居酒屋で出会ったおっさんと軽いノリで作った組織 作:エドモンド橋本
「シカリッ!?」
2発目の特大シャドーボールを食らったブラックはふらついたものの、すぐに体勢を立て直した。流石はハニーの飛び膝蹴りを耐えただけはある。普通のポケモンより遥かに強い。でも、俺のゲンガーには勝てない。
「ゲンガー!鬼火!」
「ゲガガッ!」
「シカッ……シカリッ……!!」
ゲンガーの周りに現れた青紫の炎。ゲンガーが手を振り下ろすと、その炎はブラックに纏わりつき、火傷を負わせた。苦しそうに顔を歪めるブラックは、ゲンガーに向かって光線を放つ。しかし、それがゲンガーに当たることはない。俺のゲンガーが最強で、無敗のエースである本当の理由はこれだ。
「シカリ……シカッ!……!!」
俺のゲンガーは攻撃力が高いのは勿論だが、それ以上に目を引くのはこの速さだ。影を移動し、姿を現したとしても、全ての攻撃を見切って避け続けられる。そして攻撃している方は火傷のダメージに体を蝕まれ続けて苛立ち、焦り、冷静さを欠く。そしてやけになった瞬間。
「はあ、はあ、ゲンガー、シャドーボール」
「ゲガアッ!!」
「ジガリアッ!?」
ゲンガーの3発目のシャドーボールを受けたブラックは、火傷のダメージと不意の一撃により、完全にダウンした。冷静じゃなかった俺のせいだが、ブラックは強かった。そのブラックがこの状態とは、やっぱりゲンガーは間違いなく強い。
「シカリアァ」
「おわっ!」
「ラリオーナッ!!」」
ブラックの光が更に眩しくなったかと思ったら、ソルガレオが分離した。新たに開いたウルトラホールへと姿を消すソルガレオ。そして、元の姿に戻ったブラック。未だに火傷のダメージを受け続けている為、もう戦う事は出来ないだろう。どうするべきか、思考を巡らせたその一瞬の油断が隙を与えてしまった。
「リノッ!!」
「ッ!?」
「ゲガ!!」
力強く地面を蹴り、腕を振り上げたブラック。最後の力を振り絞って俺へ攻撃をして来た。ゲンガーがシャドーボールをぶつけようとしたが、それよりも早く、横から小さなポケモンが飛び出した。
「ブイッ!!」
「リノ!?」
「ッ今だ!!」
小さなポケモンがぶつかって来たことにより、態勢を崩すブラック。俺はその瞬間、ビッケさんから貰ったウルトラボールを投げる。
「リ、ノ」
ボールに吸い込まれる最後の瞬間まで、ブラックは俺から目を離さなかった。一体何がアイツと俺を結び付けようとしているのか。それは分からない。カチッと音を立てるウルトラボールを拾い上げる。危険すぎるコイツを放置は出来ない。船に戻ったらしっかり調べてもらおう。
「あ、そう言えば」
「ブイッ!」
「うお!」
助けてくれた小さなポケモン。その正体はイーブイだった。ちゃんとお礼を言おうと思い、顔を向けると勢いよく飛びついて来た。その行動に驚いた。でも、それ以上に俺の中に何かが走った。サザンドラがまだモノズだった頃に俺に飛び付いた様な何か。
「ブイッ!」
『ソルッ!』
「ッ!君、は」
「ゲ、ゲガ」
無邪気に俺の首に顔を擦り付けるイーブイ。甘えるのが下手だった彼女が、ガラルについた時、初めて取った行動と重なる。隣で動揺するゲンガーも、きっと理解している。
「ブイブイッ!」
「ッ、君は、また、俺で良いのか?」
「ブイッ!」
「俺よりも、幸せにしてくれるトレーナーは、たくさんいるよ」
「ブイブイッ!ブイッ!」
「ッ俺は、君を」
ダメだ。目から涙が溢れる。俺に泣く権利なんてない。今ここにいる2匹を救えなかった俺が、許される日なんて来ない。俺は、彼女をきっとまた傷付ける。なら、俺は彼女と共には、居たらいけない。そんな自分勝手は、許されない。
『自分勝手は我々悪の組織の特権だ』
「ッ」
それは、アローラでのサカキの言葉。今の俺は、ただの一般トレーナーじゃない。悪の組織のボスだった。なら、最低な手段を選んでも良いのか。彼女が最低な俺の手を掴むのなら、それに縋っても良いのか。
「俺は、君と共にまた世界を見たい」
「ブーイッ!」
「君と、話がしたい」
「ブイッ!」
「君と笑いたい」
「ブブイッ!」
「今度は、必ず守るから、だから、お願いだ。側に居てくれ」
「ブイ」
『ソル』
優しく俺の頬を舐めるイーブイ。視界に映る俺のポケモン達。涙を流す相棒とハニー。空を見上げるファイアロー。楽しそうにはしゃぐポリゴンZ。背を向けるグソクムシャ。感慨深く頷くガチゴラス。俺は、最後の1体に目を向ける。
「おいで、ゲンガー」
「ゲ、ゲガ」
隣にいたゲンガーに手を伸ばす。あの日握れなかった手を、しっかり握る。
「助けてくれてありがとう」
「ゲ、ゲガア」
「また、一緒に戦ってくれる?」
俺の言葉に下を向いてしまうゲンガー。彼の心が晴れないのも無理はない。でも、俺にはゲンガーが必要だ。
「ゲンガー」
「ブイッ!」
「ゲガッ!?」
「ブイ?ブイッ!ブイブイッ!!」
俯くゲンガーに飛び付くイーブイ。しかし、当然すり抜けてしまう。それに困惑しているイーブイは何度もゲンガーに飛び付くが、その度にすり抜ける。何がしたいのか何となく察した俺は、ゲンガーの手を握りながら、イーブイを持ち上げてゲンガーに近付ける。
「ブイッ!ブイブイ」
「ゲ、ゲガ、ゲン」
ゲンガーの頭を撫でるイーブイ。何て言ってるのか、なんとなく分かってしまう。目が潤んでいくゲンガーを見て、今なら俺の言葉も届くと確信した。
「ゲンガー、今度こそ、一緒に守ろう」
「ゲガアァ、ゲン、ゲ」
「うん、君なら出来るよ。何度も君に救われたんだ。俺も、この子も」
「ブイッ!」
「ゲガ、ゲン、ゲガアアアァ!!アアアアアアァ!!」
大きな声で泣くゲンガーを抱きしめる。ずっと1人で守ってくれていた。独りを嫌う彼が、臆病な彼が、ここで4年間も、大切な友達を守り続けていた。
「これからは、一緒だよ」
「ブイ!」
「ゲ、ゲガ」
ようやく埋まった。俺の心から抜け落ちた2つのピース。それは確かに俺の腕の中にある。
「良かった」
安心した俺は何故かふらついて力なく倒れる。ああ、忘れてた、俺流血凄かったわ。心配そうに見つめるイーブイとゲンガー。駆け寄ってくるポケモン達。気絶する最後の瞬間に聞こえたのは女性の声だった。
「ワオ、ヌメちゃんのご主人様は、彼だったんだね」
今回のお話は前から練ってました。作者の語彙力のせいで感動は薄れてますけど、こんな感じが良いなって思ってまして。
ネクロズマをよろつかせたイーブイの渾身の突撃は体当たりじゃなくて恩返しとか、手持ちポケモン達はゲンガーの邪魔にならない様に離れていたとか、悪い方向に思考を巡らせるカイトを呼び戻すのはサカキの言葉じゃないかなとか、色々勝手な設定作ってました。ただ、何でイーブイがカイトと一緒ならゲンガーに触れられるかの設定はよく考えていません。すみません。何となくです。何か電気回路みたいなもんだと思って貰えれば。
今のカイトさんに勝てるのは何人居るのかな?そこだけが不安です笑。
後は黒幕シバいて、ガラルのジムリーダーやらトレーナーといちゃつかせて、パルデア旅行する感じかな?
まだ特に決めていないのが、イーブイの進化先とネクロズマの処遇についてですね。どちらも今後アンケート取るつもりですので、ご協力よろしくお願いします。
今後ともご愛読頂けますと幸いです。