「……今日はどうしたんだ、クリス」
その日の学校の帰り道、珍しい事にクリスから誘われた。
普段は任務以外ではあまりこういうクリスからの誘いがなかったので、少し驚きを隠せなかった。
「いや、そのな、少し気になった店があったから付き合って欲しいと思ってな」
「そうなのか?」
クリスは俺の方へと顔を向けてこくりと首を縦に振った。
それはそれで嬉しいのだが、一体どんな店を覗くつもりなんだろうか?
そんな事を考えているうちにクリスは目的の場所に着いたのか足を止める。
「その、ここのアンパンが美味いと聞いたから一緒に食べたいと思ったんだ」
「あぁそういう事か」
俺は納得してクリスと一緒に店内に入る。
店の中に入るとそこには数多くの種類のパンが並べられていた。
どれもこれも食欲をそそられるものばかりだ。
そんな中、店員さんに案内されて窓際の席に着くと、メニュー表を開いてどれを食べるかを考える。
そして俺はクリームパンとメロンパンを選んで注文をした。
しばらくして運ばれてきた商品を手に取って口に運ぶ。
口の中に広がる甘みが心地よい。
「うん、うまいなこれ」
「あぁ、そうだな」
そう言って微笑むクリスだがどこか元気がないように見えた。
もしかしたら俺と同じように何か悩みがあるんだろうか? でも、それを聞くにしても何を悩んでいるのか分からないしなぁ。
そう思いながら俺は黙々とパンを食べ続ける。
しばらくするとクリスがぽつりと呟いた。
「なぁ、悠仁」
「なんだ?」
すると、俺の方にどこか心配そうに見つめる。
「お前は、やっぱり気にしているの、そのステファンの1件で」
「……」
その1件、俺は思わず顔をしかめる。
あの事件の時、ステファンだけではない。
ステファンのお姉さんの言葉もまた、俺の心に残っていた。
『あなたがステファンの足をっ』
あの時のお姉さんの悲痛な叫び声を思い出す度に胸が苦しくなる。
そして、それと共にクリスは、そのお姉さんと喧嘩をした。
クリスは、その1件を引きずっているんじゃないかと思うのだ。
だからこうして誘ってくれたんだろうけど、どう声を掛ければいいのかわからないんだろう。
「……あぁ、けど、俺自身もね」
「それは、あたしも立場だったらっ」
俺の言葉を聞いてクリスもまたその時の事を言う。
そんな時だった。
俺達の元に、連絡が来た。
『アルカノイズが現れた! すぐに現場に向かってくれ!』
弦十郎さんからの言葉を聞くと共に、俺達もまたすぐにその現場に向かう事にした。