「ふむ、人間の食事、久し振りに食べたがなかなかの美味だな」
「それは、どうも」
今は誰もいない荒野において、俺は眼前にいるギギストを睨みながら言う。
奴は、警戒心などない。
現に人質であったはずのエルフナインをあっさりと解放した。
その理由も。
「理解出来るぞ、なぜ人質であるはずのホムンクルスを解放したのか。簡単な話だ。どこにいようと逃げよう、関係ない。それだけの話」
ギギストは、そう言いながら、まるで冷蔵庫から軽く食べ物を取るような動作で、空間操作を行い、ワインを飲み始めた。
キャロルの表情を見るだけでも、どれだけヤバいのか理解出来る。
「それで、なぜ、手を組むと言い出した」
「単純な話、このままでは、双方にとってグリオンという存在は邪魔でしかないからだ」
「何?」
その言葉に対して、俺は思わず、首を傾げる。
「奴は既に計画を進めている、この世界を奴の言う黄金郷に生まれ変わらせる為の計画にな」
「黄金郷って、まさか、前の世界のような」
「さぁ、それは我も知らないがな」
ギギストの言葉が本当ならば、確かにヤバい。
けど、問題なのは、どのような方法で、生まれ変わらせるつもりなんだ。
「理解するぞ、一ノ瀬悠仁。この世界には、以前の世界のような暗黒の扉はこの世界にはない。
だが、この世界にはこの世界だからこそ出来る錬金術があるのは、知っているだろう」
「・・・失われた錬金術という訳か」
それと共にキャロルは腕を組みながら、話を聞く。
「そうだ、貴様らの使う錬金術。その本質は分解と解析、そして再構成の三柱によって成り立ち、科学と魔術が分化する以前のロストテクノロジーであり、魔法とも総称される」
「こちらの錬金術の事は詳しいようだな」
「この身体の持ち主から知識はある程度はな」
そう、ギギストは、アダムの顔で笑みを浮かべながら言う。
「対して、我らの世界での錬金術。その基本理念とし、擬似的な生命エネルギーを与えることで質量の交換だけでなく物質を宙へと浮かばせたり、異なる性質へと変換させる。
疑似生命を与えられた物体は錬金術師の意のままに操れるようになり、自由に動かせたり形態変化や重量の変動などの錬成が可能となる」
「なっ」
「ふふっ、理解出来るぞ、キャロル・マーディン。貴様の知らない錬金術だからな、最も、そこにいる一ノ瀬悠仁は既に知っているがな」
「ちっ、そうだった。よく考えれば、当たり前だったのに」
ギギストの言葉に対して、キャロルは頭を抱える。
「グリオンは、以前の世界では、錬金術師の中でも頂点に立つ者である。同時にこの世界での錬金術も既に学んでいる。
そして、地球以外にもな」
「地球以外にもだと」
それと共に、キャロルは前に出る。
「おっと、これ以上は手を組んだ後の話だ、情報を与え過ぎれば、用済みとなって消す。人間とはそういう生き物だからな」
ギギストは、未だに余裕の態度を崩さない。
「そこまでの知識があって、なぜ俺達に?」
「グリオンを倒す可能性があるとしたら、グリオンを追い詰める事が出来るケミーの使い手であるガッチャード、そしてこの世界でも最高峰であるキャロルという訳だ」
そこまで言いながら、ギギストはこちらを賞賛しているようだが。
「・・・煽てるつもりのようだが、それで俺達が協力するとでも?」
「あぁ、勿論、何よりも、我は全ての人間の理解者だからな」