勝利に至る無限   作:暑干動暑

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「詐欺被害防止強化週間です!」

 

 キリノが堂々と言い放った。話を聞いてみるに──

 

「ここのところ、詐欺の被害件数が増加しているんです。手口も金額も様々ですが、とにかく数が多いの一言で、対応が追いついていないのが現状なんです。複数の詐欺グループの活動が活発化しているんですよ」

 

「それは……よろしくないね」

 

「はい、よろしくありません。まったく……市民達を卑劣な手口で騙し、お金を奪い取るだなんて、絶対に許せません! 先生! 本官と共に、悪逆非道の犯罪者たちをとっちめてやりましょう!」

 

「それはいいんだけど……それって公安局刑事課の仕事じゃないの?」

 

「本来なら、そうなんですけど……本当に、あまりにも多すぎるということで他部署からの応援まで入っているんです。そして本官も捜査に加わろうとしたのですが……。局長に言われてしまったんです……」

 

『中務。お前が捜査に加わると何をしでかすか分からんから、先生へ捜査協力を仰いでこい』

 

 目に浮かぶようだ。キリノは真面目で、正義心も高く、困っている人を見捨てられない模範的なお巡りさんなのだが……事件を明後日の方向へ飛ばしてしまう性質(タチ)なのだ。

 

(つまり、この子(キリノ)を見張ってろってことね……)

 

「ということで先生には本官と共に、公安局とは別のアプローチでの捜査をご協力頂きたく!」

 

「それはいいけど……捜査って言ったって私、何すればいいかとか分からないんだけど」

 

「ご安心ください! 本官もさっぱり分かりませんので!」

 

 大丈夫かなぁ。どこまでも透き通る空を眺めて先生はそう思った。

 

 

-

 

 

 とりあえずカンナに捜査情報をもらうことにした。

 

『現状の捜査資料を送ります。部外秘ですが、先生には今更でしょう。外部には公開しないよう願います』

 

「うん、分かってるよ。それで、大変なんだって?」

 

『今月に入ってからの被害件数だけで、去年全体の被害数を上回りました。被害総額に至っては去年全体の3倍です。連中の財布はさぞ膨らんでいることでしょう』

 

「……ヤバいね。私にまで声がかかるわけだ」

 

 とりあえずモニターにデータを表示。キリノと一緒に覗き込んでみる。

 

「他学園自治区の被害も多いんだね。それに、思ったよりも被害者の年齢が若い……。詐欺って普通、高齢者とかを狙うものだと思ったんだけど」

 

『それに関しては……あー……被害の何割かが、実は先生に関連しているんです』

 

「え? なんで私?」

 

『シャーレ投資詐欺、というヤツです。連邦捜査部シャーレが株式を発行したから買わないか、と持ちかけられ、まんまと買ってしまうケースが多いようです』

 

「……ごめん、ちょっと理解が追いつかない」

 

「株主優待の豪華さに目が眩んで……かなりの生徒さんが騙されているんです! 先生の名前を使って詐欺だなんて、本当に許せないです!」

 

 先生はとりあえず目を覆った。なんだったら耳も塞ぎたかった。

 

『最も、これは氷山の一角に過ぎません。他にも、生徒同士での銃撃戦で破損した建物の被害額を、建物の持ち主とは全く関係のない第三者が生徒へ請求を行うケース、あるいは急増している身代金マルウェアなどによるもの、古臭い業者による古臭い情報商材詐欺だとか……挙げていけばキリがありません」

 

 どうなってんだキヴォトス。マジで大丈夫かこれ。このままでは"預言者"とか関係なく、普通にキヴォトスがえらいことになる。

 

『厄介なのは、どれも異なる詐欺師、あるいはグループによるものである点です。こうなると、単純に人手が足りません。また、他学区への捜査はD.U.での捜査と違って、煩雑な手続きや必要な擦り合わせも多く……』

 

「……カンナの顔色が酷い理由はよく分かったよ。分かった……とりあえず主要な学園自治区との顔つなぎは私に投げて。それと、各学園の"警察"にも情報を共有して協力してもらおう。その辺りは私がやるから、ワルキューレはD.U.に集中して捜査を。……こんな感じでいい?」

 

 キヴォトスのイカれた治安に苦い顔をしながらも、淀みなく指示を下す先生を、キリノが少しキラキラした目で見ていた。

 

『……本当に、助かります。この借りはいずれ』

 

「お礼の言葉は事件の解決まで取っておくものだよ、カンナ。落ち着いたら焼肉にでも行こうか」

 

『事件解決後のお楽しみにしておきます。それでは……それと中務、先生の安全をしっかりと守るようにな』

 

「はっ!」

 

「お願いね、キリノ。……さて、じゃあ早速出ようか。まずは……ゲヘナかな」

 

 ゲヘナ学園の風紀委員長にモモトークを送りながら、先生とキリノの忙しい1日が始まった。

 

 

 

-

 

 

 

フロントガラスを防弾にしておいて良かった。先生は心からそう思った──ゲヘナ学園自治区、中央道を爆走する車両を追いかけている。

 

「犯人は繁華街(ダウンタウン)を北上中! 発砲してきています!」

 

『了解しました。そのまま追跡をお願いします』

 

 追いかけている犯人グループは車の窓から身を乗り出して発砲を続けているが、走行中では威嚇射撃以上の脅威にはならない。ならないが……。

 

 犯人車両の後部が変形してヘビーマシンガンになった。

 

「ッ、まずいです! なんて危険なものを持ち出しているんですか、犯人達は!」

 

「あの変形機構、かっこいい……!」

 

「言ってる場合ですか!」

 

 ハンドルを握るのはキリノだ。先生は全体の指揮官として、タブレットもとい"シッテムの箱"を見ながら指示を続けていた。

 

「……っていうかヤバいね。いくら防弾仕様とは言っても、あんなの撃たれたら廃車確定だ……」

 

「廃車で済めばマシな方です! ですがご安心ください先生、本官のドライビングテクニックは伊達じゃありませんよっ!」

 

 ヘビーマシンガンが回転を始めると同時にキリノがアクセルを踏み込んだ。弾幕による掃射をギリギリで避けながら接近していくが、犯行グループの威嚇射撃もあり寄り切れない状況だ。

 

「うぅっ、小癪なっ! ですが本官から逃げ切ることなんて……って、うひゃぁぁぁっ!? それはマズイですぅぅぅううう!」

 

「アコ! この鬼ごっこ、いつまで続ければいい!? このままじゃ私たち、いずれ蜂の巣になっちゃいそうなんだけど!」

 

『ご安心を、先生。その先には──ヒナ委員長が待ち構えています』

 

 

 

 周辺の封鎖は終わっている。何らかの爆発音が近づいてきて、情報にあった通りの車両が向かってくる──彼女はそれに真っ向から立ちはだかって、それを構えていた。

 

「後ろの一台は……先生が乗っている。巻き込まないように、気をつけなきゃ」

 

 

 

「くそっ! 特大火力で掃射してるってのに、なんでまだついてきてんの!?」

 

「あ……あれ、前に誰かいる。1人だ──ヤバい! あれ、風紀委員長だ! 逃げ……!」

 

「いや……このまま突っ込む! 風紀委員長がどんだけヤバかろうが、こっちは車だ! 月の裏側までぶっ飛ばしてやる!」

 

 

 加速しながら突っ込んでくる馬鹿に照準を合わせてトリガーを引く。弾丸は──バンパーへと突き刺さり、内部機関に穴を開けた。いくつもいくつも──

 

「……走る棺桶ね」

 

 彼女めがけて突っ込んできた車両はもはや制御不能。眼前に迫る高速度の車を見ながら、彼女は高く跳躍し、棺桶を躱した。車は制御を失いガードレールへと衝突し、着地した彼女の背中で大爆発を起こす。

 

 続いて甲高い音を立てながら急ブレーキで停止する、シャーレの紋章が刻まれた車。もう随分ボロボロだ。そしてその中から、彼女が敬愛する"先生"が出てきた。

 

「……やあ、ヒナ。久しぶり」

 

「うん。久しぶり、先生」

 

 彼女は"風紀委員長"、空崎ヒナ。このゲヘナ学園において"最強"を冠する少女。ヒナは先生の少し疲れたような微笑みを見て、同じように口元を緩めて近づいていく。

 

 背後の爆風がヒナのマントをばさばさと揺らした。

 

 

 

 

「はい確保。軽強盗に道路交通法違反、傷害に公執、公共物破損です。これ、罪重いですよ?」

 

「その前に……治療してくれぇ……」

 

 見事に爆発した棺桶から引っ張り出された不良たちをアコが担いでいる。

 

「アコ。その子たち、モモトークで伝えた詐欺にも関わってるかも」

 

「はい、詐欺罪も追加と。しばらくシャバの空気は吸えませんからねー」

 

「いや、その前に治療を……」

 

「続きは署でゆっくり聞きますからねー」

 

「署じゃなくて病院でぇ……」

 

 犯罪者に慈悲は無用だ。それは分かっているのだが、不良たちへのぞんざいな扱いを見ていると少し不憫にも思えてくる。

 

「ところで先生、まずはゲヘナ学園(ウチ)に来るって話だったけど……どうしてこんなことになってたの?」

 

「──なんでかなぁ。私も知りたいよ」

 

 まず来る途中に寄ったコンビニで強盗に遭遇した。ここまではまだ偶然で済ませてもいい範囲だ。キヴォトスでコンビニ強盗はそう珍しくない……しかし、犯行グループの車両ナンバーが公安局がマークしていた詐欺グループのものと一致、不良たちはすぐさま逃走。

 

 当初は風紀委員会に連絡を取ってコンビニを包囲しようとしていた先生だったが、キリノが躊躇せずに発砲したことであんなことになった訳だが、風紀委員会の到着までの時間を考えるとそれで間に合ったかどうかはシビアなところだ。

 

 結果オーライ。まあ結果はオーライ。

 

「先生、先生っ! やりましたね! 本官たちでまた一つ、悪を懲らしめてやりましたねっ! これで本官も、生安(※生活安全局)の歩く起爆スイッチだとか、ミス・時限爆弾(カウントダウン)とか言われることもありませんよねっ!?」

 

「……うん、そうだね」

 

 自分の手で解決に導いた体感があるため、キリノは非常に嬉しそうだ。確かにキリノのドラテクはなかなか唸るものがあった。それは認める。認めるけど。

 

(この前の仕返しかい? カンナ……)

 

 先生としてはただ空を仰ぐ以外に選択肢はなかった。

 

 褒めてくださいって感じの目で先生を見上げるキリノにどう対処すればいいか悩みつつ、そんな内心を表に出さないようにして先生はキリノの頭を撫でた。犬みたいだった。

 

「……先生。一応私も、仕事はしたんだけど……」

 

 ヒナも撫でた。ペットの多頭飼いみたいな感じだった。

 




育成素材何もかも足りないんだけどどうすればいいか誰か教えてくれ
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