飛鳥馬トキは先生と一緒の時間を過ごしたい   作:アラベスク@arabesuque_38

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トキ「やれやれ。先生は私の事が好きすぎるようですね」

「こんにちは、先生。本日もバニーの私が参りました。どうぞよろしくお願いします。ぴょんぴょん」

 

 今日も潜入用衣装に身を包んでシャーレへと足を運びます。すでにモモトークでのアポイントメントは取得済み。先生からも「トキのことを待っているよ」とお返事をいただいたので、足取りも軽やかなものでした。

 シャーレへの訪問も慣れたもので、こうして毎日のように足を運んでいます。

 先生からは「緩み過ぎじゃない!?」とのお言葉をいただきましたが、シャーレの有用性を説き、先生にご納得いただいてからは気兼ねなくシャーレで日々を過ごしています。

 ──ええ、決して「居心地がよいから」という理由だけではありません。

 

「やあ、トキ。いらっしゃい」

「先生をお待たせするまいと急いで参りました。迅速なご褒美を要求いたします」

 

 私がシャーレに到着すると、先生はご自分のデスクから立ち上がって私を出迎えてくれます。そこからの流れもスムーズなもので、迷いなく先生の胸に飛び込み、彼の胸板に頭を擦り付けました。

 背中に手を回して、身体をぎゅむぎゅむと彼に押し付けて、存分に私の身体を堪能していただきます。はいはい、と慣れた手付きで先生の大きな手が私の頭に置かれ、思わず「はふぅ」と口から嘆息が漏れてしまいました。

 アニマルセラピーです、と提案したこの行為もいつの間にか日々のルーティーンになっています。薄い素材のこの服からは感触がダイレクトに伝わりますので……私は先輩方ほど身体付きに自信はありませんが、こうして先生に満足いただけるなら──と毎日この身を捧げています。

 

「トキもずいぶんと気を許してくれて、なんだか嬉しいね」

 

 先生が私の髪を優しく梳きながら、そんなことを呟かれました。このために丁寧に手入れを施した私の髪はキューティクルも完璧で極上の手触りだと自負しています。そんな私の髪を愛おしそうに撫でる先生を見て、兼ねてから感じていた疑惑が確信へと変わりました。

 

 ──……ふむ、やはり間違いありませんね。

 先生はおそらく私のことが好きなのでしょう。

 

 以前も「バニー姿、よく似合ってる」とお褒めの言葉をいただきましたし、それを受けた私がこうして毎日のようにバニー姿で訪問するのを嬉しそうに出迎え、私とのスキンシップを楽しんでおられます。

 時折胸元や鼠径部、臀部へと感じる視線も、じっとりと情感の込められた熱視線。こうしてふにふにと押し付けている今も、感触を堪能されているのでしょう。

 

 ──まったく、困ったものですね。まぁ、私は完璧なエージェントですので。先生に求められる限り、完璧に応えてみせましょう。

 

***

 

「そろそろ仕事をしないとだから、一旦大丈夫かな?」

「はい。ありがとうございます、先生」

 

 ──ふむ、私としてはまだまだ満足していないのですが。これ以上は先生の獣欲も辛抱堪らん、といったところなのでしょうか。

 私としては一向に構わないのですが……いえ、日の高いうちから励むのは、先生の外聞を考えるとあまりよろしくないのでしょう。

 

「それでは先生、何かご用命の際はいつでもご指示を。それまでは、いつものように待機しております」

「うん、ゆっくりしてて」

 

 先生から離れた私は、いつものようにソファへと身を投げます。傍らに配置されたボックス──先生が私のためにと用意してくれたお菓子ボックスですが、「そろそろ補充しなければ」と思い中身を覗くと、新しいお菓子がすでに補充されていました。

 

 ──……ふぅー、やれやれ。まったく困ったものですね。こういうことはメイドの仕事の領分なのですが……先生はやはり私の事が好き過ぎるのではないでしょうか。先輩方になんと言い訳すればよいのやら。

 

 先生の選んでくださったポテチの袋をひとつ掴んで開けました。楕円形の薄い板を一枚摘まんで口へと運びます。

 ──ふむ、不思議なことにいつもよりも美味しい気がしますね。

 

***

 

「トキー、ご飯食べる?」

 

 それから執務室を掃除したり、先生の脱ぎ散らかされた衣服を回収したり。 ──ええ、衣服はしっかりと堪能させていただきましたとも。

 ひと仕事を終えて、そろそろお腹が空きましたね……と思っていた矢先に先生からお声を掛けられました。

 呼ばれた方へ顔を出すとなにやら美味しそうな匂いが。先生のお持ちになっているお皿からから漂ってくるようです。

 

「この間材料をたくさんもらっちゃってね。せっかくだから作ってみたんだ」

 

 そう言ってご馳走してくださった炒飯は、どこにでもあるようなもののはずなのに今まで食べたものよりも美味しく感じました。

 特別な調味料を使っているのかと思い、先生に尋ねても「そんなことないけどな」と心当たりがない様子。

 

 ──……うぅーむ、これは由々しき事態です。

 間違いありません、これは私に惚れていますね。

 愛情は最大の調味料、と言われておりますし……これは先生が私へと向ける愛情のなせる技なのでしょうか。

 

 先生からの愛を一欠片たりとも無駄にするまいと、いつも以上に食事をいただいてしまいました。お腹がぱんぱんです。機動力も……いつもの四割減、といったところでしょうか。

 ──なるほど、これが幸せ太りというやつですか。

 

***

 

「む、先生。布団を変えましたか? 昨日よりもフカフカなのですが」

 

 夜になったので、いつものようにベッドメイクをいたします。先生と私が睦み合う場所になる予定なのですから、いつ求められても問題ないように丁寧に整えます。

 ただ、今日は何故だか妙に布団がフカフカしていました。私は特に何もしていないのですが、どうしてなのでしょう。

 

「ああ、それね。昨日も一昨日も、トキが潜り込んできたでしょ? 私だけなら別に気にしないんだけど、さすがにペタッとしてきたから干しておいたんだ」

 

 フカフカで気持ちいいでしょ? と笑う先生に私は呆気に取られてしまいました。これはもう、確定ですね。エージェントたる者、油断は禁物なのですが……これにはさすがに意表を突かれました。

 なるほど、お互いに想いを懸けあうというのは、こういうこと……なのですね。

 

「──……先生」

「ん? どうしたの?」

「先生のお気持ち、ありがたく頂戴いたします」

「えっと……よくわからないけど、トキが喜んでくれたのなら私も嬉しいよ」

 

 ──……参りました。これは結婚秒読みですね。

 先輩方には申し訳ありませんが、大勝利です。ピースピース。

 

「先生。式には先輩方と……そうですね、アリスたちも呼びましょう」

「え? いきなり何の話?」

 

 先生はこの期に及んで空惚けているご様子。

 なるほど。確かに、ここにはヴェリタスの耳がありましたね。ヒマリ先輩は式には呼ばなくてよいかもしれません。

 彼女たちに私たちの睦み事を盗み聞きされるのも、些か恥ずかしいところですし、先生もそれは望まないということでしょう。

 

 ──ふむ。これは本格的に独占欲を感じます。少々照れてしまいますが、主の希望とあればメイドとしては従うだけですね。

 

「ええ。大丈夫です、先生。私は理解しておりますので」

 

 ええ、先生。準備はできています。いつでもその欲望を私にぶつけてください。

 いかなるご指示でも全力で対応いたします。心配は無用です。何故なら……──、

 

 ──……私は最高のエージェントで、完璧なメイドで、無敵のお嫁さんですから。

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