歌姫と錬金術とライダー   作:ボルメテウスさん

218 / 370
人との距離

「どうしたの、月読さん」

 

「一ノ瀬さん」

 

 俺に気づいた月読さんが、こちらに振り返った。

 

 同時に、先程までいたはずの星野さんの姿は既になかった。

 

 夜風を浴びる散歩の為に出てくる前、同室にいた星野さんはかなりいびきをかいて寝ていたはずだが、一体。

 

 というよりも、星野さん達のいびきがあまりにも五月蠅かったので、出て行ったのが本音だ。

 

 まぁ、ここまでの道中で、もしかしたらすれ違ったかもしれないから、気にしても仕方ないのかな。

 

「こんな時間に外を出歩くなんて、感心しないわね。悪い人に攫われたら大変だぞ?」

 

「ごめんなさい。ちょっと眠れなくて。一ノ瀬さんは、どうしてここに? もう寝ているはずでは」

 

「俺は、まぁその、眠れなくて」

 

 誤魔化すように俺は笑った。

 

 月読さんは、それと共にどこか不安そうに表情を曇らせた。

 

「……何か、悩み事でも?」

 

 そんな彼女に、俺は問いかける。月読さんは、首を振って否定する。

 

 「わたしの問題だから、あまり気にしないでください」と言った。

 

「相談してくれないんですか?」

 

「迷惑になりますから」

 

 しかし、未だに俯く月読さんの姿が痛々しくて放って置けず、つい食い下がってしまう。

 

 けれどそれは、結局はただの自己満足に過ぎないんだろう。

 

「だって、私は、他の皆と違って、切ちゃん以外とユニゾンが出来ない。だから、私だけじゃ何もできない」

 

 嗚咽交じりの声に聞こえたそれに、俺は口を閉ざすしかなかった。

 

 それはまるで、俺自身にも当てはまる言葉だったからだ。

 

「まぁ、人ととの距離感なんて、分からないからな、本当に」

 

 だからこそ、素直にそう口にできた。

 

「それに、距離は縮めるだけじゃ駄目な時もある」

 

「縮めるだけでは」

 

 その言葉に、顔を上げた月読さんは問いかける。

 

「ケミーもまた、どう接したら良いのか分からない時がある。そんな時、ただ近づけば、それで良い訳じゃない。ゆっくりと距離を図る為に」

 

 俺が困惑する最中。

 

『聞こえるか?』

 

「弦十郎さん?」

 

 ふと、連絡が聞こえた。

 

「錬金術師が、新川越バイパスで発見した! すぐにでも向かってくれないか!」

 

 聞こえて来た弦十郎さんの声を聞きながら、俺は頭の中で整理をする。

 

 だけど、それよりも早く。

 

「いけるか、月読さん」

 

「はいっ」

 

 それと共に、俺も月読さんもすぐに走り出す。

 

「とにかく、行こう! 変身!!」

 

 それと共に月読さんもまた、同時にシンフォギアを身に纏う。

 

 俺はすぐにゴルドダッシュを召喚し、乗り込む。

 

 既にゴルドダッシュのハンドルを握り、アクセルを踏み込んみ、真っ直ぐと向かう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。