転生する術式を持つ少女がいろんなキャラの地雷になる話   作:おにい

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八話『最強な三人』

 星漿体の少女の護衛任務を受け、渡された地図に記された星漿体の少女の居る場所まで向かっている透、悟、傑の三人。

 悟と傑は自分よりも歩幅の短い透に歩幅を合わせながら歩いている。

 

「もし、星漿体の少女が同化を拒んだ場合はどうする?」

 

 傑は歩きながら悟にそんなことを聞いた。

 突然の問いに悟は少し驚いたそぶりを見せる。

 

「星漿体の少女(ガキ)が同化を拒んだ時ぃ!? ……そん時は同化はなし!」

 

 少し悩んでから答える悟。

 悟の答えに次は傑が驚いた。そして、少し笑いながら傑は聞く。

 

「クックッ、いいのかい? 天元様と戦うことになるかもしれないよ?」

 

「ビビってんのぉ? 大丈夫なんとかなるって。俺達、最強だろ?」

 

 挑発するように傑を見る悟。

 傑は「まさか」と肩をすくめた。

 そんな二人の会話に空気だった透は手を上げて質問する。

 

「あの私の意見は?」

 

「透は星漿体のガキが同化を拒んだら味方するだろ」

 

「聞かなくても分かるよ」

 

 悟と傑は当然だろと言わんばかりに言った。

 そんな二人の物言いに透は不服そうな顔をした。

 

「私……そんな無鉄砲に思われてるんですか?」

 

「違うのかい?」

 

 傑は首を傾げながら聞いた。

 

「いや……味方はしますけど」

 

 透は少し考えてから答える。

 もちろん、星漿体の少女が「同化したくない! 助けて!」なんて言えば全力で助けようとする。

 だが、それでも星漿体の少女を同化の運命から助けられない事を透は知っていた。

 星漿体とは運命(しばり)で天元と繋がっている。運命(しばり)から逃れる事は出来ない。

 

「ほらな。俺達だけじゃなくて透も居るんだ。誰にも負けないだろ」

 

 悟は軽く笑いながら言った。

 

「私、喧嘩は苦手なんですけど」

 

「喧嘩ってレベルじゃないけどね」

 

 天元と戦う事を喧嘩と言う透に苦笑いで答える傑。

 そんな話をしていると目的地であるマンションの前に着いた。

 悟が一息つく為に自販機で缶ジュースを買う。

 

「でもさー、呪詛師集団『Q』は分かるけど。盤星教(ばんせいきょう)の方は、なんで少女(ガキンチョ)殺したいわけ?」

 

「崇拝しているのは純粋な天元様だ。星漿体……つまりは不純物が混ざるのが許せないのさ」

 

 傑の説明に悟は「なるほどね」と頷いた。

 

「過去に星漿体との同化は数回行われていたのに……何を今更って感じですね」

 

 透はどこか苛立ちを感じているような表情で言う。

 珍しい透の怒り顔に他二人は内心驚いていた。

 

「だが、盤星教は非術師の集団だ。特段気にする必要はない。警戒すべきは、やはり『Q』!」

 

「まぁ、大丈夫でしょ。俺達最強だし。だから天元様も俺達を指名……何?」

 

 悟が喋っていると横に居た傑はため息を吐いた。

 なぜため息を吐いたのか気になった悟は話を途中でやめ聞いた。

 

「いや……悟、前から言おうと思っていたんだが一人称俺はやめた方がいい」

 

 突然言われたことに悟は苛立ち、飲み終わった缶を無下限呪術でスーパーボール程度の大きさまで捻り潰した。無下限呪術の無駄遣いである。

 

「あ゛?」

 

「特に目上の人の前ではね。天元様にも会うかもしれないし。『私』最低でも『僕』にしな」

 

「一人称僕の悟さんは見てみたいですね」

 

 僕を一人称にしている悟を想像して笑ってしまう透。

 

「年下にも怖がられにくい」

 

「はっ、やなこった」

 

 そっぽを向いて悟がそう言った瞬間──目的地マンションの一室が爆発した。

 

「「!?」」

 

 透と傑の二人は驚く。

 悟は多少驚いたようだが、冷静に爆発した一室の方を見ていた。

 

「お?」

 

「アレ、もしかしなくても星漿体の少女が居る部屋ですよね?」

 

 爆発したのは待ち合わせ場所の一室だった。

 しかし、三人に焦った様子はなく、驚きはしたものの冷静だ。

 

「これでガキンチョ死んでたら俺らのせい?」

 

「ですね。死んで五分以内なら反転でなんとか生き返らせられますよ」

 

 透は死んだ人間、厳密には心肺が停止した状態から五分以内で体の七割が残っていれば反転術式での蘇生が可能だった。

 そんな話をしていると部屋から飛び出た"何か"を三人は見た。

 

「あっ……」

 

 爆発した部屋から飛び出した"何か"、それは中学生ほどの少女だった。

 三人はその少女が恐らく星漿体の少女であると瞬時に判断する。

 

「──私が行こう」

 

 使役している呪霊での飛行手段がある傑がいち早く少女の元に向かった。

 

 飛行する呪霊に乗り、少女を空中でキャッチする傑。

 それを見て一安心する透と悟の二人。

 

「呪霊操術、やっぱり便利ですね」

 

「おぉ、セーフセーフ」

 

 そんな軽口を二人が言っていると、背後から悟に向かって無数のナイフが飛んできた。

 気配で察した悟は術式を使用し、空中でナイフを止める。

 

「素晴らしい。君、五条悟だろ。有名人だ」

 

 透と悟が振り向くとそこには白い軍服のようなものを着た変な恰好のロン毛男が立っていた。

 その男は呪詛師集団『Q』の最高戦力"バイエル"と呼ばれる呪詛師だ。

 空中でナイフを止めた悟に向かって拍手を送るバイエル。

 

「おぉ、凄いですね悟さん。有名人ですって」

 

 自分の謎めいた登場に一切の動揺を見せるどころか軽口で会話をする透に驚き一瞬見るバイエルだが、すぐに悟の方へ視線を戻した。

 

「……強いんだってね。噂が本当か確かめさせてくれよ」

 

「いいけど。ルールを決めよう」

 

 悟は空中に止めていたナイフを適当な場所に避け、右手の人差し指を立てながら言った。

 バイエルは悟の発言に首を傾げる。

 

「ルール?」

 

「やりすぎて怒られたくないからね──泣いて謝ったら殺さないでやるよ」

 

 挑発だった。

 悟の挑発にまんまと乗るバイエル。

 

「クソガキがッ!!」

 

 呪詛師集団『Q』最高戦力"バイエル"と呪術界の異能"五条悟"との戦いが始まる。

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 二分後。バイエルは悟の一撃に倒れた。

 頬に大きな痣を作り大の字に倒れるバイエルを見下ろす透。

 

「圧勝でしたね」

 

「当然」

 

 無傷の悟は右手を上げながら「よゆー」と呟いた。

 呪術界の異能と寄せ集めの呪詛師集団の最強では相手になるわけがなかった。

 

 そんな会話をしていると透の携帯に傑からメールが入る。

 そこには「Qの呪詛師を一人捕らえた。星漿体の少女も無事だ」と書かれていた。

 透は悟に視線を移す。

 

「傑さんの方も片付いたみたいです」

 

「こっちの報告もしたいから写真撮ってくれ。いえーい」

 

 敵に襲われていたとは感じられないほどの軽いノリでピースサインをする悟。

 透は携帯のカメラ機能を取り出し、

 

「はいチーズ」

 

 と、倒れたバイエルとピースサインをする悟のツーショットを撮り、それを傑に送信した。

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 チーン。とエレベーターの止まる音がする。

 そこは傑と少女が待つ階層。

 エレベーターの扉が開くと、そこには三つ編みの少女を抱えた傑が立っていた。

 少女は気を失っているようだ。

 

「傑さんお待たせしました」

 

「お、それが星漿体のガキンチョ?」

 

 悟は傑に抱えられている少女をまじまじと見る。

 息はしているようだ。

 

「あぁ、部屋の爆発に巻き込まれて気を失っているけど息はあるよ」

 

「一応、医者診せる?」

 

 悟がそう言うと、横から透が覗き込む。

 星漿体の少女──天内理子(あまないりこ)に目立った外傷はない。

 

「私が反転術式で治すので任せてください。はい、お渡しを」

 

 透は両手を傑の方に向けた。

 すると傑は首を傾げる。

 

「大丈夫? 重いよ?」

 

「すっごく失礼ですね。起きてたら泣いちゃいますよ」

 

 流石にデリカシーが無さ過ぎる発言に透は珍しく引いてしまった。

 そんな話をしていると理子が目を覚ました。

 

「あ、起きたね」

 

 起きた理子に傑が優しく微笑む。

 寝起きに男の顔が眼前にある状況に驚いた理子はパンッ! と思いっきり傑の頬を叩いた。

 

「っ!?」

 

 抱えていた傑の腕から抜け出し、理子は三人に向かってよくわからない構えをとる。

 

「下衆め! 妾を殺したくば、まずは貴様から死んでみせよ!!」

 

「ぷっ、傑、殴られてやんの」

 

 悟は殴られ眉間にしわを寄せている傑を指差しながら大笑いした。

 透はそんな二人を見て苦笑いしていた。

 傑がイラっとする心を落ち着かせ理子に語り掛ける。

 

「ふぅ……理子ちゃん落ち着いて、私達は君を襲った連中とは違うよ」

 

「そうそう。お前の護衛だ。安心しろ」

 

 悟も便乗して警戒している理子をなだめようとする。

 

「嘘じゃ!! 嘘つきの顔じゃ!! 前髪も変じゃ!! シラガ頭も胡散臭いのじゃ!!」

 

 しかし、そんな二人の言葉を信じず理子は警戒を解かない。

 プチッ、と何かのキレる音がした。

 透は額に手を当てた。

 

「あちゃー……」

 

「傑~。手の方お願い」

 

「分かった」

 

「な、何をするのじゃ!!」

 

 悟が理子の足を持ち、傑が理子の腕を持つ。

 そして持ち上げ、体を雑巾絞りした。

 透も止められず、額に手を当てて見ている。

 

「ぃいやーーーー!!! 不敬ぞぉーーーー!!!」

 

 理子が雑巾絞りをされていると、チーンとエレベーターの止まる音がして扉が開いた。

 そこには黒髪に給仕服を着て、傑が用意した移動用の呪霊に乗った女性がいた。

 その女性の名は黒井美里(くろいみさと)。代々星漿体に仕える家系の女性だ。

 

「おっ、おやめ下さい!」

 

 美里は暴行を受けている理子を見て悟と傑の二人を止める。

 

「黒井!」

 

 二人から手を離され解放された理子は美里を見て安心したような表情になる。

 

「お嬢様。その方達は味方です」

 

「体雑巾絞りされてますけど味方って言えますかね……」

 

 透は小声で冷静にツッコんだ。

 

「黒井、何に乗っておるのだ?」

 

 理子は美里が乗っている呪霊を指差し質問する。

 

「これは、前髪の方の術式です!」

 

 美里は傑の方を見ながら答える。

 美里の前髪の人発言に傑は嫌そうな顔をする。

 

「その言い方やめてもらえます?」

 

「思ってたよりアグレッシブなガキンチョだな。同化でおセンチになってるだろうから、どう気を遣うか考えてたのに」

 

「ふっ、いかにも下賤の者の考えじゃ!」

 

 理子は指を差しながら悟を煽った。

 理子の煽りに悟は眉間にしわを寄せた。

 

「あ゛!?」

 

「いいか。貴様のように同化と死を混同している輩がおるが、それは大きな間違いじゃ! 同化により妾は天元様になるが、天元様もまた妾となる!! 妾の意志! 心!! 魂は生き続け──」

 

「待ち受け変えた?」

 

「あぁ、この前の罰ゲームの」

 

 悟の待ち受けには先日ゲームで負けた罰ゲームで撮られたセクシーポーズをする透の写真があった。

 最初は真面目に理子の熱弁を聞いていた透だが悟の待ち受けに驚き、抗議する。

 

「ちょっと、流石に待ち受けは勘弁してください!」

 

「──聞けぇ!!」

 

 理子はキレた。

 

「あの言葉遣いじゃ友達も少ないじゃろう」

 

「快く送り出せるのじゃ」

 

 悟と傑はそう言いながら頷いた。

 すると、理子は顔を真っ赤にする。

 

「学校じゃ普通に喋ってるもん!! ……あっ、学校!! 黒井、今何時じゃ!?」

 

 学校と言う単語にはっとした理子は美里に時間を聞く。

 

「まだ昼前……ですがやはり学校は……」

 

「うるさい! 行くったら行くのじゃ!!」

 

 どうやら理子は学校に行きたいようだ。

 中学生らしく子供のように駄々をこねる理子。

 そんな理子を困ったように見る美里。

 

「おいおい、学校行こうとしてんのか!? オマエ狙われてんだぞ!」

 

「私も賛成できないね」

 

 そんな理子の言葉に悟と傑も否定的な言葉を返す。

 今は星漿体として様々な存在に狙われている理子。

 例え一番勢力の大きい呪詛師集団『Q』を倒したと言っても安心できる状況ではない。

 そんな中、学校に行くことなど賛成できるわけがなかった。

 

「……でも……最後なのじゃ!」

 

 理子は俯く。

 理子は賢い子だった。自分の置かれている状況も、他の人間が言っている言葉の方が正しいという事も分かっていた。

 しかし、どうしても最後に友人に会いたいかった。

 

「……いいんじゃないですか。悟さん傑さん、私達は最強なのでしょう? 最後の学校くらいゆっくり行かせてあげましょう」

 

 理子の気持ちを汲み取り、透は優しい声で言った。

 

「!!」

 

 その言葉に理子は潤んだ目で透を見た。

 

「ですが皆様……流石に危険では」

 

 美里は透を見ながら心配そうに言う。

 そんな美里の事を優しく微笑みながら透は見る。

 

「お友達にお別れも言えずに同化なんて未練が残るのは可哀そうですよ。大丈夫です。何かあっても私達が守ります。ね、悟さん傑さん」

 

 そう言って透は悟と傑を見た。

 

「はぁ……仕方ねぇ……」

 

「流石に敵が乗り込んできたら逃げるよ……それまでの間だ」

 

 透にそこまで言われては悟も傑も断ることができない。

 悟は頭を掻きながら、傑はため息交じりに了承した。

 そんな二人を透は笑顔で見る。

 

「か、感謝するのじゃ!!」

 

「最後なんです。未練が残らないように楽しんでくださいね」

 

 透は理子の前に立ち、理子の頭を優しく撫でた。

 

「うん……!!」

 

 理子は目を潤ませ、笑顔で答えた。




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