昼下がりの気分の良い時間。5時間目の社会の授業は眠りへと誘う子守唄のようにしか聞こえなくなっていた。
「そして1945年、8月15日に日本は無条件降伏し…」
ペンを持つ手は微睡みにより今にも机の上に叩き伏せられそうだ。
「…っくぁ...」
何時になったらこの授業は終わりを告げるのか、と他の生徒たちも眠たげにしている。
「………?」
ふと、窓の外にクジラのような…いや、違うな。巨大な白い“カタマリ”が蠢いていた。
『緊急放送!!市内に神徒が出現!直ぐに避難して下さい!訓練ではありません!!』
あぁ、こりゃ夜までシェルターに引き籠もらないとな。
◆◇◆◇
1960年、終戦から立ち直ろうとしていた日本に、その化物は顕れた。
その白い巨体に神秘性を感じさせる躰の造り、それに見惚れた誰かが言ったのだ。
「まるで神の使いだ…」と。
そうして人々はそれを
「そしてそこに新たな救世主が…」
「んな事ある訳ねえし、普通に兵器で倒せるだろ。」
「全く夢が無いね、
「あ゛ぁ〜煩いな。よく聞け、
「しょうがないな〜。二釘氏もそうズバッと言う性格じゃなければモテモテであったのにな〜」
そう言いながら水を渡してくる田中。ほんとウザったいなこいつ…まあ、俺の事を友達だと最初に言ってくれたこいつだから今でも付き合ってるのだが…
さて、前置きが長くなってしまった。おっと、別に文が突然抜け落ちたとか、そういうんじゃないからね?
この世界は何ら変わらない普通の世界、いや、君ら目線からみれば、ちょっとデカめの弱いバケモノがよく現れるイレギュラーな世界。主人公は勿論この二人な訳なんだが…少し、今神様の世界で戦争が起こってしまってね?
しかし、3000年前に結んだ『人間放棄条約』のお陰で絶大な戦力となり得る
そこで、このままでは戦いが終わらないと危機感を示した双方の陣営の神々は条約を破棄し、戦乙女の開発を進めた訳だ。そして、最近地球の上を浮遊している『神徒』やらと人間を混ぜることによって、戦乙女を生み出せることを発見したのだ。
さて、此処までの話を理解できたものは実際にこの戦いに参加している神か、よっぽどの天才だろう。
まあ簡単に纏めると、神自体に特別な力は無くその圧倒的な技術力で星々を管理していたけど、職務怠慢でいくつかの星の管理を放棄して、いざクーデターが起こって戦力が必要になった時に都合よく人類を利用しようとしてる…ってことだ。
次に戦乙女の話をしよう。
戦乙女…圧倒的な戦力をもって星々を管理したり制圧したりする
そんな戦乙女だが、なぜ『人間放棄条約』の際に居なくなっったのかというと…まあ自分達でその力を制御できないから無い方が良いよねって事だ。別に核みたいに放射線を撒き散らすわけでも無いので、元から組み込んであった“終了プログラム”をパパッと起動して全部居なくなった訳だ。
因みに当時の戦乙女の半分ぐらいはおっさんだった。名前に乙女が付いているのは単に試作一号が少女だったからだ。ポセイドンとかトールとかおっさんだろ?
さて、そんなこんなで今から世界で選ばれた数百人が戦乙女化する。成功確率は90%。まあ数人が失敗して異形化する程度だろう。
話を聞いてくれて感謝だ。以上、神界地球管理部開発課戦乙女部門担当、キセノンでした。
◆◇◆◇
あれから一時間程。無事神徒は駆除され、俺たちは帰路についていた。
最近世界的に神徒の出現数が増えてきているらしい。特に影響は無いが何かの前触れかもしれない、という話をさっき聞いた。
ふと時計を見ると、針はは9時を回りかけていた。思ったよりもシェルターにいた時間が長かったみたいだ。まだ7時半ぐらいだと思ったのだが。
「二釘氏、今度アニメイトに行きたいんだが…一緒に行かぬか?」
「それはご丁重にお断りしておくよ。どうせまた1人だと変な視線で見られそうで〜とか、そんな感じだろ?大丈夫だ。今の時代お前を気にする人はそうそう居ない。」
「励ましてるのか貶めているのかどっちなのか分からぬなぁ。それはそうとして、本当についていってくれないか?二釘氏。やっぱり1人で行動するのは気が引けるのだよ。」
「可愛くもない顔面で言われても嬉しくないな。」
言っておくが田中は典型的な“太りっ子”だ。眼鏡を掛けているのも相まって完全に漫画でよく描かれる陰キャのそれになっている。痩せろ、とは常々言っているのだが中々本人はその気にならないらしい。何でも夕飯の時に毎回出てくる唐揚げがやめられないらしい。毎日唐揚げが出てくる家庭ってどんな家庭だよ。
「いいか?痩せろ。そしたら俺もついていってやる。何もお前と一緒にアニメイトに行くのが嫌なわけじゃない。余りにもお前が四六時中俺についているのがいけないんだ。」
そうだ。こいつは中一の時に出会ってから休日を除いてずっと俺についている。この5年間常にこいつは視界の何処かにいる。もう呪いか何かじゃないか?言っておくが俺は幾度となく田中にもう一人ぐらい友達を作れ、と言っているのだ。なのにこいつといったら話しかける前に視線があった時点でこっちに戻って来るし。視線合わせたんだからバトルしてこいよ。
オマケにずっとこいつが居るせいで俺にBL疑惑まで出て来た。嫌だ。俺は可愛い女の子と付き合いたいんだ…ッ!!
「二釘氏、どうしてそんなに顔を険しくしているんだ?」
オメェのせいだよ。この野郎。
「取り敢えず、今回ばかりは1人で行ってもらうぞ。休日まで視界の中にお前が居たら目が疲れる。」
「そ、そうか………分かった。二釘氏、今回は1人でチャレンジしてみるよ。」
「おお、それは良いことだ。成功したらジュース二本奢ってやる。」
どうやら気を変えてくれたようだ。このままゴネたまんまじゃついて行ってしまう所だった。
「それにしても…二釘氏、我の家に中々着かないのだが…」
「…?ああ、確かに。いつもなら10分ぐらいで着くのにな。20分ぐらい経ってる。まさか二人して迷子になったとかか?」
「いや、だけどここはいつも通ってる路地だよ。ここをまっすぐ進めば着くはずだ。」
一瞬、肝がゾッと冷えた。ここは4年もの間ずっと通っている道の筈だ。まさか道を間違えた?そんな事も起こりうる物なのか…?田中と一緒に前に進む。
「…あれ?さっきと同じ景色だよ。地区の標識も同じだ。」
「…まじかよ。」
駄目だ。俺こういうホラー系無理なんだよ。幽霊とか考えただけで足がガクガクする。
「……?」
気がつくと回りに霧が立ち込めていた。さっきまで見えていた家の二階の窓が見えなくなっている。
「田中、これやばいかも。」
田中の方を向くと、何やら恐怖した顔でこちらを見ていた。
「そ、そうだね、二釘氏…それで、何か後ろに渦巻いてない?霧が巻き込まれていっているような気がするんだけど…」
「………ヱ?」
恐る恐る視線を路地の奥の方に向ける。すると奥に何やら渦巻いている物を見つけた。それは霧を巻き込んでおり、少しずつだが形を錬成している。
「に、逃げげげげげげ」
「おおお落ち着け!田中!まだ襲って来ると確定した訳じゃ…」
首筋にゾッとした感覚がする。渦が段々とこちらに近づいている。形を形成させたそれは、ゆっくりとこちらに近づいていた。
「な……い…」
腰が竦む。ついに恐怖耐性が底をついた。えも言われぬ恐怖に躰が金縛りにあったように動かなくなる。
しかし、渦の前に田中が立ち塞がる。
「わわわわ我に任して…此処は逃げげげげ」
「足が…動かない。」
「じゃじゃじゃじゃあ、我が護る!こここ怖いけど…」
その間にも渦はこちらに近づいてくる。止まる気配は一向に無い。
「あああああ!来てるって!早く逃げろよ!」
「だっっだだだ駄目だよ!我は唯一の友達も守れないようじゃ駄目なんだ!」
あれ、暗い景色の筈なのに田中から後光が見える。何でだ?
「だから、我に任せて。」
田中はバックの中から水筒を取り出した。奇妙なファイティングポーズを取り、じりじりと渦に近づいていく。
「我の質量は世界一ィィィィィィ!」
大きな構えで水筒を振り下ろし渦に殴りかかった。
一秒。水筒が呆気なく渦に飲み込まれる。
二秒。頭から上半身までが飲み込まれる。
三秒。丸呑み。
余りにも力が及ばなかった。しかし、謎の渦は動きを止めていた。
「た、田中ぁ!」
勿論返事はない。ただ、その言葉を聞き入れたかのように渦が霧を吸収しながら発光し始めた。
光はどんどんと大きくなっていく。それに合わせて回りの景色も晴れていった。
ついに光の大きさは直視できないほどになり、俺を包んで―――
◆◇◆◇
―――気づけば俺は気絶していたようだ。
「んぬぅ…」
涼しい夜風に当てられて目が覚める。ふと腕時計を見てみると、時刻は二時を示していた。
ああ、きっとさっきの事は夢だったんだな。何かの弾みで気絶して、そのまま寝てしまっただけなんだ。
まずは状況確認をしなければならないな。と思い、暗闇の中立ち上がろうとする。
ふと、手をついた場所に柔らかい感触をがあった。そこには闇の中でも容易に分かるその控えめな双丘。
「………。」
多分俺はこれから人生の終焉を迎えるのだろう。
なら、もうふた揉みぐらして良いんじゃないか?
「……。」
「んっ……」
やべぇ、お疲れ様でした。俺の人生に悔いは無い。寧ろ田中から開放されたと喜ぶべきなんだ。
眼の前で衣擦れの音がする。きっと起き上がったんだろう。
「…ん?我は一体何を…床に寝てたのか?それにしてはえらいゴツゴツした床であるな…」
あれ、なんか口調が田中に似てるな。
「む、アスファルトじゃないかこれ。何で我はこんな所で寝てたんだ?」
きっと幻聴だろう。
「やけに服がだぼだぼだしな…本当に何があったんだ?……スマホは確かここのポケットに…ああ、あった。」
俺はこのやけに冷静な多分美少女に通報されるのか。本望かもしれない。
しかし、そんな馬鹿みたいな考えは強烈な光によって遮られた。
「うぉっ…」
突然顔が眩しい光に晒された事で、思わずびっくりしてしまった。
「おお、二釘氏ではないか。我、なんか変な場所で寝てるし、此処前後の記憶が無いし、やけに体が軽いし、服がダボダボで違和感のオンパレードなんだよ。…で、二釘氏は何か知らない?」
認めてはいけない。そのどうあがいても美少女なその顔の裏に田中が隠れているなんて考えたくもない。
俺は混乱した。そして苦し紛れに一言放ったのだ。
「すごいおっぱいでした。」
「え、我の胸毛生えてるやつ揉んだの?」
◆◇◆◇
二釘が揉みしだく2分前
チキショウ、90%って言ったじゃねぇかよ研究部の野郎ども。確かに日本は90%の確率で成功してるがな。
アメリカとロシアと中国でモンスターパーティーが起きとんじゃ。
今回はこの四カ国だけだったから良かったものの、一気に数千人とか戦乙女化しようとしてたら大惨事世界大戦になってたわボケ。
日本での化物の総数は1、ダントツで少ないな。
アメリカは200で?中国は126。ロシアは48。
あーあ、あんなバケモン現代兵器じゃ倒すの難しいだろ…
………そうだ。神界に来る前に成功した戦乙女に化物倒して貰えばいいじゃん。僕ってもしかして天才?
まあまずは成功した奴らの姿でも見てみるか。
さて、最初にこの僕がご尊顔をみる戦乙女は…?
「田中?なんかありふれた名前だな。まあ良い。一体どんな奴なんだろうか…」
今日も地球には不穏な風が吹いている。神様だって人間だって所詮は生き物だ。予想しない出来事の連鎖は想定外だ。
「だからって揉むなよ…」
僕は服を吹き出したコーヒーで染めてしまった。死ね。
シナリオシリーズとか言ってるけど要は頭の中の妄想を書き連ねてるだけです。