未だに謎の多いエンキ。
だが、この状態において、この場にいる誰よりもあれを知っているのだろう。
「まずは、あれに関してだが、あえて名を言うとすれば、ユグドラシルだ」
「ユグドラシル」
これまで、謎の多かった建設物の名前。
それを知る事が出来ただけでも、一歩前進だろう。
だが。
「ユグドラシルというと」
「世界樹という意味で有名なあれか?」
エンキが、あの巨大な物体の事をユグドラシルという事を。
「そうだ、そして、その正体は惑星環境改造装置だ」
「惑星環境改造?」
その名前を聞いている限りでも、かなりとんでもない事は分かる。
そんな疑問を余所に、エンキの説明は続く。
「アヌンナキ達は地球を広大な実験施設に見立て、生命を創造し、進化を促し、改造を施し、その必要があれば廃棄してきた。
種としての行き詰まりを突きつけられていたアヌンナキは、閉塞していた未来の打開を試みており、生命の行きつく果てを解明するために建造されたのがユグドラシルシステムだ」
「つまりは、地球を錬金する為の道具という事か」
エンキの話が本当ならば、確かにこの星を黄金に変える事は簡単だ。
「それを、グリオンは利用しているのか、しかし、そんな事を行える程のエネルギーは、どこから」
それと同時だった。
キャロルは、何かに気づいた。
「復活した五人か」
「まさか」
「そうだ、奴らはお前達のエネルギーをその身で受ける事で、起動に必要なエネルギーを溜め込んだ」
「グリオンの奴、まさか、そんな事を」
これまでの戦いも、全てがグリオンの手の平の上にいた事に気づき、俺達は、絶句した。
「倒されても、奴にとっては起動する為のエネルギーを溜められる。反対に奴らが一ノ瀬達を倒したとしても、邪魔者がいなくなる。
奴にとっては、まさしく都合の良い傀儡だった訳か」
「ちっ、だったら、これからどうすれば良いんだ」
クリスは、その壁を叩く。
確かに、この状況では。
「・・・聞きたいけど、そのユグドラシルを使えば、反対に元に戻す事は出来るのか?」
俺は、ふと疑問に思い、聞く。
それに対して、エンキは。
「可能性としてはある。だが、それはかなり困難だぞ」
その言葉を聞けただけでも、十分だ。
「もしかして」
「ユグドラシルを、直接奪い取る!」
「いや、だとしても、どうやって使うんだよ!」
「それは、まぁ、皆で頑張って、考えないか」
「お前なぁ」
クリスは思わず苦笑いをする。
だけど。
「だが、この状況を打開する為には、良い手だろう」
「弦十郎さん」
「何よりも、何もせずにいるよりは、マシかもしれない」
そう、S.O.N.G.にいた面々も頷いた。
「何よりも地球一つだったら、なんとか出来るかもしれない。なんだって、世界を1度、生まれ変わらせたんだからな」
「・・・なるほど、人間はここまで変われたのか、ならば」
すると、エンキが向けたのは、日本に生えたユグドラシル。
「そこに向かえ、そこが中心となっているシステムだ」
その言葉と共に、エンキは、アガートアームへと戻った。
それは、同時に決戦への合図でもあった。