「ジェルマン」
前回、訃堂の身体を乗っ取っていた存在。
その存在の事に対して、俺はどこか記憶で引っかかっていた。
奏さんの身体を乗っ取っていた人物の正体は、未だに覚えている。
だけど、ジェルマンと名乗る存在に関して、どこか記憶が曖昧だ。
「未だに、前世の記憶は全て思い出した訳じゃないからな」
そう、俺はガッチャードライバーを触りながら、呟く。
そんな考えをしていた時にだった。
「一ノ瀬、良いか?」
「んっ、ファイクか、どうかしたのか?」
俺がそう考えていた時だった。
ファイクが突然、俺を訪ねてきた。
普段はマリアと共に行動している彼が1人で来るのは珍しい。
そう首を傾げながらも、こちらに尋ねてきた。
「あぁ、少し相談があってな」
「相談?」
疑問に思い、俺は首を傾げる。
だが、その要件はなんとか理解出来た。
「セレナさんの身体を乗っ取った奴の事についてか?」
「あぁ、正直に言えば、誰なのか、俺には分からない。けど、間違いなく戦う事になると思う」
「まぁ、あり得る話だからな」
実際に奴らはそれを狙っている。
「その時に、マリアは「戦えないだろうな」やはり、そう思うのか」
「当たり前だ、実際に、俺は見たからな。
翼さんの時もそうだった。
けど、何よりも俺がその時で最も思い出したのは、この世界では今はどうしているのか分からない錆丸先輩の事だ。
針馬汐里の1件を利用され、錆丸先輩は無理矢理ドレッドに変身させられた。
思えば、あれがドレッドとの因縁の始まりでもあった。
ドレッドに変身した錆丸先輩は、その意思とは無関係に戦わされた。
その時の光景は、今、思い出しても。
「・・・だからこそ、マリアと出会う前に、俺が」
「あら、私に用ですか?」
「っ」
聞こえた声。
聞き覚えのない声に対して、俺は疑問だった。
だが、ファイクは違った。
「まさか、お前の方から出てくるとはな、セレナの皮を被った奴が」
「あら、そんな酷い事を言わなくても良いんじゃないですか、ファイクさん」
そう、セレナだと思われる人物は笑みを浮かべながら言う。
それと同時に、その身体が変わる。
一瞬の疑問。
それと共に姿が変わったが、それは見覚えがあった。
「あれは」
「黒いアガートラームっ」
それは、マリアさんが身に纏っていたアガートラームとはどこか違った。
漆黒に染まりながらも、まるで禍々しい花を思わせるような。
そんなアガートラームに対して、構えていると。
「セレナをっマリアをどこまで侮辱するんだっお前はっ」
ファイクは、その言葉と共に、既にケミカルに変身した。
同時に、その手にガッチャートルネードを真っ直ぐと振り下ろす。
対して奴は。
「ふふっ、侮辱だなんて、失礼ですね」
まるで、それを見えたように、攻撃を避けた。
「今のはっ」
疑問に思いながらも、ケミカルの攻撃は次々と外れていく。
動作にまるで無駄のない動き。
「ぐっ」
「ふふっ、さて、次は」
そう、セレナはその手から放たれた赤い稲妻。
それが、ファイクの前で、赤い華のような爆発を起こす。
「がぁ!」
ケミカルは、その攻撃を受けながら、後ろに下がる。
ダメージは大きいが、まだ戦える様子だ。
それにしても。
「まさか、だとしたら、試す価値はある」
俺はすぐにガッチャードライバーを取りだし、2枚のケミーカード、そしてガッチャーイグナイターを装填し、走り出す。
「変身!」『ガッチャーンコ!アニバーサリータイム!ファイヤー!』
その音声と共に、俺はその両手に、ディケイドが使うライドブッカーを、もう片方にはサイキョーギレードを手に、セレナの前に立つ。
「来ましたが、だが!」
それと共に、セレナは攻撃を仕掛ける。
その手に持つ剣が、俺の心臓に向かって、突く。
そのまま、剣は、俺の心臓を貫いた。
けど。
「それは、もう見えた」「なに?」
俺は心臓を貫こうとした剣をサイキョーギレードで弾く。
それと共に、ライドブッカーの銃口を、セレナに向けて、引き金を引く。
放たれたその攻撃は、確かにセレナへと向かって、当たり火花を散らす。
はずだった。
「けど、残念ね」「やはり」
だが、その攻撃を、セレナはアガートラームの装甲の一部をパージし、防いだ。
まるで、意思を持つように。
その攻防と共に、互いに離れた。
「一ノ瀬、今のは」
「かなり厄介な敵だと分かる」
「それって、アガートラームの事か?」
「違う、あいつは未来を見ている」
「なっ」
俺はそうしながらも、構える。
「あら、その言葉からして、あなたのそれもまた未来を見えるという事ですの?」
「さぁ、どうだろうな」
ケミカルの攻防があまりにも一方的過ぎた。
まるで、先読みをしたような攻防を見て、俺はその違和感があった。
だからこそ、未来を読む事が出来るジオウⅡの力を使う為に、アニバーサリータイムへと変わった。
だけど。
「これじゃ、決着もつけられないか」
「あぁ」
互いに、互いの攻撃を打ち消し合う。
それも、向こうはまだ本気ではない。
「ふふっ、けど、良いわ、今日はここまでで」
「何を言っているの」
「えぇ、だって、私の目的はこれを見せる事だから」
「えっ?」
そう呟いた先にいたのは、マリアさんだった。
「セレナっ」
「マリアさんっ、奴は」
「えぇ、分かっているわ、セレナじゃないっ分かっているのだけど」
そう、マリアさんは、震えていた。
それは翼さんの時と同じ。
だけど、何か嫌な予感がする。
すると、セレナの、その手から黒い煙を出した。
「さぁ、あなたの悪意を見せて頂戴」
「っ」
その煙は、そのまま、マリアさんの身体を包み込む。
「マリア!」
すぐにマリアさんの元に駆けつけるファイク。
「はぁ!」
それと共にマリアさんはなんとかアガートラームを身に纏い、振り払う。
「大丈夫か!」「えぇ、けど今のは一体」
そう疑問に思っている時だった。
俺はその黒い煙の中にあるケミーを見た。
「あれは、ハオーディン?」「まさか!」
それと共にその煙は、そのまま錬成されたのは、マルガムだろう。
だが、これまでのマルガムとは違ったのはマルガムを思わせるのが、その顔の包帯だけだった。
しかし、その身体は違った。
「黒いっガングニールの」「私っ」
それと共に、黒いマリアはそのままセレナの隣に立つ。
「ふふっ、これで姉妹揃ったわね」
そう、邪悪な笑みを浮かべたセレナが、無表情のマリアが並び立った。