転生する術式を持つ少女がいろんなキャラの地雷になる話 作:おにい
透が五条家に生まれて4年の月日が流れた。この期間で透は完全に五条家に受け入れられていた。
いくら六眼をもって生まれたとはいえ、透は分家だ。
本家の派閥には受け入れないという者も少なくはなかったのだが、五条悟に溺愛されている透に文句を言えるわけもない。
そんな鬱憤を感じ取った透が家族全員と仲良くなるために毎日奔走した結果、わだかまりはほとんどなくなっていた。
そして五条家全体が明るくなり、平和な日々を過ごしていたある日の事、五条透は五条悟に連れられてとある山の中まで連れてこられていた。
「あの悟兄様、ここは?」
山奥で車から降りた五条悟と五条透は手をつないで、さらに山の奥へと向かっていた。
そして、そこまで目的地を聞かずについてきた五条透も流石に我慢の限界で聞いた。
「ここは高専だよ。東京都立呪術高等専門学校。僕の母校だよ。そして今は職場だね」
五条悟は透の方に顔を向けて答えた。
そう、五条悟が連れて来たのは五条悟の母校であり呪術師の多くが呪術について学ぶ呪術高専だった。
そして、今は五条悟が教師として働く職場だ。
「高専ですか?」
透は首をかしげる。
それもそうだろう。普通、呪術師の卵とはいえ4歳児の子供が高専に招かれることはない。
もしかしたら六眼関係だろうか、と五条透は考えている。
「そ、そして今日から透もこっちに住んでもらうことにしたから」
「なるほど……って住むんですか!? 今日から!?」
五条悟のいきなりすぎる宣言に五条透は足を止めてノリツッコミをした。
「あれ、伝えてなかったっけ……?」
「伝えられてませんよ! その悟兄様、一つ言っておきたいんですけど私……まだ4歳ですよ?」
五条透は五条悟と手をつないでいる手と逆の手で四本の指を立てて訴えた。
五条透は自分の異端さと呪術師としての素養を理解していた。
五条悟というイレギュラー中のイレギュラーを除けば五条家の中でも指折りの才能を持っている。
それも術式無しでだ。
そんな自分はもしかしたら飛び級で呪術高専に入学させられるのではないかと考えた。
そんな五条透を見て首を傾ける五条悟。
「知ってるよ?」
「飛び級制度って言っても飛びすぎじゃないですか?」
「あはは、別に飛び級で高専生になれって話じゃないから」
五条透の言葉に五条悟は笑いながら答えた。
「え、そうなんですか……でも、だったらなんで」
「いやね、今日から僕が高専に住み込みになりそうだから連れて来たんだよ」
五条悟はそう言って五条透を抱きかかえた。
五条透はいつものことなので抱きかかえられることにリアクションはせずに五条悟の話を聞く。
「今までは家の方にちょくちょく帰れたけど、そうもいかなくなりそうでね。透と会えなくなるのやだから連れて来ちゃった」
「てへっ」と、五条悟は優しく微笑みながら言った。
おそらく、五条透でなければ五条悟をぶん殴っていただろう。
しかし、家族が大好きな五条透はそんなことをせずに質問を続けた。
「来ちゃったって悟兄様……お母様達や他の家族には説明しているんですか?」
「あ、そこはもちろんだよ。いや、大変だったんだよ? 『この家の結界と呪術師全員より、僕一人と高専にいた方が安全だから連れてく』って言ったら全員から猛反対されてさ」
「え、えぇ……」
流石の五条透も少し引いていた。
「だから全員と模擬戦してね。透を勝ち取りました~。あ、大きな怪我とかさせてないから安心してね。ちゃんと手加減してボコったから」
五条悟はニコニコとしながら言った。
そんな五条悟に五条透は頭を抱える。
「いや、家族をボコらないでくださいよ」
そう言って五条透は五条悟の頬を軽く叩いた。
ぺちんっと気の抜ける音がする。
「お仕置きです」
五条透はそう言うが全然お仕置きになっていない。
家族にはとことん甘い。
「それになぜ、私の知らないところで私を景品にしているんですか……。というか、なぜ私も気づけなかったんですか。自分が情けないです」
「まぁ、昨日の深夜の話だしね。透はぐっすりだったよ」
「昨日の深夜!?!?」
あまりに直近の出来事だった。
五条透がぐっすり寝たタイミングで五条悟が屋敷の裏に家の者を全員呼び出し、話し合いという名の争いをしていた。
「まぁ、実際問題、透は今後色々と命を狙われたりしちゃうかもしれないんだし、できるだけ安全な場所に置いておきたいんだよね。で、この世で一番安全なのは僕の隣じゃん?」
「いや、異論はないんですけど急すぎるのでは?」
「サプライズ的なね? 嬉しくなかった?」
「うーん……悟兄様と暮らせるのはもちろん嬉しいですけど。お母様や家の方に挨拶だけはしたかったです。後で電話だけさせてください」
五条透は少し悩んで答えた。
「嬉しいなら良かった! 電話は部屋についたら貸したげるよ」
そんな五条透に五条悟は笑って答える。
こうして、五条透は呪術高専で生活することが決まった。
――と思っていたのだが。
「悟……なんだそいつは?」
五条悟が学園内を五条透に説明して回っている途中で、とある男と遭遇した。
五条悟は少し嫌そうな顔をしたが、すぐに五条透を抱っこから下して男の方を見た。
「あ、夜蛾学長」
そう、五条悟達に遭遇した男は元五条悟の担任であり現在は呪術高専東京校の学園長を務めている夜蛾正道であった。
「今日からこの子と僕の部屋で暮らそうと思うんだけどいいですよね」
五条悟はニコニコと笑いながら言った。
そんな五条悟の言葉に一番驚いたのは五条透だった。
「えぇ、学長先生!? 悟兄様! 私はいいですけど、高専の方には前もってお話しないとだめですよ!」
五条透は何度も夜蛾の方に頭を下げながら言った。
そんな五条透の言葉に次は夜蛾正道が驚いた。
「悟……兄様? まさか悟の妹か?」
「まぁ、そんなところですよ」
「あ、初めまして! 私――」
自己紹介をしなければと頭を上げた五条透は口を開く。
「五条"透"と申します! 悟兄様の家族で愛妹です! 仲良くしていただけると嬉しいです!」
それがこの学園で一番名乗ってはいけない名だということは知らずに。
満面の笑みで先ほどの謝罪の意味ではなく挨拶の意味で頭を下げた五条透。
「っ……悟」
夜蛾正道はそんな五条透の方を見ずに五条悟を睨んだ。
「あー、まぁ、こうなるよね」
五条悟は分かっていたことだと言わんばかりに言う。
そんな二人の様子に五条透は頭を上げて首を傾げる。
「……あの、どうかしましたか?」
「いや、君はいい。悟は後で来い」
夜蛾正道は一瞬だけ五条透を見て答えた。
そしてすぐに五条悟を睨む。
「えぇ、めんどくさいなぁ。話なら今でいいですよ。言いたいことは大体分かるし。透には大体話してますよアイツの事」
そう、五条透はこの4年間で少しだけではあるが禪院透の事を聞いていた。
とはいっても、詳しいことは聞かされずに性格やどんな馬鹿な事をしたかという話だけではあるが。
「そうか。なら――」
夜蛾正道は拳を強く握る。
肩が小刻みに揺れている。
それは"初めて"夜蛾正道と会う五条透にも分かる夜蛾正道の怒りだった。
「――いくらなんでも
夜蛾正道はまっすぐに五条悟の目のある布を見た。
しかし、そんな夜蛾正道の視線から目を逸らさずに五条悟は答える。
「うん、僕もそう思います。最低最低とは言われるけど、これは本気で最低だ」
「ならなぜ連れて来た。ここにどれだけソレを嫌悪する者がいると思う?」
夜蛾正道の怒りは増すばかりだ。
すでに卒業した者や呪術師を辞めて高専を去った者もいるが、高専には未だに"禪院透”という
話している夜蛾正道もその傷を持つ者の一人だ。
もし、五条透がいなければ五条悟を殴っていただろう。
そして、五条悟も無下限で防がずに一撃を受け入れていただろう。五条悟も理解していないわけではない。
「だからこそですよ。きっと、ここの奴ら……いや、ここを出た奴らも透と会うべきだ。だから連れて来たんですよ」
「その子がどんな目で見られるか分かっているのか」
夜蛾正道の視線がさらに鋭くなった。
「……それでも会うべきなんだよ。特にあの二人には絶対に」
「悟……」
五条悟に言葉に過去の五条悟の面影を感じた夜蛾正道は拳に込めた力を緩めた。
意味もなく五条透という名前を連れて来たわけではないのが伝わったのだ。
だが、なぜなのか理解できない夜蛾正道は五条透の方を横目で見た。
すると、そこにはなぜかニコニコと微笑んでいる五条透の姿があった。
「なぜ、君は笑っている……?」
驚いた夜蛾正道は五条透の方をしっかりと見た。
すると、五条透は焦ったようにたじろぐ。
「あっ、いや、ご、ごめんなさい」
「別に責めているわけではない」
先ほどまで五条悟に向けていたものとは違う、ほんの少しだけ優しい声で夜蛾正道は言った。
そんな夜蛾正道を見ながら、禪院透は小恥ずかしそうに自分の頬を人差し指で触る。
「その……嬉しくて……」
「は……?」
夜蛾正道は意味不明な回答に困惑する。
今のやり取りを見てなぜ嬉しいという感情が生まれるのだ。
そう考えていると五条透は言葉を続ける。
「だって……私が『どんな目で見られるか』とか『どんな感情を持たれるか』とか全部が初めて会う私のための言葉じゃないですか……だからそれが優しくて、嬉しくて。きっと、学長先生にとっても私の名前は嫌なはずなのに」
夜蛾正道の瞳を布越しにまっすぐ見つめる五条透は心の底から嬉しそうに微笑む。
「――ッ!!」
そんな五条透の言葉に、表情に、目こそ見えないが笑みに過去に去っていった教え子の姿が重なる。
『やっぱり先生は優しいですよ!』
禪院透からかけられた最後の言葉が、夜蛾正道の脳内に反芻する。
もう思い出したくなかった。
夜蛾正道にとって禪院透の最後の言葉だ。
「言っときますけど、僕は透の性格をどうこうしようとしたことは一度もないですよ」
五条悟は「名は体を表すのかな」と小さく呟く。
夜蛾正道はそんな五条透から目を離し、五条悟の方を再度見た。
「……とりあえず、一年だけだ。その期間はここにいることを許可する」
夜蛾正道の言葉に「えっ!?」と五条透は驚いていたが、五条悟は当然のように笑っていた。
夜蛾正道も五条透に過去の傷を癒す可能性を感じたのだ。
「来年には一生いてくれって思ってますよ」
真剣な表情で夜蛾正道は五条悟の肩に手を置いた。
そんな夜蛾正道の態度に五条悟も真剣な表情になった。
「もし、何かこの子が傷つくことがあれば一年を待たずに許可は取り消す――」
夜蛾正道の手に力が入り、五条悟の肩を強く掴んだ。
「――悟、絶対に守れ」
「僕の近くより安全な場所はありませんよ。……次は必ず」
五条悟は夜蛾正道にまっすぐ言った。
力強く、後悔を感じさせながら。
まさかの続きが投稿されました。
私が一番驚きました。
沢山の続きを待っているコメントで重い腰が軽くなりました。
沢山のコメントありがとうございました。