転生する術式を持つ少女がいろんなキャラの地雷になる話   作:おにい

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二話『五条悟と五条透』

 五条透が生まれて二年。

 

 二人目の六眼という異質(イレギュラー)は五条家で秘匿にすると決まった。

 例え、高専関係者や呪術界上層部に対してであっても黙っている事となり、五条透が二人目の六眼であるという事を知るのは五条家本家の一部と出産に立ち会った従者数名のみ。

 

 秘匿にする理由は呪術界への混乱や御三家のバランスの為というのとは別に透が暗殺などをされない為というのがあった。

 六眼とはそれだけで呪術界のバランスを崩すほどの物だ。

 

 そんな六眼を良く思わない者も多い。

 

 五条悟も賞金をかけられ、今でも裏社会では暗殺の依頼が多い。

 しかし、悟は六眼だけではなく無下限呪術も抱き合わせていた。

 

 そんな悟を暗殺できる者など伏黒甚爾という一部例外を除いて他にはいないだろう。

 

 だが、透は違う。

 

 五条透には術式が無い。

 

 これは悟の六眼で確認したから確定だ。五条透には術式が刻まれていない。

 六眼だけを持って生まれたのだ。

 

 そうなれば透の暗殺は悟の暗殺より、ずっと現実的だろう。

 

 だからこそ、透の六眼を秘匿にした。

 これは五条悟の判断である。

 

 そんな透は現在、本家で預かられている。

 幼い頃の五条悟ほどではないが六眼という事で丁重に扱われている。

 その扱いは本家本筋の者以上だ。

 

(五条家ですか……)

 

 二歳児の透は大きな部屋を用意され、そこで一日を過ごしていた。

 危険という理由で五条悟と同伴でなければ散歩も許されていない。

 

(御三家は初めてですね……)

 

 透は窓の外を見ながら思う。

 

(最初から意識があるのも初めての経験ですし……転生までの間がここまで開くのも今までに無かった……五十四回目の転生は転生術式にとって何か特別な意味があるんでしょうか……?)

 

 透はそう思いながらごろんと寝そべった。

 

 そう、五条透は──禪院透の転生体だ。

 

 しかし、記憶が引き継がれていなかった。

 それは転生術式の縛りの一つである二十年の縛りを放棄したことによるペナルティだった。

 そして透は生まれた瞬間から意識がある。これもペナルティであった。

 

(いや、やっぱり六眼の影響ですかね……)

 

 透は手で目を隠した。

 それでも透の目には周りの景色が見えている。

 

(見えすぎて頭が痛くなっちゃいますね)

 

 透はそんなことを思う。

 六眼から流し込まれる情報量の多さに透の脳は処理が遅れ、頭痛を引き起こしていた。

 

「透、元気?」

 

 透が寝そべりながら考えていると五条悟がやってきた。

 悟は二日に一回は高専から本家に帰ってきていた。

 透の様子を見るためである。

 

「はい、とても元気ですよ悟兄様!」

 

 透は起き上がり元気よく返事をした。

 

 二歳とは思えないほど流暢に喋る透は他の人間から見たら気持ち悪いと思われるだろう。

 透も最初の頃は喋れないふりをしていたが、家族と話したくて我慢できなくなり喋った。

 

 すると、五条家の人間は「天才児だ」と盛り上がり、気味悪がられるどころか、さらに扱いが良くなった。

 五条家は才能が大好きだったのだ。

 

 その日以降、透は隠すことなく普通に喋っている。

 

「今日はプレゼントを持ってきたよ」

 

「プレゼントですか……? 私は悟兄様に会えるだけで嬉しいですよ?」

 

 透は曇りのない笑顔で言った。

 そんな透の笑顔に悟は一瞬暗い顔をして、笑う。

 

「ほら、これ」

 

 透はポケットから白い布を取り出した。

 

「これは……?」

 

「目隠しだよ。六眼からの情報量で頭痛いでしょ? それしてたら収まるから」

 

 透は悟から受け取った布を広げた。

 それは目元をすべて覆える形になっている目隠しだった。

 

「ほら、"僕"とお揃いだよ」

 

 悟は自分の目元を指差して言った。

 そこには透に渡したものとは色違いの黒色の目隠しがあった。

 

「本当ですね! 色違いで悟兄様とお揃いです!」

 

 透は嬉しそうに微笑みながら言った。

 悟から受け取った目隠しを早速使う透。

 

「凄いです! これなら頭痛くならなそうです!」

 

「よかったよ」

 

 悟は嬉しそうな透を見ながら微笑んだ。

 

「悟兄様大好きです! ありがとうございます!」

 

 透はそう言って悟に抱き着いた。

 悟は抱き着いてきた透の頭を撫でようと手を伸ばしたが、途中で止め撫でるのをやめた。

 

 そんな悟の動きを見て透は首を傾げる。

 

「頭を撫でてはくれないんですか……?」

 

「……いいのかな」

 

 悟は暗い顔でそんなことを言った。

 すると透は微笑んだ。

 

「悟兄様……私に目線を合わせてください」

 

 透の言葉に悟は少し悩んで目線を下げた。

 すると、目の前まできた悟の頭を透は撫でた。

 

「っ……」

 

 悟は透の行為に驚く。

 

「どうですか? ……悟兄様は撫でられるの嫌いですか?」

 

「好きも嫌いもないよ……」

 

 悟は俯きながら言った。

 そんな悟の頭を透は抱きしめた。

 

「私は好きです。特に家族から頭を撫でられるのは幸せです。悟兄様から撫でられて幸せじゃないわけがありません。だから悟兄様──」

 

 透の話を悟は抱きしめられたまま聞く。

 透はさらに話を続けた。

 

「私に負い目など感じないでください……悟兄様が私に何をしていたとしても、どんな業を背負わせていたとしても……私は悟兄様の事が大好きですから」

 

 透は薄々気づいていた。

 悟は自分に負い目を感じていることを。

 その理由が、おそらく名前であることを。

 この名前が悟にとって大事な人間の名前だったことを。

 

 透は気付いていた。

 

「悟兄様から頂いたこの名前が大好きですから」

 

「……透……気づいて……」

 

 悟の表情はさらに暗くなった。

 

「いつか聞かせてください。私の名前の元になった人のこと……私はその人にはなれませんが、悟兄様がどんな気持ちで私にこの名前をくれたのかを知りたいです……」

 

 透の優しい言葉に悟は透の事を抱き返した。

 ずっと、負い目に感じていた。

 悟は自分の寂しさを紛らわすために透の名前を付けた。

 そんな名前を好きだという透に、ずっと負い目を感じていた。

 

「どんな想いで名付けていたとしても……私は悟兄様を受け入れます……」

 

 そんな想いを透は汲み取り、受け入れてくれた。

 悟は自分に情けなさを感じる。

 

 まだ二歳の人間に、ここまでさせた事に情けなさを感じずにはいられなかった。

 

「透は……透は、僕の親友の名前だ……」

 

 ぽつりぽつりと悟は語り始めた。

 

「透が死んですぐに君が生まれた……僕は寂しかったんだよ。透が死んで……もう一人の親友と友人とも話さなくなってね……寂しかったんだ……」

 

「そうなんですね……」

 

 悟の話を聞きながら透は頭を撫でた。

 優しく労わる様に撫でた。

 

「寂しいから、君に透の名前を付けて紛らわしたかったんだ……」

 

 悟は透の腕の中で声を震わせていた。

 泣きはしない。だが、自分のやった事に憤りを感じていた。

 

「だから僕は透に慕われるような人間じゃ」

 

「──悟兄様はそれで寂しくなくなりましたか……?」

 

 悟の言葉を遮り透が聞いた。

 透の言葉に驚く悟。

 

「……私が生まれて、少しでも悟兄様の寂しさを紛らわすことはできましたか……?」

 

 透を優しく微笑み、首を傾げながら聞いた。

 

「……」

 

 悟はそんな透を見て黙る。

 そして、数秒ほどの沈黙の後に喋り始めた。

 

「あぁ……君と話していると、まるで……本当に透と話してるみたいで……寂しさは無くなっていったよ……」

 

 悟にとってこの二年は、透の事でいっぱいだった。

 生まれた直後は意思疎通がうまくできなかったが、意思疎通を取れるようになると透は禪院透を彷彿とさせる行動をとり始めた。

 

 優しく明るく時々馬鹿な透の面影をこの子供から感じていた。

 

 だから、悟はこの二年。高専では一人で呪術界においても孤立していたが寂しさは感じなかった。

 

 だが、だからこそ……悟は透に合わせる顔が無かった。

 

「透といると楽しいし寂しくないよ……でも透にアイツの面影を感じるたびに……僕は──」

 

「──ならいいじゃないですか」

 

 透は再度悟の頭を抱きしめて、悟の言葉を遮った。

 

「私が生まれて、悟兄様が寂しくなくなって、それどころか楽しいと思って貰えるなら……私は生まれてきてよかった」

 

 透の言葉に悟は目を見開いて驚いた。

 どこまでも自分の事を想ってくれる透の言葉。

 自分は透に慕われる資格なんかないと思っていた悟は透の言葉に何も言えなくなった。

 

「私に……生まれてきた意味をくれてありがとうございます。私は悟兄様が大好きです……悟兄様の大好きな透様にはなれませんが……私は悟兄様が大好きですよ」

 

「……僕は……透に酷い事を……」

 

「酷い事じゃないです……悟兄様は私に生まれてきた意味を、喜びをくれました……それを酷い事だなんて、そんなことを言うほうが酷いですよ」

 

 透はいたずらを成功させた子供のように無邪気に笑う。

 そんな透の笑顔に悟は静かに涙を流した。

 

 許されないと、許されていいわけがないと、自分自身が許さないと思っていた業を透は当たり前のように許した。

 そして、自分自身を許さない悟を許させるような言葉をかけた。

 

 そんな透の言葉にこの二年流すことのなかった涙が零れたのだ。

 

「悟兄様……次は頭を撫でてくださいね」

 

 涙が目隠しから零れる悟の頭をまた優しく抱きしめて、頭を撫でる透。

 悟は「あぁ……あぁ……」と頷いた。




 更新あるかわからないので【キャラ設定紹介とおまけ】のキャラ説明を付け足しました。


 また戻ってきたときはよろしくお願いします。
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