転生する術式を持つ少女がいろんなキャラの地雷になる話   作:おにい

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プロローグ


二章
一話『五条透』


 禪院透が死んで二日が経った──。

 

 透の死後、葬儀は禪院家によって恙なく行われた。

 彼女の葬儀には多種多様な人間が訪れ、本来最悪の仲である五条家の次期当主五条悟も参列したという。

 彼女の死因は表向きは呪詛師の仕業とされた。

 

 葬儀が終わり、高専に戻ってきた五条悟、夏油傑、家入硝子の三人。

 硝子は悟の胸ぐらをつかんでいた。

 その目には涙の跡が残っている。

 

「──なんでオマエらが一緒に居て透が死んでんだよ……」

 

「……ごめん」

 

 悟は透の死の詳しい理由を硝子に説明していなかった。

 透の死の理由は公言しないと悟と傑の二人は決めた。

 透の死因、それは"兄である甚爾"だ。家族を愛していた透が甚爾を恨んでほしいと思う訳がない。

 だからこそ、悟と傑は黙っていることにした。恨むのは自分たちだけにしようと決めた。

 

「ごめんじゃ……ごめんじゃねぇだろ……!!」

 

 硝子は膝から崩れ落ちる。

 その目にはこの二日間流しても流しても枯れる事のない涙が伝っている。

 傑はそんな硝子に近づく。

 

「硝子……」

 

「分かってる……オマエらが居てどうしょうもなかったなら、誰が居たってこうなってた……でも……でも!!」

 

 硝子は次に近づいた傑の胸元を掴んだ。

 その声は悲しみに震えている。

 

「じゃあ、私は誰を恨んだら……呪ったらいいんだよ……!! 本当は呪詛師なんかの仕業じゃないんだろ!? 呪詛師ならオマエらも透も負けるわけがない……!!」

 

「硝子……」

 

「なんで……私には何も言わずに……せめて、私の眼の前で死んでほしかった……!!」

 

 悟も傑も硝子の顔を見る事が出来ない。

 そんな二人も目に涙を浮かべていた。

 

「ずっと……寄り添ってくれるって言ったのに……嘘つき……」

 

「硝子……透は死ぬ時に、約束を破ってごめんと言っていたよ……」

 

 傑は伝えた。

 その言葉に硝子はまた膝から崩れ落ちた。

 そして地面を強く殴る。涙が地面に落ちる。

 

「ごめんじゃねぇだろ……」

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 その後、硝子は一人にして欲しいと自分の部屋に戻った。

 残された悟と傑は二年生の教室にいた。

 

「なぁ、悟……」

 

「……んだよ」

 

 二人とも機嫌は悪い。

 だが、今一人になると悲しみに押しつぶされそうだから二人でいる。

 それほどに禪院透という存在は大きなものだった。

 

「私は……呪術師を辞めようかと思っている……」

 

 傑の言葉に驚く悟。

 しかし、声に出すほどの元気は残っていない。

 悟はあの日から眠れていなかった。

 

「私にはもう、何をしたいのかが分からないんだ……私が呪術師として一番守りたかったものは……もうどこにも存在しない……」

 

「傑……」

 

 傑は感情の感じ取れない表情で言った。

 そんな傑に何も返すことのできない悟。

 

「……昔、透に言われたんだ。アナタは呪術師に向いていないってね。今になると本当にそうだと思うよ。今の、透を無くした私は空っぽだ」

 

 傑は窓から外を見た。

 それは悟に背を向け、涙を見せない為だ。

 

「こんな状態で呪術師はできない……」

 

「……そうか」

 

 悟は寂しかった。ここで引き止めなければ傑は高専もやめてしまうだろう。

 そうなれば、透だけでなく傑まで自分の近くからいなくなる。

 だが、止める事が出来なかった。

 

「すまないね……悟」

 

 傑の目はもう疲れ果てていた。

 そんな傑を引き留める事なんて親友の悟にできるわけがなかった。

 

「……気にすんな」

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 高専は一時休校になった。

 それは天元の同化失敗で高専の結界がどうなるか分からないからだ。

 

 一次的に高専内の人間は避難という形で家に帰ることとなった。

 もし、天元が暴走すれば日本のどこにいようと危険な事には変わりないのだが。

 

「悟様!! おかえりなさい!!」

 

 悟は高専入学ぶりに実家に帰ると従者の一人が出迎えた。

 

「うるさい」

 

 従者の元気の良さに悟は睨んで返した。

 しかし、そんな悟の事は気にせず従者は続けた。

 

「悟様! 一大事です!! 六眼が生まれました!!」

 

「……は?」

 

 従者の言葉に悟は固まった。

 

 ──六眼。それは呪力の詳細を見ることのできるようになる特異体質。

 呪力の詳細を見ることで緻密な呪力操作を可能とし、六眼を持って生まれた者は誰もが天才と呼ばれる呪術師になれるほどに強力な瞳。

 だが、六眼が同じ時代に二人生まれたというのは一度もない。

 

「是非、悟様にもお目通りをお願いします!」

 

「あ、あぁ、すぐに行く」

 

 疲れている悟であったが、流石に六眼が生まれたとなれば見ないわけにはいかない。

 自分という存在だけでも現代においては異常なのに、もし自分と同じような存在が生まれてしまったら、現呪術界が狂う。

 

 六眼の赤子が居るという部屋の前までついた悟は扉に手を掛けて開く。

 

「悟様……」

 

 そこには一人の赤子を抱いた女が居た。

 状況から見て赤子を抱く女が赤子の母親なのだろう。

 

 その女は五条家の分家の女で、女の家は五条家の本家に仕える為の家であった。

 そんな本家から血の薄い家の女から六眼が生まれたという異常事態。

 

「こちらが、娘です……」

 

 女は疲れている様子だが、力を振り絞って悟に赤子の顔を見せた。

 赤子は生まれたばかりだというのにしっかりと目を開いて、悟の目を見た。

 

「っ……本当に六眼が……」

 

「はい……」

 

 母親の女も驚いている様子だった。

 六眼が同じ時代に生まれないのは五条家の人間にとっては周知の事実だった。

 

「……名前を……悟様に名付けていただけないでしょうか……?」

 

 母親は恐る恐る聞いた。

 それは分家の人間が言うには大変恐れ多い事だ。

 だが、周りは咎めようとしない。それだけ六眼という存在は五条家にとって重大だ。

 

「俺が?」

 

「はい……この子も悟様に仕える事になります……そんな悟様が名付け親になってくださるというのは一生の誇りになるでしょう……」

 

 悟は少し悩む。

 そして頷いた。

 

「分かった……」

 

 母親の女は喜んだ。

 分家の人間としてこれほどの誉れはない。

 悟は赤子に近づいて顔をまじまじと見る。

 

 すると、赤子は悟の顔に手を添えた。

 まるで悟を撫でるように触る。

 そんな赤子の行動に、母親はすぐ悟から離そうとするが悟は母親から赤子を抱き取る。

 

「……透。五条透だ」

 

 悟は死んだ親友の名前を赤子に名付けた。

 

 赤子は嬉しそうに笑った。

 まだ生まれて間もないというのに感情表現の豊かなものだ。

 悟は赤子を優しく抱きしめた。

 

「……この子も気に入ったようです」

 

 悟が透の名を授けたのは、ただの寂しさからだった。

 だが、そんなことを知らない母親と赤子は嬉しそうに笑う。

 

 悟は心の中でごめんと謝った。

 

 すると赤子は手を伸ばして悟の髪を撫でた。

 

「っ……」

 

 赤子の目を見た悟は驚く。

 それはまるで大丈夫だと、励ましてくれているような優しい目だった。

 

「ごめんな……ごめんな透……」

 

 そんな優しい目になぜか悟は涙が止まらなくなった。

 友人を無くした悲しみが今になって押し寄せてきたのか、赤子に自分勝手な名を付けてしまった罪悪感からか、悟にも分からない。

 だが、悟の涙は止まらない。

 

「あー……」

 

 赤子はそんな悟の涙を小さな手で拭った。

 その手の温かさは、どこか懐かしいものだった。悟はそう感じた。

 

 悟は困惑する従者たちを気にすることも出来ずに泣いた。

 

 そんな悟を優しく撫でる透だった。




 プロローグだから短いです。

 裏設定①
 同じ時代に六眼が生まれた理由は、星漿体と天元と六眼の因果が破壊されたことで五条悟の六眼も因果から外れた為です。
 つまり五条悟の六眼は世界から無いもの扱いになったという事です。
 なので、因果に縛られた新しい六眼が生まれました。

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