はい、どうも。 隔週投稿作者、遂に翌週に投稿できたの回です。
イェーイ☆
では本編レッツゴー!
寺坂が引き金を引くと同時に聞こえた爆破音、それがなんの音かと考える余裕はなかった。
プールの水が一気に先の岩場の方へと流れ、生徒もまた水と共に流される。
「凛姉ッ!」
考えるより前に体が動いていた。 水流の流れに無理矢理逆らい、一目散に凛姉の方へ向かい右腕で抱き寄せる。
「ッ・・・蓮霧!」
(ぐぅッ、流される・・・!)
プールの水は相当量あり、それが重力に従って下流へと落ちてゆく。 その質量は下手に留まろうとすれば腕にそれ相応の莫大な負荷がかかる。
(そんなの知ったことか!)
「誰かっ・・・!」
「倉橋!」
凛姉の叫びに反応して視線の方を見ると、倉橋が溺れかけ、助けを求めて藻掻いてるのが目に入る。 ・・・だが、俺はそこまでパワーがない、二人抱えて水流に耐えられる保証はない。
それにどの道殺せんせーならマズい状況にある生徒は優先するだろう。 だからここで無理に助ける必要は・・・・・。
「蓮霧、頼める!?」
「・・・あぁもう仕方ないなぁッ!」
進行方向を予測して水流に抵抗し、前から流れてきた倉橋を受け止めてどうにか留まる術を考える。 このままだと三人揃って崖に真っ逆さまだ。
「二人とも、今の爆発でケガとかない!?」
「私は大丈夫! 倉橋は?」
「わ、私も平気!」
ひとまず二人の無事を確認し、次にこの状況を打開するため進行方向に何かないかと目を向ける。
なんでもいい、掴まれる物さえあればそこにぶら下がって救助を待てる。
だが、下にあるのは岩ばかり。 下手に素手で掴まろうものなら、自重と水流でアッサリ落下してしまうだろう。
チィッ、一体どうすれば・・・!
掴めるモノがないなら作ればいい。 カーボン刀なら岩壁に突き刺せるだけの鋭さと耐久性がある、短時間ならヒト三人分の重みにも耐えれるだろう
(・・・・その手があったか・・・!)
そうとわかれば善は急げだ。 水で動きづらい中、なんとか左手でカーボン刀を逆手抜刀し横の岩に突き刺して固く握り締める。
「死にたくなかったら死ぬ気で掴まってなよ・・・! 拾いに行ってやる余裕はないからね・・・・・」
「わかって───ッ!」
「ヒッ・・・・・」
おそらく流れていく水か下へと流される皆をを目で追ってしまったのだろう。 恐怖で言葉を失い、震えているのがわかる。
・・・・・・しょうがない、両手は塞がってるから口しか使えないけど、励ましの言葉でも言っておくか。 こういうのは何度かやったことがある。
「・・・大丈夫、大丈夫だよ。 俺がいる限り、絶対に下には落とさない。 たとえ落ちても、下敷きになってでも俺が守るから・・・! ・・・・もし怖いなら、俺の目を見て」
・・・まずいッ、刀が悲鳴を上げている。 腕は気合いで耐えれても、刀には耐久の限界値がある。 そもそも、いつまでも岩に刺さったまま耐えてくれるなんてことはない。
岩はガリガリと音を立てながら削られ、徐々に体が重力によって引っ張られてゆく。
だが一度掴まって保持できる安全圏を確保できた以上、こっからは耐久戦だ。
せめて表情だけでも平静を保て、焦りを見せたら二人の不安を不必要に煽ってしまうだけだ。
殺せんせーなら他の皆を助けてからこっちに戻っても手遅れになることはない、それまでの辛抱だ・・・!
「蓮霧君! よく辛抱してくれました!」
しばしそのまま耐えていると、殺せんせーの触手が俺達を纏めて回収し安全な場所に移動させてくれた。
「・・・凛姉、倉橋を頼む。 俺は寺坂と"オハナシ"してくるから」
「! ・・・わかった」
呆然と立ち尽くしている寺坂に詰め寄り、問い質す。 わざわざ構ってやれる状況ではないので簡単な尋問程度だが。
「寺坂、説明しろ。 このプールの爆破、状況的に考えて君しか犯人はいないワケだが何か言い分はあるか? ・・・ないなら放っとくよ。 こんな状況じゃ、弁明を考える時間を待ってやれる余裕はないからね」
「ち、違っ! これはシロが・・・・!」
丁度その時、草木の方から音が聞こえカルマがやって来た。
「・・・何コレ、爆音がしたから来てみたらプールが消えてんだけど?」
「お、俺は何もしてねぇ! 話が違げぇんだよ・・・、イトナを呼んで突き落とすって聞いてたのに・・・!」
なるほど、大体読めてきた。 要するに、寺坂は都合よく皆を舞台装置として扱うための内通者として使われてたってワケか。
昨日からの一貫性のない不自然な行動の数々もアイツらの差し金、そしてそれに違和感を感じさせない寺坂の単純さ・・・・・。
「なるほどねぇ・・・。 自分で立てた計画じゃなくて、まんまとあの二人に操られてたってワケ」
「・・・で、だから?」
「は・・・?」
「引き金を引いたのはお前だ。 "誰か"じゃない、"寺坂"だ。 "騙された"とか"指示された"とかは関係ない、そこに意思さえ存在すれば罪足りうる。 ・・・こういうのは、往々にしてそういうもんさ」
「お、俺のせいじゃねーぞ! こんな計画やらす方が悪りぃんだ、皆が流されたのだってアイツ等が────」
そんな寺坂の縋るような訴えは最後まで発せられず、カルマが寺坂の頬を殴ったことで中断された。 不意に殴られた寺坂はその場で尻餅をつく。
「
それだけ言うと、カルマは先に皆がいるであろう下に向かって行った。
「おー、言うねぇアイツ」
「・・・蓮霧、俺はどうすればいい・・・・・」
正直もう少し詰めるつもりだったが、カルマが一発ぶん殴ったおかげで鬱憤が晴れた。 ムチはもう十分だろう。
「さぁね、ハッキリした答えなんて誰も持ってないよ。 まあでもそうだなぁ・・・・・寺坂」
「・・・?」
その場で俯く寺坂を呼び、こっちに視線を向けさせる。
「敷かれたレールに沿って進むのってラクだよね。 灯りのない暗闇でも、先の見えない濃霧の中でも、レールに乗れば先に進める。 ・・・たとえその先が、曲がり切れずに脱線するような急カーブでも。 たとえその先が、道の途切れた谷底であろうとも。 道の先が見えなければ、目の前に破滅が迫っていても気付けない・・・今のキミみたいにね」
そこで区切ると、動こうとしない寺坂の腕を掴んで無理矢理立たせる。
「───でも、キミは意思のないお人形じゃない。 自分独りでも道を選べて、時には自ら道を切り拓くことだってできる人間だ。 ・・・けど、その道は決してラクなモノじゃあないよ。 独りってのは、道も目印もない霧の海をあてもなく彷徨うようなモノ。 崖があろうと、濁流に阻まれようと、進まなきゃいけない。 お前に、そんな茨の道へ進む覚悟はあるか?」
「・・・・・・・・」
「・・・言い方を変えよう。 レールを外れた濃霧の中で、自分の足で進むか、はたまた立ち尽くすのか、それとも破滅へ向かうとわかってるレールに戻るのか。 今のお前はそれを選べる立場にある」
「・・・俺は・・・・・」
「・・・これは選択肢を突き付けた者としてのアドバイスだけど、もしキミがこの過ちを正して償いたいと願うのなら・・・・・・どの選択をすれば贖罪になるのか、自分なりに考えてみなよ。 俺は先に行く。 ・・・答えはいつの日か見つければいい、今はまだ、決断を下すだけでいいからさ」
それだけ言うと、俺もカルマの後を追って下へと向かう。
・・・大丈夫、アイツはあれでもちゃんと明確な意志と精神力を持っている。 俺とは違って、きっと自分の足で進めるだろう。
・・・それに今は、進む方向を誤ったら指し示してくれる人もいる。 だから、大丈夫だ。
「・・・まったく、俺は偉そうにあんなことを言えるような立場じゃないってのに・・・・・」
人知れず口から出た呟きは、誰に聞こえることもなく木々に消えていった。
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・・・・・下流へと辿り着くと、かなり劣勢の様子の殺せんせーと上から攻撃を続けるイトナがいた。
ひとまず皆無事なようだ、死者もなく、怪我人もおそらくいないだろう。
「まじかよ・・・、あの爆破はあの二人が仕組んでたとは・・・・」
「でも、押され過ぎな気がする。 あの程度の水のハンデはどうにかなるんじゃ?」
確かにそうだな、スペックや外的要因によるハンデは経験でカバーできると前回証明された。
「水だけのせいじゃねぇ・・・」
後ろから寺坂もやって来て口を開く。 ・・・・・どうやら、決断はできたみたいだ。
「力を発揮できねぇのはお前らを助けたからだよ。 見ろ、タコの頭上」
そう言う寺坂が指指す方には、木の枝にしがみつく原や崖から動けなくなっている村松と吉田がいる。
「助け上げた場所が触手の射程圏内に・・・! 特にぽっちゃりが売りの原さんが今にも落ちそうだ・・・!」
「あいつらの安全に気を配るからより一層集中できない。 あのシロのヤツならそこまで計算してるだろうさ、恐ろしい奴だよ」
「のんきなこと言ってる場合かよ寺坂! 原たちあれマジで危険だぞ!!」
「・・・寺坂、もしかしてお前、今回のこと全部奴等に操られてたのか?」
状況を分析してそれを皆に言う寺坂に対し、それを糾弾する前原と冷静に寺坂に問う磯貝。
そんな磯貝の問いに寺坂は自嘲ぎみに笑うとこう答えた。
「あーそうだよ、目標もビジョンもねぇ短絡的な奴は頭の良い奴に操られる運命なんだよ。 ・・・だがよ、操られる相手くらいは選びてぇ」
そう言う寺坂の表情はかつて見たことがないほど真剣その物で、確かな覚悟を持ち、ハッキリとした足取りでカルマと俺のいる方へと向かっていく。
「・・・その様子じゃ、覚悟は決まったみたいだね」
「おう、どっかの誰かさんのおかげですっかり目ぇ覚めたぜ。 ・・・・・ありがとよ」
「・・・・・強いね、キミは」
「・・・テメーにゃ及ばねぇよ。 つーわけだ、カルマ!蓮霧! テメー等が俺を操ってみろや! その狡猾なオツムで俺に作戦与えてみろ! 完璧に実行してあそこにいる奴ら助けてやらぁ!」
その宣言に俺とカルマは不敵に笑う。
「いーけどちゃんと実行できんの? 俺等の作戦、死ぬかもよ?」
「とかなんとか言ってるけど、どーする?」
「やってやんよ、こちとら実績持った実行犯だぜ?」
「言うようになったじゃないか。 んじゃ、俺はどーしようね? 死を顧みない特攻兵さんとしてはバカ凸したい気持ちで山々なんだけど」
「はい、これ」
カルマから手渡された物は、トランプとナイフ一式だった。
「蓮霧クンはそれで寺坂の援護してやってよ。 君は放っとくと勝手に死にに逝きそうだし」
「失礼だな~、俺は生きることが使命なんだよ?」
「・・・どーだかね。 あ、そうだ思い付いた。 原さんは助けずに放っとこう!」
「名案だね、採用」
受け取ったトランプをくるくると弄びながらカルマの案に賛同する。
「おいテメェらふざけてんのか? 原が一番危ねーだろうが! ふとましいから身動き取れねぇし、ヘヴィだから枝も折れそうだ!!」
あ、コイツ後で殺されるな。 まぁそれはいいとして、結局のところ射程圏内にいるだけじゃなんともない。 自分から攻撃範囲に行くならば話は別だが・・・。
何故かって? シロだってあくまでも殺せんせーの集中を削ぐために生徒の配置を計算してるワケで、ならどこにいようがロックオンされてない以上安全であることに変わりはない。 イトナからしても、取るに足らない生徒に意識を割くだけムダだろう。
「寺坂さぁ、昨日と同じシャツ着てんだろ。 同じとこにシミあるし。 ズボラだよなー、やっぱお前悪巧みとか向いてないわ」
「あァ!?」
「でもな、頭はバカでも体力と実行力持ってるから、お前を軸に作戦立てるの楽しいんだ。 俺を信じて動いてよ、悪いようにはならないから」
「稀代のものぐさ天才コンビがバックアップするんだからダイジョーブ、気楽にやってこーね♪」
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「おいシロ! イトナ! よくも俺を騙してくれたな・・・!」
「まぁそう怒るなよ、ちょっとクラスメイトを巻き込んじゃっただけじゃないか。 E組で浮いてた君にとっちゃ丁度いいだろ」
「うるせぇ! てめーらは許さねぇ!!」
まるで怒りで周りが何も見えてないと感じる気迫で叫んだ寺坂は、シャツを脱いで水場に下りると脱いだシャツを胴体の前で構える。
「止めなさい寺坂君! 君が勝てる相手じゃない!」
「すっこんでろ膨れタコ! あのイカレ紫にできて俺にできねぇなんてこたぁねえだろうが!」
うーん、身の程知らず。 でもあの状況じゃ有利に働きそうだし言わせておくか。
・・・・俺? 絶賛裏取りの最中だよん。 アイツ等、まるでこっちに意識を割いてない。 殺せんせーのがよっぽど脅威でそっちに集中しないと喰われかねないってのはわかってるけど、ねぇ?
触手の強力な感知能力を少しでも周りに向けてれば気付けたろうに、それが致命的な綻びへと導くんだ。 実に哀れだね。
「布きれ一枚でイトナの触手を防ごうとは健気だねぇ。 黙らせろイトナ、殺せんせーに気を付けながらね」
そうして指令を受けたイトナの触手は寺坂の腹に鈍い音を立てて命中した。 しかし寺坂はそれに死ぬ気で喰らいつき、見事に耐えてみせた。 イトナは寺坂のシャツを触手に引っ掛けて回収したが、もう食らうことはないし関係ないだろう。
さて、俺も配置に付けた。 後はタイミングを合わせるだけ。
「よく耐えたねぇ。 ではイトナ、もう一発あげなさい。 背後のタコに気を付けながら・・・・・」
そうシロが言い切る前に、"くちゅんっ"とくしゃみの声が聞こえた。 予想外の現象にシロも頭に疑問符を浮かべてフリーズしている。
「さって、ここはトランプらしく・・・・ワンペア!」
気付かれないよう小声で宣言しトランプをニ枚投げる。 一対のトランプは狙い通りイトナの意識外から二本の触手を切断し、軌道を曲げて手元に戻って来た。
「よしよしいい子だ、君らもだいぶ素直に言う事聞いてくれるようになったね」
ワンペアはいくらなんでも弱すぎるって? しょうがないだろ二枚なんだから。
「寺坂のシャツが同じってことは、昨日寺坂が教室に撒いた変なスプレー、アレの成分を至近距離でたっぷり浴びたシャツってことだ。 それって殺せんせーの粘液ダダ洩れにした成分でしょ? イトナだってタダで済むはずない」
向こうでカルマが解説した通り。 寺坂というタフガイなら手加減されてる触手程度なら受けれるだろう。 動きさえ封じられればこの通り、奇術師モードの俺が仕留められる。
そうして隙ができれば、原はフリーになった殺せんせーが助けられる。
「吉田! 村松! おまえらは飛び降りれんだろそこから! 水だよ、水! デケーの頼むぜ!!」
殺せんせーが原を救助したのを見た寺坂はニヤリと笑うと上にいる吉田と村松にそう指示を飛ばす。
一方で上の方にも動きがあり、カルマによって皆がこっちへ走って来てるのを視認した。
「「殺せんせーと弱点同じなんだよね。 じゃ、同じことをやり返せばいいってワケだ!」」
作戦考案者たちがそう言うと同時に、生徒達が水に飛び込んで大きな大きな水飛沫をあげる。
俺も即座に刀を抜刀し剣士モードに切り換え接近。 逆手で地面を抉りながら切り上げて飛沫を飛ばし、そのまま斬撃で再生したぶよぶよの触手を再び切断する。
「たかが二本、再生しても振る前に斬れるから攻撃できないし、そもそも下手に攻撃したら脆い人間は死にかねない。 殺せんせーと同じ水でハンデも消えたし、詰みってヤツだよ転校生♪」
「で、どーすんの? 俺等も賞金持ってかれるの嫌だし、そもそも皆あんたの作戦で死にかけてるし、ついでに寺坂もボコられてるし。 まだ続けるなら、こっちも全力で水遊びさせてもらうけど?」
「この状況をひっくり返せる手札でもあるなら兎も角、イレギュラーへの対策なんて講じてないでしょ? 無駄な足掻きをするのならどうぞご自由に、皆結構怒ってるから憂さ晴らしに付き合ってくれるなら万々歳だ」
そう言って皆の方を見ると、バケツやらビニール袋やらに水を入れ、遊ぶ気満々である。
「・・・・・してやられたな。 丁寧に積み上げた戦略が、たかが生徒の作戦と実行でメチャメチャにされてしまった。 ここは引こう、触手の制御細胞は感情に大きく左右される危険なシロモノ・・・。 この子等を皆殺しにしようものなら、反物質臓がどう暴走するかわからん」
シロは忌々しそうにそう言うと、踵を返して去ろうとする。 ・・・・・一瞬、覆面から見える眼光がこちらを捉え、まるで"期待外れだ"とでも言いたそうな視線を向けてきたのはきっと気のせいじゃないと感じた。
「帰るよ、イトナ」
イトナはその呼びかけに応じず歯軋りし殺意を向けてくる。 特に前の時と合わせて二度も触手を斬った俺に対する憎悪の篭った射殺すかのような視線が凄い。
「どうです? 皆で楽しそうな学級でしょう、そろそろちゃんとクラスに来ませんか?」
そう殺せんせーに問われ、少し頭が冷えたのかイトナはシロと共に去って行った。
「ふぃーっ、なんとか追っ払えたな」
「良かったね殺せんせー、私達のおかげで命拾いして」
「ヌルフフフ、もちろん感謝しています。 まだまだ奥の手はありましたがねぇ」
なにはともあれこれで一件落着───
「そういえば寺坂君、さっき私の事さんざん言ってたね。 "ヘヴィ"だとか"ふとましい"とか」
「い、いや・・・あれは状況を客観的に分析してだな・・・・・」
「言い訳無用! 動けるデブの恐ろしさ見せてあげるわ!」
「そーいや俺のことも"イカレ紫"って言ってたねー? うんうん、気持ちはわかるし別にいいんだよ? 俺が狂人なのは周知の事実だしさ? けど・・・ねぇ?」
笑顔のまま寺坂に近付き原と一緒に詰める。 詰められた寺坂が言い淀みながら後退りしていると、その後ろの岩の上にいたカルマがニヤニヤと笑いながら茶化し始めた。
「あーあ、ほんと無神経だよな寺坂は。 そんなんだから人の手の平で転がされるんだよ」
「うるせーカルマ! テメーも一人高い所から見てんじゃねー!」
あ、寺坂がキレてカルマを水に叩き落とした。 ウケる。
「はぁ!? 何すんだよ上司に向かって!」
「誰が上司だ! 触手を生身で受けさせるイカレた上司がどこにいる!! 大体テメーはサボリ魔のクセにおいしい場面は持って行きやがって!!」
「あー、それ私も思ってた」
「この機会にたっぷり泥水も飲ませよっか」
寺坂の発言に片岡や中村も同調し始める。 ・・・さて、じゃこっちに矛先が向く前に退散しましょっか☆
「おいそこの紫ィ! 何サラッと退散しようとしてんだテメーもだからな!!」
・・・逃げられなかった。 おかしい、今皆カルマの方に注目しててこっそりフェードアウトすればバレないと思ってたのに。
「テメーは普段さんざん無気力ぶってんのにいっつも危ねートコに一人で突っ込みやがって! ちったぁ周りに頼ることを覚えやがれ!!」
「そればっかりは寺坂に同意だな。 修学旅行といい鷹岡の時といい今回といい・・・」
「えー? ムリムリ。 無事なんだからそれでいいじゃんかー。 そもそも俺は、生まれてこの方こういう生き方しか知らな───」
「ごちゃごちゃうるせー!!」
そうして俺もカルマと同じように水に投げ落とされる。
「うぐ・・・、人の話は最後まで聞けよぉ!」
「つーかテメー今回サラッと"凛姉"って叫びながら真っ先に速水の方行ってただろ! なんだかんだで昔のシスコン残ってんじゃねーかよ!」
「・・・・・・・・・・ぇ? あ、あはは・・・流石にそれは冗談キツいぜ・・・・・? まさか、赤の他人にそんな馴れ馴れしい呼び方するわけ・・・。 その呼び方、まるで本物の"家族"みたいじゃないか・・・・・。 俺は生まれてからずっと独りで、親も家族も何もいなかったハズだろ・・・?」
瞬間、頭に、脳に、記憶に、地獄のような激痛が走る。 痛みと共にいつの間にか"抹消"されていた、奥底に封じ込めたハズの記憶が全てアタマに迸る。
「ぅ、ぐぅッ!? 違う、違う違ウチガウちがう・・・・・。 俺は独りだ、独りでなキゃいケなインだ・・・・!」
痛みで足から、全身から力が抜け、その場に跪く。
「な、なぁ? なんか様子がおかしくないか?」
思い出、悪夢、痛み、悲哀、嘆き、苦痛、感触、破滅、闘争、蹂躙、血、赤、紅、赫、雨、冷たい、独り、孤独、
「蓮霧・・・? これってまさか・・・・・!」
「れ、蓮ちゃん・・・・・?」
恐怖、暗示、絶望、祈り、懇願、罪悪、虚無、虚空、虚しさ、正義、秩序、裁き、断罪、級友、旧友、絆、無駄、理解、共感、無意味、
「おい、しっかりしろ! 何があったのかはわかんねぇけど、とりあえず保健室に・・・・・・」
(・・・耳障りだ)
「倉橋! 磯貝! 寺坂! 今すぐ蓮霧から離れてッ!!」
「ぁぁぁぁぁぁああああああッ!!!!!」
「・・・・ッ! 危ないッ!!」
「────────」
幽か聞こえる雑音に、内からの衝動に身を任せ刀を振り抜き黙らせる。 何カを斬る鈍い感覚と共にノイズは消え失せ、やがて脳に響く耳鳴りの音しか認識できなくなる。
「・・・ぁ・・・・ぇ・・・・・?」
(・・・・・・・・・・待テ、俺ハ今、何ヲしタ・・・・・?)
激痛に揺れる意識を振り絞り、どうにか目を上げると、そこには斬り落とされた触手と───
───赤い液体を滴らせる腕を手で抑え、痛みで表情を歪ませる磯貝。 倉橋を庇うように立ち、制服のシャツが裂け紅く染まったカルマ。 そして俺に困惑と恐怖の混ざった眼差しを向ける皆がいた。
「・・・ぁ、ちが・・・、俺は、そんなつもりじゃ・・・」
(違う、俺に皆を傷つける意思はない。 ・・・なかった、ハズなのに・・・・・)
その場に居ても立ってもいられず、頭の痛みも耳鳴りも無視してこの場から走り去る。
「ッ、待て! 蓮霧!」
知らない、聞こえない、振り返らない、止まらない、止まれない。
頭痛、痛み、眩暈、ふらつき、耳鳴り、全てが報いであり、それでも立ち止まることはできない。
・・・・・・・・・・俺は、裏切り者だ。
どうも、今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
遂にここまで来たって感じです♪ 作者がこのシリーズを書くにあたって、ずっとここで完全に闇墜ちさせることを考えてやってきました。
これまで趣味の一環で頑張ってきた甲斐があるといふものです・・・。
というわけでここからオリ回が続きます。 ではまた来週か再来週に!