居酒屋で出会ったおっさんと軽いノリで作った組織   作:エドモンド橋本

111 / 133
作者は何番隊隊長みたいな肩書きめっちゃ好きなんですよね。
そうです、あの死神漫画の影響です。


カイトさんの1日②

 

 

 AM11:30

 

 昼前に一度、ハニー達のお手入れタイム。

 

 「ル〜♡♡」

 

 「最近毛が伸びてきたね」

 

 邪魔にならない様に整えてあげないとな。後は、ブラシがけしてハニーは終わりなんだけど。

 

 「ル、ン、ル〜」

 

 「……」

 

 大丈夫。ハニーはいつもこうだ。うん、問題ない。痛いわけじゃないだろうから問題ない。

 

 「よし、終わったよハニー。次はファイアローだね」

 

 「ル、ロップ!」

 

 「え?」

 

 ちょ、何でそんな強い力でファイアローのボール掴むのよ。次はファイアローの番なんだからさ、君のブラッシングは終わったじゃないの。

 

 「ルルー♡♡♡ロップ♡♡ロップ♡♡」

 

 「はあ、分かったよ」

 

 「ルー♡♡♡♡」

 

 もっともっととねだっているだけか。この子は進化してからおねだりが上手になった。ミミロルの時は、ツンデレ系であれはあれで可愛かったけど、今はもっと可愛い。レッドのリザードンを相手にした時の鋭い眼差しや、勝利した時の笑顔。本当に素敵な子だ。ハニーだけじゃない。みんな俺にとってかけがえのない存在だ。だから早く、彼を迎えに行こう。

 

 『ゲッ!!??』

 

 『いや、驚かせに来て逆に驚くとかある?』

 

 『ゲン〜、ゲ〜』

 

 『ああ泣かないでよ。ここ君の家だったのか、ごめんね。直ぐ出ていくから』

 

 頑張って驚かそうとして、失敗して泣いちゃう臆病なオバケ。でも優しくて、ウチで1番強い子。俺は知ってた。彼が強くなれば強くなる程、本能が俺の命を奪おうとしていた事を。でも、彼は必死にそれを押さえ込んでいた。あの時、まだ未熟なトレーナーだった俺は、気付いていて、最悪の場合それを受け入れようとしていた。それが、彼に消えない傷を付ける事になると知らずに。

 

 『ゲ、ゲ?ゲン、ゲガ!ゲガアアアアアアアア!!!!????』

 

 彼の絶望に染まった顔を、今も鮮明に覚えている。あの時俺は、彼に何を伝えた?何て言ってあげた?腕の中で徐々に冷たくなっていくアブソルを、泣きながら抱きしめることしか出来なかった俺は、誰よりも傷ついている彼に、手を伸ばさなかった。必死に追いかけたハニーの悲しい泣き声で、彼が去って行った事に気付いた。

 

 「ル〜」

 

 「ん、分かってるよ」

 

 急に振り返ったハニーが優しく抱き締めてくれる。この子も、会いたがってる。ミロカロスとの再会に号泣しちゃう程仲間思いの彼女にとって、あんなに辛い別れはない。みんなそうだ。相棒も、ファイアローもポリゴンZも、グソクムシャも、彼に会いたい筈だ。

 

 「迎えに行こう」

 

 俺はポケットから、少し汚れたモンスターボールを取り出す。あの日、彼が破壊したボール。ポリゴンZが必死に破片を集めてくれたから、アクロマに直してもらう事が出来た。彼の帰る場所ならここにある。

 

 『人もポケモンも、平等に死は訪れる。お前の愛したポケモンは、最後どんな顔してた?』

 

 『……幸せそうだったよ。あんな顔を見たのは、あれが最初で最後だ』

 

 『なら、それが答えだろ』

 

 いつだったかの、グリーンとの会話。そうだ、あの時アブソルは、出会った時とは違う優しげな眼差しだった。最期の時、あんな幸せそうな顔をするから、俺は辛かったんだ。まだ一緒にやりたい事があった。見せたい景色があった。心の底から助けたかった。でも、彼女は永い眠りについた。だから俺は、彼女の為にも、まだ手の届く彼を助けないといけない。

 

 「待っててくれ、ゲンガー」

 

 

 PM0:00

 

 昼食タイム。最近食堂の調理師が増えた事で、メニューも豊富になった。エメラルドやサファイアの様に身体を動かすことの多い部隊の隊員にとっては助かる。食事は大事だし、妥協したくないよね。

 

 「ボス……前、良い?……」

 

 「カガリちゃん!勿論だよ!」

 

 俺が食堂に居ると一般隊員が気を使ってしまうので、目立たない端っこで食事してたらカガリちゃんに声をかけられた。でも珍しいな。カガリちゃんあまり食堂を利用しないタイプなのに。

 

 「モミジ達に……休憩はしっかり取れって言われた……」

 

 「それは当然。隊長なら、健康面にも気を使わないとね」

 

 「……部下から言われてたら……隊長失格だね……」

 

 可愛い。本人は超気にしているんだろうけど落ち込んでるカガリちゃんガチ可愛い。まあ、カガリちゃんもカガリちゃんで、めっちゃ苦労してんだろうな。マツブサみたいなプロ意識の塊みたいな隊長の後釜ってなると大変だ。部下達の事もしっかり見ていて、悩んでいたら適切なアドバイスをするし、結果を出せばしっかり評価する。その上で自分の仕事も求められているライン以上の成果を出す。アイツは凄え奴だ。だから俺もマツブサを最高幹部にした。でも、マツブサはマツブサ。カガリちゃんはカガリちゃんだ。

 

 「別に良いんじゃない?集中してたら時間忘れることもあるしさ。モミジちゃん達もそれを分かっていたから声かけたんでしょ。カガリちゃんのその研究意欲は素晴らしいものだからさ、無理しそうになったら止めてもらう感じで良いじゃん」

 

 「でも……そんなの隊長とは……」

 

 「言えるよ。隊長の形なんてそれぞれだ。部下達と支え合う。カガリちゃんらしい隊長もありでしょ」

 

 あのNですら一応隊長やれてるんだから大丈夫だろ。カガリちゃんしっかりしてるし。

 

 「俺はカガリちゃんみたいな隊長も組織には必要だと思うんだ。全員が全員同じタイプじゃつまらないしね」

 

 「……うん……ボス、ありがとう……」

 

 可愛い。やっぱ可愛い。天使はここにいた。今日は良い日だ。天使と共に昼食を取れるとは。ありがとう神様。ありがとうアルセウス。

 

 

 PM1:00

 

 いつもの事だが、昼一は眠い。その為大体船内を歩いてみんなの様子を見て回っている。とりあえず復帰したての怪我人がいる操舵室に来たのだが。

 

 「おう!ボス!!色々心配かけてすまねえ!もうこの通り問題ないぜ!!」

 

 「うん、どの辺が問題ないの?」

 

 全身包帯まみれのウシオ。コイツ、マッシブーンとの戦闘でカイリキー達が全滅したからって、最終的に自分が戦おうとしてこうなったみたい。やっぱバカだったか。

 

 「あのなあ、ポケモンが戦えなくなったら普通諦めて逃げるもんだろ」

 

 「だっはっはっは!!俺はバカだからなあ!!諦め方も分かんねえぜ!!」

 

 「胸張って言う事かよ!!」

 

 まさか未知のポケモンと殴り合いする程バカだったとは。マッシブーンが手抜いてくれた上にカプ・ブルルが助けてくれたから良かったものを。

 

 「頼むからウシオ、こんなバカな真似2度とすんな。お前の替えは世界中探したっていないんだ」

 

 船長として有能で、部下からも慕われていて、緊急時の判断も適切。優秀な人財としてもそうだが、何よりコイツといると楽しい。誰かを悪く言う事もないし、本心から人を褒める事が出来る。うん、やっぱりコイツなんで悪の組織なんかにいるのかな?

 

 「ボスからそう言って貰えると嬉しいけどよ、俺ここ最近ずっと船で待機ばっかだっただろ?いつもボロボロな状態で帰ってくるボスを見てて、何つうか、辛かったんだよ」

 

 「……」

 

 「だからよ、マッシブーンと戦ってボロ負けした時も、このまま逃げて、傷一つねえ体で、ボスに会うわけにいかねえって思ったんだよ」

 

 「バカタレ」

 

 俺はウシオの広い額にデコピンをかます。ちょっと驚いただけで特に痛そうではねえな。どっちかって言うと俺の指の方が痛い。

 

 「俺が今回のお前の怪我の理由なら謝る。ごめんな。でも、俺の事よりも、お前はトレーナーとしてまず、お前の為に戦ったカイリキー達の傷を癒して、労ってやらないといけない」

 

 「うっ、それは」

 

 「それに、俺がボロボロで帰ってこようが心配すんな。お前達が無傷ならそれで良い。組織のトップは、部下を守ってなんぼだろ?それに俺は夢を叶えるまでは絶対死なねえ。あ、美女に騙されたら死ぬかも知れねえけど」

 

 サカキとの約束、俺の幼い頃の夢、それを叶えるまでは死ぬつもりはないんだよね。そして夢の景色を見る時、そこにはウシオにいて欲しい。勿論アオギリやマツブサ、ヒガナちゃん、イズミさん、カガリちゃん、ホムラ、アカギ、全員で見たい。全員で喜びたい。

 

 「ぷっ、だっはっはっは!!やっぱボス!!あんたは最高だぜ!!」

 

 「おう!何たってボスだからなあ!」

 

 コイツとのバカなノリも、やっぱ楽しいんだよな。

 

 「今日の新入り歓迎パーティーしっかり盛り上げてくれよ!」

 

 「おう!任せてくれ!!」

 

 バカな船長は、バカだから良いんだ。

 

 

 PM1:45

 

 プラチナの研究室。1番端にあるデスクで静かにパソコンに向かい合って仕事をするアカギ。俺は彼に近付いて声をかける。

 

 「アカギ」

 

 「ボス、お疲れ様です。どうかされましたか?」

 

 急いで椅子やらお茶やら用意しようとしてくれるマーズちゃんに気にしなくて良いと伝えて、アカギに改めて向かい合う。

 

 「お疲れ。いや、ただ船内を見て回ってただけ。デンジュモクとはどう?打ち解けられた?」

 

 ウルトラビーストを手持ちに入れてるのはアカギとウシオのみ。ウシオのマッシブーンは、何か、うん。打ち解けたって言われてもあ、そう。ってなるじゃん?でもアカギが、デンジュモクをUB研究室じゃなくて、自分の意思で手持ちに加えたのは意外だった。

 

 「はい、中々表情豊かで、陽気な奴です」

 

 「デンジュモクは良い子ロト!」

 

 ヒョコっとアカギの後ろから現れたロトム。あの頃と違って洗濯機を取り込んだのか角ばった見た目になっている。何で洗濯機を取り込もうと思ったのか、やっぱタンバリンアカギの思考は凡人には理解出来ない。

 

 「デンジュモクの力は確かに強大です。ですが、根は温厚な様なので、今後頼もしい戦力になると思います」

 

 「ロトムも頑張るロト!」

 

 「ああ、頼りにしてるぞ」

 

 優しい目でロトムを撫でるアカギ。無口無表情が基本だけど、自分のポケモンやヒカリちゃん達と話している時は、時折口角が上がっているのを見る事がある。アカギにとって、ロトムとの再会は大きなターニングポイントになったみたいで良かった。

 

 「邪魔して悪かったな。今日は早めに終わらせて、しっかりパーティー楽しめよ」

 

 「ボスから頂いたタンバリンを使う日が来ましたね」

 

 「え?」

 

 「アカギとフラダリのフォークデュオ楽しみロト!」

 

 「……」

 

 新入りにトラウマを植え付けないでくれ。

 

 

 

 

 




またまた関係ない話
カイトのポケモン達のライバル

ブラッキー……ピカチュウ(レッド)
ヘラクロス……ヘルガー(カイトの姉)
カビゴン……カイリュー(バンジロウ)
アブソル……リザードン(ダンデ)
ミロカロス……ラプラス(野生。何度もカイトを背中に乗せて海を渡っていた)
パチリス……ダークライ(旅の途中、カイトを襲おうとしていた為追い払った事がある。カイトは気付いていない)
ポリゴンZ……デスバーン(8歳カイト)
ミミロップ……リザードン(レッド)
サザンドラ……サンダー、ファイヤー、フリーザー(探しものの旅をしている最中に遭遇)
ファイアロー……アーマーガア(重そうなのに速く飛べている為、勝手にライバル視)
ゲンガー……居ない
グソクムシャ……カメックス(レッド)
ガチゴラス……カビゴン(レッド)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。