戦いは、未だにどのような結末になるのか分からない。
未だに、その姿を現さないフィーネとアダムの身体を使っている存在。
奴らの正体もまだ、分からない状況だ。
いつ、敵が襲い掛かっているか分からない状況ではあった。
「……なぁ、一ノ瀬?」
そんな状況だった。
帰り道の最中だった。
クリスが、話しかけてきた。
「んっ、クリス、どうしたんだ?」
俺は答えた。
しかし返事がない。
なんだ? と思って振り返ると、顔を伏せていた。
その表情は暗くてよく見えない。
だからなんなのかと思った。
だから問い質すように尋ねた。
そしたら、急に顔を上げてきたからびっくりする。
それでようやく見えたのだが、なぜか泣きそうな顔になってやがったのだ。
は? と思いつつ、そのまま見返すこと数秒程。
やがてこちらの視線に耐えられなくなったかのように俯いてしまった。
いったい何があったっていうんだコイツ? さっきまで普通だったはずなのに。
なんか変なことでもあっただろうかと考えたものの、特に思い当たるフシはなかった。
ただ、クリスの顔には明らかに何かを決意したように。
「……ちょっと、話があるけど、良いか?」
「えっ、別に良いけど」
唐突な申し出に戸惑いながら答えると。
「だったら、一緒に行きたい場所があるんだ」
「行きたい場所?」
「……あの公園に」
「公園って、あそこか?」
それは、俺達が初めて出会った場所。
そこに一体、何の用なのか。
それを問う前にクリスは手を引いた。
「駄目か?」
「別に良いよ、それにしてもクリスが珍しいな、こんな事を聞くなんて。いつもなら『何処でも構わねぇよ』とか言いそうだし」
それが普通のはずだ。
こっちだってわざわざ聞いたりしない。
だが何故かその時は聞かずにはいられなかったのだ。
まるで自分の中で決意を固めるかの様でもあって──―
「……お前とゆっくりと話せるのは、もしかしたら今日で最後かもしれないから」
「そうなのか?」
その言葉に対して、俺は思わず首を傾げる。
「この戦いが終わったら、私は、その外国の学校に行くつもりなんだ」
「そうなのか」
それは、初耳だった。
「だから、この戦いが終わったら、すぐに卒業になっちまって、お前と会うのも、もう殆どなくなると思うんだよ」
確かに、それもまた一つの選択肢だとは思った。
「けど、それが一体」
「……それは、公園で話す」
「分かった」
公園へと到着した。
すると、そこは何時もよりも静かな感じがした。
まるで人気がなく、物音一つしないような。
静寂に支配されていたようなそんな感覚。
しかしクリスは気にせず進んでいく。
それにつられて俺も進む。
そして辿り着いたのは、あの時の同じ場所。
ベンチに座る。
俺もまた、クリスの隣へと座る。
空を見上げると、満点の星空が広がっている。
それを見ていたら、この景色を決して忘れない様にと思った。
「なぁ」
ぽつりと呟くように話しかけてきた。
「なんだ?」
だから俺もまた答えた。
ただ、なんだか雰囲気がおかしかった。
やけに静かだし、辺りは静まり返っているし。
まるで時間が止まっているかのように思えた。
「……お前はさ、私の事、どう思っているんだ?」
そんな問いかけをしてきた。
それはどういう意味での問いなのだろうか。
ただ、その目は真剣そのもので。
冗談で聞いている訳ではないことは分かった。
だから俺も真剣に答えることにした。
「そうだな……俺は、一緒にいて楽しいと思っているよ」
それは嘘偽りのない本音だった。
クリスの事は嫌いではない。
むしろ好きだと思う。
だからこそ、こうして一緒にいて楽しいと感じているのだから。
「……そっか」
それを聞いて、クリスは少しだけ嬉しそうな顔をしたように見えた。
「私もだ……お前と一緒にいて、とても楽しかった」
「そっか、それは良かった」
「ああ、だから……」
そこで言葉を詰まらせる。
何か言いたげな様子だったが、やがて意を決したかのように口を開く。
「なぁ……もし私が、お前の事を好きだって言ったらどうする?」
「え?」
一瞬、何を言っているのか理解できなかった。
いや、言葉の意味自体は分かるのだが、それがどうして自分に向けられた言葉になるのかが分からなかったのだ。
「……だから、その何度も言わせるなよ、私は、お前の事が好きなんだ。その、あの時からずっと」
そのまま、顔を真っ赤にしながら告白してくる。
その目は真剣そのもので、嘘や冗談ではない事が分かる。
けど。
「……えっと、その」
「悪いな、いきなりこんな話をして、けど、お前だって、分かるだろ。これからの戦いで、何が起きるのか分からないから」
クリスの言いたい事は、理解できた。
これから先、何が起こるかなんて分からない。
もしかしたら、俺達の誰かが消えるかもしれない。
そんな不安がある中で、この思いを告げるのは勇気がいる事だってのは分かる。
だからこそ。
「俺は」
そう言おうとした時だった。
「お前達か」
「っ」「こんな時に」
聞こえた声の先。
そこに立っていたのは、フィーネの姿が見えた。
「てめぇ、一体、なんの目的で」
「お前達には興味はない。私が興味があるのは、貴様の力だ」
そう、俺の方に指を指す。
「俺にだと?」
「あぁ、貴様を倒し、奴を倒す!」
それと同時に、その姿も変わる。
紫色のローブに身を包んだ魔法使いのような姿。
そのマルガムには覚えがあった。
「まさか、クロスウィザード、レベル10の力を」
それと共に、俺達は、構える。
「一ノ瀬、答えは」
「あぁ、今は」
それと共に俺達も構える。
「「こいつをなんとかする!!」」