転生する術式を持つ少女がいろんなキャラの地雷になる話   作:おにい

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九話『領域展開』

 呪術全盛、平安の世において生きる天災と言われる者がいた。

 

 ──両面宿儺。

 

 宿儺は死後にその死蝋となった指が呪物となり時を渡った現代においても特級の呪物として君臨している。

 その指は五条悟をもってしても破壊することは叶わなかった。

 呪霊の中には宿儺の指を取り込み、力を得ようとする者もいる。

 

「……なるほど、指を取り込んだ呪霊ですね……」

 

 透は目の前に立つ人型の呪霊を見ながら呟く。

 宿儺の気配、そして六眼から得られる情報で瞬時に状況を把握できた。

 

 自分の絶望的な状況も含め──。

 

(腕を治すのにはまだ時間がかかりますね。血は止めれたので失血は大丈夫……ではないですね。今の私では特級相当の呪霊を祓えない)

 

 透は目の前に立つ呪霊に勝つことができないと理解していた。

 経験や技術は一級以上の実力を持つがフィジカル面が弱すぎる。

 その上に術式もない。

 

「あなたは話せる呪霊ですか……?」

 

「アァア」

 

「無理そうですね」

 

 呪霊はゆっくりと一歩ずつ近づいてくる。

 その顔は笑っており、今から透をいたぶり楽しむつもりなのが伝わる。

 透は周りの状況を呪霊から目を離さず把握する。

 

(恐らく工場を領域化した呪霊とは別ですね。特級クラスが二体って国でも亡ぼすつもりですか……。あれ、帳が変わってる? 私が作った帳じゃない……。流石に直接触れないと情報までは分からないですね)

 

 透はそこまで考えると一息ついた。

 

「──ミッションは悟兄様の到着まで生き残る、です」

 

 透はそう言って結界を展開した。

 それは防御にすべてを注ぎ込んだ結界だ。

 結界を張った瞬間、呪霊が襲い掛かる。

 

「アァッ!!」

 

 バリッと音を立てて拳の一振りで結界は破壊された。

 

「まぁそうですよね!」

 

 結界が爆ぜると同時に透は呪霊から距離を取る。

 だが、呪霊は一瞬で距離を詰めた。

 透が遅いわけではない、呪霊が早すぎるのである。

 

 透は呪霊から繰り出される拳を紙一重で避け続ける。

 

「落花の情」

 

 透の周りに薄い膜のような呪力が張られる。

 落花の情とは御三家に伝わる領域展開に対抗するための術。

 

 だが、透はオリジナルで術を拡張し相手の呪力を纏った攻撃すべてに反応し体が反射をするという能力に変えていた。

 本来であれば相手の術式に対しカウンターで自分の呪力を放つという技だが、そのすべてを回避に振り分けた。

 

「今の私では貴方を倒すことはできません。でも、貴方が私を倒すこともできない」

 

 そう、五条透は特級の呪霊を祓うほどの力は持ちえなかったが、特級の呪霊だとしても負けない技術を持っていた。

 

「アァァアッ!!!」

 

 すべての攻撃をいなされ怒っているのか自分の顔を搔きむしる呪霊。

 透は落花の情を維持したまま集中を切らさない。

 

 六眼を持っている透は呪力消費のロスが限りなくゼロである為、何時間でも落花の情を維持できる。

 

「本当は私が宿儺の指を回収したいんですが……悟兄様に任せます」

 

 透がそう言った瞬間だった。

 呪霊が急に落ち着き、何かを思いついた。

 

「え……何をして」

 

 透は落花の情を展開したまま呪霊を見る。

 呪霊は少し透から距離を取り、邪悪な笑みを見せた。

 

 そして自分の両の手の指を絡める。

 

「──アァアアァア」

 

 ──領域展開。

 呪霊は領域を展開した。

 

「それは無しじゃないですか……!?」

 

 透は咄嗟に逃げようとしたが落花の情を展開していたせいで間に合わなかった。

 

 領域展開とは呪術戦の極致。

 己の生得領域、心象風景を結界として作り出し相手を閉じ込め、術者の術式を必殺から"必中"必殺へと昇華する。

 

(油断した……!! この呪霊、宿儺の指を一本ではなく"二本以上"取り込んでる……!!)

 

 呪霊が展開したのは完成した領域だった。

 いくら宿儺の指で力を増したとはいえ、一本ではせいぜい未完成の領域を作るのが精一杯だろう。

 だが、この呪霊が展開したのは完璧な領域だ。

 

 透は無意識で指一本を取り込んだ呪霊だと油断してしまった。

 

「ッ!! 落花の情!」

 

 透は咄嗟に落花の情を展開しなおした。

 先ほどのまでの落花の情は領域対策を捨て、肉弾戦や領域外での戦闘で攻撃を避けるために改造したものだ。

 

 だが、領域相手ならば通常の落花の情の方が対策として効果的だ。

 

「アァッアァアア!」

 

 呪霊は楽しそうに透に見えない斬撃を叩きつけ続ける。

 

(術式は宿儺のものと酷似している。能力は雲泥の差ですが、それでも今の私では何分も持ちませんね……)

 

 六眼により呪力の枯渇は心配のない透だが──呪力の出力は限界があった。

 落花の情は相手の術式に対し、呪力を放出しカウンターとすることで防御している術だ。

 つまり、相手の一つの攻撃よりも同等かそれ以上の呪力出力が求められる。

 

(威力がどんどん上がってる。楽しんでますねこれは……)

 

 呪力出力は才能だ。透は一般的な一級呪術師相当の呪力出力が可能だが相手は特級だ。

 それも宿儺の指二本分。

 

 呪力の出力では完全に透は劣っている。

 呪霊もそれを理解しているのか少しずつ少しずつ呪力の出力を上げていたぶっている。

 

(──ならまだ勝ち筋はあります)

 

 呪霊は少しずつ削られていく透を見ながら嬉しそうに笑っている。

 無数の斬撃が透に降り注ぎ、ついに

 

 落花の情が弾けた。

 

「アァッ!!」

 

 呪霊が嬉しそうに叫び最後の斬撃をくらわせようとした瞬間。

 

「領域展延」

 

 透が呟く。

 領域展延とは落花の情とは違う領域対策の術だ。

 とは言ってもこの技を使える者は過去千年でも数える程度しかいない。

 

 自身の周りを水のような領域で囲み、相手の術式を中和する術だ。

 

「アッ!?」

 

 透の周りに落花の情とは違う呪力の膜が張られる。

 呪霊は驚いた声を上げる。

 透はこの隙を狙い最初から領域展延を使わなかった。

 

 落花の情と違い、領域展延は術者が動ける。

 

 その隙を逃さず透は呪霊に近づき──

 

「最悪です」

 

 そう呟き呪霊の口に自分の口を合わせた。

 そして口から反転術式を叩き込んだ。

 

 呪力で体が作られる呪霊にとって反転術式は凶悪な攻撃だ。

 それも口からとなると直接体内に送り込まれる。

 いくら特級の呪霊といえど大ダメージだ。

 

 反転術式を叩きこまれた呪霊はとてつもないダメージに領域を解いてしまう。

 

 そして後遺症でしばらく動けなくなる。

 

「吐きそうですよ……でも、これでおしまい」

 

 瞬間──

 

「あ、あガッ!?」

 

 透の脳に流し込まれる。

 

 ──封印されていた記憶。

 

「な、これ……」

 

 透は両膝をついて動けなくなる。

 

 透の体に──転生術式が刻まれていく。

 

 それと同時に転生術式に封印されていた技術、知識、禪院透の事に関する事以外の全てが脳に流し込まれる。

 

 その情報量は透の脳を焼き切った。

 

 仮想領域、死者をも蘇生できる反転術式、天元にも並ぶ結界術。

 それを一瞬でたたき込まれる。

 

「おえっぇえ!!」

 

 透は吐いた。

 

「アッ?」

 

 その時、呪霊が固まっていた状態から戻ってしまう。

 先ほどまでは余裕綽々にしていた呪霊だが、一度追い詰められた。

 もう油断はしない。

 

「アァッ!!」

 

 呪霊は透の体をヘソの辺りから横に両断した──。

 透の脳は呪霊に向くことができず、避けることのできない一撃だった。

 

 透は──絶命した。

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