の行動は間違っていたと思いますか? もし、間違っていたのなら、俺は・・・・・俺は、どうすればよかったのでしょうか・・・」

 

「・・・・・蓮霧君────」

 

「・・・・ッ」

 

・・・・・ああ、怖い。 この人は、俺の行いをどのように断ずるのだろう・・・・。

親は俺の行いを否定した。 前の担任は俺の成績を鑑みて、俺の心と自分の保身を秤にかけてから俺を肯定した。 理事長は、あの人は俺の行いを認めこそしてくれたが、個の強さを重要視しているであろうあの人は、決して他者のために行動して狂った俺の行いを褒め称えることはないだろう。

 

「────確かに、キミのとった行動は世間から見れば認められることではありません」

 

あぁ、やっぱり、この人も他の大人と変わらない。

・・・・・待て、どうして今更自己満足の行動を認めてもらおうとしているのだろう。 そんなものに意味はないって、(オマエ)はちゃんと理解シテイタダロウ?

 

「・・・・・・まあ、そうですよね。 そもそも、今更そんな昔の事に思いを馳せたって、この一年で蹂躙した不良の数が減るワケでもないですし」

 

「・・・・ですが! キミの取った行動で救われた人は必ずいます! 実際、速水さんはキミがE組(ここ)に来る前から、ずっとキミの事を心配していました」

 

「ッ・・・・! そうですか、お姉ちゃんが・・・・

 

・・・・・同じだ、あの人と同じ。 決して否定せず、かといって完全に肯定して相手を思い上がらせることもない。

生徒に寄り添って、生徒が望んでいる言葉を投げ掛けてくれる・・・。

 

「殺せんせーは、雪村先生とよく似てますね」

 

「ッ・・・!?」

 

「雪村先生は、自分が受け持つ生徒ではない俺の事も、"自分の生徒の弟だから"って、わざわざ気にかけて下さった方で──・・・って、あれ? 殺せんせー、随分と顔色が悪いですけど」

 

昔を懐かしむように語る最中、ふと隣を見ると、見るからに動揺した姿の殺せんせーが視界に入った。

 

「い、いえ、お気になさらず。 思いがけず先生の前任者の名前が出て、少しばかり驚いただけですので」

 

・・・・怪しい。 声が震えてるし、俺が捨て子だと聞いた時以上に動揺しているように見える。

・・・・・・ま、俺には関係ないしどうでもいっか。

 

「なんにせよ、ありがとうございます。 おかげさまで、少しだけ救われたような気がします」

 

「え、ええ。 是非、これからも励んでください。 そしてゆくゆくは、私を殺して人類を救った英雄剣士になりなさい!」

 

「あ、それはどうでもいいです」

 

「何故!!??」

 

え、何故って聞かれても、今の俺は虚無的な性格で、利己的に生きてるんだし・・・・。

 

「さっき言ったでしょう? 俺はもう才能とか意志とか、自分の原点(ルーツ)とかに一切の意味や意義を見出せないって。 明日地球が滅ぼうが、俺が今日消失(きえ)ようが、守りたい者も失う物もない身としては、どうでもいいんですよ」

 

「いやいやいや! もし本当にそうならなんで今も剣術やトランプ術やらを研鑚してるんですか!!」

 

「・・・・チッ」

 

「あれ、もしかして先生地雷踏みました?!」

 

大正解っ☆ 思いっきり踏み抜いてますよ! これまた痛いトコロを突いてきやがって・・・!

 

「捨てきれなかったんですよ、俺は。 意義や意味を見出だせない才能を、放棄できなかった。 そして、意思の宿らないチカラを制御できず、結果として他者を攻撃する手段に成り下がったワケです。 哀れですよね」

 

「・・・・いえ、例えそうだとしても、キミの力は皆さんの役に立ってますよ」

 

「はぁ、それは結構。 そうだ、一つお願い事を頼んでも?」

 

「ええ、それが生徒の頼みであれば、できる限りの手を尽くしますとも」

 

「それは何よりです。 じゃあ早速────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──・・・・・いつか、俺が内心の虚無と狂気に吞み込まれて暴走した時は、どうか止めないでください」

 

こんなこと、この人にしか頼めない。 一応もしもの話ではあるけれど、このまま過ごしていれば俺は必ず、必ずどこかで暴走する。

 

「それは、何故・・・?」

 

「本当の意味で俺の心を止めることができるのは、姉の言葉か、剣聖と呼ばれる旧友の言葉だけです。 なので・・・、その時が来たら、姉に、お姉ちゃんに俺を止めさせてください」

 

これは、決して対策なんかじゃない、あくまでも俺の暴走を止めるため。 ・・・・いや、やっぱり、心のどこかでは救いを求めているんだろう。 結局は自分勝手な願いの押し付けでしかない。

 

「・・・・・ただし、もし速水さんが俺を止めることを拒んだ時は、貴方が俺を止めてくださいね」

 

「・・・わかりました、約束しましょう。 ただし、先生が危ないと判断した時も、先生がキミを止めます」

 

「・・・ええ、それで大丈夫です。 さ、それじゃあ俺はそろそろ戻ります、あんまり長居すると湯冷めしちゃいますので。 今日は狂人の戯れ言に付き合ってくださって、ありがとうございました♪」

 

再び狂人の仮面(ペルソナ)を纏って立ち上がり、屋根から飛び降りて旅館に戻る。

 

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入口から入ってすぐにあるロビーや廊下は閑散としていた。 今頃みんなは浴場やゲームコーナー、あるいは大部屋にいるのだろう。

独りきりの空間を進み、少しだけ物思いに耽る。

 

(・・・・さっきまで、何故だかガラにもないことを口走っていた気がするが、最早どうでもいい────、

 

 

 

 

 

────仮初の自我を保つのに、本音や本心は不要。 己の外面が全て偽りになろうと、演じ続ければいつしかソレは本物に成る」

 

・・・・・・もう少し、もう少しで、俺は脆弱なココロを完全に封じ込められるはずだ。

そしてそれには、まだ・・・──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──無駄な優しさや、無意味な正義、どうでもいい感情が多すぎる。 狂気が・・・、まだ、足りない。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

「お、蓮霧じゃん」

 

「やほ、みんな何やってんの? 一枚の紙切れなんて囲んで宗教かな?」

 

大部屋に戻ると、何やら皆が集まってワイワイと一枚の紙を囲んでいた。

 

「んなわけねーだろ」

 

「今クラスで気になる女子のランキング投票をやってるんだ」

 

「ふーん、面白そーなコトしてんじゃん」

 

俺が部屋の入口で眺めてると、一足遅れてカルマが部屋に入ってきた。

 

「お、カルマも来たか。 お前はどうだ?」

 

「んー、俺は奥田さんかな」

 

「お、意外。 なんでだ?」

 

これは俺も気になるな。 カルマならもっと面白そうなチョイスをしそうなものだが・・・・。

 

「だって彼女、怪しい薬とかクロロホルムとか作れそうじゃん? 俺のイタズラの幅が広がりそう」

 

「・・・・なんともお前らしいこって」

 

「そういう蓮霧クンはどうなの?」

 

「ん-、俺なぁ・・・ん?」

 

特に考えたこともないコトなので、当たり障りのない回答を考えていたら、何やら窓に異物を見つけた。

 

「・・・窓の障子はちゃんと閉めといた方がいいと思うヨ? 野次馬が貼り付いてる」

 

「「「「・・・・ゑ?」」」」

 

俺の一言で皆一様に窓の方へ振り向く。

その一方で殺せんせーは投票結果をサッとメモして逃げ出した。

 

「メモって逃げやがった! お前ら、今すぐ追いかけて殺すぞ!!」

 

「いってらっしゃ~い」

 

前原の叫びを皮切りに、皆廊下へと走っていった。

 

さて、今のうちに刀のメンテとトランプの整理でもするか。 ああ、あと木刀に付いた血も拭き取っておかなきゃ。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

◁ 一方そのころ、女子部屋にて ▷

 

「恋バナ?」

 

「そ、修学旅行の定番っしょ?」

 

「と言っても、ウチのクラスだと磯貝と前原くらいじゃない?」

 

「まぁ、確かに」

 

女子達が始めた恋バナだが、開始数秒で結論が出てしまった。 ちなみにこの場で烏間先生を挙げたら身も蓋もない、というのは暗黙の了解である。

 

「他に挙げるなら蓮霧とカルマも悪くないんじゃない? 二人とも顔は結構いいし」

 

「ただ素行がねぇ・・・、あと性格も悪いし」

 

「「「そこだよねぇ・・・」」」

 

カルマも蓮霧も戦闘狂で、他者の不幸を眺めて愉しむ節もあり、悲しいことに見た目の良さを相殺してしまう。

 

「ねぇ、矢田。 あの子が何か迷惑かけたりしなかった?」

 

「ううん、むしろ蓮霧君がいなかったら私達も危なかったと思う」

 

皆がワイワイと談笑する中、端の方で速水が矢田に今日何かあったか問いかける。 やはり弟の事が心配なのだろう。

 

「危なかったって・・・、何かトラブルにでも遭ったの?」

 

たまたまそれが耳に入った不破の問いかけにより、話題が一班の話へと移ってゆく。

 

「実は今日お土産屋で強盗に遭遇して・・・」

 

「「「「強盗!!??」」」」

 

当事者しか知らない出来事が共有され、場が騒然となる。 まあ、友人が強盗に巻き込まれたと聞いたのだから無理もないだろう。

 

「そしたら蓮霧君が手元にあった木刀で強盗を撃退して、人質にされた陽菜ちゃんを救出したんだ」

 

「そんなことが・・・」

 

「ただ、その後は"財布忘れたから取ってくる"って言ってどっか行っちゃって・・・」

 

「? なら財布取りに行ったんじゃないの?」

 

「磯貝君が言ってたんだけど、皆はあの蓮霧君が財布を忘れる姿、想像できる?」

 

「「「・・・・できない」」」

 

片岡の問いに帰ってきた回答は満場一致の否定だった。

 

「実際、店で確認したら忘れ物なんてなかったって」

 

「一応本人は"道に迷った"って言ってたけど・・・・」

 

「ガキ共、一応就寝時間だって伝えに来たわよ~」

 

ガラガラと襖が開き、ビッチ先生が入って来た。 そうしてビッチ先生を中心に話題が回り、先程までの恋バはどこかに忘れ去られるのだった。

 

この後、何故かその場にいた殺せんせーの恋バナを全員で聞き出そうとして逃げられ、追いかけた先で男子と合流し暗殺が始まったりしたが、それはまた別のお話。

 

何はともあれ、こうして修学旅行二日目も幕引きとなったのだった。

 

 

 

 

 






はい、どうも。

今回はほとんどが蓮霧君周りの独白のようなモノですね。
ちなみに最後バッサリカットしたのは前回と同じく期限が近いからです(現在01/02 0:12)。

そういえば、アンケートにご回答いただいた皆様、ありがとうございました。 結果は"このままでいい"多数により、このシリーズは引き続きこのままで続けさせていただきます。

ということでまた再来週会いましょう、今回もありがとうございました~。

タイトル及びあらすじの変更は

  • 行った方がいい
  • 今のままでいい
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