「・・・」
キャロルからの言葉を聞き、俺はどうすれば良いのか、迷っている。
ノイズという災害を、人々から確かに助けられる力。
それを欲する人間は、きっと多くいるだろう。
だけど。
「それを得たとして、俺は何をしたいんだ」
力を得たとしても、それを背負いきれるかどうか、分からない。
そんな時、ふと、何かが地面を転がり、足下まで来る。
何か落ちているのか、気になり、俺は見てみる。
「これはコイン?」
そこにあったのは一枚のコイン。
まるで見た事のない、そのコインに対して、俺は思わず首を傾げた。
「よぅ、拾ってくれたか」
「あなたは?」
悩んでいる俺に対して、一人の男性がこちらに近づく。
この周辺では、まるで見た事のない男性であり、俺は思わず首を傾げる。
「そのコインの持ち主だ。
悪いが、返してくれないか」
「えっえぇ、勿論」
「ありがとうな」
俺はそのまま、コインを受け取ると共に、不敵な笑みを浮かべる。
「それにしても、なるほどな」
「えっと」
俺の顔を見て、何やら興味深そうに見つめる。
「俺の顔に、何か?」
「何、気にするな。それよりも、何か悩みでもあるのか?」
「えっ、いや、まぁあるにはありますが」
いきなりの質問に対して、俺はどう答えるべきか少し迷った。
正直に言えば、目の前にいる人が怪しさしかない。
「別に詐欺をする訳じゃないよ。
ただ、コインを拾ってくれただけのお礼だよ」
「・・・だったら、少しだけ」
その言葉と共に少し納得しながらも、俺はそのままゆっくりと話す事にした。
「もしも、もしも、人間を越えた力を手に入れたら、どう思いますか」
「ほぅ、いきなりぶっ飛んだ話だな」
「悩みの、例え話ですから。
それで、その力を手に入れば、多くの人を助けられるかもしれない。だけど、そのせいで、これまで通りの生活は送れない。
もしかしたら、周りの人を傷つけるかもしれない」
ノイズと戦う力を得ると言う事は、それだけでも大きい。
もしかしたら、他の国が、俺を狙って、何かする可能性がある。
だからこそ、それが怖い。
「どちらを選んだとしても、おそらくは後悔するだろうな」
「えっ」
「力を得た場合、周りの人々が傷つく。力を得なかった場合、知らない誰かが傷つく。どちらにしても、誰かが傷つく事には変わりない」
「それは」
「だったら、戦い抜くしかない」
「戦い抜くって」
その言葉に、俺は動揺を隠せなかった。
「かつて、お前のように力を得た若者達がいた。
彼らは、時には悩み、時には間違いながらも、戦い抜いた。
全ての人々を守れた訳じゃない。大切な人を失った事もある。
それでも、最後まで戦い続けた事で、願いは叶う事が出来た」
「願い」
「お前の願いに、それらはあるのか」
その言葉に対して、俺はどう答えるべきか悩む。
願い。
俺に、願いがあるのか、どうか、分からない。
けど、もしも、願いがあるとしたら。
「俺は、この平穏を守りたい。だからこそ、力を使って、守りたい」
「その言葉をお前自身は信じるか?」
「・・・信じたい」
それと共に、俺の耳元に聞こえて来たのは、ノイズの警報。
「っ」
既に、近くまで来ている。
それを知った俺は、すぐに走り出した。
「さてっと、ここまで見たからな、初回サービスで、手伝うか」
そう言った男の手に狐のマークの小さな何かがあった。