転生する術式を持つ少女がいろんなキャラの地雷になる話   作:おにい

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一章
一話『禪院透』


「──これで五十四回目の転生ですか......」

 

 禪院家。呪術師御三家の一つである名家の本家に生まれた禪院透(ぜんいんとおる)という少女は自室の天井を見上げながら呟いていた。

 

「今回はかなり当たりみたいですね」

 

 齢五歳の禪院透は自分の体を流れる呪力を感じ取っていた。

 

 転生術式──死ぬことにより発動する術式で転生し記憶を保持したまま新しい命を得ることができる。

 禪院透はそんな術式で五十数回の転生を繰り返していた。

 

 これだけを聞くと途轍もなく強い術式、ある種の不死身と思われるかもしれないが強い術式故の縛りも存在している。

 

 一つ目の縛り──転生術式は二十歳になると必ず死ぬ。死に方は事故や病死や他殺など様々だ。

 

 二つ目の縛り──転生し五歳になるまでは記憶は戻らない。記憶が戻るまでの間は無気力な人格になり、可もなく不可もない対応をする。

 

 三つ目の縛り──転生術式は何者にも明かすことができない。例えば一つ前での転生先で知り合った相手であっても自分が転生したと明かすことはできない。そして、不自然なほどに相手に悟られることもない。

 

 四つ目の縛り──転生する身体は必ず女性であり呪術師としての適性を持っている。これは縛りと言うよりも術式と言う構造上当然のことなのだが、転生する身体に刻まれる呪力量や呪力出力、術式は毎回ランダムである。つまり、呪術師として術式もなく四級以下の呪霊を辛うじて倒せる程度の才能しかない場合もある。

 

 この四つの縛りが転生術式には課せられている。

 

(禪院家ですか。御三家に生まれるのは初めてですね。流石は御三家の血筋……呪力量と呪力出力が過去二番目を争うレベルですよ。それに今回は術式もある)

 

 彼女は先ほど五歳になり、記憶を戻していた。

 

「何をしている"落ちこぼれ"、早く道場に来い」

 

 禪院透の部屋の扉が乱暴に開けられ、髭面で強面の屈強な男がやってきた。

 男の名は"禪院甚壱(ぜんいんじんいち)"。禪院透の実の兄だ。

 

 ──落ちこぼれ。

 

 それは禪院透に付けられたあだ名だった。

 強大な呪力量と呪力出力を持っている禪院透だが、記憶が戻るまでの五年間の無気力な人格の期間は可もなく不可もない行動をする。

 

 普通の家系であれば、それでも将来有望と言われていたのかもしれない。だが、禪院家は違った。

 禪院家は【禪院家に非ずんば呪術師に非ず 呪術師に非ずんば人に非ず】という家訓があるほど呪術師としての格を重んじていた。

 

 可もなく不可もない程度では"落ちこぼれ"として扱われてしまうのだ。

 

 しかし、そんな扱いもこの日までだった。

 

「はい! 甚壱兄様! すぐに参ります!!」

 

 先日の無気力な人格からは考えられないほどの天真爛漫な笑顔で返事をする禪院透。

 

 彼女は今日生まれたのだ。

 

 ──その日を境に禪院透は"禪院家の落ちこぼれ"から"禪院家の麒麟児"と呼び名を変えた。

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 禪院透の記憶が戻り半年ほどが経ち透が禪院家に馴染んできた頃、透は禪院家への不満を感じていた。

 

「──この家、家族の仲が悪すぎます!! 甚爾兄様、私達で何とかしましょう!!」

 

「なんだいきなり……」

 

 禪院家。透の部屋の横にある縁側で禪院透と透の実兄である禪院甚爾(ぜんいんとうじ)は話していた。

 透は家族愛に飢えていた。二十年しか生きることのできない彼女にとって一番長く同じ時間を過ごすのはそのほとんどが家族だ。

 だからこそ、家族とは仲良く愛し合っていたい。

 

「だから私と一緒に禪院家仲良し計画を始動しましょう!!」

「……」

 

 透が目を輝かせて甚爾を見るが、甚爾は無視して立ち上がり去ろうとする。

 そんな甚爾の背中にしがみついて止める透。

 

「ちょちょちょっと!! なんで無視するんですか!!」

 

「子供のわがままに付き合ってられるか! てかなんで俺なんだよ!! そういうのは当主に直接言え!!」

 

 呆れた顔で甚爾は言った。

 甚爾は禪院家に情と言ったものは期待していなかった。

 

「直接言って「力で示してみろ」と言われたから相談しているんですよ!!」

 

 実は甚爾に相談する一日前に禪院家当主である禪院直毘人(ぜんいんなおびと)に「家族は仲良くあるべきだから家訓を捨ててください!! 父様や家族と遊園地とか行きたいです!!」と直談判していた透だったが、笑いながら突っぱねられてしまった。

 

「なんで俺に相談すんだよ他のやつにしろ。てか本当に言ったのかよ。すげぇなお前」

 

 本当に当主の直毘人に相談していたことに驚いてしまう甚爾だった。

 

「私と甚爾兄様の二人なら禪院家の全員を相手しても勝てると思ってるからです!!」

 

「俺はそういうのはどうでもいいんだよ」

 

 勝てるという部分は否定しない甚爾。

 この二人は禪院家でも異分子と言えるほどの強者だった。

 透の方はまだ二級術師相当という認識ではあるが、五歳の幼女が二級相当の強さと言うのは異常だった。

 

 同じ御三家に五条悟というイレギュラー中のイレギュラーがいるから隠れているが、呪術界において五条悟がいなければ他の追随を許さないほどの才能だ。

 

 甚爾は呪力の"全て"を失う代わりにその他全ての感覚が常人を超える天与呪縛、"フィジカルギフテッド"を授かっていた。

 その力は凄まじく、まさに超人。禪院家でも彼に勝てる者は一人としていないだろう。

 しかし、禪院家というのは"呪術師"しか認めない。どれだけ強くても呪術師でない甚爾は迫害の対象だった。

 

「なんでですか! 今まで甚爾兄様を馬鹿にしてきた家族を一発殴れるんですよ!!」

 

 抱き着きながら甚爾の脇腹をぽこぽこ殴り透は訴える。

 

「さっきまでの禪院家仲良し計画はどうなったんだよ!」

 

「拳を交えることで得られる情もあります!」

 

「どこで学んだんだそんなこと」

 

 禪院家はもっと教育をしっかりするべきだと、甚爾は心の中で思い頭を抱えた。

 

「とりあえず計画の内容だけでも聞いてください! もし気に食わなければ無視してもいいので!!」

 

「はぁ、分かった。聞くから離せ」

 

 嘘である。透が自分から離れた瞬間にどこか遠くへ逃げる気だった。

 

「いえ、なんか抱き心地がいいのでこのまま話します」

 

「なんだお前……」

 

 自分に猿のように引っ付く透に引いてしまう甚爾。

 

「それでですね」

 

「本当に話し始めやがった」

 

「まずですね──」

 

 そこから透は説明を始めた。

 

 最初は嫌々聞いていた甚爾だったが、しばらく透が話すと真面目に聞き始める。

 その内容は五歳の幼女が考えたとは思えないほどしっかりしたものだった。

 多少無茶な点はあったが、それでも禪院家を一撃で変えれるだけの策。

 

 本当にガキか。本当はガキの皮を被った大人なんじゃないのか。と何度も思ったが、自分に抱き着く幼女はどこからどう見ても幼女だった。

 

「──という感じです」

 

 透が話し終える。

 

「お前……えぐい事考えるな」

 

 甚爾は目の前の幼女が考えた策に唾を飲んでいた。

 

「どうでしょうか! これなら家族仲良くなると思うんですが!!」

 

「仲良くなるかは知らねぇよ」

 

「本当にそんなことができるのか?」

 

 しかし、透の計画には多少の無茶があった。

 甚爾はそこに突っ込む。

 

「はい、私の"領域"を使えば確実にできるかと」

 

「二級以下のやつらはいいとして一級連中は領域対策を持ってるぞ?」

 

 禪院家は呪術師御三家と呼ばれるほどの呪術に秀でた家系。

 領域と言う所謂結界のようなものに対する対策も普通以上にされている。

 

「それに関しては心配ないと思ってます」

 

「……まぁよく考えられてるな。だが──」

 

 俺にそんな野心は残ってない。そう伝えようとした甚爾の言葉を透は止めた。

 

「──このまま舐められっぱなしでいいんですか?」

 

「あ゛?」

 

 透の言葉に苛立つ甚爾。

 その苛立ちは、野心を失っているのなら生まれるはずのない物だった。

 

「正直、この家で甚爾兄様と一対一で勝てる。いや、殺し合いなら禪院家総出でも甚爾兄様に勝つことは無理だと思います。なのに呪力がないという程度の理由で舐められ迫害される」

 

 そう、禪院甚爾はその気になればいつだって禪院家を滅ぼすことができる。

 ただ、そんなことをしても自分を否定してきた人間を認めさせることはできない。

 例え滅ぼした所で、ただの化け物として処理されるだけだ。

 

 甚爾は諦めていた。

 

 なにをしたって認めさせることはできない。

 もう、何かをするのがめんどくさい。そう思うようにしていた。

 

「そんな状況に納得したまま一生を終わらせていいんですか? 私は嫌です。甚爾兄様は凄いんだって認めさせたいです」

 

「俺は別に認めさせたくなんて……」

 

 真っ直ぐ自分を見つめる透から甚爾は目を逸らした。

 そんな甚爾に先ほどよりも強い力で抱き着く透。

 

「見せつけましょう甚爾兄様。禪院家の皆に否定してきた皆に──禪院甚爾を認めさせましょう」

 

 "認めさせる"。何度か考えたが無理だと勝手に諦めてしまっていたことだ。

 まさか他人、いや家族からそんなことを言われる日が来るなんて甚爾は思ってもみなかった。

 

 認められるのはこんなに嬉しいのか。

 

 甚爾は正直、この妹に認められていたという事実だけで満足してしまっていた。

 彼の劣等感はこの幼女に消されていた。

 

「……一回だけだ。もし失敗したらお前とも禪院家とも二度と関わらねぇ。俺は家を出ていく」

 

 正直もう認めさせるというのはどうでもよかった甚爾だが、透の望みをかなえてやろうと承諾した。

 絆された事に気づかれないようにぶっきらぼうに条件まで付けたが、呪術的な縛りの一切ない条件など禪院家にとっては無いものと一緒だった。

 

「! はい! 大丈夫です! 絶対に失敗しないので!!」

 

「ふっ、なんなんだよお前のその自信」

 

 そう言いながら透の頭を優しく撫でる甚爾。

 

「それでは父様に早速伝えてきます!!」

 

「あ゛もう始めんのか!?」

 

 透の行動力に驚く甚爾。

 そんな驚いている甚爾から離れ、にこにこと笑う透。

 

「善は急げですよ! できれば今日明日には!!」

 

 そして、走って当主である父親の元に走っていった透。

 

「行っちまいやがった──全く、なんなんだあのガキ……妹は」




主人公【禪院透】
術式【転生術式】【構築術式】

・元々は2015年くらいの日本から転生した少女。呪術廻戦は死んだ後に連載開始なので知らない。
 最初の転生は1000年ほど前で宿儺の姉としてだった。
 そこからなんやかんやあり、禪院透に転生した。なんやかんやの情報量が多すぎる。
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