暗殺教室 孤独な捨て子の物語   作:rixk

20 / 31

はい、どうも皆様こんにちは。 無事に火曜に間に合った作者です。
語ることは特にありません、前回の続きです。

ではでは本編レッツゴー!



19話 仕返しの時間

 

 

 

 

 

『蓮霧君、ターゲットの現在地を送っておいたので向かってください』

 

「ええ、わかりました。 約束通り、皆には俺・・・・・・いや、ワタシ(・・・)のことは内緒にしてくださいね」

 

『その点についてはご心配なく。 作戦は先程伝えた通りなので、うまく合わせてください』

 

「別にワタシ一人で沈めてもいいんですよ? エリート気取りの弱点(ウィークポイント)は抑えてますので」

 

『うーん、それでは皆さんのためになりませんので・・・・』

 

「ふふっ、ちょっとした冗談です。 ワタシも上手いことやりますから、また後で」

 

そう言ってマイクをミュートにし目的地に向かう。

殺せんせーに送信された座標にあるカフェに到着すると、なるほど確かにテラス席でコーヒーブレイクに洒落込む瀬尾と二股女ちゃんの姿が見えた。

 

さて、とりあえず先程買った小型マイクをテラスの柵に仕掛け店内に入る。

ひとまずはコーヒーを注文して様子見しよう。

 

『へー、果穂お前いい店知ってんじゃん』

 

『コーヒーが美味しいんだ。 パパの友達が経営してるの、私のとっておきの場所だよ』

 

うん、ちゃんとマイクが機能してることを確認。

彼等の会話には興味ないし、作戦開始までにワタ──・・・俺の今の容姿について軽く説明しておこうか。

じゃなきゃ、昨日あれだけの大立ち回りをした俺がどうしてスルーされたのかみんな疑問だろうし。

 

まず髪型、首元から下にかけて紫のグラデーションがかかった銀髪セミロングのウィッグ。

次に瞳、普段の翡翠色の双眸と異なり、紅い右眼と碧い左眼。 もちろんカラコン。

最後に服装、パーカーにミニスカ、そしてストッキング。 靴は普通のスニーカー。

メイクも行い、完璧な変装である。

 

まあ、ここまででわかったと思うが、俺はいわゆる女装をしている。 中性的な顔立ちだからか違和感もなく、自分で言うのもなんだが結構美人に仕上がっている。

ちなみに、服や髪型、オッドアイなどは全て俺の趣味。

 

何故女装をするようになったのかと聞かれれば、のっぴきならない事情があるとしか言えない。

買い出しとかプライベートで不良に絡まれると面倒でね、俺だと思われないようにするにはこうするしかなかった。

 

一応名前もある、安直に"蓮子(れんこ)"って名前が。 待ってる間ヒマだし、外でも眺めながら苗字も考えるか。

うーん、雨・・・、蓮霧・・・、・・・霧? ・・・! ひらめいた、雨霧(あまぎり)にしよう。

"雨霧(あまぎり) 蓮子(れんこ)"、即興で考えたにしてはそれっぽくていい名前になったんじゃないか?

 

ちなみに、修学旅行の時に声を中性的に調声(チューニング)できたのもコレに起因する。

見た目女の子なのに声低かったら違和感が生じるから自然になるように練習した成果ってヤツ。

 

『あんのー、そこ通ってもいいですかのう・・・・? 奥の席座りたいので・・・・』

 

『その足ほんの少し引っこめて・・・』

 

・・・っと、どうやら始まるようだ。 状態確認もほどほどに現実に戻ろう。

窓越しに外へ目を向けると、やってきたご老人に悪態をつきながら足を引っこめる瀬尾の姿が見える。 行儀が悪いし思いやりもない、マイナス1。

 

『なんだアレ、老いぼれがこんな店来んじゃねーよ』

 

『だーめ、聞こえる~!』

 

ゲラゲラと笑いながら心無い発言をしているのがイヤホンから聞こえてきた。 初対面の他人への侮辱と差別、礼儀もなってない、マイナス2。

 

『スゲーな、あれ渚と茅野かよ』

 

『パーティー用の変装マスクあるだろ? 俺がちょいと改造(いじ)りゃあの通り』

 

「・・・・驚いたわね、あのご老人が渚くんと茅野ちゃんか・・・・・。 想像以上ね、恐ろしいものだわ」

 

殺せんせーに預けたサブスマホの通話から聞こえてきた菅谷の弁に思わず感嘆の声を漏らす。

事前に聞いていたとはいえ、こうしていざ目の当たりにすると驚くというものだ。

多分、俺も事前に聞いてなかったらしっかり見ないと気付けないだろう。

 

『ヌルフフフ、首尾は順調のようですねぇ。 では、作戦を開始しましょうか』

 

作戦開始の音頭が聞こえた、俺も動けるようにしておこう。

・・・・にしても、内容を聞いた時は耳を疑ったよ。 下剤飲ませて、切り落とした木の枝直撃させて、その状態で一つしかないコンビニのトイレに駆け込ませるって・・・・。

普段からよく倫理観の欠如した人格破綻者と揶揄される蓮霧くんがドン引きしてたもの。

 

・・っとと、内心と表層が混同しないようにしなきゃ。 過去にも二回くらい混同して口調混ざったことあるんだから気を付けなくては・・・・。

 

『ねぇあなた、この近所にトイレあるかしら? 100m先にあるコンビニにはあったけど』

 

『おいおい、ここで借りりゃいいじゃろが。 店は外でもこの店の客なんじゃから』

 

『そうでしたそうでした、ちょっと行ってきますよっと』

 

そう言って茅野は店内にあるトイレに向かって行った。 正面を通ったが、目の前の"ワタシ"が"俺"であると見破られた様子はない、第一段階クリア。

 

『あ、しまっ・・・!』

 

次に渚が事故を装ってテーブルからサラダを落とす。 スプーンやグラスが落下した金属音は大きく、店内にいる俺の耳にも届くほどだった。

さて、事前のシュミレーション通り、ここで動くとしよう。

 

『いい加減にしてよさっきから!』

 

『ガチャガチャうるせーんだよボケ老人!!』

 

・・・・・他者の不注意に対する責め立てに暴言と罵声、マイナス3。

おめでとう、蓮霧君の尺度で決めたマイナスポイントが無事に5点貯まった。 容赦は必要ない、徹底的に追い込んでやろう。

・・・ん? 残りの2点はどこから来たのかって? 昨日の暴力と二股でそれぞれ1点、その後の発言内容で1点ずつ。

合計5点、簡単だろ?

 

「すいませんのぅ、連れがトイレから戻ったら店出ますんで・・・」

 

状況把握のためのイヤホンを外して外に出ると、渚(老人の姿)が瀬尾達に平謝りしながら食器を片付けていた。

 

「もし、そこのお爺様。 ご迷惑でなければ、ワタシがお手伝いいたしますよ」

 

「お、おお、ありがとうございます」

 

どうやら渚は予期せず話しかけられたからか一瞬たじろいだが、すぐ老人ロールプレイに戻りこちらに向き直った。

 

「・・・そこのあなたたちも手伝いなさい、さっきまでの非礼は行動で挽回するべきよ」

 

「「・・・は?」」

 

さっきの一瞬で奥田特製強力下剤が入れられたコーヒーを飲んだのを確認してから命じる。

まあ即効性なのは把握している、今も腹痛で顔色が悪くなっているが容赦はしない。

 

「今の俺達にんな暇ねぇんだよ! ト、トイレ!」

 

「あ、ズルい私も!」

 

「あらあら、今お手洗いは使用中だってこと忘れたのかしら・・・?」

 

腕を組み、呆れた視線で店内へ駆けていく阿呆共を見送る。

さて、俺の役回りは足止めと精神的な屈辱を与える事。 コレが自由行動の方針として指定された内容である。

やり方は自由でいいが、作戦の大筋に干渉しないようにしなくてはならないのだから面倒極まりない。

 

「っと、すみませんお嬢さん、友人からメールが来たので確認してもよろしいですかな?」

 

「別に構いませんわ、ご友人は大事ですもの。 片付けはこっちで進めておきますね」

 

・・・・・このタイミングでのメール、まあ作戦の状況報告とかだろう。 作戦に支障をきたす干渉が禁じられてる以上俺は容認せざるを得ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

◁ 一方その頃、向かいの民家二階にて ▷

 

「・・・・あれって」

 

「ん? どうかしたか、速水?」

 

殺せんせー主導で行われた前原の仕返しの一環で奥田の作った下剤弾をコーヒーに命中(ヒット)させた私は、興味本位でそのままスコープ越しに下の様子を眺めていた。

 

「ねぇ杉野、あっちの会話ってなんとかして拾えない?」

 

「あー、ちょっと待ってな、渚に確認してみるわ。 【速水がそっちの会話聞きたがってるんだけど、こっちミュートで通話繋いでも大丈夫か?】っと」

 

今私の視線は、店から出てきて食器の片付けを手伝ってる少女に向けられている。 ・・・・何故だかあの娘には妙な既視感のようなものを覚えたからだ。

 

「よし、オッケーだってさ」

 

「わざわざありがとう」

 

杉野の了承を経て、渚のスマホに電話をかける。 ワンコールで繫がり、視線はそのまま向こうの会話に耳を傾ける。

 

『おかえりなさい、お手洗いが閉まってて慌てているようだけれど、片付けを手伝ってもらうまでは通さないわよ』

 

『っざけんなァ! 今そんな余裕ねぇんだよ見りゃわかんだろ!』

 

『あら、そんなこと言っていいの? ワタシはさっきまでのあなたたちの会話言動行動をほとんど見聞きしてたワケだけれど』

 

『それがなんだっていうのよッ!』

 

『あなたたち、椚ヶ丘中学の三年生でしょう? そんな進学校の生徒が暴言を吐き、罵声を浴びせ、モラルに欠けた行いをしていたと学校に知られたらマズいんじゃないかしら?』

 

『『ッ!!』』

 

『あそこには成績不振や素行不良を集めた場所があるって聞いたことがあるわ。 一発でアウトになることはなくとも、学内におけるあなたたちの評判やメンツに関わってくるのではなくて?』

 

こっちから見ても、あの二人が露骨に狼狽えているのがわかる。 まあ腹痛に襲われている状態であんなことを言われたら冷静に考える余裕はないだろうとわかるけれど・・・・。

 

「・・・・あの娘、容赦なさすぎ・・・・」

 

正直スマホ越しに聞こえてくる内容に若干引いてる自分がいる・・・。

 

「なぁ速水、俺達にも聞こえるようにしてもらえねーか? こっからじゃ渚が引いてることと、アイツ等が青ざめながら必死にあのコから逃げようとしてることしか分かんねーんだ・・・・」

 

『・・・・・・ハァ、仕方ないわね。 ──お爺様、少し耳を塞いでくださる?』

 

「あ、ゴメン。 今スピーカーに────」

 

『・・・・きっと今からの発言は貴方にとって刺激が強すぎると思いますの』

 

「────ッ!!」

 

ただ、一言。 その一言を境に少女の身に纏う雰囲気が変わったのがわかった。 息を呑んでしまう程の敵意と殺意、電話越しでも伝わってくる強いプレッシャーに思わず気圧され、身体が動かなくなる。

 

『え、ええ、わかりました』

 

『フフ、ありがとうございます。 ・・・・・さて、と。 武力ではワタシに敵わず、学力でもワタシの上に立てなかった敗者が何を言っているのかしら。 アナタたちは普段、散々E組を嘲っているけれど、それはE組のワタシに負けた己の首を絞める行いだと何故気付けないのかしらね?』

 

『なっ・・・!?』

 

『一度己を見つめ直した方がいいわよ? E組の生徒は言わずもがな、一年間狂いに狂って壊れた人格破綻者ですら下剋上を成そうと日々研鑚しているのに、アナタたちはいつまでも砂上の楼閣に縋り付いているだけ。 ただの一度でも上を目指して這い上がろうとしたことがないでしょう?』

 

『お、お前まさか・・・・・・、"エンドのイカれザム────』

 

『フフッ、世の中にはね、わかっても口にしてはいけないことが存在するの。 これ以上詮索するなら・・・────ワカッテイルワヨネ?』

 

そう言うと、あの少女は凍てつくような微笑を浮かべ、ひと際大きい殺意と共にボイスレコーダーを取り出した。

 

『『────ヒィッ!?』』

 

『さて、ワタシはさっきなんて言っていたかしら? ワタシより優秀な(・・・・・・・)アナタたちならちゃんと覚えているわよね?』

 

『『ハ、ハイィッ!』』

 

怯えた声で返事を返した二人の声を最後に、スマホを落としてその場にへたり込む。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・・」

 

「お、おい速水! 大丈夫か」

 

「・・・わ、私のことはいいから早く磯貝達に連絡して。 もう行っちゃうわよ・・・・!」

 

「もう伝えた、今頃スタンバってるはずだ! それより今はお前のことだろ、何があった!?」

 

「・・・・・・なんでもない、私なら大丈夫だから」

 

「そんな青ざめた顔してなんでもないわけないだろ、言ってくれよ!」

 

「・・・・・・言えない」

 

これは蓮霧にかかわること、あの子のことは軽率に言っていいことじゃない・・・。

 

(・・・・見間違えや杞憂じゃなかった。 あの少女は蓮霧だ)

 

どうしてあの子があそこにいるのか、どうしてあの子が私達に内緒でこの作戦に参加しているのか、今の私にはわからない。

・・・・・でも、一つだけ確かなことがある。

 

(蓮霧がE組に来た日、あの子は私を他人だと断言した。 それ以前からずっと避けられていた自覚はあったけれど、それでも何かあったら姉として手助けするつもりだった)

 

実際、割とすぐにクラスに馴染めてたし、一ヶ月経った頃には昔みたいに明るくみんなと接してた。

修学旅行では強盗を制圧して人質にされた倉橋を助けたって聞いて、本校舎で流れてた噂・・・・、あの子が他校の不良を何人も病院送りにしてるって噂はデタラメだって思いもした。

 

・・・・でも、実際はそんなんじゃなかった。 非情で冷酷で、気分次第で協調も敵対もする、ホンモノの狂人に限りなく近い存在になってしまっていた。

・・・・・そう、確信できてしまった。

 

「・・・・ふむ、皆さん。 先生は一度速水さんを家に送ってきます。 作戦も大詰め、あとは磯貝君たちが終わらせてくれるでしょう」

 

「・・・・・殺せんせー」

 

「・・・・・では、この場は任せました」

 

そう言うと、殺せんせーは私を抱えて窓から飛び立った。

 

「・・・・ねぇ、殺せんせー。 先生は、蓮霧が参加することを知ってたの・・・・?」

 

「・・・・・・はい。 彼に手伝いをお願いしたのも先生です」

 

「なら、なんで・・・」

 

────なんで、教えてくれなかったの・・・・?

 

「・・・・・彼の希望です。 彼が協力するための条件として提示したのが、自身の存在を秘匿することでした」

 

・・・・きっとコレは事実だろう。 殺せんせーは生徒との約束を破るような人ではないとわかるから。 わかって、いるから・・・・。

 

「彼も、そして先生も、彼のあの変装を遠目で見破れる者はそういないと、そう思い込み、決めつけてしまっていました。 渚君に耳を塞ぐよう言ったのも自身の正体を秘匿するためでしょう。 ・・・・・実際、本来であればコレで何事もなく終わらせられるはずでした」

 

「・・・・・・でも、そうはならなかった。 私が、気付いてしまったから・・・。 私が気付きさえしなければ、皆に心配をかけることも、先生が作戦を見届けず私に付き添うことにもならなかった・・・・・!」

 

「・・・・それは違います、彼のあの変装は相当高い水準で完成されていました。 それこそ、生半可なプロの殺し屋程度なら容易く欺けるであろう程に。 ですが、それでもキミはあの少女に違和感を感じて正体を探ろうとし、真実に辿り着いた。 いや、辿り着いてしまった」

 

"辿り着いた"のではなく、"辿り着いてしまった"。 この違いは大きい。

今までずっと目を背けて、必死に否定していた可能性が正しかった。 いつか向き合わなきゃいけないと、そうわかっていても一筋の希望に縋り続けてきた私にとって、その真実はあまりにも、────残酷すぎる・・・・・。

 

「・・・・さっき一瞬思ってしまったんです。 蓮霧のことを"怖い"と・・・・・・」

 

「・・・・・・無理もありません。 あの殺意は悍ましいと形容できるほどの禍々しさ、狂気性を孕んでいました。 アレは、並の中学生が耐えられる範疇をはるかに超えています」

 

「・・・・・・でも、それでも・・・! 私は、あの子に向き合わなきゃいけない。 なのに・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・殺せんせー、私は、あの子の心に寄り添いたい。 姉として、あの子が一年で深めた心の傷を癒してあげたい」

 

・・・・・もしかしたらあの子は、"罪悪感を紛らわすための贖罪"だと思うかもしれない。 そもそも、一年間も目を背け続けてきた私の事を、あの子は決して赦さないだろう。

──でも、たとえそうだとしても・・・・・!

 

「────私は、蓮霧と笑い合える日々を取り戻したい!」

 

「・・・・・・それが、君の望みですね」

 

「はい・・・・!」

 

「わかりました。 ですが、まだ彼の心は閉ざされています、今何をしても時期尚早でしょう。 ・・・・幸い、ここでの日々は確実に彼の凍った心を溶かし始めている。 今は待ちましょう、そう遠くない内に彼の心を開くチャンスが来ます」

 

「・・・・それまで、私は何をすれば?」

 

「強くなりましょう。 今よりも、ずっと」

 

・・・・強く? 私が強くなることと蓮霧の心を開くことに、何の関係が・・・?

 

「今の彼は、孤独の哀しみと痛みを狂気と虚無感で半ば無理矢理上塗りしている状態にあります。 彼の心と向き合うには、まず狂気と虚しさの仮面を剥がさなければなりません」

 

「・・・・・・その狂気を剥がすには、狂気で歪められたあの子の力を真っ向から打ち破らなきゃいけない」

 

「そういうことです。 君が剣術の心得を持っているのもまた、蓮霧君の影響でしょう。 その力に磨きをかけ、彼の鎖された心を救い出せるのは、姉である君にしかできないことです」

 

「・・・・・・わかりました」

 

「さあ、着きましたよ。 では、先生は皆さんのところへ戻ります」

 

「・・・・・殺せんせー、ありがとうございました。 また明日」

 

「ええ、また明日」

 

家に入り、真っ直ぐに部屋へ向かう。

・・・・殺せんせーのおかげで、私のやるべきことが見えてきた。 早速刃に稽古をつけてもらおう。

 

「・・・・まさか、またコレを手に取る日が来るなんて」

 

あの日からずっと、トラウマと後ろめたさから部屋の奥底に仕舞い込んでいた木刀を取り出し、外へ向かう。

 

「待っててね、蓮霧。 必ず、お姉ちゃんが救ってみせるから────!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

◁ 少し時は戻ってカフェテラス ▷

 

「さ、片付けは済んだしもう行っていいわよ。 今すぐワタシの目の前から消え失せなさい」

 

俺がそう言うや否や、瀬尾と二股女ちゃんは傘を取ることもなくコンビニの方へダッシュして行った。

 

(う~ん、少しやりすぎちゃったかなぁ・・・)

 

元々の予定では自分達が散々下に見たご老人の不手際の後始末を手伝わせ、傘を回収する余裕も奪って昨日言った"敗者に相応しい立ち位置"に落としてやるつもりだった。

 

(結果だけ見れば成功なんだろうけど、つい殺気で威圧しちゃったからなぁ。 アレで与えられるのは屈辱じゃなくて恐怖だろ・・・・)

 

切り落とされた枝が直撃し、やれ毛虫だのなんだのと喚いている様を眺めながらそんなことを考える。

 

「あなた、戻りました────っと、あら? そちらのお嬢さんは──」

 

「ああ、さっき食器落とした時、こちらのお嬢さんが片付けを手伝ってくれたんじゃ」

 

アイツ等が去ってトイレを占領する必要が無くなった茅野も戻って来たし、本格的に撤退する時間のようだ。

 

「あらあら、それはなんとお礼を言っていいやら」

 

「いえ、気にする必要はありません。 それより、お爺様方もああいう輩には気を付けた方がいいですわよ。 無用なトラブルを避けるためにも、心身の安寧のためにも、ね」

 

「いやはや、ご忠告痛み入りますじゃ。 ここで会ったのも何かの縁、せめてお名前だけでも教えてくれませんかのぅ?」

 

そう言った渚の目には、こちらを探ろうとする思惑のようなものを感じ取れる。 恐らく、あの傲慢な二人に恐怖を与え屈服させた目の前の少女を警戒しているのだろう。

・・・まさか、さっき暇潰しで考えた苗字がこんなところで活きるとは。 世の中、何があるかわからんものだねぇ。

 

「・・・・雨霧 蓮子、普通の中学生よ。 もしどこかでまた会うことがあったら、その時はよろしくね♪」

 

年上を敬う言葉遣いを取っ払い、目の前にいる"渚"と"茅野"に向けて名乗り、別れの挨拶をする。

さて、もうここに用はない。 小型マイクも回収したし、サイコ美少女はクールに去るぜ・・・。

 

そういえば、ボイレコで脅した後くらいに、皆がいる向かいの民家から殺せんせーらしき影が飛び立っていったのが視界に映ったが何かあったのだろうか。

あぁいや、俺には関係のない事だったな。

 

 

翌日、今回の作戦に参加した面々には烏間先生から雷が落ちたらしい。

殺せんせーは約束を守って俺の事を言わなかったので、俺も放課後に自己申告して説教を受けたのだがそれはまた別のお話──────。

 

 

 

 

 





はい、どうも。 今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

えーっとですね、私今回、"どうせ内容薄いのが確定してるんだからサクッと書こう、それこそ5000文字位で良い"って思って書いてたんですよ。
なのに思いがけずどんどん重い方向に舵切っちゃってまして、気付いたら引き返せないとこまで書き進んじゃってました。
どうしてこうなった・・・・・・。

私もどこかで重い方向に舵切るつもりではあったんですがね?
とりあえず今回のは全く予定してなかった展開だと言っておきます。 じゃなきゃ内容決めで悩んだりしないので・・・。

まあでも結果的にはこれで良かったとは思ってます。

ということでまた再来週にお会いしましょう!
次回を待て!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。