歌姫と錬金術とライダー   作:ボルメテウスさん

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どちらの恐怖

キャロルが、無事に帰ってくるのを待つ事しかできない。

その状況の最中でも腹は減る

 

「何か、買いに行くか」

 

それと共に、ホッパー1達と一緒に買い出しに向かう。

もうすぐ響も検査が終わる頃だ。

そう思っていた時だった。

 

「あれ、もしかして君はあの時にいた響のお友達かい?」

「あなたは」

 

そこに立っていたのは1人の男性。

その男性に、俺は見覚えがあった。

 

「響のお父さん」

「いやぁ、覚えていてくれたか」

 

そう、愛想笑いで答える。

この人に対して、今の俺は何を話したら良いのか分からない。

 

「そうだ、君に、少しお願いがあるんだけど?」

「お願いですか?」

 

それに対して、俺は首を傾げる。

 

「君からも響に頼んでくれないかな」

 

それは、俺から頼んで、状況を変えようとする考え。

あの時の響の様子から見ても、おそらくはその態度が、原因だろう。

 

「自分からは言わないんですか」

「そいつは、だって怖いだろ」

 

それと共に言った彼の言葉に対して、俺から言える事はもうこれしかなかった。

 

「ならば、俺から、あなたに二つの選択肢があります」

「選択肢?」

 

それに対して、首を傾げる。

 

「立ち向かうか、逃げるかです」

「なんだ、それは」

 

そう言ったが、俺は続ける。

 

「はじめの一歩を踏み出し、自分から家族の絆を取り戻す。それはあなた自身が怖いと言っていた事です」

「そんなの分かっているよ、だけど逃げるって」

「えぇ、だがこれもまた、別の恐怖があります」

 

そのまま続ける。

 

「今度こそ、逃げれば家族の絆は永遠に戻りません」

「っ」

 

そう、言った。

 

「あなたの事情は知っています。逃げ出す事も分かります。

ですが、その逃げ出した結果、あなた自身、その恐怖を知っているはずです」

「っ」

 

これは、ある意味、響は分からない事だ。

響自身は、その環境から逃げられる状況ではなかった。

その状況は、まさしく不幸としか言えなかった。

だからこそ、俺は言う。

 

「響に会える勇気があったんだったら、今度はあなた自身が家族に会えるはずだ」

「それは」

「立ち向かう恐怖と逃げる恐怖。そのどちらの恐怖が恐ろしいのか分かるあなた自身でしか言えない」

 

そう、俺は続ける。

そう言っている時だった。

 

「お父さん、それに悠仁」

 

おそらくは、この場においてこの人の最後の話し合いだろう。

同時に、俺は彼から離れる。

 

「俺は、響の味方です。だから、これからどうするのか決めるのはあなたです」

 

そう言い、響の隣に行く。

 

「えっと、なんでここに?」

「偶然、それよりも話すのか?」

 

そう問いかけた。

これも、ある意味、俺は選択を迫るかもしれない。

同時に響は、俺の手を握る。

 

「響」

 

僅かな時間だった。

震える手であり、弱々しい。

いつもの彼女の力強さはなかった。

それでも。

 

「・・・うん、大丈夫、ありがとう」

 

同時に覚悟を決めた彼女は、いつも通りだった。

 

「・・・良かったら、君も一緒に話さないか」

「お父さん」

 

それと共に、ここからの話し合いもまた、変わるかもしれない。

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