危うく有言不実行作者になるところでした、危ない危ない
ではでは前置きもほどほどに、お楽しみ下さい
今日も今日とて……って、コレこの前もやったな
狂人Aこと速水蓮霧君です☆
早いものでもう五月、俺がここに来てから約一週間が経ちました
いやぁ時の流れってのは早いですなぁ
……さ、現実逃避はこの辺にして… ──
「イリーナ・イェラビッチと申します。 皆さんよろしく!!」
── ─まずは状況を整理しよう
俺はいつも通り毎朝のデイリーをこなして、いつも通り袋麺で食事を済ませ、いつも通りユーロビートを聴きながら登校してきた。 ここまではいい
んで、HRが始まるまで適当に暇を潰していたら殺せんせーと一緒に見知らぬ美人が入ってきた
……何故か殺せんせーにベタ惚れした状態で
状況整理終わり! ……いやどういうこと?
わけがわからない、なにがあったらあの
英語のALTを担当するらしいが── ─この時期、この
(みんなもどこか察してそうだね、本当の教師とは思えない、って)
あの目は、目の前の人間を己と無関係の他人、あるいは利用価値のある駒として認識している目だ
「本格的な外国語に触れさせたいという
「……仕方ありませんねぇ」
表向きの建前、だろう
ここは本校舎から見捨てられた落ちこぼれの巣窟
あの理事長やら教師やらがこっちを気にするとは思えない
……まあ、それはそれとして
殺せんせーは殺せんせーでなんでデレデレしてるんだ
というか視線! 何胸ガン見してんだせめて取り繕うくらいしろ生徒の前だぞ!
「あぁ、見れば見るほど素敵……!」
「正露丸みたいなつぶらな瞳、曖昧な関節…… 私、虜になってしまいそう~♡」
あの人は一体何を言っているんだ
俺の感性がおかしいのか?
……ここに来てから自分の感覚が正しいのかわからなくなってきたな、俺の感性は正常…だと思いたい
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
休み時間、みんながワイワイガヤガヤと暗殺に励んでるのを横目に校舎裏へ向かい、適当な木に的を貼って、トランプの投擲練習を行う
ここに来て、遠距離から打点とるためにと真面目に練習した甲斐もあってか十回につき三回は狙った場所に刺さるようになった。 先週は一回だけだったことを考えれば十分な進歩だろう
(当面目下の目標は全弾命中、いや全枚? まあいいや、その次は実戦を見据えて動きながら当てられるようになりたいね)
っと、ん? トランプの回収をしていると、今日から来た面倒ご……ゲフンゲフン、新任教師のイリーナさんが何やら殺せんせーに話しかけている
……ここからじゃあよく聞こえないな
そろそろ休み時間も終わりそうだし、道具を片付けて様子を見に行くことにしよう
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
断片的にしか聞こえなかった情報から読み取って要約すると、「本場のベトナムコーヒー飲んでみたいから買ってきて」とのこと
今までに何回も飲んだことあるだろと思ったのはここだけのお話
さて、
「えっと、イリーナ先生…? 授業始まるので、教室に戻りません?」
次の授業は英語だというのに教室へ赴く気配のないイリーナさんを見かねたのか、磯貝が話しかける、が
「授業? 各自自習でもしてなさいな」
そう言い放つとタバコを取り出し、冷たく俺たちを見据える
(……ひどいもんだな)
喘息持ちがいたらどうするつもりだったのやら
「それと、気安くファーストネームで呼ばないでくれる? イェラビッチお姉様、と呼びなさい」
あー、そういうこと言うと茶化す輩が──
「で、どーすんの? ビッチ姉さん」
── ─ほれ見たことか ……面白そうだし便乗しよ
「そーですよビッチの姉御」
ん~、なんかしっくり来ないな。やっぱ俺もビッチ姉さんにし「略すな!!」……うるさ
「アンタ殺し屋なんでしょ? 俺ら全員で殺れないモンスター、ホントに一人で殺せんの?」
「同意。 部外者を連れ込もうってんのなら、それこそ気付かれるよ」
「ガキが。 大人には大人のやり方ってのがあんのよ」
「潮田渚ってのはアンタね?」
そう言いながらビッチ姉さんは渚に近付き、そのまま唇を奪った
……もう一度言おう、唇を、奪った
「ほほう……」
プロの技術は凄まじいな、余りにも自然な動きで身構えられる前に
渚よ、多分だけど抵抗しても無駄だぞ、おそらく回避しか対処法がない
哀れ渚はそのままダウン、南無
「後で職員室にいらっしゃい、アンタが調べた奴の情報を聞かせてもらうわ」
「他にも、有力な情報を話に来た子にはいいことしてあげるわよ? 男子は今みたいに、女子にはオトコだって貸してあげる。 まぁ、強制的に話させる方法はいくらでもあるけどね」
そんな言葉と同時に、後ろから屈強な男が三人歩いてきた
ご丁寧に完全武装……って、もしかして実銃か?
「技術も人脈もあるのがプロの仕事よ。 協力する気のないガキは外で拝んでなさい」
「それと、少しでも邪魔をしたら……殺すわよ」
男の一人からリボルバーを受け取り放った「殺す」というたった一言
その一言の重みは、今まで散々聞いてきた不良のソレとはまるで別物だった
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
あの後一応教室に戻った俺たちだが、ビッチ姉さんは自習としてタブレットとにらめっこしている。 おそらくは暗殺プランの最終チェックだろう
まぁ俺が思うに、間違いなく失敗するだろうが
俺? ……流石に授業中にイヤホン使うほど非常識ではないので、トランプで遊んでる
シャッフルした束から無造作に五枚とってポーカーの役を揃えるっていう、ちょっとした運試し──お、フォーカードだ
ま、みんなが俺みたいに暇潰しできるわけでもなく……むしろ授業をしないビッチ姉さんにそろそろ苛立ちが募ってくる頃だろう
「なぁービッチ姉さん、授業してくれよー」
「そーだよビッチ姉さん」
「一応ここじゃ先生なんだろビッチ姉さんー」
前原の一言を皮切りにみんな口々にビッチビッチと連呼する ……ちょっと面白い
あ、ビッチ姉さんの方もイライラしてる
「ああもう! ビッチビッチうるさいわね!」
お~、あっさりキレた。 思ってたより早かったな、もしかしなくてもビッチ姉さんって短気な方?
「まずアンタら日本人は正確な発音が違う! BとVの区別もつかないのね!!」
いや、あんたはBの方のビッチだろと、ワイトはそう思います
「正しいVの発音を教えたげる! まず歯で下唇を軽く噛む!! ほら!」
とりあえずは従う。ま、誰も教師と認めてないヤツの言うことを聞いてやる道理はないが
「そうそう、そのまま過ごしていれば静かでいいわ」
……やっぱり従う道理はないな
「カルマ~、七並べやらない?」
「お、いいね~」
「そこ! 下唇は噛んだままって言ったでしょ!」
「……今、俺も含めて この場にいる全員がアンタを教師として見ていない。 従ってやる道理はないよ」
「なっ……! チッ、勝手になさい」
「よしっ! 許しも得たし、早速始めようぜ」
そうして結局何一つとして授業が行われないまま四時間目は終わった
……ちなみにカルマとの七並べはそれはもう白熱した。
互いに三勝三敗、七試合目の途中で授業が終わったので引き分け。 無念
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
昼休み明け、五時間目の体育
今日の内容は射撃訓練、ハンドガンの音がよく響く
そんな俺らには目もくれず、ビッチ姉さんと殺せんせーが倉庫へ向かっていく
失敗するってわかってると、実に滑稽
「なんか、がっかりだよな、殺せんせー。 あんな女にあっさり引っかかって」
「烏間先生。私達、あの人の事、好きになれません」
これには同意だね、間違いなくE組の総意だろう
「すまない、国の指示だ。プロである彼女に一任しろ、と」
「だが、わずか一日で準備を全て終える程の手際
彼女は間違いなく一流の殺し屋と言えるだろう」
それはそうだろう。 だからこそ余計に滑稽だ
殺し屋としての自分の常識が全てだと、自分の実力を過信しているんだろうね
じゃなきゃ、実銃なんて物騒な物を持ち込むわけがない
……今のうちに哀れみと嘲りの視線を向ける準備をしておこう
俺が内心で嘲っていると、倉庫の方からけたたましい銃声が響いてきた
……時間にして一分くらいだろうか、そのくらいの時間が経つと銃声が止み──
『いやぁぁぁあああああああああああっ』
──悲鳴と共にヌルヌルという音が聞こえてきた
一体何ガ起キテルンダロウナー(棒)
「な、何が起こってるんだ?」
「行ってみようぜ!」
あ、みんな行ってしまった
……俺も行くか──
── ─ということで倉庫前に到着
少し扉前で待っていると、まず薄ピンクの顔色で出てきた殺せんせーが。 少し遅れて体操着にハチマキ、ブルマに着替えさせられたビッチ姉さんが出てきた
「まさか……あんなことをされるなんて」
……何されたんだよ
「肩と腰のマッサージされて、小顔とリンパのマッサージされて……その上、あんなことやこんなことまで……」
あ、ダウンした
「……ホントに何されたんだ?」
「さぁねえ、大人には大人の手入れというものがありますから」
うわぁ、悪い大人の顔をしている……
「さぁ皆さん、教室に戻りますよ」
「「「「はーい!」」」」
あれ? ビッチ姉さんは……まぁいいか、ほっとこ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◁□翌日□▷
俺たちは今教室で待機している
ま、俺はまたポーカー運試しをしてるわけだが──む、ワンペアか ……ツイてないね
んで、今教卓に座って忌々しそうにタブレットを連打してるのが、昨日のアレが相当応えたんであろうビッチ姉さん
「必死だねぇ、ビッチ姉さん」
カルマが煽るも反応なし
「あんな自信満々だったのに失敗しちゃあね、そりゃ屈辱だろうよ」
反応がなさそうなのでついでと言わんばかりに俺も嘲る
あ、今度は睨んできた
……が、無視することにしたみたい
しかしまぁ、みんなピリついてるねぇ
二日連続で英語の授業が行われてなければ当然か
例外的に俺とカルマだけはピリついてない
カルマは基礎スペックが高いし、俺も応用力だけは無駄にあるから、基礎さえしっかり覚えれば大抵の問題は対応できる
ただ、みんなは違う
というかそもそもとして俺達E組は今年、受験が控えてる
「……先生、授業してくれませんか? しないならせめて殺せんせーと交代してください」
「俺等 今年受験なんで」
みんなの内心を代弁するかのように磯貝がビッチ姉さんに頼んでみるが……
「ハッ!ガキは平和でいいわね~!」
「……ほう? どういう意味です?」
平和、意味はわかる。 プロから見れば俺達は相当に平和ボケしているだろう
「あの凶悪生物は来年には地球を滅ぼすのよ? 地球の危機と自分たちの受験、どっちが大事なワケ?」
「私も烏間も、他の殺し屋達もアイツを殺そうと躍起になってるのに、アンタらは勉強受験って」
……今のは少し聞き捨てならないな
「……勉強や受験を気にして何が悪い? そもそも俺達は平和な国に生まれた一介の学生に過ぎない。
(……少し、らしくないことをしたな)
言いたいことを言ったからか、少し冷静になった
ビッチ姉さんの言うことは正しい。 俺達は一年を通して何度もチャンスがあるが、プロはたったの一度きり……失敗したら次はない世界なんだろう
それに、地球の人口数十億人+その他の動植物に対して、せいぜい30余名程度の受験……天秤に載せた時どちらに傾くかなんて、考えるまでもないだろう
「生意気な……! 聞いたわよ、アンタたちE組は、この学校の落ちこぼれだって。 今さら意味のない勉強するくらいなら暗殺に集中した方が有意義じゃない?」
あ、遂にここで言ってはならない
あらら、みんな殺気立ってるなぁ
「そうだ、アンタたち全員私に協力なさい! そうすれば暗殺に成功した時、一人500万円ずつあげる。 アンタたちが一生目にすることのない大金よ? わかったなら大人しく私に従い──」
ビッチ姉さんが言い終わる前に……というよりは、話を遮るように、黒板に消しゴムが当たり、バウンドして教卓に落ちる
「……出てけよ」
どうやらビッチ姉さんは漸く自分が地雷を踏み抜いたことに気付いたようで、少し表情が硬くなった
「出てけクソビッチ!」
「そうだそうだァ! 出てけぇ!」
誰が最初に動いたのかは最早わからないが、一度火が着いてしまえば止まらない
「なっ、何よその態度! 殺すわよ!!?」
「上等だやってみろォ!!」
暴徒と化した皆に生半可な脅しは効かない
クラスメイト達は次々に手元にあるペンやら何やらを投げまくる、所謂学級崩壊が起きた
(よし、そろそろ俺も混ざろう──)
「殺せんせーと代わってよ!!」
「巨乳なんていらない!!」
(──なんか一人だけ怒りのベクトルおかしくない?)
まあいい、それじゃ、運試しといこう
今の俺のトランプの命中率は30%…… 額を狙って投げ、70%を引ければビッチ姉さんの勝ち、トランプは黒板に突き刺さって終わる
ま、今日の俺は
「せいッ!」
トランプは狙いを外れて黒板に
……運がよかったな
結局、ビッチ姉さんはクラスの総バッシングを受けて渋々職員室へ帰って行った