「社長に必要なステップは、多くあるが、私が最も必要な事だけを一つだけ覚えれば、良い」
まさしく、命懸けの講義を受ける事になり諸干は身構えていた。
しかし、檀正宗の口から出てきたのは、意外な言葉だった。
「それだけで?」
「あぁ、それが最も大切な事であり、会社の経営に最も必要な事、それは」
そうしながら、檀正宗はゆっくりと口を開く。
「愛だ」
「・・・なぜそこで愛!?」
予想外の言葉が出てきた事によって、諸干は思わず叫んでしまったのは仕方ないだろう。
そして、おそらくは、この状況を見ていたS.O.N.G.の面々の中でマリアは、似たような場面を見た事があった為に、思わずこけそうになった。
「会社の経営には愛が大切だ、なぜならば、全てを愛する事で事業は上手く行くのだから」
「事業が」
そう、自身の経験を信じるように正宗は頷く。
「社員を愛する事で、社員が何を求めているのかを理解し、どう動くべきか。
会社の商品を愛する事で、その商品の生かすべき所を理解し、売る事が出来る。
それらの多くを愛する事、それこそが会社を成功させる為に必要な事」
「おぉ」
その言葉に対して、諸干は思わず納得してしまう。
「君はゲームが好きだと言った。ならば、ゲームの会社を作る時には全てを愛するんだ。
社員と共に妥協無く、全てを生かして、世界に愛されるゲームを目指すのだ」
「なんだか、最初はとんでもない人に取り憑かれたと思ったけど、わりとまともな事を言っている」
そう、呟いた瞬間だった。
「下の下ですね」
「何?」
檀正宗の言葉を否定するように響いた声。
同時に振り向くと、そこには先程、倒したはずのローズマルガムに変身していた男がいた。
だけど。
「どういう事、確か、あの人は既にS.O.N.G.が」
「あなた方が言っているのは、誰かは分かりませんが、どうやら、その男と共鳴して、私はここに呼ばれたようですね」
そんな諸干の疑問に答えるように、呟く。
「貴様、今、なんと言った」
「下の下の考えだと言ったのです。あなたのように全てを愛するなど不可能だと言ったのです」
「なんだと?」
そうしていると、その男が手にしたのは、また別のベルト。
「まさか、貴様は」
「さて、何も名乗らないのは失礼ですね、では、名乗るとしましょう、変身」『COMPLETE』
同時に、その音声が鳴り響く。
白い光に包まれた、その姿は、仮面ライダー。
「SMARTBRAIN社長、村上峡児であり、仮面ライダーデルタです」
「仮面ライダーか、だが、お前程度に邪魔をされるつもりはない」『仮面ライダークロニクル』
すると、檀正宗は、そのまま前に出て、再び仮面ライダークロノスへと変身する。
「私の愛の講義を、邪魔させる訳にはいかない」
「さて、それはどうでしょうね」
クロノスを前にしても、村上は、まるで余裕の態度を崩さなかった。