最初は鏡爺をお送りします。
鏡爺①(挿絵あり)
「あ~!楽しかったね~!」
「うぅ…」
「あれ?もしかして鬼太郎、絶叫系苦手だった?」
「へっ!?そ、そんな事ないし!」
「そっか~…じゃあ今度はあのアトラクションに…」
「マジで勘弁して!」
「やっぱり苦手なんじゃん…」
は、恥ずい…前世からジェットコースターとかの絶叫系は苦手なんだけど、よりによって猫娘に知られるなんて…
「いいよ気にしなくて!苦手な物なんてだれにだってあるし。それに…」
猫娘は俺の耳元に顔を近づけてくる。
ち、近い…
「鬼太郎の怖がってる姿、すっごく可愛いもん」
「~~~~!///」
俺はあまりの恥ずかしさに顔を赤くし、声にならない悲鳴を上げてしまった。
「ごめんごめん!私が悪かったから機嫌直してよ~!」
「別に怒ってないし…」
1985年の春、俺と猫娘は最近新しく出来た遊園地に遊びに来ていた。
80年代という事もあって現在は経済が良くなっている所謂バブル時代に突入していた。
昔より街は活気で溢れていて、ビルが沢山出来ていった。
だけどその反面森の木や草が刈り取られ、自然も少なくなっていた。
それが悪い事だなんて言うつもりはないけど少し寂しさはあるかな…
「わっ!?」
すると走っていたであろう男の子が俺とぶつかってしまう。
背丈的に小学校低学年くらいの男の子だ。
「君、大丈夫?」
「う、うん…」
ぶつかって尻もちをついていた男の子の手を掴んで起き上がらせる。
「
そこへロングヘアの小柄な女の子が駆け寄って来る。
この子のお姉さんかな…?
「お姉ちゃん!」
「もう!気をつけないとダメでしょ!」
「ごめんなさい…」
男の子…星郎くんだったかな?星郎くんは女の子に謝る。
「ごめんなさい!弟が…」
「あ、気にしなくてもいいよ。私も前をよく見てなかったし」
俺は女の子にそう言う。
すると女の子は何故か俺の顔を見て茫然としていた。
「どうかした?」
「あっ、なんでもないわ!それじゃあもう行くね!」
女の子は星郎くんを連れてそそくさと去っていった。
どうしたんだろ…
「ムムム…!」
「ね、猫娘、顔が怖いよ…?」
「あの女の子の顔…あれは鬼太郎に惚れた顔だよ!」
「惚れたって…あの子女の子だよ?」
「性別なんて関係ないって!鬼太郎!あたし達、もっと関係を深めていこ!」
「う、うん…」
フンス!とやる気になっている猫娘を見て俺は思わず茫然としてしまった。
(あの女の子…可愛かったなぁ)
先程の女の子、
ユメコから見ても変わった服装をしている鬼太郎であったが女の子らしい可愛らしい瞳、綺麗な髪をしていた鬼太郎に少なからずユメコは見惚れてしまった。
「…ちゃん…お姉ちゃん!」
「えっ!?ど、どうしたの?」
「さっき会ったお姉ちゃん、すっごく綺麗だったね!」
「そ、そうね」
星郎から話しかけられたユメコは動揺しながらもそう返す。
すると2人の目の前にピエロが現れ、星郎に風船を渡してきた。
「わぁ~!ありがとう!」
星郎がお礼を言うとピエロが走りながら手招きしてくる。
それを見た星郎はピエロを追いかけていった。
「あっ!待ちなさい星郎!」
ユメコは走っていった星郎を追いかける。
しばらくピエロと星郎を追いかけていたユメコは遊園地の中にあるミラーハウスにやって来る。
その名の通り、中は鏡の迷宮になっていた。
「えっ!?」
ユメコは星郎を探していると鏡の中に先程のピエロの姿があった。
「フフフ、ずっとお前を探していたんだよ…さぁ、おいで」
ピエロは腕を伸ばし、ユメコの両腕を掴んだ。
「嫌っ!放して!いやぁぁぁぁぁぁーー!!」
抵抗するユメコであったが、あっという間に鏡の中に連れていかれてしまった。
「鬼太郎!今日は楽しかったね!」
「そうだね…」
絶叫系以外な。
もう日も暮れ始めたし、そろそろ帰らないとな…
「お姉ちゃ~ん!どこ~?」
すると大声でお姉さんを探している星郎くんを見つける。
「星郎くんだよね?」
「あっ!さっきのお姉ちゃん達!」
「お姉さんはどうしたの?」
「…お姉ちゃん、いなくなっちゃったんだ」
「いなくなった?」
弟の星郎くんを置いて急にいなくなるなんて…これってもしかして!
「猫娘」
「わかってる。私達で君のお姉さんを探してあげるよ」
「ホント!?」
「うん。私と鬼太郎に任せなさい!」
「鬼太郎…もしかして、あのゲゲゲの鬼太郎さんですか!?」
「そうだよ」
「すっご~い!本物だ~!」
こんなに喜ばれると照れちゃうなぁ~。
「それで星郎くん、お姉さんはなんて名前なの?」
「お姉ちゃんの名前はユメコだよ」
「ユメコちゃんだね…星郎くん、ユメコちゃんとはぐれた所まで案内してくれないかな?」
「わかった!こっちだよ!」
俺と猫娘は星郎くんの後をついて行った。
「ここだよ!」
星郎くんの案内でやって来たのはミラーハウスだった。
「私が中に入ってみるから猫娘は星郎くんのそばにいてあげて」
「了解!」
中に入ってみると中は鏡だらけの迷宮になっていた。
出口に着くまでも時間が掛かりそうだな…
「わっ!?」
迷宮を歩いていると何かにぶつかってしまう。
ぶつかった場所には何もいなかった。もしかして透明妖怪か!?
「この!大人しくしなよ!」
俺はぶつかった何かを押さえつける。
「待って!」
「えっ?」
すると女の子の声が聞こえてきた。
この声って…
「もしかしてユメコちゃん?」
「うん!ピエロに身体を奪われちゃったの!」
ピエロに?
「おぉ…こりゃまた可愛い女子が来なさったか」
俺と透明姿のユメコちゃんの目の前にピエロが現れる。
「あんただね!ユメコちゃんの身体を奪ったのは!」
「そうじゃよ。せっかくじゃ、お前の身体も奪ってやろう!」
するとピエロの身体がお爺さんの姿に変化した。
「髪の毛針!!」
俺が爺さんに髪の毛針を放つと爺さんは鏡の中に入っていく。
「それ!鏡地獄じゃ!」
すると鏡は俺達を囲い、回転し始めた。
「ユメコちゃん!私の背中に隠れて!」
「うん!」
俺は妖怪オカリナを取り出し、剣のような形状にして鏡を叩き割っていく。
「リモコン下駄!!」
更にリモコン下駄で鏡を割っていく。
全ての鏡を割り終えると爺さんが現れる。
「おのれ!さてはお前、人間ではないな!?」
「私はゲゲゲの鬼太郎!幽霊族だよ!」
「ゲゲゲの鬼太郎…?」
ユメコちゃんが俺の名前を呟く。
「幽霊族じゃと!?生き残りがいたのというのか!」
すると爺さんは慌てながら鏡の中からユメコちゃんの身体を取り出した。
「あっ!私の身体!」
「その子の身体をどうする気!?」
「ここも騒がしくなったのでな!わしの住処に連れて帰るのじゃ!」
「待て!」
俺は爺さんを追いかけようとしたが爺さんは天井を突き破って逃げていった。
「逃げられちゃった…ユメコちゃん、大丈夫?」
「うん…」
ユメコちゃんの返事は元気がなさそうだった。
「大丈夫!君の身体は絶対に取り戻してみせるから!」
「鬼太郎さん…」
「とにかくまずはここから出よう」
俺はユメコちゃんの手を握ってミラーハウスから出ていった。
「この人が私の父さんだよ」
「目玉おやじじゃ」
「て、天童ユメコです」
ユメコちゃんは動揺した声色で自己紹介をする。
あの後俺はユメコちゃんを連れて帰って父さんに今日起きた事を説明する。
ちなみに星郎くんは自宅に帰った貰った。
このままユメコちゃんが自宅に帰ってもご両親が混乱するかもしれないしな…
「う~む…もしやこれは、鏡爺の仕業かもしれん」
「鏡爺?」
「うむ。鏡爺は元々女好きの優しい妖怪の筈じゃ。何故無理矢理ユメコちゃんの身体を奪ったんじゃ…?」
「そういえば…ママが昔住んでたっていう村に鏡の妖怪の言い伝えがあるって聞いたことがあるわ」
「鏡の妖怪って…やっぱり鏡爺なのかな?」
「…まぁ今日はもう遅いから寝なさい。ユメコちゃんも良いかな?」
「はい」
俺は寝る準備をし、横になる。
「鬼太郎さん…」
「ユメコちゃん?どうしたの?」
「…一緒に寝てもいい?」
「…え?」
「私、身体が無くなって、凄く不安で眠れないの…」
確かに、身体を奪われて、透明人間になって…不安になるのも仕方ないかもな…」
「うん、いいよ」
「ありがとう、鬼太郎さん」
ユメコちゃんは俺の隣に寝転ぶ。
しばらくするとユメコちゃんの寝息が聞こえてきた。
更に女の子特有の甘い香りする…
落ち着け俺!確かにユメコちゃんは猫娘とは違うタイプの可愛い女の子だ!
ダメだ!ドキドキする…
ユメコちゃんと父さんの寝息が聞こえる中、俺だけ眠れそうになかった…