『先日、アメリカ、中国、ロシアで発生した、通称【モンスターパーティー】。世界中に突如出現した化物によって既にアメリカやと中国が壊滅的な被害を受けています。』
あれから3日。どうやら世界では化物が急に出てきて、アメリカと中国、ロシアで猛威を振るっているらしい。ロシアはまだ数体しか確認されていないが、これからもまだ見つかるかもしれないらしい。
個体によって様々な能力を持つことが確認されている。電撃を使ったり水を放出したり…と個性を持っているらしい。
そして、つい昨日化物に応戦出来る者が現れたらしい。まだ姿は分からないらしいが、ムキムキの半裸のおっさんだったらしい。本来ならイケメンか美少女が倒しそうだが…現実とは厳しいものだ。
「で、お前はどうなんだ?」
視線は向かいのオタク(美少女にジョブチェンジ)に注がれる。
「いやどうって…我はこんな力持ってないよ…多分。」
「いや、さっきからずっと何もしてねぇじゃないか。」
「我はいま考えているんだよ。急にこんな姿になって自分が従来の自分かすら分からないんだ。少し待ってくれ。」
「そっか。そうだな、お前の中身が田中な訳無いよな。」
「そこは肯定する所じゃないか!?」
改めて見てみると体格から顔まで前の姿の面影が一切感じられない。唯一前と変わらない所と言えば、掛けてある眼鏡ぐらいだろう。
大きな瞳に灰色の虹彩。髪色は灰掛かった白色になっていた。体は前の3分の2ぐらいの大きさに縮んでしまっている。何より、その顔だ。美少女顔であるのは間違いがないが、日本人ともその他の国の人とも言いにくい顔をしている。
「そういや、渦に飲み込まれたときの記憶は無いのか?」
田中は思案顔をしばらくして、諦めたような顔をする。
「いや、水筒で殴りかかった所までは我は覚えているんだがな…その後がどうも覚えて居ないんだよ。なんか靄がかかった感じだな。」
「能力があるとしたら何かあの渦と関係したりしてるかもな。なんか踏ん張ってみるなりポーズをするなりして試してみろよ。ほら、ちょっと立て。」
「引っ張るなよ二釘氏。今の我はか弱い少女だぞ。」
「か弱いとか言ってる時点で駄目だな。中身が見え透けてるんだよ。」
ブカブカの服を揺らしながら面倒くさそうにベットから立ち上がる田中。
「取り敢えず、力込めてみたら大体どうにかなるから。ほれ、やってみろ。」
「大雑把過ぎるだろぉ…」
文句は言いながらも力を目を閉じて踏ん張るポーズをする田中。小動物みたいだ。
…ふと、回りの景色が“廻り始めた”。田中の胸らへんに渦が出来始めている。
あのときと同じ、謎の渦。何で出来ているのかも、どうして渦が浮いているのかも判らない。
「おい、大丈夫か?」
「二釘氏…なんか止めらんないんだが。」
「えっ。」
拙いじゃないか。こんな得体の知れない物どうやって制御するんだよ。しかし、そんな事を言っている間にも時間は過ぎていく。渦は大きさを増し、景色を段々と歪ませていっている。
「あ、あれだ!渦が収束するイメージ!ぐるぐるにするんだよ!」
顰め顔をさらに顰める田中。しかし、今のアドバイスで渦は静まり始めた。やはり俺は間違ってなかったのだ。やれと言った責任は別にして。
田中は疲れているようだった。息を切らして今にも倒れ込みそうだ。
「はぁ゛はぁ…頭痛ぃ……二釘氏、どうだった?」
「ああ、なんか渦ができたな。景色を巻き込んでた。」
「それだけ?」
「おん。」
実際渦が巻いているだけだったのだから表現のしようがない。何かもうちょっと派手なのだったら面白かったんだがなぁ。
「それだけかぁ。もうちょっとチートっぽいものを我期待してたんだけど。」
「それで人とか巻き込んだら面白そうだけどな。」
「そうだね。」
一瞬、俺たちではない声がした。
「おおおお俺の声じゃなななな」
「落ち着け二釘氏!部屋には誰も居な…」
田中は押し入れの方を向いて固まった。ぎこちなく腰を上げ、恐る恐る近づいていく。
襖を開けると、其処には…
「どうも、初めましてかな?僕は君達を導くために来た、所謂神様みたいな者だ。」
押し入れの中で胡座をかいている1人の男の姿があった。胡散臭いオーラがプンプンする。
「宗教の勧誘はお断りだ。第一声が『俺、神様なんだ。』って言う奴とは関わらない方が良いって古事記にも書いてあったぞ。」
「まさか…我の秘められし力が覚醒…!?」
「やめろ、乗るんじゃない。」
神様らしい人は押し入れから降りて、俺たちの方に近づいてくる。
「まあ本音を言うと今世界中で化物が発生しているだろ?あれは君のような力を持つ者を造った副産物のような物だ。簡単に言うとなり損ないだな。」
胡散臭いな。この男が放つオーラもそうだが、今こいつが話した内容を噛み砕くと要はあの化物は俺たちが造りました、と言っているような物じゃないか。もしそうならテロリストどころじゃない。本物の厄災だ。
「信じられないって顔だねぇ?」
「当たり前だろ。押し入れの中から出てきたのはびっくりしたが、いくら何でも考えが荒唐無稽過ぎる。何が目的だ?」
「そうだな…」
男は思案顔をする。田中と違ってこいつの顔は苛つくな。
「世界中に蔓延る化物共を君達が駆逐する…っていうのは前座で、本命は僕達が本来居る世界。即ち神の世界だね。そこで起こっている戦争を終結させる為の鍵になって貰わなくちゃならない。」
「……???」
田中はまるで意味がわからないという顔をしている。俺も意味が分からん。
「まあ、簡単に言うと僕と契約して戦争に参加してくれって事だ。半ば強制だけど。」
「魔法少女になるならまだしも、戦争に参加って頭可笑しいんじゃないか?」
男は面倒くさそうに頭を掻いた。よく見ると目の下に隈が出来ている。
「良いか?もうなりふり構って居られないんだ。両陣営が疲弊し、泥沼と化した戦いの終わりはまだ見えない。この前だって成功確率が90%とか奴らがほざいてたのにこの有様だ。分かるか?僕の苦労が!」
「「いや、分からんよ」」
「ノーッ!!」
田中が俺の影から男に言う。
「まず、0から100まで我らに説明したら良いんじゃないか?此処までの会話で理解できる要素が塵ほどしか無かったし。」
「確かに、まあ、そうだな。じゃあ細かく説明しよう。」
【三時間後…】
「…という訳だ。」
「なるほど…嫌なんだけど、我。」
「いや、そこをなんとか。」
「神様も人間だったんだな。安心しろ、終わらない戦争はないから。」
「頼むよ本当に……なあ。もし参戦してくれたら、何でもしてあげるから。」
田中は『何でもしてあげよう』という男の言葉に耳を動かした。
「なあ、何でもしてくれるとは…本当か?」
「本当だ!何でもしてあげよう!」
「二釘氏、この話、乗らないか?」
「え、マジ?」
「ああ、マジだよ。」
嘘だろ。基本何でも俺が居ないと何も出来ない筈なのに。
「なあ、名前を教えてくれないか?」
「僕の名前か?」
「そう。」
「僕の名前はキセノンだよ。」
「じゃあキセノン氏、この話に乗ろう。」
「おお!ありがとう!じゃあ、何をして欲しいんだい?無限の命以外なら基本何でもしてあげよう!」
「じゃあ…」
「二釘氏にも、能力をあげてくれないか?」
◆◇◆◇
【一ヶ月後】
俺は、田中を背負ったまま血溜まりの中をフラフラと歩いていた。
辺りにはさっきまで戦っていた戦乙女の肉片が散りばめられている。
ちと硝煙の匂いが立ち籠めている神界は、もはや機能を為していなかった。
「ああ…恐ろしい世界だ。」
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次回は日本に一体だけ残っている化物の掃討戦です。