月読調は、その日の晩、思い悩んでいた。
錬金術師との戦いが日々、苛烈になっていく。
その最中で、対抗する為には、ケミーの力を宿した新たな姿だけではなく、連携も鍵となっている。
「だけど、未だに」
成功していない。
切歌以外と連携を取ることがなかなかできず、自分の不甲斐なさに、思わず呟いてしまう。
人との接し方が不得意で連携ができない自分は独りで強くならなくてはならないと不安になる。
「……こんなところで何をしてるんですか? お嬢さん」
「えっひゃぁ!?」
そう、夜風を浴びるために外に出ていた彼女にそっと近づく人影。
それに対して、思わず叫びながら後ろに下がる。
「なっなっ」
そこにいたのは、星野。
この神社の神主? である彼が突然背後から現れた事に驚きを隠せない。
何よりも、ここまで、まるで気配を感じなかった事でさらに警戒する。
「なに、女の子が一人でこんな所にいたからね、少し様子を見に来ただけさぁ」
そう、彼は笑みを浮かべる。
警戒する彼女を他所に星野は彼女の横に座ると、そのまま話を続けた。
「それで、何で悩んでいたんだい?」
「……」
突然の問いに対して、沈黙する調。
しかし、そんな彼女を無視して、星野は言葉を続ける。
「どうせなら、何か悩みがあるなら僕に話してみないかい? 「それでも口に出せば楽になりますぞ。誰も一人では生きられないからね」
「そんなのわかってる! でも私は……」
その言葉を言った後、再び、無言のまま沈黙を貫く調に対して星野はさらに話を続けようとした。
だが、そんな彼に対して、調は小さく口を開く。
「どうして、そんなに私の事を聞いてくるの?」
そう、疑問を口にした。
「なに、神主として、悩める若者を見逃すわけにはいかないからねぇ」
そう、答えた星野。
だが、それだけではない事を月読は理解している。
それでも、今は誰かに自分の気持ちを話したい。そんな想いを抱いた彼女は星野に対し、自分が抱えている悩みを打ち明けた。
もちろん、異端技術の事を話す訳にはいかないので、あくまでも、自分が他の皆と合わせられない。
そんなありふれた悩みを彼に語る。
それを、静かに聞き終えると、彼は微笑みながら口を開いた。
「なるほどねぇ。確かに人を理解し、合わせる事は簡単じゃないからねぇ」
「はい……」
それはわかっている。だが、このままではいけない事も知っている。
だから、悩むのだ。そんな月読調に対して、星野はふむと、考え込むと言葉を続ける。
「だが、悩むという事は苦痛に思っているのは、彼女達が嫌いだからかい?」
「そんな事はっ!」
その言葉に即答する月読。
確かに、他の装者が嫌いなわけではない。だが、それは調自身、自分が持ち合わせていないモノを持っているのに、自分には何もない。そう思 ってしまっているから、上手くやっていくために悩むのだ。
そんな彼女の想いを聞いた星野は、静かに頷く。
「全てを打ち明けたとしても、上手くいくとは保証されない。もしかしたら、失敗するかもしれない」
「それは」
「だけど、案外、遮っている物は守る為にかもしれないからね」
そんな意味深を込めた言葉と共に、星野はその場を去る。
今朝の雰囲気とは、どこか違う彼に疑問に思う月読。
「月読さん?」
「一ノ瀬さん」
同時に振り返ると、一ノ瀬がその場に来ていた。
そして。
「さて、見せて貰おうか」
そんな二人を見る星野は、異形の影を見せた。